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バッハに浸り、古書買いを愉しむ

妻の親友が演奏に参加しているコンサートへ。曲目はすべてバッハ。
カンタータ107番、140番、202番にブランデンブルク協奏曲第4番。独唱者以外はアマチュア。指揮者なしでの演奏はプロでも難しい。しかし、互いの音を聴きながら、合わせ、音楽を築きあげてゆく喜びが聴衆にも伝わってきて、会場全体が和やかな雰囲気に包まれた。
曲によってヴァイオリンの独奏者が替わるのも、違った音色が聴けて楽しい。
140番《目覚めよ、とわれらに呼ばわる物見らの声》、とりわけ4曲目のコラールは有名で、この旋律が聞こえてくると、心が自然と鎮まる。
神への信仰を持たない者にも、なにゆえバッハの音楽はかくも沁みてくるのか、いつも不思議に思う。

4年前の2月、サントリーホールで聴いた《マタイ受難曲》が甦ってくる。ミシェル・コルボ指揮ローザンヌ声楽・器楽アンサンブル。
コンサートで感涙したのは半世紀の生涯において一度しかない。
自身、精神的にどん底の状態ではあった。
しかし、それとは関係なく、打たれた。
魂の奥深くまで揺さぶられ、
気がつくと、目に映る光景が歪み、流れていた。
「神」を観たわけではない。
単なる感動とも違う。
浄化…それも少し違うような。
敢えて言うなら、救いであろうか。
全き肯定による慰撫の中に包まれていた。
バッハの《マタイ受難曲》が、人類の生み出した至宝の音楽と呼ばれることに何の異存もない。

コンサート終了後、新宿御苑大木戸門のあたりから、新宿に向かい、妻と寒風の中を歩く。
昔一度だけ訪れた記憶が残っている古書店が残っているか確かめたくて。
ありました、新宿通り沿いに。「昭友社書店」。
店外にしつらえてある木製の棚を見るやいなや、ツレの存在を忘れたかのごとく足早になり、そのことを指摘される(笑)。
店の外のショウウインドウが面白い。オペラのDVD、春画、鉄道関連の絵本(?)などが混在(笑)。
外の棚から、
■ガルシア・マルケス『青い犬の目』(福武文庫)、ヘッセ『婚約』(新潮文庫)2冊計100円。

店内は雑然としているが、ある意味ワンダーランド。奧の小スペースはアダルト系。しかし、入って左側は人文、思想、芸能、写真他様々なジャンルが収まっている。
サンリオ文庫が紐でしばったまま積み上げてあったり、小さい棚に旺文社絶版文庫。店主の斜め前には荒木経惟特集の棚。天井近くにとりつけられた板の上にCDがごっそり。立川談志の遺言大全集なんかも載っている。
漫画もけっこうあったような。雑誌の上に、ショルティ指揮シカゴ交響楽団のブラームス交響曲全集のLPが無造作に置かれていたのには驚いた。

一人だったら一時間以上滞在していただろう。店内では以下の本を購入。
■辻征夫『ゴーシュの肖像』(書肆山田)
■久坂葉子『幾度目かの最期』(講談社文芸文庫)
■森敦『浄土』(講談社文芸文庫)

妻が珍しく自分で1冊購入。値段がついておらず店主に確認したところ、非売品ということもあってか、『日本寮歌集』(昭和42年10月改訂版)を100円で。題字はなんとあの佐藤栄作。
「一見華やかに見える今の日本の経済発展や、政治、思想のあり方が常に不安定な破綻因子を含み、自己喪失的な論議空轉(転)に終わっているのを見るにつけ、質実剛健、弊衣破帽を顧みず、切磋琢磨に身を削るような自己陶冶の営みを経た若者の輩出が若(も)し続いていたら、と思うのは私だけであろうか」と、旧制高校制度廃止を嘆く序文がいい。

自宅最寄り駅で妻と別れ、一人ブックオフへ。

■『西脇順三郎全集Ⅰ』『西脇順三郎全集Ⅱ』(筑摩書房) 各100円
■平井一麥『六十一歳の大学生、父 野口冨士男の遺した一万枚の日記に挑む』(文春新書)
100円
■ 開高健『人とこの世界』(ちくま文庫)100円
 表紙上部に痛みはあるが、どう考えたって店員のミス。「これ、おかしいでしょう」と指摘するほど寛容ではない。黙ってありがたく頂く。
■大曲駒村『東京灰燼記 関東大震災』(中公文庫・限定復刻)100円
■鈴木治雄『昭和という時代(対談集)』(中公文庫)上・下 2冊200円
■グレッグ・イーガン『順列都市』(ハヤカワ文庫SF)上・下 2冊200円

帰宅後、コルボの《マタイ受難曲》をCDで聴く。(全曲通してではないが)
いい休日だった。

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