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「第18回 鬼子母神通り みちくさ市」出品本の紹介(2)

前回に続き、「みちくさ市」、<とみきち屋>出品本を紹介します。

「第18回 鬼子母神通り みちくさ市」11月18日(日)11:00頃~16:00頃
※雨天の場合、23日(金・祝日)に順延(この日が雨の場合は中止)

細はこちら→ http://kmstreet.exblog.jp/

■黒岩比佐子 『パンとペン』(講談社)

今日11月17日は2年前に亡くなられた黒岩比佐子さんの命日になります。思えば、黒岩さんと知り合えたのも「みちくさ市」が縁といっても過言ではなく、同じ高校の一学年先輩と判ったのも私が「第3回みちくさ市」の記事を書いたのがきっかけでした。
もう2年なのか、まだ2年なのか、どちらとも云えないというのが正直なところです。
何故なら、こと黒岩さんに関しては未だに時間が止まったままだからです。

一人でも多くの方に黒岩さんの作品を読んでもらいたい。そんな思いから遺作を出品します。やはり手放す方は少ないのでしょう、古書店でもなかなか見つけられない本ですが、2か月ほど前偶然見つけることができました。

[単行本ほか]  ★は品切れまたは絶版

■木山捷平     『酔いざめ日記』(講談社)★
■古山高麗雄  『身世打鈴』(中央公論社)★
■古井由吉     『夜はいま』(福武書店)★
■種村季弘     『断片からの世界』(平凡社)
■井上究一郎  『アルチュール・ランボーの「美しき存在」』(筑摩書房)★
■若島正        『乱視読者の新冒険』(研究社)
■前田英樹     『在るものの魅惑』(現代思潮社)
■ノージック     『生の中の螺旋』(青土社)★
■クラフト・エヴィング商會 『おかしな本棚』(朝日新聞出版)
■『ユリイカ総特集 ヌーヴェル・ヴァーグ30年』(青土社)★

■『考える人 海外の長篇小説ベスト100』(新潮社)★

巻頭には16ページにわたる丸谷才一および池澤夏樹(12ページ)のロングインタビューが掲載されているだけでなく、魅力的な執筆陣による、なるほどと唸らせてくれる紹介が満載された充実の内容。既に品切れになっています。

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[文庫本ほか] ★は品切れまたは絶版

■上林暁      『白い屋形船 ブロンズの首』(講談社文芸文庫)★
■結城信一   『セザンヌの山 空の細道』(講談社文芸文庫)★
■ディケンズ  『リトル・ドリット1~4(全4冊)』(ちくま文庫)★
■渡部直己  『不敬文学論序説』(ちくま学芸文庫)★
■ファイヤアーベント  『知についての三つの会話』(ちくま学芸文庫)★
■ジジュク     『否定的なもののもとへの滞留』(ちくま学芸文庫)
■モラヴィア 『軽蔑』(角川文庫)★
■神西清      『灰色の眼の女』(中公文庫)★
■後藤明生   『吉野大夫』(中公文庫)★
■バシュラール   『科学的精神の形成』(平凡社ライブラリー)
■島崎藤村ほか 『大東京繁昌記 山手篇』(平凡社ライブラリー)★

■西脇順三郎『雑談の夜明け』(講談社学術文庫)★  ■三好達治『萩原朔太郎』(講談社文芸文庫)  ■小沢信男『東京骨灰紀行』(ちくま文庫)

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他、150円~300円の本を含め多数。

<とみきち屋>は「名取ふとん店横駐車場」に出店します。

明日は好天の予報となっていますが、気温が低そうですので、暖かい装いでお出かけください。皆様のお越しをお待ちしております。

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黒岩比佐子さん一周忌 「語り継ぐ 黒岩比佐子の会」のこと

3年前の11月17日に私はこのブログを書き始めたのですが、その2年後の同じ日に黒岩比佐子さんが亡くなられるなんて、言葉もありませんでした。

黒岩比佐子さんが他界されてから今日で一年になります。
この一年、みちくさ市や一箱古本市に出るたび、比佐子さんがひょっこり現れてくれるのではないかと探してしまう自分がいました。逝ってしまったとは思えない、思いたくない気持ちが心を占めていたからだと思います。
そんな中、11月14日、神保町の学士会館で催された「語り継ぐ 黒岩比佐子の会」に出席し、黒岩さんはもうこの世にはいないのだと、初めて実感するに至りました。

今も黒岩さんのブログ「古書の森日記 by HISAKO」を管理、代筆され、事務局の中心として不眠不休で動かれた宮崎さんにこの会のご案内いただき、感謝の念にたえません。
私は黒岩さんと親しくお付き合いさせていただいたわけではありませんし、メールを除けば、直接お話しできた時間もわずかだったので、語り継げるほどのものがあるだろうか…と躊躇い、ひょっとしたら足を運べなかったかもしれないからです。

宮崎さんは、黒岩さんが亡くなられた直後に私が書いたブログ記事「いつかパラソルの下で…」を以前読んでくれていました。私に連絡がいっていないかもしれないと、今回わざわざブログにコメントくださいました。
その際、「追悼・黒岩比佐子さんDVD上映会」で(私が黒岩さんにお見舞いとして差し上げたCD)ラインベルガー『ヴァイオリンとオルガンのための作品集』から選曲し、音楽として使っていただいたことを伺い、感無量です。ありがとうございました。当日お話しできて嬉しかったです。

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100人を超える方々がそれぞれの思いを抱き、集って来られました。
献杯後には、昨年6月のトークセッション、10月の講演会のダイジェスト版が会場正面のスクリーンに流されたのですが、黒岩さんが実際に話しているような、不思議な感覚に囚われました。岡崎武志さんの問いかけに、楽しそうに受け答えする比佐子さん。その眩しいばかりの笑顔は闘病中という事実を束の間忘れさせてくれるものでしたが、改めて見ても同じ気持ちになってしまいます。
しかし一方で、亡くなる一か月ほど前の『パンとペン』刊行記念講演には、言葉をひとつひとつ噛みしめ、紡ぎ出す比佐子さんがいます。
今でも忘れられない結びの言葉。
難産のすえに産み出した我が子の如く著書に手を触れ「私にとってはこれは、いろんな意味で忘れられない、一冊に、なると、思います…」
そして、
「堺利彦も、楽天囚人として乗り切ったわけなので、ええ…これから頑張って乗り切っていきたいと思います。ほんとうに今日はありがとうございました」
絞り出すように語り終えた黒岩さんの心の中に渦巻いていたものを想像するだけで、胸が詰まります。

会場には黒岩さんの直筆原稿、メモ、絵、スケジュール帳ほかさまざまなものが展示され、これまで知ることのなかった黒岩さんの一端に触れることができました。

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黒岩さんの息吹が生々しく伝わってくるものもあれば、いかにも女の子らしい絵があったり、ライターとしての矜持が滲み出ていて、こちらの肺腑に染みわたってくるものなど、目が眩んでしまいました。
小学校卒業後に書かれた400字詰め原稿用紙135枚におよぶ「わが生い立ちの記」には枚数、書かれている内容ともども目を瞠りました。タイトルからして小学生が思いつくものではありません。家の間取りまできれいに描かれていて、黒岩さんの几帳面さが伝わってきました。多くの方が魅入られるように読んでいたのも当然でしょう。

強く印象に残ったのは大学生になられた時に書かれた断章のようなものです。
ご自身の未熟さを自覚しながらも、奥底から湧き上がってくる「書く」ことへの切迫した、熱き思いが感じられました。
そこには「私の頭に浮かぶ未来の設計というのは、やはり作家になるということなのである」「私は人の心に触れるものを書きたい」「そうだ私は書かねばならない」という言葉が、力強い筆致で刻まれていました。

黒岩さんが生きていらっしゃったら、こういう貴重な資料のほとんどは見る機会もなかっただろう。そう思うと、「黒岩さんは逝かれてしまったのだな…」という実感が湧いてきて、言い知れぬ悲しみに襲われてしまいました。

膵臓癌におかされることがなかったとしても、黒岩さんという方は一切妥協せず、すべての精力を注ぎ、身を削るように書かれる方だったいう思いを強くしました。ほんとうに凄い方です。
それゆえ、「あなたは大切なことに背を向けていませんか。ほんとうにやりたいことをやっていますか」と問われているように思えてしまうのです。

会の終わり近く、高校時代からの大親友Hさんの歌とともに、スクリーンに黒岩さんの生涯を辿る写真が数多く映し出されました。
亡くなる前の時から幼小の頃へと徐々に遡り、そこからまた還ってくるかのように大人へと成長していく。これを見て胸を打たれない人はいないはずです。実際すすり泣きが会場のいたるところから聞こえてきました。

黒岩さんの著作とともに、黒岩さんが書評された本、或いは書評としてとりあげなかったまでも興味を持たれた本など、蔵書の一部がチャリティの一環として販売されました。売り上げは東日本大震災被災地義援金として、各自治体あるいは現地NPOなどに、寄付されるとのことです。
買いたいと思っていた書評本は既に売れてしまっていたので、それ以外の本を購入。

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『精神分析と美』には思わず目を引かれました。『川の地図辞典 多摩東部編』は工作舎・石原さんのお勧めで購入。

●2010年6月26日「作家・黒岩比佐子が魅せられた明治の愛しき雑書たち 日露戦争・独歩・弦斎」スペシャル・トークセッション
●2010年11月14日「『パンとペン』出版記念講演会」
特別映像として<編集者が語る黒岩比佐子>付

どちららも聞きに行ったものなので迷わず上記2枚組DVDも購入。
特典として黒岩さんの描いた絵ハガキをつけてもらいました。

帰りに戴いたお土産も嬉しい。
黒岩さんの遺稿となった西日本新聞掲載の「歴史と人間を描く」と、2006年5月から8月にかけて日刊ゲンダイに掲載された「ようこそ古書の森に!」のコピーに加え、黒岩さんの講演「食育のススメ─現代に通じる明治人の知恵」が収められた「お茶の水図書館設立60周年記念講演記録」。
歌人穂村弘氏との対談「読書の楽しみ」も載っている。

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読売新聞で同時期に書評委員をされていた松山巌さん、井上孝治さんのご長男、井上一さん、黒岩さんの弟さん、黒岩さんの著書『「食道楽」の人 村井弦斎』を担当された元岩波書店の編集者Hさんの話もあり、盛りだくさんの内容でした。

最後になってしまいましたが、発起人、事務局、スタッフの方々、このような機会を設けていただき、ほんとうにありがとうございました。
また、当日あらゆるところに気を配られ、会を支えられていた工作舎の石原さん、おつかれさまでした。黒岩さんのことではいつも何かとお心遣いいただき、感謝しております。

久しぶりの神保町、学士会館を後にした時には雨足が強くなっていた。
本屋など一軒も開いていない時間なのに、そのまま帰る気持ちになれず1時間以上もふらふらしてしまった。

パラソルではなく、雨傘の下でもいいから比佐子先輩と高校時代の話ができたら…などと決して叶わぬことを夢見るなんて、感傷的過ぎるだろうか。

〔参考〕

闘病中の比佐子さんに、「一番気持ちに寄り添ってくれます」と言っていただいたCDはこちらです。

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ラインベルガー『ヴァイオリンとオルガンのための作品集』 NAXOS 8.557383

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「くにたちコショコショ市」エピソード(2)

ナンダロウ(南陀楼綾繁)さんご来場。偵察、いや失礼しました、陣中見舞いですね。「ミスター一箱古本市」の存在感はひと味もふた味も違います。皆さん和みながらも、会場全体の雰囲気が締まったように思えました。

お会いするのは昨秋以来。
<とみきち屋>とはお決まりの会話(にもなってないか)。
「今日もナンダロウさん好みの本、お持ちでない本はありません(笑)」
「またそういう云い方する(笑) いつものあれはないの?」と訊かれたので、
出品目録をお渡しする。
初めて古本市に参加した時に押しつけてしまってから、お会いできた際にはずっとお渡ししている。何かの役に立つとは思えぬが、受け取ってもらえるだけで嬉しいものです。
同じ事は岡崎武志さんにも。畏れ知らずというのでしょうか。

ナンダロウさんと<わめぞ>の古書現世・向井さんらによる新しいイベント「あいおい古本まつり」が3月に開催されますね。今から楽しみでです。

あいおいブックラボ 公式ブログ → http://aioibooklabo.blog.shinobi.jp/

若い女性のお客様に伊達得夫『詩人たち ユリイカ抄』(日本エディタースクール)を買っていただきました。少しお話したかったなと思いながらもできず悔やんでいたところ、横の方に廻られて小さな150円均一箱の中から佐野洋子の文庫を手にされました。
「一人でも多くの方に読んでもらいたくて、毎回のように出しているんです」と思い切って声をかけてみた。すると、

「昨日友人から借りた文庫本を読み終えたらとってもよくて。癌のことに触れ、車を買ってしまう…」
「ジャガーを買って、車庫入れでボコボコにしてしまう話ですね。朝日文庫の『役に立たない日々』だと思います。佐野さんの本いいですよ。お勧めです」
佐野さんのファンや興味を持っている方に出会うと、もうダメです。嬉しくて、つい押し売りのようになってしまう(笑) 『神も仏もありませぬ』『私はそうは思わない』『覚えていない』3冊まとめて購入いただいてしまった。1冊100円にて。

で、『詩人たち ユリイカ抄』の話をさせていただくのを忘れてしまった。いかんなあ。

実はこの本、春の一箱古本市の際にも出して、古本屋ツアー・イン・ジャパンさんに購入いただいた。ブログに書かれていたのでわかったのだが、その時お客さまの応対をしていた妻のとみきちが、「もう一度会えばわかるよ」と言っていた。

その妻が、「古ツアさんが岡崎さんのところにいらしてるよ」と言うので目をやると、雰囲気からしてそうだろうと思われる方が談笑していた。漏れ聞こえてきた会話から、間違いないと確信。
一瞬目が合ってしまう。鋭い眼差しだった。メモもとらず、あの目に古書店のレイアウトから品揃えまで焼き付けているのだなと納得。

男性のお客様にまず、トマス・ピンチョン『競売ナンバー49の叫び』(サンリオ文庫)を購入いただく。既に1冊お持ちだが、汚れが目立つのでもう1冊とのことでした。そういう気持ち、よくわかります。それで本がどんどん増えていってしまうのですよね。昨春ちくま文庫版が出ましたが、この方にとってはやはりサンリオ文庫が大切だったのではないかと、勝手に思ったりしています。
その後話が弾み、シオドア・スタージョン『不思議のひと触れ』(河出文庫)、野溝七生子『女獣心理』(講談社文芸文庫)、国枝史郎、色川武大と計5冊もお買い上げいただいてしまった。

不忍の一箱古本市にも行かれていらっしゃるし、仕事で訪れた仙台では、「Book! Book! Sendai」の一箱古本市にも足を運ばれたとのこと。<火星の庭>さんや<マゼラン>さんのこともご存知でした。
楽しいひと時をありがとうございました。

赤ちゃんを抱っこした女性のお客さまに、『神谷美恵子日記』(角川文庫)、矢田津世子『神楽坂 茶粥の記』(講談社文芸文庫)をお買い上げいただく。本好きの方なのだなあと静かに思う。赤ちゃんを連れていらっしゃるのだから地元の方に違いない。
他にもお子さん連れのお客様の姿をけっこう目にした。国立という街ならではの光景にも思える。

30代と思われる女性に、吉本隆明『夏目漱石を読む』(ちくま文庫)、三島由紀夫『源泉の感情』(河出文庫)を購入いただく。
妻のとみきちが午後2時頃会場に到着したので、その後は店をほとんど任せてしまった。そのため、お客様とは会えず。お話しさせていただきたかったなと残念でならない。吉本と三島の組合せなんて私にとってドンピシャのツボですから。

駄々猫さんとのコラボ<しま猫舎>でよく出店されている<しま猫>さんと、今回は本に関していろいろ話ができて嬉しかった。
ちょっと店を離れ戻ってくると<しま猫>さんがロラン・バルト『エクリチュールの零度』(ちくま学芸文庫)を手に持たれていたので、おや?と思う一方で俄然興味が湧いてきました。<しま猫>さんが出品されている本と傾向が違うように思えたからです。
「今日は買いたいのですが」というようなことを遠慮がちにおっしゃるので、
「もちろんです!」と私。

普段読む本と出品する本が同じとは限らないー そんなことが頭から抜け落ちていました。
バルトの次に『山之口貘詩文集』(講談社文芸文庫)、さらに青柳いづみこ『音楽と文学の対位法』(中公文庫)を。選ばれる本や会話の中から、言葉、言語というものに敏感で、特別の思いを抱かれている方に思えました。最後には高山なおみさんの本も購入いただいてしまった。
何度もお会いし、挨拶を交わすことはありましたが、こんなに本を買っていただき、話ができたのは初めてのこと。こういうのも本を通じての新しい出逢いと云えるのではないでしょうか。
<しま猫>さん、某資格合格まであと一歩ですね。がんばってください。

相棒の駄々猫さん、遅れてくるとは聞いていたが、午前中からいたことに気付かなかった。なにせ、お客様を魅了するあの明るい声が全くといっていいほど聞こえて来なかったから。
すごい格好をした女性が死にそうな感じで店番しているのを見て驚く。何と駄々猫さん…。
かなり具合が悪いのを無理して駆けつけたみたいだ。終了後しばらくダウンしてしまったとブログで知る。
新しい試み、企画など楽しみだけれど、無理はしないでほしいな。
やはり、元気な駄々ちゃんでないとつまらない。

駄々猫さんには村井弦斎『食道楽』(岩波文庫)を購入いただきました。

過日、ナンダロウさんとの初トークを終えたNEGIさんにお出でいただく。古本イベントの多くに関わられ、よく知られている方。会場でも多くの方々と楽しそうにお話されていた。
当店にとっては、大切なお客さまのお一人。これまでにたくさんの本を購入いただいています。造詣の深いNEGIさんがどんな本を手にされるか、店主という立場を離れ、いつも楽しみしにしています。

私が店を離れている際、まず徳川夢声の対談集を購入いただいたことを妻から聞く。その後、ゆっくりと会場を廻られてから再びご来店。荒川洋治『黙読の山』(みすず書房)、吉田健一『瓦礫の中』(中公文庫)を買ってくださった。荒川洋治を手にしてもらえるのは、佐野洋子、五味康祐(音楽本)などと共に<とみきち屋>お勧めなので、やはり嬉しい。『瓦礫の中』はどうなるだろうかと思っていたのですが、NEGIさんで納得。

<市川糂汰堂>さんに、五味康祐『人間の死にざま』(新潮社)をお買い上げいただく。店にいなかったのが悔やまれる。妻の話によると『西方の音』はお持ちだとのこと。
この本は4冊所有していた。小児科医の友人に、「五味康祐の本何か推薦して」と言われた時に1冊贈り、2冊は手元に残して置きたいので、残りは1冊。今回で出品するのは3回目。

五味康祐の名を知っている人が少なくなった、知ってはいても剣豪小説家のイメージが強いこともあってか、過去2回は見事に振られた。
3分の1が人の死に関わる随筆風の文。残りは五味さんの真骨頂とも云えるクラシック音楽にまつわる話という構成になっている。

檀一雄『火宅の人』への痛烈な批判は壇へのまごうことなき愛情があってのもの。交通事故で二人の命を奪ってしまった(過失致死)五味康祐だからこそ嗅ぎ分けられた、太宰治が抱える闇。いずれの文もずしりと腹にこたえる。

午後3時過ぎに、<どすこいフェスティバル>の女性お二人が来てくださいました。黒岩比佐子さんの話に夢中になってしまいTさんとばかりお話してしまい、すみません。ダメですねえ、周りが見えなくなってしまうのは…。

<どすこいフェスティバル>さんは昨年11月の「みちくさ市」に参加され、黒岩さん手書きのメッセージを飾られていました。

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2010年の2月下旬、Tさん、今回は会えなかったKさんたちが東大生協部で黒岩さんの著書『音のない記憶』(角川ソフィア文庫)を平積みしていることを伺い、黒岩さんに伝えました。苦しい抗ガン剤治療中でしたので、励ましにもなる素敵なお知らせに思えたからです。
その後のことは黒岩さんが生前、ブログに書かれました。

〔東大生協書籍売り場でのフェアの様子〕
http://blog.livedoor.jp/hisako9618/archives/2010-03.html#20100313

Tさんは「自分が売りたい本のPOPを著者ご本人に書いていただいたのははじめてです」と話しています。
こんなこともあったので、<どすこいフェスティバル>さんとお会いすると、どうしても黒岩さんの話になってしまいます。黒岩さんのことをこれからも伝えていきたいという気持ちを共有できるのは嬉しいことです。

今回出店されていた<四谷書房>さん。本の本をずらっと並べられていて圧巻でした。
<とみきち屋>は出店のつど、例え小さなものであっても特集或いはテーマを設けて来たのに、今回控えてしまったことが棘のように突き刺さりました。
自身店構えがすかすかに見えたのは、単に持参した冊数が少なかったというより、そんなところが影響していたように思えます。

<ゆず虎嘯>さんに<とみきち屋>を紹介していただいたモンガさんから、野呂邦暢の単行本を出され、しっかり引き取られていったと伺う。最初にモンガさんの箱を見なくてよかった。欲しくなるに決まっています。それに耐えなければならないのは精神的によくない(笑)

<ドンベーブックス>さんは、国立ということあって山口瞳の本をかなり出していました。初めての試みという300円均一もよく売れていました。当然均一ではなかったけれど尾崎一雄も渋かった。

「くにたちコショコショ市」には350人以上の方にお越しいただいたようです。あの厳寒の中を思えば、すごい数字だなと思います。ほんとうにありがとうございました。

今回<とみきち屋>は102冊揃え、76冊お買い上げいただきました。
平均単価369円。複数冊お買い上げいただきサービスで100円にした本も若干ありますが、低価格の本が少な目だったので、「みちくさ市」に比べ、単価は上がりました。加えて国立という土地柄も後押ししてくれたのでしょう。

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第9回「みちくさ市」 御礼

「第9回 鬼子母神通り みちくさ市」、無事終えることができました。
お越しいただいた多くの方々、運営されている<わめぞ>の皆さま、商店街の方々および大家さんに御礼申し上げます。

午後2時頃までは、姪っ子とのコンビで、あたふたとしてしまい、手際が悪かったのではないでしょうか。姪は、雑貨やお手製の作品も販売できる古本市に興味を覚えたようで、いつか<とみきち屋>で自作のものを販売したいなどと云っています。

先般高校2年の時のクラス会があったのですが、30年振りに再会したOさん、Iが来てくれ、嬉しかったです。私が古本売っているなんて想像もつかなかったと思います(笑)。

<とみきち屋>常連のお客様、Hさん、dozoさん、jindongさん、Yさん他にもお会いでき嬉しく思いました。温かいことばをかけていただいた上に、カムバックのお祝いとして本もお買い上げいただきました。お名前を存じ上げない方も含め、お馴染みの方だけで53冊。ほんとうにありがたいことだなと、しみじみ思っています。

親しくさせていただいている四谷書房さん、モンガさん、駄々猫さん。うちでもよくお買い上げいただいているNEGIさん。今回出店されていたつぐみ文庫さんにもご購入いただきました。

会場では岡崎武志さん、書肆紅屋さん、北方人さん、どすこいフェスティバルさん、Pippoさんをはじめ顔見知りの多くの方々とも話しができました。
また、亡くなられた黒岩さんのことを胸に秘め出店されている様子を、随所で感じました。

<とみきち屋>は前回<黒岩比佐子堂>が出店された場所に店を構えることできました。
『パンとペン』刊行記念講演終了後は、かなりお疲れのご様子でしたし、親しい方々、黒岩さんを支えられて来た方々が大勢いらしたので、ご挨拶せずに会場を後にしましたので、黒岩さんと最後にお話させていただいたところでの出店には不思議な縁を感じます。

黒岩さんが腰掛けていた辺りにそっと手を合わせました。
なんだか黒岩さんがすぐそばで見ていらっしゃるような、会場を廻っていらっしゃるような気がしてしまいました。

★黒岩さんを追悼するブログのリンク集をモンガさんがつくってくれました。

 → http://d.hatena.ne.jp/mongabook/20101124 

★私ととみきちの二人が懇意にさせていただいている葉っぱさんが『パンとペン』の書評を書かれています。

 → http://d.hatena.ne.jp/kuriyamakouji/20101124

★黒岩さんの追悼番組(USTREAM放送)の情報

 → http://blog.livedoor.jp/hisako9618/

5月中旬以降、気持ちを整理する意味で本の整理を続け、10月からはさらに特別な事情が生じたため、本を手放すことが急務となっていました。
おかげさまで、この「みちくさ市」だけで132冊の本が旅立っていきました。
23日夜には150冊ほど馴染みの古書店に処分。

12月5日、一時は命も危ぶまれた母が、3ヶ月以上にわたる入院を終え、狭い我が家にやって来ます。
要介護4の認定を受けたので、その点だけはほっとしていますが、これからどういう生活になるのか想像もつきません。
介護ベッド、簡易トイレ、車椅子などが家の中に入ってくるので、整理、処分しきれない本はやむなく一時的にトランクルームに預けることにしました。弟と甥っ子に手伝ってもらい、車2台で搬入する予定ですが、本は意外と重いので途中で根を上げないかちょっと心配です(笑)

ソファや飾り棚の処分。わたしたちに必要はなくとも、普段は寝たきりの母にテレビは必要なので急遽購入。(30分以上見続けることができないブラウン管TVだったので、我が家はこの1年以上テレビを見ることはほとんどありませんでした) その設置ほかまだまだやらなければならないことが山積みで、毎日悪戦苦闘しています。まさに胸突き八丁。

こういう状況なので、みちくさ市でのエピソードは時間のとれそうな時に、もう少し書きたいと思っています。断続的になるか、或いはかなり日数を経てからになるかもしれません。

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黒岩比佐子さん 永眠  「いつかパラソルの下で…」

11月17日。母と義母二人が入院している病院からようやく義母が退院できることになったので、朝から付き添い、妻の実家へと送り届けた。2ヶ月ぶりに自宅に帰れた義母らと夜の食事を共にし、車で帰宅。運転中で気がつかなかったが一通のメールが届いていた。
高校同期Yさんが黒岩比佐子さんの訃報を伝えてくれた。

どうして?と、言うに言われぬ思いに囚われた。
緩和ケアを選ばれ、15日に転院されたばかりなのに…。
「あ~。やっと出られる。ふつうの暮らしができるようになりたいな」
ブログに書かれていた転院時の黒岩さんの言葉が胸に突き刺さる。

何としても産み出したいという一念で抗ガン剤治療に耐え、6月に『古書の森 逍遥-明治・大正・昭和の愛しき雑書たち』(工作舎)、10月には『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)を世に送り出された黒岩さん。
ようやく辛く苦しい治療から解放されたのに、余りにも早過ぎる。

17日の夜から何度もバッハの『マタイ受難曲』を聴いています。
黒岩さんご本人から、執筆時には無音の方が集中できるけれど、読書の際はクラシックばかり聴き、『マタイ受難曲』はよく聴いていると、うかがっていたからです。

何もできずただただ祈るしか他に術が無く、せめて闘病中の黒岩さんのお気持ちがわずかでも安らいでくれたらと、ビクトリア『エレミア哀歌』、ラインベルガー『ヴァイオリンとオルガンのための作品集』などのCDをお渡ししました。
「どの音楽も癒されます。今はラインベルガーが一番気持ちに寄り添ってくれます」と云っていただいた時に、『マタイ受難曲』のことを聞かせていただいたのです。

黒岩さんと比べるべくもありませんが、5年以上前、心身ともにどん底に近い状態の時にコルボ指揮によるマタイを実演で聴き、初めてコンサート会場で涙が流れて来ました。
信仰を持ち合わせぬ者にさえ、魂を慰撫されるが如く、深い安寧をもたらしてくれたのです。

黒岩さんはどんな思いでマタイを何度も聴かれていたのだろうか…。
それを想像しながら聴いていると、コラール「私がいつの日かこの世から去るとき」のところでこみ上げるものを抑えられなくなっていました。

黒岩さんとお話しさせていただくようになったのは昨年の春。それからまだ一年半しか経っていません。この間、黒岩さんの存在は私の中でどんどん大きくなっていきました。

特に同じ高校の一年先輩と判り、同じく黒岩さんと同じ高校の後輩である私の妻も含め三人で、高校の話をしましょうと云っていただいてからは、それまでとは違った感情も芽生えるようになっていました。

昨春、厳しい闘病の中「一箱古本市」の会場に二日間来られた黒岩さんとお話した際にも、今とりかかっている2冊の本が出て落ち着いたら、お茶を飲みながら高校のことをという話になりました。その日は熱い日差しが照りつけていたので、「お身体にさわるから、パラソルでもあったらいいのですが…」と私たちが恐縮したこともあって、今度三人で話をするときにはパラソルの下でしましょうということになったのです。
もう、この世で叶うことはありません。

年齢が近い、(同じ高校出身とは知らないときに)「一箱」で黒岩さんから賞をいただいたことも確かに黒岩さんとの距離を縮めてくれました。
でも何より、特異な高校だっただけに、同じ空気を吸い、共にスポーツ部だったことが大きかったと思います。
そうでなければ、憧れと尊敬の念を抱きつつ、遠くから見ているだけだったに違いないのです。
メールを交わさせていただくことなどあり得なかった。
多くのファンを持ち、高名なライターでいらっしゃるのだから。

黒岩さんに出逢えたこと、嬉しく思っています。
黒岩さんでなければ決して書くことの出来ない素敵な書物を残していただいたこと、
大きな喜びです。
そして、高校後輩として黒岩比佐子さんのことを誇りに思います。
多くのものを授けていただき、ほんとうにありがとうございました。

もっと書きたいことがあるはずなのに、これ以上は言葉になりません。
苦しみも、痛みもない世界へ旅立たれた。
それだけがせめてもの救いに思えてなりません。
どうか安らかにお眠りください。
祈りをこめて。

黒岩さんの最期までを代筆され、その後もいろいろとお知らせをしていただいている、ご近所同期の方々へ、この場を借りて御礼申し上げます。
一番身近で黒岩さんを支えられたのですから、その悲しみは私などの想像の及ばないものがあるかと思います。

今晩(11月20日)19時から緊急追悼番組「黒岩比佐子さんとの日々」がUSTREAM配信されます。

こちら→ http://p-man.tv

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黒岩比佐子さんと堺利彦 『パンとペン』刊行記念講演会

10月16日、『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)の刊行記念として行われた著者・黒岩比佐子さんの講演を聴きに行った。場所は東京堂書店本店。

立ち見を含む100人を越す人々が黒岩さんの一言一句に、耳を傾けた。

大逆事件で絞首刑にされた幸徳秋水、関東大震災後虐殺された大杉栄らの影で埋もれがちだった堺利彦のこれまで知られることなかった魅力を引き出し、社会主義運動史における堺の存在をきちんと位置づける講演はとても充実していた。
また、3年半の年月をかけて書き上げた著書のことを、著者自らの言葉で聴けたことは私にとって貴重であり、望外の喜びでもあった。

1910年から1919年までの社会主義運動冬の時代にあって、「売文社」がどのような役割を担ったのか。そして弾圧の続く中、堺が官憲の目を眩ましながらいかに自らの思想を貫いたのか、明解に伝えられた。

堺はパンのためにペンを使うと明言する一方で、パンを求めるためではないペンもふるうと宣言し、有意なそして世間を楽しませる出版物を送り出していった。
現在の編集プロダクションの先駆的なものであり、外国語翻訳会社でもあった文筆代理業「売文社」のことは序章において次のように語られている。

官憲の弾圧を耐え忍ぶ社会主義者たちの数少ない拠点であり、生計を立てるための組織であり、同志たちの貴重な交流の場であり、若者たちの教育の場でもあった。堺利彦は同志たちを支えるために「売文社」をつくったのだった。

講演では多くの興味深いエピソードも語られたが、その紹介は差し控えたい。
是非本を読んで味わってみてください。

そこで、当日印象に残ったことを三つほど。

自らを棄石埋草と称した堺が、自分たちの社会主義運動は道楽と思われるかもしれないが、「命懸けの道楽」と語ったということ。ここに堺の矜持が見られる。

執筆の過程で、大逆事件において絞首刑にあった者たちが夢に出てきてうなされたという話。
これまでにも大逆事件、大杉栄の虐殺、戦争について様々なところで語ってきた黒岩さんだが、その根底にはいつも、国家権力による理不尽で、惨い弾圧に対する憤り。そしてそういう世を招いてはならないという強い願いが感じられる。

講演の最後、黒岩さんがご自身を堺の代名詞とも云える「楽天囚人」になぞらえ、想いを伝えようとした際言葉を詰まらせた。その瞬間、会場中の人々が固唾を呑んで次の言葉を待った。
涙声で絞り出されたのが次の言葉でした。
「これから頑張って乗り切っていきたいと思います」

昨年暮れからの膵臓癌との過酷な闘病のなかで、精魂込めて産み出された著書への想いが痛いほど伝わってきた。
その時の会場の反応は詳しく書くまでもないでしょう。
あんなに温かい拍手に包まれたのは、ほんとうに久々のことでした。

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「第8回 鬼子母神通り みちくさ市」へ

母が快復の兆しを見せ始め、容体が急変する可能性はなくなったので、19日昼頃「第8回 鬼子母神通り みちくさ市」へ足を運んでみた。

今回は第2会場である旧・高田小学校から回り始める。木々に囲まれ木陰もあってなかなかいい雰囲気。
まずは古本市で知り合った<つん堂>さんのところへ。一箱古本市へはここのところ参加されていなかったので寂しかったが、初めての「みちくさ市」参加とあって楽しみにしていた。開口一番、最近のこちらの事情を気遣っていただき恐縮してしまう。
渋い本をたくさん出されていた。つん堂さんとのゆったりとした語らいはいつも心和む。
日影丈吉の絶版文庫を2冊購入。

お隣には「一箱古本市」を通じて親しくさせていただいているカリプソ文庫さんが出店。カリプソさんも「みちくさ市」は初参加。春の一箱では実行委員として多忙を極め、ご自身は出店できなかったので、虫が騒いだのかな?などと勝手に想像。今度お会いした時には「みちくさ市」の感想を是非聞きたいものだ。

続いて<朝霞書林>さんへ。ブログにコメントいただきながら、調子を崩し、返事もできなかったお詫びを直接できてほっとする。みちくさ市の前、午前9時に始まったK高校・文化祭の古本市で買ってきた本が2袋びっしり詰まって、横に置いてあった。何という情熱、行動力。私にはとても無理だ。
別の高校の文化祭で見つけたという、小林信彦『虚栄の市』(角川文庫)を見せてもらう。<とみきち屋>によく来て頂くお客様で、小林信彦の絶版稀少文庫を探していらっしゃる方のことが思い浮かんだ。

メインストリート(商店街通り)には顔なじみのお店がずらり並んでいる。
<四谷書房>さん、<どすこいフェスティバル>のKさん、Tさんからは温かい言葉をかけていただいた。四谷さんの箱はちくま文庫がずらっと並べられていて目を引いた。どすこいさんは、出品本もそうだが、手作りサイコロを振って景品がもらえるという楽しい店づくり。女性陣の和服姿はいつ見ても風情があっていいものです。
コメントいただいた駄々猫さんにも会えてよかった。ご主人のちゅうたさんも交え、福田和也に関してひとしきり。ちゅうたさんも私と同様、心の病に関する本を多く読まれていると知って、フィクションだが、パトリック・マグラア『閉鎖病棟』(河出書房新社)が結構面白かったとお薦めする。(恋愛小説とも云えるが)
<駄々猫舎>さん、秋の一箱古本市では佐野洋子、多和田葉子ほか「ようこ」特集をするらしい。どんな本を出品されるのか興味深い。

<モンガ堂>のモンガさんとは、いろいろお話しさせていただく。モンガさんの思い描いていることが実現したらさぞ賑やかで楽しいだろうな。聞いているだけでわくわくする。
出されている絵本は家族連れの方などが喜んで買って行かれていた。
膝を悪くされているため、かなり辛そうでした。お大事になさってください。

<北方人>さんには、あの素敵な笑顔で迎えてもらった。いつものごとく朝一番でまとめ買いされる方がいらしたとのこと。品揃えと価格を考えれば何ら不思議ではない。
「これ安すぎません?」と云いながら、竹中労『断影 大杉栄』(ちくま文庫)、森山大道『遠野物語』(光文社文庫)などをいただく。「いいんだよ、持ち帰るの重いから」と北方人さん。

<ちんちろりん商店>のPippoさんとは久しぶりにお会いする。ポエトリーカフェはますます人気を博し、どんどん深化していますね。開催後のレポートをHPで読むのを毎回楽しみにしている。
『てふてふ三匹目 近代詩朗読集/中原中也篇』を購入。Pippoさん自身の作、「灯 中也に」は中也の本質を捉えていて、やわらかく響いてくる。

Pippoさんによる「古書ほうろう」宮地さんへのインタビュー記事がとてもいい。まだご覧になっていない方は是非。
こちら→  http://pippo-t.jp/newpage26.html

賑わいを見せていたのが、<黒岩比佐子堂><岡崎武志堂><古書、雰囲気。>の集まったブース。

<黒岩比佐子堂>は黒岩比佐子さんをサポートする方たちが本を持ち寄っていた(黒岩さん自身も出品)。本好きの方々が集まっているのだなあと一目でわかる品々。見ているだけで楽しい。
黒岩さんの『古書の森逍遥』を手がけられた工作舎のIさんにご挨拶。2時半過ぎに黒岩さんが戻って来られると聞き、再訪することにした。
闘病中の黒岩さん、かなりお疲れのご様子。それでも黒岩さんに会えるかもしれないと訪れた人たちに、にこやかに応対されていた。
少しだけお話させていただく。入院している私の母のことを気遣っていただき恐縮してしまう。黒岩さんは9年にわたってお父様の介護をされたとのことで、かけてもらった言葉のひとつひとつに重みを感じる。

間もなく刊行される『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)の話になり、「早く手にとってみたい…」と黒岩さんが云われた時にはじ~んと来てしまった。苦しみの中で産み出した我が子同然の著書なのだと思える。
(※10月7日に刊行され、既に多くの方が読み始めていらっしゃいます)

思えば、黒岩さんと初めてお話させていただいたのも堺利彦がきっかけだった。
昨春、<とみきち屋>の屋号で「一箱古本市」に出店した際、『堺利彦伝』(中公文庫)と『文章速達法』(講談社学術文庫)を出していたのだが、『堺利彦伝』を購入いただいた。堺利彦の本が2冊あったことが黒岩さんの目に止まったご様子で、堺利彦の本を執筆中であることを伺った。
その時のことを覚えてくださっていたことに加え、こうして刊行されることになったのが嬉しくてならない。
実際には何もできず、祈るしかできないが、10月16日の東京堂書店本店における刊行記念講演(http://www.tokyodoshoten.co.jp/)を無事終えられ、次回作への力を蓄えられることを願ってやまない。

岡崎武志さんからは、野原一夫『太宰治 結婚と恋愛』(新潮社)を購入。太宰関連の本にはつい手が伸びてしまう。恒例のおみくじ、またも○○成が出てきて「うっ…」と反応してしまう(笑)
「奥様によろしく」と声をかけていただく。落ち着いたら妻のとみきちと二人で伺おう。

<古書、雰囲気。>さんからは、川本三郎『いまも、君を思う』(新潮社)。買いそびれていたので即購入。さらに川本三郎『マイ・バック・ページ』(河出文庫)を。このあいだ鈴木邦男との対談『本と映画と「70年」を語ろう』(朝日新書)を読み終え、久しぶりに『マイ・バック・ページ』を読み返してみようと単行本を探したもののどこへしまったのか、或いは何かと一緒に処分してしまったのか見当たらない。これ幸いと頂いた。200円のところを100円におまけしてもらう。

荻原魚雷さんとのトークを終えた書肆紅屋さんともお話できた。紅屋さんも黒岩さんのサポーターのお一人。トーク前に会場を廻った際の感想を聞く。短い時間の中でよく見ているなあと感心してしまう。どんな本が出され、売れているか、或いは手にとってもらえないかー 本の動きを紅屋さんと話せるのは刺激となり、楽しい。またいずれ出店者としてご一緒したいものだ。

不忍ブックストリートの実行委員でもある<やまがら文庫>さん、Yさんご夫妻ほか顔見知りの方とも会えた。秋も一箱は参加もお手伝いもできないことを伝える。

最後に古書現世・向井さんに、出店キャンセルのお詫びに伺う。「気にしないでください。また参加してくださいね」と母のことも含め温かい言葉をかけてもらった。

Hさんが<とみきち屋>さんはもう出ないの?というようなことを向井さんに尋ねられたらしい。
Hさんは<とみきち屋>の大のお得意さま。実は、昼過ぎ<つん堂>さんのところでばったりお会いした。草森紳一の本を購入され、こんな本をという感じで見せていただく。笑顔が眩しい。
「諸事情で秋は参加できませんが、またいつか出店しますのでよろしくお願いします」とご挨拶すると、「カムバック楽しみにしていますよ!」と云っていただく。ありがたいことだなあとしみじみ思う。

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「第10回 不忍ブックストリート 一箱古本市」 エピソード〔2〕

午前中に一度来られたナンダロウ(南陀楼綾繁)さんが、また様子を見に来られる。
「売れてる?」「はい」 以上。もうちょっと箱見てくれないかなぁ(笑)。

遅ればせながら、最近になってナンダロウさんの『路上派遊書日記』(右文書院)を入手して読んだのだが、買われる本のレパートリーの広さに圧倒される。
<とみきち屋>としては気合いを入れて(笑)出したつもりの本でも、著書を読むとナンダロウさんが一度に購入されるone of themでしかないことがわかるのです。
ラインナップに新鮮味はないし、箱そのものには何の工夫もない<とみきち屋>がナンダロウさんを惹きつけるのはもう無理と諦めました(笑)。

自転車のタイヤがぺしゃんこなので。「ナンダロウさん、空気に抜けてますよ」と声をかけたら、「わかってるよ~」と行ってしまいました。

秋の一箱を支える青秋部のIさん、Nさんお二人がお見えになる。5月5日の結婚披露に触れたら、「ちやほやしてもらう日なんです」とNさん。異議なしです。
(当日は所用があってお二人の姿を拝見できず残念でした。ほんとうにおめでとうございます!)

助っ人を終えられた<モンガ堂>さんにお声をかけていただく。「裏・ミスター《一箱古本市》」と呼ばれるほどの方。ナンダロウさんと外見は全く似ていらっしゃらないが、なんだか影武者のような存在。
体調はまだ戻りきっていないご様子。お大事になさってください。

同じく助っ人を終えられたNEGIさんがお見えになる。まずは「COUZT CAFE 藍い月」で過ごされる。すぐに本へと向かわないところなど、イベント全体を楽しんでいらっしゃる感じ。
■鶴見俊輔『限界芸術論』(ちくま学芸文庫)■武田泰淳『蝮のすえ・「愛」のかたち』を購入いただく。

14:00頃。
「古書現世」・向井さん、「古書往来座」・瀬戸さんら<わめぞ>のご一行がお見えになる。一般のお客様とは明らかに漂わせている雰囲気が違う。当日審査員をされていたので各箱を廻っていらした。
あれ?<わめぞ>の方とは思えぬ女性が向井さんの横に。でも、どこかでお顔は拝見したことがあるような…。
「ハルミンさんです」と向井さん。一瞬頭が真っ白になる。お目にかかった時にわからなかった自分が恥ずかしい。素人丸出し(汗)。
浅生ハルミンさんは、最近創刊された『Witchenkare(ウィッチンケア)』VOL..1に、初の小説「文化祭」を寄稿されています。そのリトルプレスを編集した多田洋一さんが、私の高校友人の友人。そんなご縁があったので、ご紹介いただけたのだと思います。
『Witchenkare(ウィッチンケア)』のことを少しお話しさせていただく。まだ全部は読み切っておらず、恐縮してしまう。初めてお話させていただきましたが、チャーミングで素敵な方でした。ファンが多いのも当然ですね。

その間、瀬戸さん作成の本ドラックに前々からいたく関心を寄せている店主・とみきちは、「本ドラ」や今後の作品などについていろいろお話を聞かせていただいたようだ。
ハルミンさんに続くサプライズ。なんと、瀬戸さんに本をお買い上げいただいてしまった。
実店舗を経営されている古書店の方に購入いただくのは初めてのこと。しかもあの有名な「古書往来座」の瀬戸さん。俄には信じられず、正直緊張しました。
開店から3時間過ぎたのに、その本は売れ残りのようにひっそり箱の下の方にありました。もしそうでなかったら、一般のお客様への配慮から手にしていただけなかったのではないかと、私は勝手に思っています。実際値下げしていたにも拘わらず、残っていたからです。どこにでもあるような本ではありません。しかし、容易には手を出しにくい本でもありました。今回特に思い入れの強い本だったので、瀬戸さんに引き取ってもらえ喜びもひとしお。
なのに…。

とみきちがその瀬戸さんに向かって、輪ゴムを飛ばしてしまう。
すかさず、「狙いましたね(笑)」と向井さん。
滅相もない。わざわざ瀬戸さんに輪ゴムを拾っていただく。すみません(汗)。

少し離れたところに立っていらっしゃった武藤(良子)さんに、「今日は飲んでいないんですか?」と尋ねると、「なわけないじゃん」。そうだよなぁ(笑)。数歩下がったところにいらした薄田さんは、向井さん、瀬戸さんのSPのようでした。
向井さん、暑さもあって既にお疲れのご様子。市田邸へのあの急坂、大丈夫だったのだろうか。

14:30頃。
細い路地を曲がり、こちらへ歩いて来られる女性の姿が視界に入る。
「比佐子さんだ!!」と、とみきちと二人、声にならない声を挙げてしまう。
体調がすぐれないご様子を直前のブログでうかがっていたので、信じられない思いでした。
黒岩比佐子さん、高名なノンフィクションライター。
古本市で少しずつお話しさせていただくようになり、憧れの方になっていました。
その後、私の一学年、とみきちの三学年上の高校の先輩と知ってから、失礼ながら勝手に親近感を抱いてしまい、黒岩さんの存在は私たちの中でさらに大きなものになっています。

初めて高校の話をさせていただく。同じ空気を吸っていたとも言えるので、ちょっとしたことでも通じるものがあって嬉しい。
とみきちがブログに書いた『音のない記憶』の感想には、過分な言葉を頂戴する。ふと横を見ると、とみきちの目が潤んでいるような。

6月に刊行される『古書の森逍遥』(工作舎)のこと、それに伴って東京古書会館で催されるイベントのことも伺う。黒岩さんの蔵書が展示されるとのこと。何としても時間をつくって見てみたい。
堺利彦について書かれている本は、年内には出せそうと聞き、期待が膨らむ。
昨年の春の一箱古本市で、黒岩さんに『堺利彦伝』(中公文庫)を購入いただいたことを思い出していました。あれも何かのご縁だったのだろうか。

お会いできたことが嬉しくて、10分近くお引き留めしてしまいました。
お疲れのところ申し訳ありません。

黒岩さんがお見えになっている間、不思議なことにパタっとお客様の流れが途絶えていました。いや、ひょっとすると、私たちが他のことに全く意識が向かなかっただけなのかもしれません。
実際、自分たちが「一箱古本市」に出ていることすら忘れていました。

暑い日差しを防ぐ、パラソルがあればよかったのですが…。
またお目にかかれるのを楽しみにしております。

ここからは時系列にそっていません。

先月のみちくさ市に続き、<つん堂>さんにご来店いただく。ほんのわずかであっても、<つん堂>さんと静かに本の話のできる時間が好きです。昨春の一箱初日、客として廻った際、<つん堂>さんの箱に惹かれ、お話しさせていただいてからもう一年になるのか…。
■結城信一『空の細道』(河出書房新社)、■井上光晴『眼の皮膚 遊園地にて』(講談社文芸文庫)など3冊購入いただく。今時井上光晴はどうかなぁと思っていたので、引き取っていただけたのは嬉しい。<つん堂>さんは「古書ほうろう」の常連さんらしいと、最近知りました。(ご本人から聞いたのではないのですが)そうだろうなぁと納得。

一箱初参加の一昨年秋、お隣同士。以来親しくさせていただいている<もす文庫>のmasubonさんが来てくれました。(当日は「往来堂書店」さん前に出店) お会いできるのは「一箱」での年2回しかないだけに、嬉しい。いつも思い入れの強い、こだわりの本を厳選して出しているところがいいなぁ。飼っていらっしゃるかわいい猫・ピピさんのブロマイドと、手書(描)きのイラスト入り名刺を頂戴する。過去最高の売上げだったご様子。遠くから来た甲斐があってよかったですね。
masubonさんには瀬尾まい子の文庫本を購入いただく。

昨秋、(互いに)正式の助っ人としてではなく、一箱のお手伝いの際知り合った<野ぎく堂>さんにご来店いただく。山田詠美が絶賛していた■ヤン・ウォルカーズ『赤い髪の女』(角川文庫)を購入いただく。というか、押しつけてしまった感あり。すみません(汗)。
田辺聖子の作品についていろいろお話ができて楽しかったです。

<朝霞書林>さんご来店。■野口冨士男『わが荷風』(講談社文芸文庫)ほか3冊購入頂いただけではなく、「4時までがんばってください」と声をかけていただいた。

後日、5月2日(一箱二日目)、私がコシヅカハムで助っ人をした際<朝霞書林>さんが出店されていたのだけれど、品揃えのみならず、本を補充されるタイミング、選択、入れる場所など、緻密さと手際の良さに見入ってしまいました。

初参加以来親しくしている<あり小屋>さんが来てくれました。お嬢様の具合が悪く、お一人で。
■『千年紀のベスト100作品を選ぶ』(光文社知恵の森文庫)を購入いただく。
<あり小屋>さんも5月2日にはコシヅカハムに出店されたのですが、開店前の箱を見て思わず「勘弁して。目の毒」と漏らしてしまう。自分が出店者でも助っ人でも、知り合いでもなかったら、(既に持っている本も含め)10冊はいきなり買ってしまっただろうなぁ。過去最高の売上げにも納得。

■吉田秀和『LP300選』(新潮文庫)を購入された男性から、「わかります?高校同期の…」と問いかけられる。来て頂いた時にはわからなかったが、その質問でYさんだとわかった。在校中は一度も話をしたことはなかったのですが、お顔はなんとなく(すみません)。
先に来てくれたやはり同期の方が、このイベントのことをYさんにも紹介してくれたのを聞いていたのが助けとなりました。お薦めの1冊を購入してもらえ嬉しい。

モノンクルさん好みの本は<とみきち屋>にはないのだけれど、古本市会場に足を運ばれたときには毎回お顔を見せていただけるのが嬉しい。5月16日の「みちくさ市」では同じ場所に出店できるので楽しみ。今回は<モノンクルブックス>ではなく<I HATE BOOKS>さんという屋号です。

これから助っ人という<たけうま書房>さんご夫妻、助っ人を終えられた<オヤジ書房新社>のTさんご夫妻に声をかけていただく。
<たけうま書房>さんは5月2日に「ブックマークナゴヤ賞」を受賞。おめでとうございます。当日会場にいて、私たちまで嬉しくなってしまいました。

初参加の時、同じ会場(宗善寺)だった野宿野郎さんとも久しぶりにお話できた。おからだ大事になさってください。

古本市に参加するようになってから知り合えて、言葉を交わせる方がどんどん増えていくのは、嬉しいものです。

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「第3回鬼子母神通り みちくさ市」エピソード〔2〕 え?!あの方が…。驚きの事実

いつものようにひょうひょうとした感じでナンダロウさんがお越しになる。そしていつものようにさっとうちの箱を眺め、「買わないようにしているんだよね」。
<ほかでは買ってるじゃないですか>と思っても、大人だから口にはしない(笑)。ナンダロウさんに購入いただけそうな本を<とみきち屋>で出せそうにないのはわかっております。はい。

都合がついたら久々に茶話会に参加したいと思っていたので、
「ナンダロウさん、NHKの朝ドラ《つばさ》の話だけだと、一度も見たことないから…」
「冗談、冗談。一箱の話もするから」。

「ナンダロウさんが豚といっしょに映っていた写真素敵ですよねえ。それに、すご~くかわいい!」と店主・とみきち。<うわあ>と思ったものの、「ありがとう」と言ってナンダロウさんが微笑まれたので、胸を撫で下ろす。

岡崎武志さんにお立ち寄りいただいたので、「こんにちはー」とご挨拶。「どーもー」と岡崎さん。
午後になって岡崎武志堂に伺うも、少し離れた日影でどなたかと熱心にお話しされている最中で、お声をかけられず。暑さでかなりお疲れになられたご様子。
岡崎さんのお隣で出店されていた<ゆず書房>さんに前回の御礼を申し上げる。閉店間際いい本を何冊も買わせていただいたので。今回は山川方夫『親しい友人たち』(講談社文庫)を購入。

黒岩比佐子さんが会場にいらっしゃると、みなさんの雰囲気がぱっと明るくなる。私もそうだが、嬉しいんですよね、お会いできるだけでも。春の一箱で『堺利彦伝』をご購入いただいた際、堺利彦関連の本を執筆されるご予定と、ちらっとうかがっていたのですが、いよいよという感じで先が楽しみ。
ブログ『古書の森 by Hisako』(http://blog.livedoor.jp/hisako9618/)で書かれていた記事「大杉栄のお墓参りと大杉栄の甥の橘宗一墓前祭(1)~(3)」「大杉栄の墓の横の墓誌」がとても心に残ったので、そのことをお話しさせていただく。黒岩さんはその中で次のように書かれている。

「犬共ニ虐殺」……。可愛がっていた一人息子を殺された父の無念さが、この5文字から、長い時を隔てても伝わってくる。その碑文を、しばらく無言で見つめていることしかできなかった。

今、竹中労『断影 大杉栄』や大杉栄自身の著作などを読み返しているが、黒岩さんが触れていた、佐野眞一『甘糟正彦 乱心の曠野』も未読なので是非読んでみたい。

実はここまで、前回記事をアップ直後書き終えていました。そして今夜(24日夜)、俄に信じがたい事実を知ることとなりました。黒岩さんから頂戴したコメントが元で、黒岩さんが私の高校の一年先輩であると判り、驚きと嬉しさのあまり卒倒。こんなことがあるなんて…。言葉を失ってしまいました。

久しぶりに<四谷書房>さんとゆっくりお話しできました。ブック・ダイバー「ふるぽん秘境めぐり」、「みちくさ市」、10月の「秋も一箱」と1ヶ月内に3連ちゃんはさすがにたいへんそう。
初参加の「みちくさ市」の感想をうかがい、納得のいくことが多かったです。
値付け、品揃えの微妙な違い。これは、実際に参加してみないとわからないところがあります。私も「みちくさ市」にはプレ開催含め4回参加しましたが、まだまだ奧が深く。それが楽しくもあります。

同じキク薬局さんに出店された<書肆紅屋>さん、<モノンンクル・ブックス>さん、お世話になりました。開店から途切れることなく、多くのお客様が吸い込まれるように集まって来るばかりか、どんどん売れてゆくさまを間近で見ていて、驚きました。

1冊の本をどう「安い」と感じるか、出品する側、買う側では違いがあります。ブックオフは論外にしても、ふつうの古書店で蔵書の一部を処分してもおおよその金額(かなり安い)はわかるものです。紅屋さんがおっしゃる通り、それを考えれば多くの本好きの方に喜んでもらえ、お金では得られぬ経験ができるのであれば、出店者側からすれば単純に安く提供しているとも言い切れないんですよね。

紅屋さんのすごいところは硬軟織り交ぜ、毎回品揃えを換えて良質の本を、絶妙の価格で多数提供していることです。真似したくてもできるものでありません。紅屋さんの教養、経験と実績あってからこそできることで。
当日は様々な貴重な話もうかがえ、勉強になりました。

お隣の<モノンンクル・ブックス>さん。私の知らないジャンルの本が多かったのですが、すごい本がずらりと並んでいました。どうすごいのかはわからなくても本の装丁、たたずまいからだけでもそう感じられるのです。
熱心なお客様との会話がもれ聞こえてくるのですが、お客様が嬉しそうに話す様子から、いかに貴重な本なのかが伝わってきます。それでも、「今回は目玉商品がないんですよ」とのこと。凄すぎます。
けっこう長い時間店主・とみきちが楽しくお話しさせていただきました。私も含め騒がしかったのではないでしょうか。
最後の最後に佐野洋子『役に立たない日々』(新潮社)をお買い上げいただき、ありがとうございました。佐野洋子の本を持ち帰らなければならないのは、私どもにとって辛いものがあるのです。値段とは関係なく。嬉しかったです。
一箱には参加されないようですが、ぜひ遊びにきてください。お待ちしております。

<古書、雰囲気。>さんとは、会場内の道でばったりお会いする。なんと当店から深沢七郎『盆栽老人とその周辺』(文藝春秋)をお買い上げいただいていました。「昨夜TVで車谷長吉が出ていたのだけれど、なんだか深沢七郎と感じが似ているような気がして」と。

<ドンベーブックス>ご夫妻にお越しいただく。奥様とは初めてご挨拶。お二人で地方の古本市にも参加されているのですから、単なる「本好き」にはおさまらない雰囲気を感じます。
小布施での一箱古本市のエピソードをいろいろと聞かせていただく。想像以上にたいへんだったご様子。なのに、さらっと話されるそのパワーとエネルギー。こういう方々がいらっしゃるから、「一箱古本市」が全国に広まっていくのだなあと頭が下がります。

<どすこいフェスティバル>のKさん、Tさん。そしてKさんのご友人のSさんにもお越しいただく。前回に続いて楽しくお話でき、嬉しかったです。<どすこいフェスティバル>さんは「秋の一箱古本市」に参加されるので楽しみ。出店会場が近くになることを願っています。

<あいうの本棚>さん。今回もまた目を見張るような店構え。いつ見ても素敵ですね。
1gあたり10円量り売りには驚きました。さっそく、15g150円で、シリトー『屑屋の娘』(集英社)を購入。それと、『京都読書空間』(光村推古書院)も。
先日ブログにも書いた、吉本隆明のDVDを貸与している京都精華大学の情報館。葉っぱさんに教わった「アスタルテ書房」、ブログで聞いたことのある「がけ書房」などがカラー写真で掲載されているので、思わず手が伸びてしまう。トモコさん、マキさん始めそんなにゆっくりお話しはできなかったものの、お会いできてよかった。
トモコさんには、当店より小川洋子(文)・中村幸子(絵)『はつ恋 ツルゲーネフ 』(角川書店)をご購入いただく。
「詩的で美しい文章と、どのページも開いて飾っておきたい美しい絵」とブログで触れていただき、うれしく思います。

・・・・・〔3〕に続く。

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「第2回みちくさ市」エピソード1 黒岩比佐子さん、岡崎武志さん

当日は予報に反し、陽射しが強く照りつける快晴。長く外にいると熱中症にはならないまでも、ぼうっとなってしまいそうな暑さの中、足をお運びくださった多くのお客さま、ありがとうございました。また炎天下運営面で動き回り、いろいろ心を砕いていただいた<わめぞ>のスタッフの方々、そして参加された店主の方々、お疲れさまでした。

「とみきち屋」恒例となった、古本市参加後のエピソード集、始めます。

黒岩比佐子さん
5月の「一箱古本市」で運に恵まれ「黒岩比佐子賞」を頂戴したのだが、そのプレゼンター・黒岩さんご本人にお越しいただく。みちくさ市に向けて書いた私どものブログをお読みになっていたとのことで、店主とみきちと私の間のバトル(笑)をご心配いただき恐縮。いろいろと和やかにお話しさせていただき、楽しいひと時でした。
増殖していく本を保管していくことの苦労(黒岩さんの仕事柄、私などの比ではないはず)を聞かせていただく。
貴重、稀少、素敵な本をどれだけお持ちなのか知る由もないが、「蔵書の6割も読み通してはいない」という言葉から、おぼろ気ではあれ蔵書の凄さが想像される。読み通さないまでも、実際取り組んでいらっしゃる、或いは今後考えていらっしゃるテーマに関する物はさっと目を通し、付箋を貼って後に使えるようにされている本も多いとのこと。
「現在の蔵書の中から読みたい物をこれから読み続けていっても、一生の間に読み終えることは無理」という話題では、物書きではない素人の私にも通ずるところがあって、盛り上がった。

最近、黒岩さんはブログ『古書の森日記 by HISAKO』(http://blog.livedoor.jp/hisako9618/)の中で、フリーランスの厳しさや在り方について真摯に語っていらっしゃる。

 私は常々、ライターという仕事は職人だと思っている。コツコツと手仕事でものをつくり、自分が魂を注いで創ったものに誇りが持てれば、それが安かろうと高かろうと、金銭に結びつくかどうかは二の次なのだ。これしか払えない、と言われて安い料金で仕事を頼まれたからといって、手を抜いて粗雑な仕事はできない。自分でもちょっと変だとは思いつつ、同じ10枚の原稿を400字1枚当たり3000円で頼まれた場合と、1枚1万円で頼まれた場合で、かかる時間と労力は変わらないのだ。3週間かけて原稿を書き上げて、受け取るのは3万円だったり10万円だったりする。やはり不思議だ(笑)。
でも、フリーのライターは、そうやって必死で生きている人ばかり。とりあえず、筆一本でこうして生きていられるだけでも、幸運なのだろう。フリーランスの物書きになって、今年で24年目になる。 〔7月23日付「ちょっと脱線して」より〕

黒岩さんのライターとしての誠実さ、矜持がひしと伝わってくる。柔らかな物腰、穏やかな話しぶりの奧に、強く、揺るがぬ「芯」を持っていらっしゃるのを実感。
黒岩さんには、角川財団学芸賞受賞『編集者 国木田独歩の時代』(角川選書)、最新作『明治のお嬢様』(角川選書)、5月に文庫化された『音のない記憶 ろうあの写真家 井上孝治』(角川ソフィア文庫)、サントリー学芸賞受賞『「食道楽」の人 村井弦斎』(岩波書店)ほか、緻密で丹念な取材のもと練り上げられた上質な作品が多い。作品を書き上げる際、妥協しない、ある意味(もちろんいい意味で)頑固な人であることも伺われる。

個人的には、自分の興味の対象と重なっているということもあるが『編集者 国木田独歩の時代』、『日露戦争 勝利の後の誤算』(文春新書)、むのたけじ・黒岩比佐子聞き手『戦争絶滅へ、人間復活へ―九三歳・ジャーナリストの発言』(岩波新書)がとりわけ好きだ。
岩波新書では、広範な知識に驚くばかりか、むのたけじ氏から深い言葉を引き出す聞き手としての卓越した才能にも目を惹かれる。
黒岩さんには、竹内洋『日本の近代12 学歴貴族の栄光と挫折』(中央公論社)をご購入いただく。というより、無理矢理押しつけてしまった感じ(笑)。

岡崎武志さん、はにかみ高校生 昨年11月「みちくさ市」プレ開催の際、その出会いがあまりにも衝撃的で、その様子をブログでとりあげ、思わず「はにかみ高校生」などとご本人の許可も得ずに私が命名してしまった。その彼がこんなに有名になるとは思ってもいなかった。何といっても、高名な岡崎武志さんがブログ『okatakeの日記』(http://d.hatena.ne.jp/okatake/)で、前回(第1回)に続いて今回も彼に触れたことが大きい。あの岡崎さんを魅了し、岡崎さんご本人に「はにかみ高校生」登場のお触れを出させるくらいだから、恐るべき高校生。今回は出店者の多くが熱い視線を送っていた。出店者およびその関係者の多くが彼のことを話題にしていた。

岡崎さんから「ハニカミくんが来たよ。今線路を渡ってそちらに向かっている」と聞いた時から胸が高鳴る。前回は店を離れている時に来たので会えなかったからいっそう。「うちに寄ってくれるだろうか。本を手にとってくれるだろうか」と気が気でない。

古本好きの男性が本を探すとき、足を開いてしゃがみこみ、食い入るように目を走らせ本を手にする(私のような)おっさん風か、ちょっと離れてじっと目を凝らし品定めするというのが多い。しかし、彼は全く違う。しゃがむ時も足を前後にし、一冊一冊を慈しむように手にとって、静かに頁をめくり、戻す時は丁寧に同じ場所に戻す。他のお客さんが軒先を占めていると、じっと横で待っていて割り込んでは来ない。本好きでなくとも、彼の立ち居振る舞いに接したら、決して忘れられないであろう。

当店では、杉森久英『苦悩の旗手太宰治』(河出文庫)を購入。太宰にも興味を持っていると知ることができ嬉しくなる。それにしても、26年も前に発行され、経年変化で黄ばんだ文庫を狙ったように手にして、2分ほど読んでから差し出すのだから参ってしまう。彼が読んでいる間、例によってこちらの心臓ばくばく。2分が1時間近くにも感じられた(笑)。
これで3回続けて購入してもらったが、どこまで続くだろうか。記録を伸ばしたいものだ。
「こんにちは。いつもありがとうございます」と最初に挨拶した以外、敢えて声をかけなかったので、話はできず。それでも大満足。一人のファンとして、これからも温かく見守っていきたいものだ。
岡崎さんのブログで、彼の好きな作家が安岡章太郎と知り、直前になって講談社文芸文庫の2冊を引っ込めてしまったことが悔やまれる。でもまあ、彼なら既に持っている可能性大だな。

5月の「不忍ブックストリート 一箱古本市」で、足立巻一『虹滅記』(朝日文芸文庫)をお買い上げいただいたお客様が来られたので、御礼を述べる。
「今日は少ないですねえ」と言われてしまう。「一箱古本市」に比べ、「みちくさ市」は展示スペースが広いので出品本の数ははるかに多い。つまり、いい本が少ないですねという意味。
手を抜いたわけではないのだが、『虹滅記』などを買われるお客様からしたら、物足りないと感じられるのは無理はないかも。

古本市に参加する回数が増えてくると、自分の読みたい本最優先に加え、普段古本好きな方が足を運ぶ古書店をそれほど回ってはいない私には、厳しいものがある。確かに今回、秋の一箱を意識して出品しなかった本も多かった。「みちくさ市」に比べると「一箱古本市」の方が、まだ今のところコアなお客様が多いように感じられるからだ。それだけではなく、前回とできるだけ違ったラインアップをと意識すると無理が生じるのかもしれぬ。感触としてつかんでいたつもりなのに、今回また他店とかぶってしまう本が多かったような気もする。

まだまだ勉強不足、難しいなあと痛感。しかし、それだけ奥深く、楽しみも多い。問題は自分の知識、情報量、それに蔵書の数と質、時間的な余裕が追いついていけるかだ。精進、精進(汗)。

で、厳しい感想をいただいたお客様には、下條信輔『サブリミナル・マインド』(中公新書)を購入いただく。先般(6月に)書いた記事「中公新書の魅力《中公新書の森 2000点のヴィリジアン》」の中で、私個人の中公新書ベスト10の中には入れなかったが、ベスト20なら入れていた本なので、何故かほっとする。
帰り際、「秋はさらに頑張ります!」と伝えたら、「楽しみにしていますよ!」と言っていただく。うわあ、プレッシャーだ~(笑)。また、この方の素敵な笑顔が見たい。

【追記】お客様から早速ご丁寧なコメントをいただきました。本文中、購入いただいた本のタイトルを誤って記してしまい、ご指摘いただいたので訂正いたしました。恐縮です。本の質には特にご不満はなかったご様子を伺え、ほっといたしました。

いつもの如く、ゆっくり続きを書いていきます。1週間かかるか、何回にわたるかは本人にもわかりません(笑)。

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