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「第9回 秋も一箱古本市」エピソード(4)最終回

ようやくここまで辿り着いたという感じです。それでは最終回、知人・友人の方篇とご報告。

この前の助っ人集会で初めてお話した<トンブリン>さんにお越しいただく。一部のファンが鶴首して復刊を待っていたスタージョン『一角獣 多角獣』。復刊直後になんと3刷。これを引き取っていただく。赤い装丁も、もしかしたら気に入っていただけたかな。

<書肆紅屋>さんと共に、ナンダロウさんの『一箱古本市のあるき方』(光文社新書・11月17日発行予定)の資料作成を手伝われた退屈男さんがお見えになる。お客様が何人かいらっしゃったため、お話しできず残念。

古本市では何度も購入いただいているNEGIさんが午後になってご来店。一箱、みちくさ両方の古本市で頼もしいサポートをされている姿をよくお見かけする。ちなみにNEGIさんは「一箱古本市」において過去に「谷根千賞」、「古書ほうろう賞」を受賞されている方。
今回、当店の数少ない目玉というか強引セット、木山捷平『酔いざめ日記』『耳学問・尋三の春他 』をお求めいただく。

NEGIさん滞在時、「古書ほうろう」の宮地さんがお見えになる。ほうろうさんは憧れの古書店。
村上春樹強引セットをご覧になり、「とみきち屋さん、今日はこれが出るか出ないかだよねえ(笑)」と宮地さん。何というプレッシャー(汗)。もうその時点でこれはあかんと薄々感じていたから余計に。予想通り、持ち帰りとなりました(笑)。ミカコさんとお話できなかったのは残念です。

詩の朗読、歌、ブログ、ポエトリーカフェ(今月末から)など様々な形で詩の素晴らしさを伝えているPippoさんと、リコシェの豆子さんをよみせ通りで見かける。「怪しいお二人ですね(笑)」と声をかけたら驚かれた。そのままエスコートならぬ客引きという風情でお二人をゲントにお連れする。お互い「相手の話なんか聞いちゃいないと」と言っているけれど、ほんとに仲がいいんだなあとほっこり。豆子さん、Pippoさんのマネージャーとして仙台まで行くんだから。
Pippoさんには大森荘蔵『流れとよどみ』(産業図書)を購入いただく。大森荘蔵は『時は流れず』(青土社)が一番好きな本と聞き、新しい一面を見せてもらったように思える。

u-senさんがお仕事前にスーツ姿でご来店。一瞬「?」。しかし、違和感がない。当たり前か。
宇佐美承『池袋モンパルナス』(集英社文庫)を購入いただく。u-senさんがゲントから去った途端、一人の女性に声をかけられる。
「もしかして、今の方があの有名なu-senさんですか?」
ブログと実際のイメージが異なっているように感じられ「あの」と言われたのかなと思いつつ、「そうですよ」とお答えする。他の会場ではどうだったのだろう。多くの方がu-senさんをご存じのはず。ゆっくり本を見るのは無理だったのではないかな。

<オムライス堂>のNさんがお見えになったので、
「調子はどうです。大丈夫ですか?」といきなり声をかけてしまう。
「どうしてですかねえ。他でもそう声をかけられるんですよ」
「そりゃそうでしょう。ブログを読めば」
そこにくちびるごうさんが突然現れ、
「大丈夫なの?」
「ほら、みんなそう思っているでしょう!」と私。

それからしばしNさんとお話。ハレとケの落差、モノローグとダイアローグの違いなどをベースに(何のことやら)勝手に私が喋りまくり、「どこか似ているところありますよね」と訊くと、Nさん苦笑。
「そうだよなあ、ありがたくもないよなあ」と反省(笑)

佐伯一麦『芥川賞を取らなかった名作たち』(朝日新書)を購入いただく。新刊で買われるつもりだったとのこと。喜んでもらえよかった。最近ようやく2冊目を入手できたので、出品。意外に思われるかもしれませんが、佐伯一麦は『木を接ぐ』で海燕新人文学賞受賞の頃から注目しており、けっこう好きで読んできているのです。『ア・ルース・ボーイ』は残っていても、『一輪』『木の一族』(いずれも新潮文庫)が品切れなんて…。

仙台文学館での連続講座がもとになっている朝日新書はお薦めです。参加者の声に答える著者の真摯な姿勢、作品に対する愛情が伝わってきます。
エピソード(3)で触れた、洲之内徹『『棗の木の下』。実は佐伯一麦が取り上げた12作品の中のひとつなので飛びついてしまいました。これで後は、『おじいさんの綴方 河骨 立冬』(講談社文芸文庫)が入手できれば、全作品手元に揃うのだが、なかなか出会えない。
他には太宰、北條民雄、木山捷平、小山清、小沼丹、山川方夫、吉村昭、萩原葉子、森内俊雄、島田雅彦、干刈あがたの作品に触れています。人によっては、(私自身も)名作と呼べるかとなると「?」がつくものもあると思いますが、著者の解説には目を引くものがあります。

さて、先ほどちらっと登場したくちびるごうさん。「みちくさ市」では渋い、良質の本を廉価で出されています。「本が好き!!」が半端ではなく、オーラが出ている方。今回<とみきち屋>の強力な助っ人さんになっていただきました。

まず、ご本人に野呂邦暢・長谷川修『往復書簡集』をご購入いただく。
その後私の不在時に再度お越しいただき、ご来店されたお知り合いの方に、野呂邦暢『愛についてのデッサン』(角川書店)を強力にプッシュしていただく。
この作品いいんだよ。しかも安い。この版で読みたかったなあという感じで。(みすず書房版でお持ちのご様子)。さらに<古書、雰囲気。>さんもお見えになり、みすず版でもこの値段では手に入れくいとバックアップしていただく。その甲斐あって、お知り合いの女性に引き取っていただくことになりました。
その間、店主・とみきちは何も言えず黙したまま。そして最後に、目の合ったお客様に「強烈な営業でしたねえ」。まるで他人事のように(笑)。

<古書、雰囲気。>さんには、小山清『落ち穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)を。くちびるごうさんには太田治子『斜陽日記』ほか2冊を追加で購入いただく。ありがとうございました!!

店主・とみきちの友人ぶーやんさん。その博識ぶり、行動力はまさに驚異。たとえば伊藤若冲。とみきちは東京での展示を観に行くのが精一杯。ぶーやんさんは、遠く四国(香川)金刀比羅宮まで飛び「書院の美」展へ。「動植綵絵」33幅が揃うと聞くと京都・相国寺へ。室生犀星が気になれば、金沢へ赴いてしまうのです。
昨年小布施に行かれたので、お隣の<まちとしょテラソ>さんとも話が弾んでいたご様子。さらにさらに。ナンダロウ(南陀楼綾繁)さん著『山からお宝 本を積まずにはいられない人のために』(けものみち文庫)に寄稿されているのです。それでナンダロウさんに紹介。面識はなかったのに編集の都合で写真を掲載できなかったことを憶えているナンダロウさん、やはりすごい。

徳富蘇峰の孫にピアノを習ったことがあるとのこと。それもあってか、徳富蘇峰『読書法』(講談社学術文庫)など3冊購入いただく。

店主・とみきちの仕事上の師匠Nさん。ロシア文学科出身ということもあって、ナボコフの本などは全て所有されているご様子。ドストエフスキーにもめっぽうお詳しい。亀山郁夫訳の『カラマーゾフの兄弟』が話題になった時には、原卓也訳との違いなども聞かせていただいた。店主・とみきちは亀山郁夫訳を読了したが、私はとりあえずどんなものかと「プロとコントラ」のみ読んで、ダメだあと挫折。原卓也訳、池田健太郎訳、米川正夫訳と読んできたが、亀山訳はどうもドストエフスキーを読んでいるという気がしない。頭が古いのか、かたいのか(笑) 亀山の評論はけっこう面白く読んでいるのだけれど。
Nさんには、「文章読本」というタイトルのついた本に目がないということで、向井敏『文章読本』(文春文庫)を購入いただく。

昨秋、今春とお目にかかれた岡崎武志さんとお会いできなかったのは残念です。

古本市で黒岩比佐子さんの姿を拝見できないと、ジクソーパズルの大事なピースを欠くような感じで淋しい。体調を崩されたご様子。お大事になさってください。

9月のみちくさ市でお隣に出店された<モノンクル・ブックス>さん。10月9日が「BLIND BOOKS」さんの開店日だったので、翌日一箱訪問は厳しいですよね。お会いできず残念でした。お店の方には、とみきちと二人で遊びに行かせていただきますね。
「BLIND BOOKS」店主さんの日記はこちら→  http://blog.livedoor.jp/chobin3/

多くの方々のお力添えをいただき、今回も楽しい一日を過ごさせていただきました。
心から御礼申し上げます。ありがとうございました。

〔 とみきち屋の結果 〕 下線付きが今回の結果です。

第9回 秋も一箱古本市  冊数82冊 平均単価474円

第8回 一箱古本市(春)   冊数85冊 平均単価410円
第7回 秋も一箱古本市  冊数85冊 平均単価548円

店のスタイルを変えないので、あまり大きな変動はありません。
今回冊数の割に平均単価が上がったのは、高めの本を多く引き取っていただけたからだと思います。また、リピーターの方、知り合いの方にお買い上げいただいていることが支えになっていると強く感じております。

次回<とみきち屋>の古本市への出店は、ひょっとしたら来春以降になるかもしれません。
年内出店できるか否かに関しては、1週間以内にご報告させていただけるのではないかと思っております。

店主・とみきち http://yomuyomu.tea-nifty.com/dokushononiwa/ 
番頭・風太郎

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「第9回 秋も一箱古本市」エピソード(3)

この一年、本と古本市を介して、多く方々と出会えた。一年に一回しか会えなくても、数分しか話せる時間がなくても、どこかしら通じるものがあって、会えるのが楽しみと思えるのは、やはり「本が好き」という気持ちが根底にあるからだろう。こういう関係は大切にしていきたいと思う。
それでは、出店者篇。

時間的な余裕がなく、今回は一番近い【コシヅカハム】にしか行けなかった。
引っ越し直後でありながら、遠く福島から出店された<もす文庫>のmasubonさんとご主人に会えてよかった。昨秋お隣同士の出店だったことをきっかけに親しくさせていただいている。一足先にうかがっていたとみきちが、素敵な缶バッジを頂いていたので私は本を頂く。masubonさんには当店にて小川洋子の新書をご購入いただく。いつもありがとうございます。来春またお会いできたら嬉しい。

<あり小屋>さん、今回は春よりもやや強気の値付けをされたとのこと。そうは言っても、木山捷平の品切れ講談社文芸文庫など、どう考えても良心的で安価。伺ったのが3時を過ぎていたので、箱の中に見つけショック。不況の影響もあって、お客様の財布の紐も年々かたくなってきているのだろうか…。
でも、やはり個人的には<あり小屋>さんの姿勢が好きだ。勝手な思い込みと言われようが、<あり小屋>さんが『白兎・苦いお茶・無門庵』を100円、200円とかで出されていたら、寂しい。
田中小実昌ほか文庫本を3冊いただく。あり小屋さんには宇野功芳『名指揮者ワルターの名盤駄盤』(講談社+α文庫)を当店から購入いただいた。ちょっと意外でした。

<ドンベーブックス>さん。相変わらずいい本を出されているなあとため息。
ついに見つけました。井上究一郎『ガリマールの家』の単行本!文庫本は持っているが、単行本は目にするのも初めて。申し訳ないと思える値段でいただく。他には田中光二『オリンポスの黄昏』(集英社文庫)。以前人に差し上げたので、1冊しか手元に残っておらず嬉しい。田中光二はあの『オリンポスの果実』の作者で、太宰を追いかけるように自死した田中英光の息子。唯一父のことを書いた小説。

<やまがら姉弟文庫>のYさん。春に私たちが映画保存協会で出店した際にお世話になり、先日の助っ人集会後の飲み会では楽しい話をたくさんさせていただいた。
『en-taxi』 2005年10月号をいただく。何より嬉しいのが、洲之内徹の復刻『棗の木の下/砂』が特別付録としてついていたこと。
『en-taxi』がかつて今よりも小さい判型で、かつ付録つきで売られていたことなど知らなかった。<とみきち屋>がいかに偏っているか暴露しているようなものですね(笑)

私の好きなお店<つん堂>さん。ご主人は外見からは人気ロックシンガーではないかと見まごう感じの方。ところが黒いケースにきちんと並べられている本の渋いこと。多くが品切れ、絶版本。今回は野坂昭如『一九四五・夏・神戸』(中公文庫)をいただく。

初めてお目にかかった<静温堂>さん。屋号にぴったりの雰囲気、品揃え。ここも私好みの本が多く困ってしまった。福永武彦の文庫2冊いただく。個人的な実感として、福永の本は品切れでも思うように引き取ってはもらえない。だから、持ってはいても欲しくなる。

店主・とみきちがバッジを購入した<だいこん洞>さん。「古書ほうろう賞」受賞おめでとうございます。戻らなければならない時間になっていたため、ゆっくり見れず残念。

昨秋以来懇意にさせていただき、貴重な情報をたくさんいただいている<四谷書房>さん出店の【ライオンズガーデン谷中三崎坂】には行けなかった。なのに、こちらにお越しいただき、中平卓馬『なぜ、植物図鑑か』(ちくま学芸文庫)を購入いただく。ありがとうございました。

古本市終了後に書かれるレポートが楽しい<古本 寝床や>さんにも会えず。
同じくライオンズガーデンに出店されていた<本棚やどかり>さん。「オヨヨ書林賞」受賞おめでとうございます。私の不在時に何人かでご来店いただき、牧村健一郎『獅子文六の二つの昭和』(新潮選書)、武田百合子『ことばの食卓』(ちくま文庫)をお買い上げいただきました。ありがとうございます。何かの機会にご挨拶に伺いたいと思っています。

【C.A.G.+Negla】にも行けず。<あいうの本棚>さんに会えないは寂しい限り。今回も写真で拝見すると引き出しが目を惹く素敵なレイアウト。大雑把なうちの構えとは全く対照的なので憧れます。
ブログへのコメントありがとうございました。いつも心が温かくなります。

素敵なご夫妻で出店されている<たけうま書房>さん。私の不在時にお見えになられたみたいでお話しできず残念。店主日記の中で、一番印象に残った一箱として<phtogramme>さんを挙げていらっしゃいます。同じゲントに出店していたので、そうだろうなあと思えます。

集会でお話しさせていただいた<霧のタンス本>のKさんの箱も拝見したかったのに…。同じく<野ぎく堂>さんにも会えなかった。開催当日伺いますねと言いながら叶わず、恐縮の至り。一箱古本市がどんな様子かを、好き勝手に話してしまっただけに。またお目にかかりたいと思っています。

当然の如く、一番遠くの【宗善寺】には行けず。なのに、<駄々猫舎>どんぐりと駄々猫>の屋号で出店されていた駄々猫さんにはわざわざお越しいただく。しかも息を切らせて。その姿に感激。お父様が哲学の先生でいらしゃると聞き、9月の「みちくさ市」の際、なぜシオランなのか秘密が判りました。鶴見俊輔の本ということで『鶴見俊輔書評集成3』(みすず書房)を購入いただく。加えて坪内祐三『考える人』(新潮文庫)も。実は、鶴見俊輔のこの本、最後まで残っていたらナンダロウさんに引き取ってもらえたであろう本。不思議な感じがする。「みちくさ市」ではご主人と二人合わせて10冊も購入いただいたこともあり、足を向けて寝られません(笑)

駄々猫さんがブログで今回の「一箱古本市」の詳細なレポートを書かれています。一箱初参加とは思えない充実ぶり。3回目の参加になる私も参考にさせてもらいました。またどこかでお会いできますよね。楽しみにしています。ご主人にも!

東京に限らず、全国の一箱古本市にこの人あり!と言っても過言ではない<モンガ堂>さん。ご挨拶に伺えず、すみません。また、リンク集の作成ありがとうございます。このリンク集のおかげで、当日の様々な様子を知ることができます。
リンク集はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/mongabook/20091011

<嫌気箱>の塩山さんにもご挨拶できず。仲正昌樹の(アーレントについて書いた)新書をめぐってある方と交わされた言葉が素敵です。(塩山さんご自身のブログに書かれていたものではありませんのでご了承ください)

<カリプソ文庫>さんの箱はぜひぜひ覗いてみたかったのに…。残念でならない。先日いろいろお話しさせていただき、(私自身共感を覚える)こだわりをお持ちの方と思えたのでいっそう。
エロスをテーマに品揃えされ「青秋部賞」を受賞された<junglebooks>さんを見逃したのも残念。様々なブログやコメントを拝見し、素敵なお二人を想像する。きっと「みちくさ市」ほか、これからもどこかで出店されるだろうから、その折りにはお話しさせていただきたい。

エピソード(4)知人・友人篇。現在執筆中です。

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「第9回 秋も一箱古本市」エピソード(2)

古本市が終わる度、長々書き綴っているものだと自分でも思います。一箱3回、みちくさ4回、これで7回目。飽きもせず、懲りもせず。
少しでも強く記憶に留めておきたいから-今のところそれ以外の理由が思いつきません。
言葉によるアルバム。写真は頭の中といったところでしょうか。

それでは、一般のお客様とのエピソードの続きから。

■利倉隆『天使の美術の物語』(美術出版社) 500円

開店時箱に入りきらず後から補充した本。気がつくと、ひとりの女性が手にされていました。ゆっくりとページを括る表情の何と穏やかなこと。ずっと見ていたい気持ちを抑え、視線をそらしてお待ちする。「これ、ください」「ありがとうございます」。交わした言葉はこれだけ。お声をかけたら、かえって何か大切なものを壊してしまいそうな気がして。

印象に残る店にしたい。一人でも多くの方に喜んでいただきたい。そんな思いで一日限りの<とみきち屋>を出しています。名前を憶えていただけるのはこのうえなく嬉しいことではありますが、憶えていただけなくてもいいかなと思えることもあります。このお客様が何かの折り、これは谷中の古本市で手に入れた本と思い出していただけたら、それも印象に残ったことに変わりはないのですから。

■佐川光晴『牛を屠る』(解放出版社) 300円
■洲之内徹『気まぐれ美術館』(新潮文庫) 700円

年輩の男性の方がご購入。残念ながら私の不在時だったため、お話しすることはかないませんでした。
洲之内徹が旅立っていくのは予想がつきました。文庫版の人気は安定しているので。気になっていたのは『牛を屠る』(解放出版社)の方。

屠畜或いは人が他の動物(生物)を食することに関しては、1998年鎌田慧『ドキュメント屠場』(岩波新書)、2004年森達也『いのちの食べ方』 (理論社)、2007年 内澤旬子の労作『世界屠畜紀行』(解放出版社)、2008年妻夫木聡主演による映画『ブタがいた教室』、2009年(春)ドキュメンタリー映画『いのちの食べ方』(※森達也の本とは全く別物)など、話題となったものが多い。
日本における屠畜は差別の問題を避けて通れない面もあり、焦点のあて方が難しい。そんな中、内澤旬子、佐川光晴の著作は屠畜・屠殺そのもの現場を克明に描くことによって、ひとつの職業としての尊厳さを唱えている。遠ざけられ、隠されているがゆえに、差別意識を生じさせるのではないかという考え方が(微妙な違いこそあれ)両者の根底にあるように思える。

動物は、エサをやるだけじゃなく、かわいがって話しかけて飼えば、犬だけじゃなく、豚だって牛だって、飼い主の呼びかけに喜んだりするんじゃないだろうか。つまり、家畜として(情けをかけ過ぎずに)飼えば家畜となって、使役したり食べたり、皮を取ったりするのに適した存在となり、ペットとして愛情をかければ、どんな動物でも感情のある相棒となる。

これからも動物をときにかわいそうと思いつつ、でも自分で擬人化したイメージに流されず、責任をもって丁寧に食べていきたい。

『世界屠畜紀行』の中でこう述べていた内澤氏は、その後、自ら豚を飼育し、食している。その様子がブログに書かれています。(→こちら)

一方、佐川氏は1990年から2001年まで屠場で働いていた経験をもとにあくまで「屠殺」という言い方に拘る。

「死」には「冷たい」というイメージがつきまとう。しかし、牛も豚もどこまでも熱い生き物である。ことに屠殺されてゆく牛と豚は、生きているときの温かさとは桁違いの「熱さ」を放出する。(略)差別・偏見を助長しかねない「殺」の文字を重ねなければ、われわれが触れている「熱さ」に拮抗できないと考えていたのではないだろうか。(略)牛や豚を殺しているのではないと言い張りながら、「殺」を容認するのは矛盾だが、われわれは「屠殺」という二文字の中に作業場でのなにもかもを投げ込んでいた。

「命をいただく」ことを考える上で、多くのヒントを与えてくれる2冊です。

ご存じの方も多いと思いますが、不忍ブックストリートMAPのイラストは内澤さんが描いていらっしゃいます。

■仲正昌樹『デリダの遺言』(双風舎)
■中上健次・村上龍『ジャズと爆弾』(角川文庫) ■ランボオ『ランボオの手紙』(角川文庫)

カップルでご来店いただき、30代と思われる男性にご購入いただく。ああ~~。先方が嫌でなければ、いろいろお話ししたいという選書。この時も不在。わずか30分弱店を離れていた時間帯に、応対できなかったお客様の多かったこと(泣)

■内田樹『ためらいの倫理学』(角川文庫)
若い女性のお客様。みちくさ市でもそうだったのですが、内田本は女性の方の購入が多い。
「内田樹の本は読まなくてもいいんだけどなあ」
「ブログとか講演をベースにした著作が多いですものね」と店主・とみきち。
「そうそう。ブログと同じような感じ」
でも、本を元には返されないお客様。そこで、とみきち。

「『ため倫』!」
「うん、『ため倫』!安いからもらっておこうかな」とお買い上げいただく。

この流れ、私番頭・風太郎には全くわかりません(笑)。でもご購入ありがとうございます!!
デビュー作ということもあって、文章がややかたく読み辛いかもしれませんが、内田樹のエッセンスは詰まっているので、読んで損はないと思います。と、弁解。

■佐野洋子『シズ子さん』(新潮社)

ご夫妻でご来店。野呂邦暢ほか渋めの本を手にとられては、お二人で会話を交わされる。その内容からしてかなり本に詳しく、当店が出している本のめぼしいものは既にお読みか、お持ちのご様子。このまま他に移られるのかなと思った時、二段重ねにしてあった下段左端から手に取られたのが『シズ子さん』。
「なんか、この値段では申し訳ない感じよね」と奥様。
「はい、確かに。ただ、佐野洋子の本は、当店の一押しなので、繰り返し同じ本であっても出品させていただいております。一人でも多くの方に読んでもらいたいという気持ちからこの値段にしております」とお話しする。

実はこの本、その直前、遠く宗善寺から素敵な和服姿でわざわざお越しいただいた<どすこいフェスティバル>さんのTさんがお気づきにならなかったもの。「佐野洋子さんの本があったのね」という言葉に恐縮。2段にびっしり重ね過ぎたため、和服をおめしになられていたTさんには見つけにくかったのだと思います。ごめんなさい。次回からはもっと本を探しやすいよう工夫いたします。
<どすこいフェスティバル>さんからは、Kさん、ご友人のYさんもご来店。Kさんにはカナファーニー『ハイファに戻って 太陽の男』もご購入いただき、ありがとうございます。
「一箱」「みちくさ市」何度もお越しいただき、親しくさせていただいているのに、こちらからは伺えずすみませんでした。
売上げ点数111点、ぶっちぎりのトップ。凄い!のひと言です。いい本を、お客様がお求めやすい値段で数多く提供されたのでしょうね。伺っていたら10冊くらい頂いてしまったかもしれません(笑)。

中平卓馬の本、写真集ほか3冊とも引き取っていただきました。手に取る方が多く、人気のあることを実感。追悼の意を込めて1冊のみ出した庄野潤三。『文学交友録』(新潮文庫)500円も思った通り行き先が決まりました。マルグリット・デュラス『ヒロシマ私の恋人』(ちくま文庫)600円は30代と思われる女性の元へ。アラン・レネ監督による映画『二十四時間の情事(ヒロシマ・モナムール)』はご覧になられたものの、原作本は未読。文庫の古書なので、値段的に「少し高いかな」と迷われたようですが、品切れ本であることをご説明すると、次回どこで出会えるかわらないからと、引き取っていただけました。

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出店場所アートスペースゲントさんを担当していただいたナンダロウ(南陀楼綾繁)さんには、初めて当店からお買い上げいただく。当店がウェイトを重くして揃えている、文学、思想本もナンダロウさんにとっては月並みであろうし、かといってそそるような珍しいもの、面白いものもなし。諦めていただけに嬉しいです。購入いただいたのは雑誌『東京人』でしたが、実は『鶴見俊輔 書評集成3』を、残っていたら購入いただけたことを伺いました。この本、(次回書かせていただく)駄々猫さんに引き取っていただき、箱から消えておりました。
ナンダロウさんからは、『本が好き!vol.41』(光文社)を頂戴する。ナンダロウさんの記事「本町通り(ブックストリート)を歩こう」<最終回>が掲載されています。

右隣には、<ゆず虎嘯>さんが出店されていました。お名前は存じ上げていたものの、お話させていただくのは初めて。昔よく通った、今でもたまに訪れる素敵な街、国立(くにたち)にお店を出されています。旭通り沿い。あの有名な「谷川書店」さんのすぐ近くとのこと。

左隣には、信州小布施から参加された<まちとしょテラソ>さん。小布施町立図書館長・花井さんとは楽しくいろいろお話しさせていただきました。9月に催された「まちとしょテラソ市 <一箱古本市>」、来春4月17日・18日と実施されるみたいですね。

同じくアートスペースゲントさんには<古書 北方人>さんもご出店。みちくさ市などでは、毎回のようにいい本を安くいただいております。私などが全く知らない、しかし見る人が見ればすごい本が並んでいるのは、お客様の嬉しそうな顔、驚きの声を聞けばわかります。
今回初めて素敵なお嬢様にもお会いできて、嬉しかったです。
<photogramme>さん、<books195>さん、<orz文庫>さんとはほとんどお話しできず、残念でした。またどこかでご一緒させていただくこともあろうかと思います。その折りにはよろしくお願いいたします。

……………エピソード(3)に続く。

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「第9回 秋も一箱古本市」 エピソード(1)

にわか雨による一時間近い中断にもかかわらず、大勢の方々に一箱の会場、そして<とみきち屋>に足をお運びいただき、ありがとうございました。
また、不忍ブックストリート青秋部のお二人、実行委員ほかスタッフの方々、助っ人の方々。場所を提供くださった大家さん。後援いただいた古書ほうろうさん往来堂書店さんオヨヨ書林さんにも、心から御礼申し上げます。

スリップを見ながら、この本はどなたに引き取っていただいたか、その時どんなご様子だったかを思い起こしています。
今回はスペースの関係もあり、店主・とみきちと二人一緒にお客様とお話しさせたいただくことが思うようにできませんでした。従ってお客様のやや後ろから見守ることも多く、私が不在だった30分弱の時間帯も含め店主・とみきちからのヒアリングの時間も増えています。

それでは、恒例のエピソード集始めます。いつもどおり、一般のお客さまとのお話から。

出店場所「アートスペースゲント」さんでは、ナンダロウ(南陀楼綾繁)さん、助っ人のIさん(早番)、青秋部石井さんの教え子でいらっしゃる大学生のお二人(遅番)にお世話になりました。箱の後ろ側にはすでに移動済みの植木が並んでおり、一人が坐るとその後ろは人が通れず。お隣との間が40㎝ほどなので、店主・とみきちとの連携作業が困難と判断。番頭の私がお客様の後ろからフォローする方針を固める。

11時開店前に早くもお客様の姿が。開店の合図と共に一人の男性がお見えになる。いつも早い時間に来られ、何度かお顔は拝見している方。何度古本市に参加しても、最初のお客様にご来店いただく際には緊張します。その日がどんな流れになりそうか、そこである程度決まっていまいそうに思えるからです。
ひととおり箱をご覧になられ、何冊か手にとられた後一冊お求めいただき、ほっとしました。

■内堀弘『ボン書店の幻』(ちくま文庫)350円

自分の蔵書から手放せる本ではありません。たまたま古書店で見かけ2冊目を入手できたので出品。「この値段なら」と満足いただけたご様子。ありがとうございます。
一箱古本市翌日、店主・とみきちのブログ「とみきち読書日記」に一人のお客様からコメントを頂戴しました。

「毎度楽しみにさせていただいております。お気に入りの店主さんを先に回ろうと一番に伺いました。欲しい本が5冊はあったのですが1冊で我慢してしまいました。ごめんなさい。その後すぐ雨で、大変でしたね。午後は青空でよかったです。次回も楽しみにしております。」

私ども<とみきち屋>にとって、かようなコメントをお客様からいただけることは、ほんとうに嬉しいことです。しかも、雨のことまでお気遣いいただけたなんて。
雨粒が落ちてきたのは開催後20分も経過していなかったので、コメントの内容と私たちの記憶、スリップへの記載を考え合わせると、コメントをお寄せくださったのは、まずまちがいなくこの最初のお客様だった思います。(万が一間違っていたら、すみません)。来春も参加させていただくつもりでおりますので、ぜひお立ち寄りください。今度はゆっくりお話しさせていただければと思っております。

二人目のお客様に、■尾形仂『芭蕉・蕪村』(岩波現代文庫)■国枝史郎『神州纐纈城』(河出文庫)をご購入いただいた直後雨が降り始め、中断に入る。

一瞬今日は終わったか…と思ったが、東京は地域によってにわか雨という予報を朝方耳にしていたので、気を取り直す。ナンダロウさんがいてくれたのも心強かった。

そのナンダロウさんに、普段私たちが参考にしている「東京アメッシュ」を携帯で見てもらう。PCで見れる時ほどクリアではないが、雨は文京区から台東区にかけての一部、しかも局地的にしか降っていない。「回復する!」という期待が膨らむ。空を見渡せる場所に移動し見やると、遠くは雲がさけ、青空もちらっと見える。

本を屋内に入れさせていただき、一旦解散。再開時には各人の携帯に連絡をいただく、携帯を持っていない、バッテリー切れの方は助っ人Iさんに連絡を入れるということにして。
とみきちと二人、早めの昼食をとりに「谷中銀座」へ。85歳のおじいちゃまがやっているおそば屋さんへ。当日の人力車による結婚披露のこと、谷中のことなどいろいろ教えていただき、谷中情緒を思わぬ形で味わえた。食後「よみせ通り」をぶらぶら歩いていたら携帯が鳴り、再開のお知らせ。12時をまわっていたが、続けられることが嬉しくてならない。残り4時間弱楽しもうと、ゲントさんに戻る。

雨による中断でお客様にどれほど来ていただけるか、一抹の不安はあったものの、再開後途切れることなく大勢のお客様がお見えになる。「一箱」の認知度の高さ、谷根千という街の魅力、底力を実感する。もちろん、多くの顔見知りの方々にも午後から続々とご来店いただき、励まされる。心強くもあり、楽しい。

■深沢七郎『人類滅亡的人生案内』(河出書房新社)
■古井由吉『円陣を組む女たち』(中公文庫) 『櫛の火』(新潮文庫)
■柄谷行人・中上健次『小林秀雄をこえて』(河出書房新社)
■長谷川宏『ヘーゲル『精神現象学』入門』(講談社選書メチエ) 計5冊

若い男性の方に、こういう選書で引き取っていただけるのは嬉しいです。「幅広くお読みになられるのですね」と声をかけさせていただくと、「そうでもないです」と微笑まれる。それから少しお話しさせていただく。深沢七郎はお好きな作家で、古井由吉『円陣を組む女たち』は探されていたとのこと。また、お会いしたい。

■ナボコフ『ナボコフ全短篇集〈1〉』(作品社) 
■バフチン『小説の言葉』(平凡社ライブラリー)
■鶴見俊輔『夢野久作と埴谷雄高』(深夜叢書社)
■内堀弘『石神井書林日録』(晶文社)
■林芙美子『林芙美子紀行集 下駄で歩いた巴里』(岩波文庫) ほかに文庫3冊
計8冊 5,000円

雨天中断後間もなく、リュックを背負われた男性がご来店。今回、当店で冊数、金額ともに一番のお買い上げいただきました。「安いよねえ。もっともっとほしいんだけれど」と言っていただく。そんなに安くはしていないのに…。ありがたいことです。
「ナボコフは〈2〉も出品できればよかったのですが」とお声をかけると、「いやあ、〈1〉だけでも、この値段なら十分」と。またのお越しをお待ちしております。

先に紹介させていただいた若い男性の方もそうですが、当店に初めてお越しいただいたにもかかわらず、まとめて購入くださる方が毎回のようにいらっしゃるのが驚きであり、嬉しいことでもあります。

■五味康祐『いい音いい音楽』(読売新聞社) 800円

一人のお客様が箱の前にしゃがんで本を選んでいらっしゃる。そのため、他のお客様が箱の前までは近寄れなません。前2回とは違い、ほぼ一日中このような状態だったので、申し訳ないなと思う。もちろん、先に見ていただいているお客様が迷惑などと言うことでは決してありません。二人のお客様が同時にご覧になれるスペースがなかったのです。

私の左後方から人影が。当店の箱をやや離れたところからご覧になり、いきなり「えっ?おっ、あったよ!」。お客様の目線が何をとらえたのか何とはなしに感じられ、思わず期待を抱いてしまいました。「今手にしておかなければ」という感じで、他のお客様の邪魔にならないよう、1冊の本に手を伸ばされました。
ビンゴ!! いてもたってもいられず、箱の前にいらっしゃるお客様に「横をちょっと失礼します」と声をおかけして、私は店主・とみきちと場所を交替。

箱の前が空いたタイミングを逃さず、「五味さん、お探しでしたか?」とお声をかける。「そう、探していたんだよ」と満面の笑み。その表情から、どんな本かご存じなのはわかりました。こうなると、中身をくどくど説明するのはかえって野暮というもの。

お買い上げいただく際、「巻末にある、娘さんの父への追悼文(「父と音楽」)が素晴らしいです」とひと言だけ。「そうですか。楽しみです」とお客様。

脱線しますが、一部だけ紹介させてください。自らピアノを弾き、これこそ理想と思える音に関して意見が一致すると、うれしそうな父と握手して喜ぶ娘の言葉です。(文中タンノイオートグラフとあるのは、今や伝説と化した有名な英国製スピーカーのこと)

母は音楽を聴いているときの父が一番好きだという。父がひとり静かにタンノイオートグラフの前に坐り、音楽を聴いているときの表情はとても厳しい。まだ二十年余りしか生きていない私に、父の音楽への姿勢を語りうるとは思っていないが、瞭(あき)らかに、父は、流れる音楽のなかに神を観ていた。バッハ、モーツァルトをとおして神の聲(こえ)をきいていた。それは父にとって、もっとも敬虔な時間であったと思う。だから、私は、音楽と対峙している父の真摯な横顔をみるたびに、どうしても声をかけられなかった。(略)父亡き今、最高の鎮魂は音楽を鳴らすこと、それはわかっている。しかし、あまりに悲惨でなかなかかけられなかった。(略)できることならば、毎晩のように、父の愛した音楽を聴かせてあげたい。しかし、私の手ではタンノイは鳴ってくれない。あの素晴らしい澄明な、ふっくらした気品にみちた音をきかせてはくれない。父の死とともに、殉死したのだ。

■森山大道『犬の記憶』『犬の記憶終章』(河出文庫)
■川村湊ほか『戦争文学を読む』(朝日文庫)
■熊野純彦 編『現代哲学の名著』(中公新書)

以前「みちくさ市」で閉店間際ということもあり、けっこう値引きさせていただき、加藤典洋『村上春樹のイエローページ1・2』ほか3冊をご購入いただいたおじいちゃまにご来店いただく!昔から本はよく読まれるとおっしゃっていました。その時古本市っていいねえという感想もいただいたのですが、一箱に来ていただけるとは感激。しかし、私の不在時(泣)。とみきちが「以前もお買い上げいただきましたので」と、100円分だけ気持ちサービス。それでも喜んでいただけたご様子。きっと店主さんとのやりとりをと楽しまれていらしゃるのでしょう。

■荒川洋治『文学が好き』(旬報社)
■鮎川信夫・大岡信編『戦後代表詩選』(詩の森文庫)ほか3冊

<とみきち屋>常連のお客様のお一人。お名前も伺えたので今回からYさんと呼ばせていただきます。9月の「みちくさ市」で荒川洋治『夜のある町で』(みすず書房)を引き取っていただいたのですが、今回はまず荒川洋治の本を手にされました。昨秋以来何冊も当店から本を購入していただいてますが、図書館で読める本はお借りになって、読後購入するかどうかをじっくり考えられる方。自らの足でこれはと思える本を探される方なのです。
出品していた辻邦生・水村美苗『手紙、栞を添えて』(単行本)をご覧になり、「最近ようやく文庫本のほうを手に入れたんですよ、格安で」とYさん。本に対する姿勢と愛情の深さを感じます。そのような方に対して番頭・風太郎(私です)はあろうことか、押し売りに入る(笑)。

「きっとYさんをお待ちしていたんですよ~、この本。持って帰ってもらいたいって(笑)」
「そうですか?まいったなあ。う~~ん」といつもの素敵な笑顔で迷われるYさん。
「巻末の一覧表が荒川ファンにはたまらないのです」と背中を押すどころか、背中に負ぶさる。
「じゃあ、もらおうかな」とYさん。ありがとうございます!!

これまで荒川さんの本を何冊も出品してきたので、今後出品できるのは残すところ1冊となってしまいました。もちろん『文学が好き』は、自分の蔵書1冊のみで、どこかで入手しない限り出せません。ほんとうによかったと思っているんです。Yさんの手元に渡って。いつも本を介しての楽しい時間をありがとうございます。

『手紙、栞を添えて』を読まれ、水村美苗のイメージが変わったとのこと。きっと書簡を交わした相手がよかったのではないかと思います。

■保田與重郎『後鳥羽院』(保田與重郎文庫・新学社)
■ローデンバック『死都ブリュージュ』(岩波文庫) ほか4冊

もう、古本市ではおなじみのHさん。もちろん、当店にとっても大のお得意さまです。

いきなり伊藤勝彦『天地有情の哲学』(ちくま学芸文庫)を手にとられる。

「伊藤勝彦よく読んだよ」とHさん。それからしばし伊藤勝彦の話。吉本隆明との対談があることを教えていただく。(おそらく「思想の発生する基盤」のことではないだろうか) その後、スタージョン『一角獣・多角獣』(ハヤカワ書房)ほか何冊かの本についてお話させていただく。

もうすでに一袋分お買いになられていて、この先他店を廻られるのはきついでしょうという状態だったので、Hさんの本をお預かりする。するとまあ、長い旅に出られる。お戻りになられた時には合わせて3袋か4袋になっていたような。お買いになったものの中から「こんなの買ったよ」と一冊みせていただく。その作家の本を以前当店から買っていただいたことがあったので、その点は何とも思わなかったのですが、雑誌としては珍しくはないのです。「誰もが飛びついて買う普通の雑誌(本)はかえってHさんのアンテナに引っかからないのかも」と思うと不思議に納得がいく。「それ、面白いですよ」とお答えすると、「そう。楽しみだな」とHさん。そのお顔がなんともキュート。私の想像など及ばないくらい本に造詣がおありだろうし、本を選ばれる速さ、ご覧になるときの鋭い眼光。本来ならこんな感じで接するのは失礼なのかなと思いつつ、一向に変わらない<とみきち屋>でございます。

お隣で出店されていた「まちとしょテラソ」の小布施町立図書館長・花井さんにHさんの事をお話ししたら、とても驚かれていました。どれだけの本を買われたか、実際ご覧になられたわけですし。(小布施のことはまた改めて)

古本市に参加する回数が増える度に、新しいお客様、店主さん、スタッフの方との出会いがあります。また、親しくさせていただくようになった方にわざわざお越しいただいたり、メールで励ましていただいたりと、嬉しいことがどんどん増えていきます。そのため、終了後のブログも少しずつ長くなっていくような。今回は、1週間がかり(これは変わらず)、4回くらいになるでしょうか…(笑)。
初めてお読みいただいた方も既にお気づきかと思いますが、「一箱古本市」全体のレポートではありません。私ども<とみきち屋>の目に映った、いわば風景を描いたものです。その点、ご了承ください。

今回の「秋も一箱」、春の「一箱」、そして素敵な谷根千の街の様子が写真でアップされています。まだ訪れたことのない方にも、その雰囲気がきっと伝わると思います。ぜひ、ご覧になってください。スライドショーも楽しめます。

こちら→ http://f.hatena.ne.jp/shinobazukun/

また、モンガ堂さんがリンク集を作成してくれています。こちらもぜひ。

こちら→ http://d.hatena.ne.jp/mongabook/20091011/p1

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2009「秋も一箱古本市」出品本の紹介(2)

ようやく出品本の選定を終える。満足度は70%といったところ。一日の古本市で100%など所詮無理。では何故70か。出られるかどうかもわからない来春の一箱用に、50冊近い本を別の箱にしまい込んだからです。こうなるともう、病気ですね(笑)。

今回は前回の春(120冊)よりもさらに増やし、随時補充するつもり。増やした分は、200~300円の価格帯で出品します。また、一度出品したことのある本の多くは値を下げて。よってこの価格帯は春の約3倍の数になるでしょうか。そのかわり、びっしり2段に積み重ねますので、ちょっと見づらくなりますがご了承ください。

それでは、出品本の紹介続編です。

■野呂邦暢『愛についてのデッサン』(角川書店・初版)
■野呂邦暢・長谷川修『往復書簡集』(葦書房)
■ガッサン・カナファーニー『ハイファに戻って 太陽の男』(河出書房新社)

3冊ともこの一年間で、自分の蔵書用として2冊目を入手できたので、出品します。カナファーニーは荒川洋治推薦の書。二十一世紀に読み継ぎたい十冊の本の一冊として挙げていました。

カナファーニーは「戦争」と戦い、三十六歳で暗殺されたパレスチナの作家。夢のように悲しく美しいものを残した。文学のもっているもの、そして期待のすべてがこの作品のなかにある。 『文学が好き』(旬報社)

さて、その荒川洋治。今回もまた出品します。

■荒川洋治『文学が好き』(旬報社)

巻末近くに掲載されている「一年一作百年百篇-一九九〇~一九九九」が曲者。これを読んだがために、いったい何冊の本を買うはめになったことか(笑)。いまだに入手できない作品も多い。

■荒川洋治『読んだような気持ち』(ベネッセ・コーポレーション)

レアな部類に入ると思います。廉価での出品はできませんので、手にとってご覧いただくだけでも。荒川ファン<とみきち屋>の、今回の看板。滋味ですね(笑)。

■アンヌ・フィリップ『ためいきの時 若き夫ジェラール・フィリップの死』(ちくま文庫)

36歳の若さで亡くなったジェラール・フィリップ。その未亡人による(夫への)鎮魂の書。解説でも触れられているが、「この"わたくしたち"は、あなたプラスわたしではないもの、生まれつつあるもの、わたくしたちを超え、わたくしたちを包含すべきものだった」というアンヌの言葉が二人の在り方を象徴している。

■伊藤勝彦『天地有情の哲学 大森荘蔵と森有正』(ちくま学芸文庫)

人類の知的遺産シリーズでパスカルを執筆した著者。この本初版のみで部数が少なく、購入者も手放なさないのか(わからないのだけれど)、ネットも含めあまり見かけない。読後9年も経過している古本ですが、定価ぐらいで出してみます。

ブログで紹介させていただいた以外にもいろいろ出品します。蜷川幸雄、佐伯一麦、古井由吉、蓮実重彦、室生犀星などなど。

開催当日は晴れそうですが、まもなく上陸しそうな巨大台風の被害が心配されます。みなさま、お気をつけください。

私ども<とみきち屋>は、アートスペースゲントさんに出店します。

『秋も一箱古本市』 10月10日(土)開催予定 11:00~16:30
 (http://d.hatena.ne.jp/seishubu/

チラシ http://d.hatena.ne.jp/seishubu/20090924#p1
出店者一覧 http://sbs.yanesen.org/projects/sbs/wiki#店主一覧

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2009「秋も一箱古本市」出品本の紹介(1)

9月のみちくさ市参加前、既に7割方「一箱」用の本は別に選んでストックしておいたものの、その後遅々として作業は捗らず。結局、もう4日しか準備期間が残されていない。まあ、毎度のことですが(笑)

前にも書きましたが、いいなと思った本のうち、品切れになりそう、或いは品切れになってしまったら同じ本を、それこそ条件反射のように買っていました。古本市に参加する遙か前から。
書き込み用、持ち歩き用、保存用、時に贈呈用と4、5冊所有しているものがかなりありました。そこから、一箱2回、みちくさ(プレ開催含め)4回、計6回の中でけっこうな数を出品。しかも、できる限りかぶらないように。

しかし、素人ゆえの限界もあり、いいと思っても、簡単に入手できるものではありません。加えて、自身の性格もあります。古本市に参加するようになってから、買う本の幅が多少拡がったものの、やはり自分の好きなジャンルに偏るのは変えられません。

前置きが長くなりました。今回から<とみきち屋>は、直前のみちくさ市に出品した本、昨秋、今春のいずれかの一箱に出品したのと同じ本も出します。おそらく10冊~20冊。
何度も当店にお越しいただいている方には、「なんだ、同じ本が出ているじゃないか」という印象を与えてしまうと思います。しかし、いいと思える本は、「誰かに読んでもらえたら嬉しい」という気持ちがありますので、敢えて申し上げました。

だからといって、当店に一度はお越しいただいた方、ブログをご覧になった方など、<とみきち屋>の傾向をご存知の上で、足をお運びいただく方々を落胆させてしまうような箱は出さないつもりでおります。ぜひ、お越しください。

それでは、出品本のごく一部をご紹介させていただきます。2~3回の予定。

ミニ特集 【 西行と定家 】 写真参照

なぜ西行と定家なのかと訊かれても、答えに窮してしまいます。自分の好きな歌人だから、それに尽きます。そして、もうひとつ加えるならば、全品複数所有しているので手元に1冊残っていればいいという、単純な理由です。
西行の『山家集』(岩波文庫)、定家の『定家八代抄』(岩波文庫)が新刊で入手できないということ自体、不思議でならない。岩波なら、いつか重版されるとわかってはいても。
上記以外にも、4冊品切れ本を揃えました。

【 中平卓馬 】 写真参照

 『原点復帰ー横浜』(オシリス)、『なぜ、植物図鑑か』(ちくま学芸文庫) 『中平卓馬 来るべき写真家』(河出書房新社)。
中平卓馬ほか森山大道、東松照明論などが入っている大竹昭子『眼の狩人 戦後写真家たちが描いた軌跡』(ちくま文庫)も出します。(5年半前に出た文庫なのに、もう品切れのようです)
『決闘写真論』など、品切れ、絶版本は含まれませんので、出品数含め中平卓馬特集と呼べる品揃えにはなっておりません。一冊しか持っていない蔵書から出すのは困難なため、特集が組めればと自分なりに探してはみたのですが、入手できませんでした。一度入手困難な写真集を見つけましたが恐ろしいほどの高額で。

【 木山捷平2冊セット 】 写真参照

■『酔いざめ日記』(講談社) ■『耳学問・尋三の春他』(旺文社文庫)

いわゆる<とみきち屋>の強引セットです(笑)

【 村上春樹 付録付き 】

■『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(新潮社・初版

これだけでは、珍しくも何ともないですよね(笑)。そこで、付録を用意します。
1980年『文學界』9月号に掲載され、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の元になったと言われる作品の切り抜き です。雑誌本体は残っておりませんが、全文読めます。ただし、経年変化による黄ばみがあること、ホッチキスでとめてあることをご了承ください。
この作品、単行本、文庫本含め、著者本人の意向により未掲載です。

私ども<とみきち屋>は、アートスペースゲントさんに出店します。

『秋も一箱古本市』 10月10日(土)開催予定
 (http://d.hatena.ne.jp/seishubu/

チラシ → http://d.hatena.ne.jp/seishubu/20090924#p1
出店者一覧→ http://sbs.yanesen.org/projects/sbs/wiki

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「秋も一箱古本市」まで1週間もないというのに…

3日(土)は「秋も一箱古本市」前の最後の集会に参加。
青秋部のお二人、昔から「一箱」を支えてきた方々がテキパキと作業を進められるのを、傍らで見ているような感じになってしまい、ほとんど役に立たず(汗)。
しかし、ごくごく一部とはいえ、舞台裏を見れたのは貴重な経験でした。出店者からは見えない様々な苦労を知り、感謝の気持ちが深まりました。

終了後、近くの居酒屋へ。開催当日の打ち上げ飲み会には残念ながら参加できないので、お誘いいただいたのをこれ幸いと、何も考えずについて行ってしまいましたが、まわりを見たら私一人が新参者(笑)。
しかし、みなさんフランクで、温かく、まったく緊張することなく過ごせました。
石井さんご夫妻、 「古書ほうろう」宮地さんご夫妻、「やまがら姉弟文庫」のお二人、モンガ堂さん、ドンベー(ブックス)さん。そして初めてお話しさせていただいた「霧のタンス本」のKさん、カリプソ文庫さん、トンブリンさん。楽しいひと時をありがとうございました。

「古書ほうろう」さんで、山口昌男『トロツキーの神話学』(立風書房)、『増補 思想の流儀と原則吉本隆明対談集』(勁草書房)を購入。いずれも300円! 吉本隆明の対談集は増補以前のものしか持っていなかったので、ありがたい。今回はYさんにも初めてご挨拶できてよかった。
「古書ほうろう」さんが自宅の近くだったら、どんなにいいだろうかと思うことしきり。

4日(日)は夕方早稲田青空古本祭へ。古書現世・向井さん、立石書店・岡島さんにご挨拶。
『浪漫 』1973年12月号「特集 三島由紀夫」、『ユリイカ』1976年10月号「特集 三島由紀夫 傷つける美意識の系譜」ほか、国文学、新潮などの三島特集の雑誌をまとめて購入。
『浪漫 』には中河与一による三島論が掲載されており、思わぬ収穫。
探していた、L..マンフォード『芸術と技術』(岩波新書)も手に入れることができた。

その後、高田馬場ブックオフ2店舗を覗き、加藤典洋『文学地図 大江と村上と二十年』(朝日新聞出版)1冊のみ購入。半額になったら買おうと思っていたら、なかなか見つけられず10ヶ月近く経ってしまった。

自宅最寄り駅からの帰り、畑に挟まれた道から眺めた月の美しかったこと。広々とした夜空に、女王のごとく輝いていた。高い建物が周囲になく、空を見渡せる環境はいいものだと、ひとりごちる。単に駅から歩くと20分かかり、田畑の多い場所に住んでいるだけのことなのだが(笑)。

帰宅後、車で実家へ顔を出し、出かけていた妻を駅まで迎えに行ったりしているうちに、日付が変わり、一箱の準備は全く進まず。

さらに、今回出品しようかなと思って手にとった、五味康祐『人間の死にざま』(新潮社)をちらっと読んだのが大失敗。数え切れないくらい読んでいるのに、止まらない。いつの間にか窓の外が白んでいた。

こんな状況なので、出品本の紹介は今夜からになりそうです。もうしばらくお待ち下さい。

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ナンダロウさんの「一箱古本市」本が楽しみ

ナンダロウ(南陀楼綾繁)さんが「一箱古本市」に関する本を執筆中とのことで、コメントを依頼され、今し方書き終えメールで送る。コメントと言っては大げさで、アンケートに答えたようなもの。
初参加の昨秋「ナンダロウ賞」を頂戴はしたが、今春を含め2回しか参加していない私などの意見・感想が役に立つものか極めて心許ない。しかし、いろいろお世話になっているナンダロウさんのためならばと、うんうん唸りながら弱い頭を絞ってどうにか回答。

また、古本市が終わるたびに凝りもせずエピソードを書いているのだが、私のブログから一部引用させてもらうかもしれないけどOK?とナンダロウさんに訊かれる。あの拙い文章で差しつかえなければ一向に構いませんとお答えしたものの、大丈夫なのだろうか。いやいや、ベテランのナンダロウさんのことだから心配無用だろう。もし使うにしても、うまく料理してくれるに違いない。というわけですべておまかせ。

「一箱古本市」に参加してからまだ一年も経っていないなんて不思議だ。その後はプレ開催も含め「みちくさ市」に3回参加。去年の今頃は想像さえつかなかった。人付き合いの苦手な自分がよくまあこんなに外に出て行き、たとえ本を通じてとはいえ、多くの方との交流を図るなど我ながら驚くばかり。それだけではない。生活まで一変したような。古本市参加をめぐる家庭内バトルもこれまでは無かったしなあ(笑)。こういうのも新鮮でいいなどと言おうものなら、知らぬ間に大事な本の詰まった箱が消えて無くなっているなんてことになりかねない。ブックオフの出張買い取りがあるので危険だ。口は災いのもと。気をつけよう。
実は今回のみちくさ市もぎりぎりセーフでの参加(汗)。

「第9回 秋も一箱古本市」は10月10日(土)開催予定。もちろん参加するつもりでいます。

★ 明け方、バッハの『マタイ受難』第一部を聴く。ヨッフム指揮ロイヤル・コンセルヘトボウ管弦楽団、オランダ放送合唱団ほかによる演奏。オーソドックスながら清潔で温かみがあっていい。どうしてこのようなCD(国内盤)が廃盤久しいのか、わからない。
安っぽいジャケットで化粧直しし、つまらぬ演奏を廉価盤で何度も再発するばかりでは、先はない。というか日本のクラシック音楽業界はすでに瀕死の状態か…。

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古本界の新しいムーブメント 「一箱古本市」、<わめぞ>のことなど

昨日は仕事の資料作成に時間をとられ40分の仮眠。満員電車に揺られ、朝8:30から打ち合わせ。昼間3件ほど仕事先を訪問。夕方、目録「逍遥」で申し込んだ本を受け取りに古書現世・向井さんのところへ。

先日のシークレットワメトーク「Take off Book! Book! Sndai」のことなどを話す。ワメトークに関しては、書肆紅屋さんが詳細をレポートしてくれています。これまでの<わめぞ>の活動、南陀楼綾繁さんを中心とする一箱古本市の流れ、岡崎武志さんの(著書を含めた)影響ほか、古本界の新しいムーブメントの一端を知ることができるので、是非読んでみてください。(→こちら)です。

学生の頃から古本屋通いをしていたが、あくまで人文系をメインとする自分が読みたい本、読みたくなるような本を探すのが目的であって、古本コレクターでもないし、古書業界全般に興味があるわけでもなかった。北尾トロ『ぼくはオンライン古本屋のおやじさん』(風塵社)、高橋徹『古本屋 月の輪書林』(晶文社)、内堀弘『石神井書林日録』(晶文社)は読んでいたが、昨秋一箱古本市に参加するまで、岡崎さん、ナンダロウさん、向井さんの著作は1冊も読んだことがなかった。『sumus』のことも『彷書月刊』のことも知らず。何も知らない素人として一箱に参加して以来、目を向ける世界が大きく変わった。

プロの古書店からは決して生まれない素人参加の一箱古本市。その創始者であるナンダロウさんの功績は大きい。さらに凄いと思わせるのが、運営マニュアルを非公開としていないこと。さらに、ポリシーに反することなく、面白いと思えるものであれば、アドバイザーとして助力を惜しまず、多忙な中、現地へ赴いて行くところ。ナンダロウさんのフットワークと人脈、編集力、岡崎さんの実績、影響力、そこに向井さんが加わって新しい企画なりイベントが生まれたら、衆目の的となり、大きな風が巻き起こるに違いない。実際に店舗を構えている向井さんゆえ、思うようには動けないという制約はあるが、そういう動きをつくっていきたいという熱い思いが言葉の端々から伝わって来た。わくわくする。

 「Book! Book! Sndai 2009」の核となっている、火星の庭・前野さんのことは、岡崎さんの『女子の古本屋』(筑摩書房)で、破格ともいえる経歴、恐るべきバイタリティは知っていたが、今回上京された時の様子をいろいろなブログで読み、この方の魅力がさらに強まる。向井さんが「前野さんとならいろいろやっていきたい」と思うのも肯ける。

「来年は規模は小さくなっても、ほかの月にまた別のことがやれればいい」という前野さんの発言に、器の大きさを感じた。まだ終わってもいないイベントの来年のことを話せる点にではない。プロとしてしっかり地に足をつけながら、絶えず夢や理想を現実に近づけていく。その過程で何かひとつ、形となって成し遂げられたにしても、新たな問題点が浮かんだり、こうした方がいいと思われたら立ち止まらず、軌道修正していく潔さ、強さというものが感じられるからだ。直接お話したことさえないのに、いつか仙台に行くことがあれば、何をおいても前野さんの「火星の庭」に足を運びたいと思ってしまう。

話しの流れの中で、ある雑誌の編集をされていた方と一緒に仕事をした時のことに触れる。なんと向井さんの知り合いで、しかもその方、本の業界では有名らしい。これには言葉を失うくらい驚いた。私が古本市に参加したり、ブログを書くようになって以降仕事を共にする機会はなくなったが、その方の勤務先には今も出入りしている。
こんな無名でちっちゃなブログなどアンテナにひっかかるとは思えないが、万が一読まれていたら冷や汗ものだ(笑)。

〔 購入本 〕
■ 紀田順一郎編『書物愛[日本篇]』『書物愛[海外篇]』(晶文社)
 この2冊を目録で注文。
■ ビュトール『文学の可能性』(中央公論社)
■『國文學 三島由紀夫のすべて』昭和45年5月臨時増刊(學燈社) ほか

〈 追記 〉

岡崎武志著『女子の古本屋』(筑摩書房)は前述の火星の庭のほかに、旅猫雑貨店ブックギャラリーポポタム海月書林蟲文庫などもとりあげられている。とても面白い読み物になっており、お勧めです。
「古本屋という道で生きるんだ」という決意の重要さを説き、紹介した女性古書店主はその決意を持っている人ばかりであると書かれている。そして巻末には次の言葉が紹介されている。

「『価値のあるもの』を買うのではなく、『自分で価値を作れる』人間は強い」 古書現世(二代目店主) 向井透史

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不忍ブックストリート「一箱古本市」エピソード(3)

持ち込む本は100冊以内に収めるつもりだったが、結局120冊。設けた2つのテーマ「太宰と安吾」「日記と自伝」だけで合計41冊になってしまったこともあって。
みちくさ市と同じ出品は16冊。100冊以上、一箱古本市のため新たに出品。

■ 五味康祐『五味康祐 音楽巡礼』(新潮文庫) 1,200円
■ 五味康祐『ベートーヴェンと蓄音機』(ランティエ叢書) 1,000円
■ 辻壮一『バッハ』(岩波新書) 200円
■ 佐野洋子『神も仏もありませぬ』(ちくま文庫) 200円

とみきち屋番頭の一押しと宣伝しながら、手にとってはいただけるものの、引き取っていただくまでには至らず、気がつけば閉店1時間前の3時になろうとしていた。<このままでは看板倒れだな・・・>と焦りが生じ始めた頃、一人の年輩の女性がご来店。
『バッハ』を手にされたので、クラシック音楽に興味はお持ちなんだなと思える。その後、五味康祐の2冊を交互にパラパラとめくっては、いったん箱に戻し、また手にとられ。
ここぞとばかりに、五味康祐や本について蕩々と語ってしまう。

オーディオマニアではあるが、単にそれだけではなく、音楽を聴くことが生きざまにまで昇華されている。不幸な交通事故をきっかけに罪悪感が心の奥に棲まい、音楽を聴く時にいっそう大きな影響を及ぼすようになったこと。それが読者には息苦しく感じられることもあるが、「ほんもの」と「うそ」の音楽の違いとは何なのか、大きな示唆を与えてくれる本であるなどと。
お客様が根負けされたのかもしれない。しかし、特に『音楽巡礼』は、そう簡単に手に入る本ではなく、「読んで損することはありません。是非読んでいただきたい」という気持ちだけは、伝わったような気がする。
「じゃあ、読んでみようかしら」と言っていただいた時、胸の奥から熱いものがこみ上げて来た。また一人、読者が増えたことの喜びとでも言おうか。
心に残る本となってくれることを、ただただ願うばかりだ。
とみきち屋の店主、番頭ともバッハの音楽、佐野洋子の著作は大のお気に入りでもあるので、最後に佐野洋子も加えていただいたことに、不思議なご縁を感じてならない。

■ 工藤庸子『プルーストからコレットへ』(中公新書) 300円
■ 堺利彦『文章速達法(講談社学術文庫) 350円

なかなか箱の中の本を手にとろうとはなさらず、5分以上ご覧になっていた、30代後半と思える男性。正面からは見えなかった200円・300円本の小さな箱に気付かれたみたいだ。ここでも本には触れず、ひととおり目で確認される。そして・・・男性の顔に笑みが漏れ、それがだんだんと満面に拡がり、声には出さないのだが、嬉しくてしかたがないといった感じに。このコーナーに珍しい本など一点も置いていなかったので、店主と二人顔を見合わせ、ちょっとばかり引き気味になってしまった。
すると、わたしたちの気持ちをときほぐしてくれるかのように、男性が初めて話し始めた。
「いや~、ありましたねえ。実はこちらの店、今日で3回目なんですよ」
「???」
「最初が去年の秋、吉田知子」
「ああ、あの! 狙い打ちといった感じで、お買い上げいただいた」
「そうそう。次がみちくさ市、『フランス恋愛小説論』」
「そうでしたか。私が不在の時ですね。すみません、2冊まとめて出さずに。みちくさ市の前から、『プルーストからコレットへ』は一箱用と決めてしまっていて・・・」
「いいんですよ。でも何故かここは、確率が高いんだなあ」
どうやら、本の好みが似ていると仰りたかったようだ。
「それは、それは。そうですか、3回目ですか。ブログとかご覧になるんですか?」
「いや、そういうのはほとんど見ません」
ということは、当店が出店していることをご存知だったわけでなく、古本市が好きで足を運ばれた際、たまたま3回続けて当店に欲しい本があった、売れずに残っていたということなのか・・・。これもまた不思議な出会いに思えてならない。

それから、小一時間。ふらっと、その方がお見えになる。
「一回りして、最後にまた買おうと思って」と、素敵な笑顔。
「うれしいです。そんなふうに言っていただけるなんて」
「『藤村のパリ』、まだ残っています?」
「すみません。河盛好蔵、さきほど年輩の方がお持ち帰りになりました」
「ははは、やっぱり甘かったか」 (※この本は200円コーナーに入れてあった)
しばらく箱をご覧になってから、堺利彦『文章速達法』をお買い上げいただく。
また一人、古本市で再会したいお客様が加わった。

<打ち上げ会場にて>

一人の女性の方から受賞のお祝いの言葉をかけていただく。なんと、昨年のみちくさ市プレ開催で、当店から佐野洋子の本を購入いただいた方とわかる。その際、荒川洋治の本も出品しており、記憶に残っていたとか。そして、今回の一箱。
「荒川洋治さんの本買ったんですよ~。でもね、それが、ちょっと・・・(笑)」
このリアクション、ひょっとして、あの新潮文庫?
案の定バックから出てきたのは『ボクのマンスリー・ショック』(新潮文庫)!
「あり小屋さんで買ったんですよ。さっき早速読んでみたら・・・ねえ!」
「はいはい。○○○○○劇場のレポートなどが書かれていて、荒川さんの本では特異なものですからねえ。それ買っちゃたんですか(笑)」
「でも、けっこう面白い」
「今度あり小屋さんにお会いしたら言っておきますね。説明してあげなくちゃ~って(笑)」
こんな会話を交わせるのもまた、楽しい。

【 お買い上げいただいた本の中から一部をご紹介】 ※エピソードでは触れなかった本

■ 塚本邦雄『菊帝悲歌 後鳥羽院』(集英社)
■ 淀川長治・蓮實重彦・山田宏一『映画となると話はどこからでも始まる』(頸文社)
■ 牧野信一『父を売る子 心象風景』(講談社文芸文庫)
■ 後藤明生『首塚の上のアドバルーン』(講談社文芸文庫)
■ 後藤明生『四十歳のオブローモフ』(旺文社文庫)
■ 石川淳『夷齋小識』(中公文庫)
■ 辻邦生『モンマルトル日記』(集英社文庫)
■ 長谷川宏『同時代人サルトル』(講談社学術文庫)
■ 小林秀雄『近代絵画』(新潮文庫)
■ 坂口安吾『日本論』(河出文庫)
■ 鶴ヶ谷真一『増補 書を読んで羊を失う』(平凡社ライブラリー)
■ 吉本隆明 他 『親鸞』(平凡社ライブラリー)
■ 辻まこと『忠類図譜<全>』(ちくま文庫)
■ P.ハイスミス『変身の恐怖』(ちくま文庫)
■ ベルナノス『田舎司祭の日記』(新潮文庫)

【 お買い上げいただいた方々 】 ※順不同

たけうま書房さん/ふぉっくす舎 NEGIさん(2冊)/あいうの本棚さん(2冊)/退屈男さん/ayanokouzonoさん(2冊)/古書北方人さん/古書有古堂さん/あたまるブックスさん/古書、雰囲気。さん/鉱石書房さん/黒岩比佐子さん

そして、お名前は存じ上げませんが、とみきち屋にてお買い上げいただいた方々、とみきち屋にお立ち寄りいただいた方々に心より御礼申し上げます。
またどこかの古本市でお会いできるのを楽しみにしております。その時は、ぜひお声をかけてください。

店主:とみきち http://yomuyomu.tea-nifty.com/dokushononiwa/    
番頭:風太郎

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不忍ブックストリート「一箱古本市」 エピソード(2) 続・お客様と本

一箱古本市はある程度本を目当ての、本好きの方のご来店が多い。古本好きとなるとやはりおじさま(笑)。しかも当店、女性やこどもを惹きつける工夫なし、本はやや古め。自ずと女性のお客様が少ない。今回は珍しく3割が女性のお客様だったが、前回は2割ほどだった。
そこで、印象に残った女性のお客様のお話から。

■野原一夫『図説太宰治』(ちくま学芸文庫)400円
■野原一夫編『太宰治のことば-愛と苦悩の人生』(ちくま文庫)400円
■奥野健男『太宰治論』(新潮文庫)250円
■杉森久秀『苦悩の旗手―太宰治』(河出文庫)300円
■森山理文『微笑の受難者 太宰治』(現代教養文庫)300円
■長篠康一郎『太宰治 七里ヶ浜心中』(広論社)500円

今回、月並みだが<太宰と安吾>という特集を設け、19冊用意。せんべい缶に入れる。
年輩の女性の方が来店するや否や1冊引き出し、
「あら、やだ。こっちの方が安くてきれい。損しちゃったわ~」。
そしておもむろに、バッグから購入された本を取り出してこちらに見せる。

<まいったな・・・>
「それはたまたまで、うちが出品していなければ、今日入手できなかったもしれませんよ。そういうこともあるのが、こういった古本市の面白いところでも・・・・・」と話しかけるも、ほとんど聞いていらっしゃらない(笑) いきなり、
「私、太宰が好きなのよ」と太宰おばさま。
「そうですか。私も好きです」(中略)
「これお読みになられましたか?太宰と心中した山崎富栄によるものですが」と、『太宰治との愛と死のノート』(女性文庫)を紹介。
「ああこれねえ。日記でしょ。単行本で読んだわよ」
<30年以上も前に出版された単行本で!>と驚き。
「これ、面白いわね」と野原一夫『図説太宰治』を手にとられる。写真や草稿が入っているのがお気に召されたご様子。ここから一気に4冊手にかかえられる。
それから、「どっちか持っているのよ」。奥野健男『太宰治論』(新潮文庫)と奥野健男『太宰治』(文春文庫)で迷われる。
「同じ著者ですからねえ。装幀の色が違うのですが、覚えていらっしゃいませんか?」とお尋ねしても、思い出せないらしい。そこで、横で話しを聞いていた店主とみきちが、
「近くにお住まいでしたら、確かめていらっしゃってからでも。お取り置きしておきますので」
「それが近くにお住まいじゃないよねえ(笑)」。おばさま含め3人で笑ってしまう。
気をよくされたのか、一大決心。新潮文庫版を選ばれる。

直後、「あら、これ初めて」と『太宰治 七里ヶ浜心中』を手にとられ、これもお買い上げいただく。
計6冊 2,150円、太宰本ばかり。ご来店された時とはお顔が違う。こちらも嬉しくなる。
来店時損されたとお思いになっていらっしゃった額に相当する150円分サービスし、2,000円お支払いいただく。もう、お会計の際にはそのことも忘れてしまっていた(笑)。よかったよかった。
同会場の他のお店を廻られてから、最後にまた店頭で声をかけていただく。
「ありがとね~~」。すてきな太宰おばさまの話。

■ジャン・ジュネ『黒んぼたち・女中たち』(新潮文庫)700円

最初は、こんな感じに齢を重ねられるのは素敵だなあと思える女性3人でご来店。その後他のお二方とは別にお一人で再度来店。まず、シオラン『生誕の災厄』を手にされる。さきほどご友人達とにこやかに談笑されている時とは明らかに感じが違う。これはすぐに声をかけない方が賢明と、何冊かご覧になられているのを黙って見ていた。そして、ジュネの文庫へ。
「ジュネなんて、もう日本では読まれないのかしらねえ」
「どうでしょうか。私もそこらへんの事情には疎く・・・。新潮文庫は『泥棒日記』以外絶版のようですが、河出文庫からは確か『葬儀』ほか3冊くらい出ていると思います」
「日本語で読んでみたくなったの」
「???」
「パリにいたの。だからね。パリなら小さなところでもジュネの芝居がかかっているのよ」
この言葉、その眼差しにノックアウト。
雰囲気と、一度も崩れないピンと背筋の伸びた姿勢から、店主とみきちが、
「失礼ですが、舞台とかに出られるている女優さんですか?」と尋ねると、
「違う違う(笑)。でも、そう思ってもらえるなんて嬉しいわ」。
お買い上げ後、他のお二人と合流し会場を後にされる。その後ろ姿にしばし見とれてしまった。

■原一夫編著『ドキュメント ゆきゆきて神軍』(現代教養文庫)400円
■島尾敏雄『夢日記』(河出文庫)300円

この両書とも読まれたか、或いはご存知の方、この2冊をどのような方が購入されたか想像つくでしょうか。静かに箱に目をやり、手にとって。値段を確認後そっと差し出され、ひと言もなく去っていかれました。どう見ても、20代前半の女性。ただただ驚くばかりで、声をかけるタイミングを逸してしまう。お話ししたかったと悔いが残ります。

■アン・タイラー『ブリージング・レッスン』(文春文庫)

裏表紙の解説を読んでいらっしゃるご様子から、かなり興味を持たれているような。ご夫婦で来られた、40代と思われる女性。
「ピュリッツア賞を受賞したすてきな作品なのに品切れなんですよ。お勧めです」と背中を押してしまう。お買い上げ後、黒岩重吾『西成山王ホテル』『飛田ホテル』(角川文庫)に興味を示される。
<え、なんで・・・?アン・タイラーお勧めした直後になんと説明したらいいんだ・・・>
どや街、釜ヶ崎、西成、山谷、人間や男女の業などの言葉を織り交ぜ、「ぐちゃぐちゃどろどろの世界が描かれていますが、不思議なリリシズムを感じます」などと、しどろもどろの説明。結局、「面白そうだけど、なんか疲れそうねえ。今どろどろの世界は気分じゃないから遠慮しておくわ(笑)」。
なぜか、ほっと胸を撫で下ろす。

■深沢七郎『みちのくの人形たち』(中公文庫)600円
■エミール・ゾラ『獲物の分け前』(ちくま文庫)400円

それぞれ、中年の女性の方が購入。
深沢七郎『みちのくの人形たち』の存在はご存知ではなかったとのこと。まとめて深沢七郎の小説を読みたくても、『楢山節考』以外、新潮文庫版が新刊で入手できないのを残念に思っていらっしゃった。この方には、吉田秀和『レコードのモーツァルト』(中公文庫)も併せて買っていただきました。

■ヘンリー・ミラー『南回帰線』(新潮文庫)300円

 「『北回帰線』はないんですか?」と訊かれる。『南回帰線』は品切れだが、同じ大久保康雄訳の大文字新装版が新潮文庫で出ているので、新刊書店でも購入できることをご説明。また、南は河野一郎訳が講談社文芸文庫から出ているが、「正直、高いですよ」と伝える。「これもらいます」と購入いただく。

■エルンスト『百頭女』(河出文庫)350円

文字が極端に少なく、絵で埋め尽くされている物語に興味を持たれたご様子。
以上、若い男性。

■洲之内徹 『気まぐれ美術館』『帰りたい風景 気まぐれ美術館』『絵の中の散歩』 新潮文庫3冊セット 2,500円

購入された中年の男性ご自身はお持ちだが、「知り合いがずっとほしがっていたから、あげたくて」と。親しい方の探している本が頭に入っているなんていいなあと思える。
出品本とは別に今回、大原富枝『彼もまた神の愛でし子か 洲之内徹の生涯』(ウエッジ文庫)をカバーがけで用意。「ご購入いただき、ご希望の方にはプレゼントします。」とPOPに表示。3冊まとめてお買い上げいただく条件をつけてしまったため、せめてものサービスと思い。とても喜んでいただけた。
相変わらずの人気の高さを実感。<往来堂書店>さんが、「洲之内の文庫が品切れなんておかしいよ」とおっしゃられていたが、全くその通りだと思う。
その往来堂書店さんに、ヤコブセン『死と愛』(角川文庫)について、「この本なかなか見ないよねえ」と言っていただけたのは嬉しかった。最後まで引き取り手はなく、手にとってもいただけなかったので。

さて、ここまで書いても、まだ書き足りない、終わらない。
「もういいかげん、飽きた」という声も聞こえてきますが、記録としても残して置きたいので、次回エピソード(3)書きます(笑)。

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不忍ブックストリート「一箱古本市」 エピソード(1) お客さまと本

「とみきち屋」の出店場所は映画保存協会の軒先、小さな公園。場所がわかりづらいというお客様の声もありましたが、緑に囲まれ、滑り台で遊ぶこどもたちの楽しそうな声が絶えず、催しもあり。さらに大家さんである映画保存協会さんがテーブルを貸してくださったので、お客様もかがむ必要なく、ゆっくり見ることができる。そんな恵まれた場所でした。

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当店の店構えは写真のとおり。メインの箱にやや小さめの箱を入れ、その上には歪んだせんべい缶をのせ、さらにその上に100円ショップで買ったかごをのせるという、見事な3段タワー!(笑)
きれいな紙で化粧をほどこすこともなく、本と本の区切りは段ボールをちぎっただけという部分もあり。「この缶がいいわね」とお褒めいただくこともございました。
写真は1番目が開店時、2番目が午後13:30頃、3番目が14:30時頃。最後はただ本が箱に入っているだけという感じになりました。

さて、とみきち屋恒例、お客様とのエピソード集、その1です。

■ 梅津時比古 『フェルメールの音』 (音楽之友社) 600円
開店5分後最初に来店されたお客様が購入。表紙にフェルメールの絵が使われ、装幀がきれいなのでビニール袋に入れ面陳。「詩のようにきらめく言葉の花束。クラシック音楽が身近に感じられ、心洗われます。」というPOPを貼っておいた。手にとられたので、「フェルメールとタイトルに入っていますが、美術の本ではないんです。クラシック音楽は聴かれますか?」と声をかける。
「あまり聴かないな」。「そうですか。文章が素敵なんです。もしよかったら、袋から出してみてください。」と続ける。パラパラと文章を読まれてから、「装幀も気に入ったからもらうよ」。
自分の愛読書を一番最初のお客様に引き取ってもらえ、いい一日を送れそうな予感。

■ 堺利彦『堺利彦伝』(中公文庫)300円 
■ クロード・アブリーヌ『人間最後の言葉』(ちくま文庫)500円
当店2番目のお客様、黒岩比佐子さんご購入。

■ イーヴリン・ウォー『ブライヅヘッドふたたび』[吉田健一訳](ちくま文庫)650円
■ ナボコフ『青白い炎』(ちくま文庫)900円

3番目のお客様。すうっとこの2冊をとり笑顔。「お探しでしたか」と声をかけると、「ずっと探してたんだよ。福岡から来てよかった。ありがとう。」
前日も一箱を廻られているのか気になって尋ねたら本日上京とのこと。喜んでいただけてよかった!
今や仙台、名古屋、広島、福岡へと拡がっている一箱古本市。福岡から来られたと聞いて、その反響ではないのかなと思ったりする。

■ 足立巻一『虹滅記』(朝日文芸文庫)600円
■ 足立巻一『やちまた 上・下』(朝日文芸文庫)1,200円
ブログでも伝え、目玉商品のひとつだったものの、果たして足立巻一の作品を引き取っていただけるか、半信半疑だった。『やちまた』を松岡正剛が千夜千冊でどう取り上げているかに触れPOPも作ったのだが、結果的にはその必要もなかったようです。

『虹滅記』。「お二人のブログ読んでますよ」と声をかけられ驚く。でも知り合いではない。私の方は、あと10日で(ブログを始めてから)丁度半年になる程度なので実感が湧かない。
でも、ブログを見てお越しいただけたのは嬉しい。『やちまた』は持っていて、『虹滅記』をお探しだったとのこと。こうして喜んでいただけたのだから、ブログで前宣伝してよかったのだと思える。

『やちまた』はその後来られた別の男性が購入。この方は『虹滅記』と合わせ3冊所有されていたのだが、家の大整理をした際、『やちまた』の下巻のみ紛失してしまったらしい。下巻のみ売るというわけにはいかず恐縮していたら、「下巻はなかなか見つけられないし、高いしね」と快く上・下セットをお買い上げいただく。
この本の紹介はとても私の手に負えるものではありません。興味を持たれた方は松岡正剛の千夜千冊・遊蕩編 第1263夜をご覧ください。(→こちら) 

■ 徳川夢声『夢声戦争日記』(中公文庫・全7巻)1,700円

今回の出品本の中で、とりわけ思い入れの強い本。
少なくとも私が廻る古書店ではほとんど見かけない。かといって、目の玉の飛び出るような古書価がついているわけでもない。不思議な本です。
そのせいか、購入いただけるまで10数人の方が興味深げに、一番上に別置きしておいた第7巻を手にとり、パラパラと読まれていました。すべて男性です(笑)。
素人ゆえ、値付けにもかなり迷い、全く自信なし。
加えて7冊セットですから、同じ7冊でも、色々な本のまとめ買いとも違います。
で、どなたにご購入いただいたかというと・・・
何となんと、足立巻一『やちまた 上・下』を購入していただいた30代前半の男性!
一旦清算を終えられた後、手にとって見ていらっしゃるご様子が、<一押しすればもしかして・・・>という感じ。
<でも、上巻持っているのに、上下巻買っていただいたばかりだしなあ>と心の中では思いつつ、
「うちの今日の目玉なんです。今日はどうしてもこの本をどなたかに持ち帰っていただきたくて」と、(先方には)わけのわからないことを言ってしまう(笑)
するとニコっと笑って、
「じゃあ、いただきます」
<なんという素敵な笑顔>
「ありがとうございます!!!」と店主とみきちと共に小躍り。

2 ■ シュレーディンガー 『わが人生観』(ちくま学芸文庫)
■ ホフマンスタール 『チャンドス卿の手紙』(講談社文芸文庫)
■ ユリイカ 臨時増刊 『シュルレアリスム』(青土社)
■ 出口裕弘『太宰治 変身譚』(飛鳥新社)『坂口安吾 百歳の異端児』(新潮社)ほか 8冊 計3,000円
 
昨秋の一箱でハイデガー『ニーチェ』ほか5冊ほど購入いただいたのがこの方との出会い。とても印象に残っていたので、「みちくさ市」プレ開催の際にまたお越しいただいたので、「その節はありがとうございました」というような感じでお声をかけると、先方もこちらのことを覚えていらっしゃいました。バシュラール『夢想の詩学』(ちくま学芸文庫)を「これだよ、これ」と言ってお買い上げいただくとともに、2回来店いただき薄田泣菫ほか5冊ご購入。
その後、「月の湯古本市」に遊びに行った際、ばったりお会いする。ご挨拶させていただくと、冗談も飛びかい、「Hです」と名前をまで教えていただいた。
そして、偶然は続く。3日に下見を兼ね一箱を廻っていると、またもやばったりお会いする。ここぞとばかりに、
「こんにちは~。お世話になっております。明日もお見えになられるんですか?」
「来るよ」
「そうですか!うちは明日映画保存協会で出店します。是非是非お越しください。」
「そうなの。じゃあ朝一番に行こうか。」
「ありがとうございます。Hさんに買っていただけそうな本を、みちくさ市プレ開催以来ずっと考えていました(笑)。お見えになられるということなら、今夜熟考を重ねます。あっ、お持ち帰り用の袋も用意させていただきますね。」
「トラック一台用意しといて(笑)」
「おまかせください!」

そして4日当日、11時半過ぎ。Hさんの登場。すでに片手には本でパンパンに膨らんだ紙袋が。
「あれ~。一番にお越しいただけると思ってお待ちしておりましたのに。もうHさん好みの本はないかもしれませんよ~(笑)」
「じゃ、帰ろうかな~。」
「そんな~。ご覧になってください。」
Hさんが本を見始めたら、中途半端に声をかけないようにしている。本を探される時は真剣なまなざしなので、邪魔をしてはいけない。
早速、シュレーディンガー 『わが人生観』とホフマンスタール 『チャンドス卿の手紙』を手にとられる。最低2冊が目標だったので、その瞬間<ビンゴ!>。次にユリイカ 臨時増刊 『シュルレアリスム』。ひそかにガッツポーズ。これでもう今日は大満足。
その後、袋詰めにした同一作家の単行本と文庫本の2冊セットを指さされ、
「強引セットだね。」
「あれ~。やっぱりわかっちゃいましたか。お恥ずかしいことにコンセプトがありません。(汗)」
「でも、もっと強引なセットが他の店にあったよ(笑)」

荷物が邪魔で見づらそうなので、袋をお預かりする。

それから、蓮實重彦の文庫、出口裕弘の太宰と安吾本を手にとられる。
「太宰の方は品切れですが、安吾はそうでないので、かなり安く設定してあります。」
「そう。じゃあ、これもいっしょに。」
「ありがとうございます。」
しばし歓談。
Hさんの真剣なまなざしが和らぎ、「今日はこれで勘弁してください」
「ええっ!? Hさん、お約束どおりトラック用意してあるんですけど(笑)」

清算のため、箱の横側に廻られると
正面にはその存在を表示していなかった小さな200円、300円箱を発見される。
一瞥して満面の笑みをたたえられ、さっと2冊を引き出される。
「僕のために用意してくれたの?」
「いえいえ、たまたま今朝バッグの中に追加してきました(笑)。」
「○○○、僕のツボなんだよ。買わないわけにはいかないね」とおっしゃって、表紙の著者名を指さされた。
「そうでしたか。喜んでいただけて嬉しいです。」
結局合計8冊もお買い上げいただいた。
底が抜けないようにと、袋を二重にしてお渡しする。
その後、同じ会場の他店の一箱一箱を丹念にご覧になっているお姿が見えた。
○○○が誰かは、とみきち屋の企業秘密となりましたので、公表できません(笑)

これだけお買い上げいただき、かつ、こんなに楽しませていただいていいものかと思ってしまう。
たぶん、お許していただいているのだろう。
ぜひ、またお会いしたい。              (つづく)

3

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不忍ブックストリート「一箱古本市」で思いがけない受賞

5月4日(月・祝)、「第8回不忍ブックストリート 一箱古本市」において映画保存協会さま の軒先(公園)に出店し、黒岩比佐子さんから「黒岩比佐子賞」を頂戴いたしました。

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賞品として、夏目漱石『道草』(大正三年九月二十日發行 岩波書店 壹圓九拾五銭)、黒岩さんのご著書、 『明治のお嬢様』(角川選書)。夏目漱石といえば猫ということで、かわいい子猫の写真が載っているメモ帳(小さなハムスターに頭をちょこんと凭れて眠っています)をいただきました。
貴重な、そして素敵な品々、ほんとうにありがとうございました。

『道草』は我が家初の、いわゆる黒っぽい本となりました。しかも漱石。装幀に関しては素人なのでうまく表現できないのですが、表紙まわりは布製で、背表紙の文字が浮かび上がっています。
『明治のお嬢様』は、当時の写真、絵、図版、広告などがふんだんに載っていて、興味をそそられます。もちろん、サイン入り。大事に拝読させていただきます。メモ帳はもったいなくて使えません。

正直申し上げると、黒岩さんの著書は『音のない記憶-ろうあの天才写真家 井上孝治の生涯』(文藝春秋)と、第26回サントリー文芸賞を受賞された『編集者国木田独歩の時代』(角川選書)の2冊しか読んだことがありません。しかも、つい先日までお顔を存じ上げませんでした。

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先般参加した「第1回みちくさ市」の際、当店「とみきち屋」から本をご購入いただいた方の中に、特別なオーラを放つ素敵な方がいらっしゃったと、当ブログで書きました。
「いったいどんな方だろう」と、とみきち(妻)と二人で話しておりました。
数日後、ほかの方のブログを読んでいるうちに、「ひょっとしたら黒岩さん?」と思い始め、考えれば考えるほど黒岩さんに違いないと思うようになりました。
そしてついにネットで検索。黒岩さんの写真が載っている記事を見つけ、確信へと変わりました。「今度お会いできたら声をかけさせていただきたいね」と、二人。何という脳天気ぶり(笑)。

そして今回の「一箱古本市」。
なんと、その黒岩さんが朝一番とも言える時間にお見えになりました。
二人とも緊張~!!
それでも勇気を振り絞って、「失礼ですが、ひょっとして黒岩さんでいらっしゃいますか?」とお尋ねすると、「ええ」というお答えでした。
「堺利彦の本を2冊も出されているなんて珍しいですね」と言っていただいたのですが、何とお答えしたのか、緊張していたため覚えていません。現在堺利彦について書いていらっしゃるそうで、とみきち屋のテーマの一つ「日記・自叙伝」の中から『堺利彦伝』(中公文庫)をお買い上げいただきました。もう1冊の、テーマとは関係なく出していた『文章速達法』(講談社学術文庫)はすでにお持ちだとのことでした。
去られる間際に、「今日はこれから全部のお店を回らなければならないので」とおっしゃられたような。「もしかして審査員のお一人なのかな」と一瞬思ったものの、お会いできたことが二人とも嬉しくて、「素敵な方だねえ」と興奮。
その余韻も冷めやらぬうちにナンダロウさんがお見えになったので、「今し方黒岩比佐子さんにお会いしました」とお伝えしたら、「えっ、こんな早い時間から廻ってくださってるんだ。今回審査をお願いしたんだよ」と。

私たちの古本市初参加は、昨秋の不忍ブックストリート「一箱古本市」でした。どんな催しなのかも全く知らず、素人でも参加できるというだけで、何気なく「ちょっと参加してみたくなった」と、とみきち(妻)に漏らしたのが、きっかけです。

本の好きな方と話したり、本を買ったり選んでいる時の様子を、いつもと違う売る側になって、見たり感じたりできることがあまりにも楽しくて、あっという間の5時間でした。咋秋は賞の選考は無しとのことだったので、緊張から疲労困憊、多くの本を引きずって持ち帰ることも目に見えており、終了後の懇親会のような集まりは失礼させていただいたのでした。

数日後、南陀楼綾繁さんのブログに、「ナンダロウ賞は<とみきち屋>さんに」と書かれていたのは驚天動地の出来事でした。何故なら、当日廻って来られたナンダロウさんに、「お世話になっています」とご挨拶はしましたが、特にお話もできませんでした。両隣の「あいうの本棚」さん、「もす文庫」さんはご存知のようで、立ち止まって会話を交わされ、しかも気に入られたものを購入されたのを羨ましく眺め、「うちの本は魅力がないのかなあ」と思っていたからです。

我が箱に凝らした工夫らしき事といえば、複数所有している本を選んで3つほどのテーマに分類し、それを小さなかごや箱に分けて並べた程度。まったくもって自分好みの選書。デザイン的な美しさ皆無でした。
そういうところがかえってよかったのかな、と思うことができましたし、ナンダロウさんご自身の本の嗜好と関係なく選んでいただけたことも、たいへん嬉しく感じたものでした。

今回で2度目の参加となる「不忍ブックストリート 一箱古本市」。各賞の発表を兼ねた打ち上げに出席したのは、他のお店も廻ったうえで、どんな方が受賞されるのか確かめたい、という思いがあったからでした。残念ながら、今回もまた他の出店場所を訪れる余裕が無く、受賞された方のお店を実際に見られませんでしたが。昨秋、賞をいただいた自分たちは対象外、とハナから思っていましたので、ドキドキ感は全くなく、リラックスして、ぎっしり満員の会場に座っていました。

昨秋の一箱で知り合い、その後も親しくさせていただいている「あり小屋」さんが新潮社の「yom yom賞」を受賞されたことは、自分たちのことのように嬉しくて、妻と二人「やったね!」と、少し興奮。
その後、「古書ほうろう」の宮地さん、東京堂書店勤務の畠中理恵子さん、私もご著書をよく読んでいる豊崎由美さん(恥ずかしいことに、会場で豊崎さんを見かけた際、「あの方はどなただろう」と二人で話していたのです。)からの賞などが続々と発表されていきました。

そして、黒岩さんの登場。
「先週、みちくさ市でナンダロウさんにお会いしたら、急に、"来週の一箱で審査員をやって"と頼まれました」。
「それで、初めは私の好きな黒い本ばかりを出されているお店があればそこに・・・」
<それはそうだろうなあ>
「でもそういうお店は残念ながらなく・・・」
<そんなお店が一箱に出てきたら確かに驚異だ>
「買う立場で選べば、好みの本を安く買えるお店がいいお店なんですね」
という黒岩さんの言葉に、会場が和む。
それを受けて、「立場が変わると、確かに見る目が変わりますね」とナンダロウさん。

<ではいったい、今回は何を基準にされたのかな>という気持ちになったところで、前夜、ほとんど寝ていないために、聞いているつもりでしたが、記憶が切れ切れです。しかも、勝手に自分たちは賞の対象外と決めつけていたこともあり、正確さには欠けますが、選考理由を次のようにおっしゃったたような覚えがあります。

「本を一冊一冊考えて選んで並べている、と感じたお店を選びました」。

ナンダロウさんが「なるほど。では、その受賞者はどなたですか?」
黒岩さん「映画保存協会に出店された『とみきち屋』さんに・・・」。

その瞬間、二人で「へっ??」と顔を見合わせてしまいました。

一箱までの数日間、我が家の話題を独占していた黒岩さんご本人から賞をいただけるなど夢にも思っていなかったので、完全に舞い上がってしまいました。コメントを求められたのですが、何をしゃべったのか思い出せません。

「一冊一冊を考えて選んだ」

無理やり詰めても100冊も入らない小さな箱に、どんな本を選んで並べるか。
その時点から一箱は始まっています。
迷いに迷って選びます。
そういう思いが伝わる箱になっていた。

賞をいただいたことはもちろん本当に光栄ですが
黒岩さんが、並んだ本からそういう思いを感じ取ってくださった。
そのことが嬉しくてなりません。

一日経ち、頂戴した本やメモ帳を手にしては、喜びが実感として湧き上がってきます。
黒岩比佐子さん、ほんとうにありがとうございました。

お客様や本にまつわるエピソードは、次回から2回ほどにわたって紹介させていただきます。

3日・4日それぞれの各賞及び売上げ総数、金額などが「しのばずくん便り」に発表されました。興味のある方はこちらをどうぞ。

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第8回 不忍ブックストリート「一箱古本市」無事終了

3日・4日両日とも雨には降られず、概ね穏やかな天気に恵まれ、「一箱古本市」を満喫いたしました。
3日に出店場所の下見を兼ねて訪れた時の様子はとみきちが書いています。こちらです。

実行委員、助っ人の方々、場所を提供してくださった大家さん、お越しいただいた多くの方々にこの場を借りて御礼申し上げます。ほんとうにありがとうございました。

また、映画保存協会でご一緒させていただいた「鉱石書房」さん、「料理書専門古本屋 onakasuita」さん、「どすこいフェスティバル」さん、「あたまるブックス」さん、お疲れさまでした。
みなさん穏やかな、素敵な方々ばかりで、楽しい一日を過ごすことができました。お互いのお店を何度も行き交いながら、話しを弾ませる光景がとても心地よいものに感じられました。
また機会があったらご一緒したいと思える方々ばかりでした。

当日はわめぞのNEGIさん、たけうま書房さん、ドンベーブックスさんらも助っ人をされており、ただ参加するだけの私どもにもあたたかい言葉をかけていただき、恐縮の限りです。

春と秋の谷根千の風物詩となった「一箱古本市」も、多くの方々の支えがあってこそという感をいっそう強くいたしました。

終了後の打ち上げイベントの際には、黒岩比佐子さんから賞を頂戴いたしました。
これはもう本当に思いもよらなかったことで、今なお信じられないというのが正直なところです。すぐにでも黒岩さんについて書きたい気持ちでいっぱいですが、番頭・風太郎30分の仮眠、店主・とみきち1時間半睡眠で「一箱」を迎えたため、からだも頭も限界です。

あらためて記したいと思います。

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<一箱古本市> 5月4日(月・祝)出店 「とみきち屋」出品本ご紹介

幅38㎝奥行き32㎝はふつうのみかん箱の大きさ。みちくさ市に比べるとかなり小さなスペース。その中でどんな世界をつくるか。大いに悩むが、試行錯誤を繰り返しながら一箱を築いていくのも、また楽しい。
「不忍ブックストリート 一箱古本市」5月4日(月・祝)、当店 「とみきち屋」の出品本の一部をご紹介します。

■ 五味康祐 『五味康祐 音楽巡礼』 (新潮文庫)
■ 五味康祐 『ベートーヴェンと蓄音機』 (ランティエ叢書)
五味康祐のクラシック音楽関連本は何と言っても、「とみきち屋」番頭・風太郎の一押し。ストックは底をつきそうになって来たものの、やはり出品することにしました。現在五味さんのクラシック音楽本は新刊では入手できません。お探しの方は是非この機会を。

■ 洲之内徹 『気まぐれ美術館』ほか新潮文庫3冊セット
■ 足立巻一 『虹滅記』 『やちまた 上・下』 (朝日文芸文庫)

< 日記・自伝特集 >より
■ 『ドストエフスキーの日記』 (岩波文庫) 全6冊セット
■ 徳川夢声 『夢声戦争日記』 (中公文庫) 全7巻セット

< 太宰と安吾 > 彼らの自著ではなく評論ほか
山崎富栄、太田静子、杉森久英、森安理文、矢代静一、野原一夫、奥野健男らによる品切れ文庫中心。

〔 ちくま文庫 〕
■ イーヴリン・ウォー 『ブライヅヘッドふたたび』 [吉田健一訳]
■ パトリシア・ハイスミス 『変身の恐怖』[吉田健一訳] ほか。

出店場所が映画保存協会なので、■淀川長治・蓮実重彦・山田宏一『映画となると話はどこからでも始まる』(勁文社)も出品します!

小説(日本・海外)、思想、評論、クラシック音楽などの品切れ文庫、多く揃えました。
単行本も含めてですが、後藤明生、藤枝静男、塚本邦雄、林語堂、ナボコフ、シオランなどもあります。
みなさま是非、お越しください。

<不忍ブックストリート 一箱古本市>

「とみきち屋」 5月4日(月・祝)出店
 
● 時間 11:00~16:00 (雨天決行)
● 場所 映画保存協会

「しのばずくん便り」のサイトに、踏破ルートが発表されています。(→こちら)
「一箱古本市MAP」を入手すればより楽しめるのではないかと思います。MAPを入手できるお店一覧はこちらです。
3日・4日の出店者一覧はこちらです。

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「不忍ブックストリート 一箱古本市」 出店場所決まる

5月3日、4日と連続開催される「第8回 不忍ブックストリート 一箱古本市」における当店「とみきち屋」の出店場所が、5月4日(月・祝)「映画保存協会」に決定しました。
出店場所、および両日の全店主一覧は「本と散歩が似合う街 不忍ブックストリート」で紹介されています(→こちら)。

大家さんになっていただく「映画保存協会」さまのHPでは、イベント案内「一箱古本市ウイーク2009」において店主紹介をしていただいており、恐縮です。また、同じ場所で出店する「料理書専門古本屋onakasuita」さんからは早々にコメントいただき嬉しく思います。

実行委員会より送っていただいた店主マニアル、スリップ作成例ほかの資料はわかりやすく、とても丁寧なもので、初めての方でも安心して参加できると思います。見ているだけで楽しい不忍ブックストリートMAP、充実の企画満載「一箱古本市week」案内ちらしの作成、配布などもさぞかしたいへんではなかったかと察します。関係者の方々にはただただ頭の下がる思いでいっぱいです。

「とみきち屋」が出店する5月4日(月・祝)は、南陀楼綾繁さんのところの「古本けものみち」、文藝雑誌「yom yom」(新潮社)のスタッフ、有名な豊崎由美さんと池袋コミュニティカレッジの書評講座メンバー、晶文社勤務やT大生協書籍部の方々なども参加されるようなので楽しみ。時間が許せば是非見に行きたい。圧倒されへこみそうだが(笑)、それもひとつの経験。 根津教会で出店される「あり小屋」さんにも行かなくては。10ヶ月になられるかわいいお嬢さんにもお会いしたい。
そういえば、T大生協書籍部の方々による「どすこいフェスティバル」さんは同じ会場。昨秋はあまりの安さに他店主が退いてしまったらしいので、驚異だ。うちは、それほど安くはないから(汗)。出品本が重ならないことを祈ろう。

5月3日(日・祝)は昨秋開催の時同じ会場となり、それ以来親しくさせていただいている「四谷書房」さん、「あいうの本棚」さん、「もす文庫」さん。みちくさ市プレ開催の時にいっしょだった「ドンベーブックス」さんが参加。そしてあの岡崎武志さん「岡崎武志堂」も参加されるので、足を運びたいと思う。

昨秋はビギナーズラックもあり、「ナンダロウ賞」を戴き、売上げ冊数3位、金額も3位に少し及ばずと健闘できたが、「一箱古本市」における当店「とみきち屋」のスタンスは崩さないようにしたい。
サブカル系、ビジュアル系はほとんどありません。音楽本はクラシックのみ。今流行の落語関連も皆無。なので、興味の無い方はちらっと見ただけで通り過ぎて行かれます。でも、自分が読んだ本は、少なくとも読むに値したと思えるもの。出品本の最低6割は同じ本を所有し続けているという基本姿勢は守りたいと思っています。従って、ジャンルは限られてしまっても、売上げ成績狙いで「とみきち屋」の色を失うようなことは避けたいなと。
この土日の2日間、家中に散在(散乱?)している箱から本を取りだしては頭を悩ますばかりで、作業は遅々として進まず。4月25日(土)には「みちくさ市」にも参加するので、振り分けも難しい。

洲之内徹の本は単行本+文庫本セットでは中途半端だ。単行本は自分用に残しておいて、やはり新潮文庫3冊セットがいいな。
足立巻一『虹滅記』『やちまた 上・下』は「みちくさ市」ではなく、「一箱」のほうが似合うかな。3冊セットでいこうか・・・。
吉田健一訳ということでパトリシア・ハイスミスを出すなら、同じ<ちくま文庫>のイーヴリン・ウォーも出してみようか。
出店場所との縁もあるから、映画の本はどうだろう。しかし、映画には詳しくないのでこれといったものが無い・・・。そうだ、淀川、蓮実、山田の鼎談『映画となると話は・・・』とかいうタイトルの本を昔読んで、どこか押入奧の箱にしまい込んでいるはず。
昨秋出品して喜んでいただいた五味康祐の音楽本も出したいところだが、ストックがわずかしかないので迷う。

などと、思いをめぐらせながら、様々な箱を開けてはひとりごちている。「一箱」用と「みちくさ」用の選り分けもまだ終わらず、値付けどころではない。
2週続けての古本市参加は思っていた以上に厳しい。

昨秋「一箱古本市」(2008年10月12日開催)に参加した時にはまだブログを始めていなかったので、店主とみきち(妻)のブログの中で体験記(レポート)を書きました。まだ「とみきち屋」のことをご存知なく、かつ興味を持たれた方は、よかったら読んでみてください。

体験記はこちらで読めます→ ■体験記(1)  ■体験記(2)  ■体験記(3)

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「第1回 鬼子母神通り みちくさ市」 参加決定

昨年のプレ開催に続き、<わめぞ>協賛「第1回 鬼子母神通り みちくさ市」参加決定しました。「とみきち屋」として〔名取ふとん店横の駐車場〕に出店します。

昨夜22:00の申し込み開始から2時間少しで定員に達し締め切ったらしい。<わめぞ>の認知度、人気が高まっているだけでなく、<わめぞ>の人たち、その周辺の人たちの魅力もあるのだと思う。

正式申し込み受け付けのメールが、「古書現世」の向井さんから届いたのが深夜3時過ぎていたので、向井さん大丈夫だろうか・・・と心配しつつ、本日帰宅後ブログを見たら、「自分が参加者だったら早く出店場所知りたいし、出店マニュアルもほしい。」「全部に返信してしまい、気づいたら朝方4時近くに。自宅に戻って即死。」とあった。お気持ち嬉しく思います。受け付けのスタッフだった退屈さんも、ありがとうございました。

プレ開催でお隣だった「あり小屋」さんも参加されるみたいなので、当日は遊びに行こう。また、昨秋の「一箱古本市」でお隣になって以来、親しくさせていただいている「あいうの本棚」さんも(プレ開催に続き)参加されるようなので、嬉しい。今度はどんなレイアウトの店作りなのだろう。出品されるものも含め、今から楽しみだ。

当店主とみきちは、傍で見ていてもおそろしいトークでお客様に本を持ち帰らせてしまうことがあるので、ご一緒させていただく「古本 寝床や」さん、「kan books」さんを唖然とさせてしまうのではないかと心配だ(笑)。番頭風太郎共々ご迷惑をかけないよう、気をつけねば。

<わめぞ>といえば、武藤さんのブログを読んで驚いた。武藤さんが銭湯若葉湯目指して四谷まで歩いたという日、私も新宿通りを四谷に向かって歩いたからだ。中央線に乗る前、懐かしさに駆られJ大前の堤でしばし一人お花見。ぐびぐびビール飲んで歩いている武藤さんとばったり遭遇していたらどうなっていただろう。ビールを追加したら一緒にお花見していただけたかも。そうしたら、「野人」(武藤さん自称)ならぬ、「詩人」(風太郎呼称)のように素敵な言葉を聞けたに違いない。

そうそう、Pippoさんが約2ヶ月ぶりに「~pippoの思索劇場~」を更新している。ファンとしてはとても嬉しい。書かれていることはちょっぴりディープ。でも、「人生の不条理という経験をバネに強く在ろう」とするPippoさんの姿を垣間見れた。Pippoさんは4月25日の「みちくさ市」でも、「チンチロリン商店」に訪れた人々を和ませてくれるでしょう。

自身の「みちくさ市」「一箱古本市」の準備は一向に進まず。こんなことでいいのだろうか。ギリギリにならないと重い腰の上がらない悪しき習性は直しようがないのかも。

今日立ち寄った古本屋でおや!?っと思う本を見つけ、一冊購入。

■滝村隆一 『アジア的国家と革命』 (三一書房) 1,000円

『マルクス主義国家論』『新版 革命とコンミューン』『北一輝論』『世紀末「時代」論』ほか読んだが、この本は未読。最近マルクスに関連する本をパラパラと再読しているので買ってみる気になった。本来なら、6年前に発行された『国家論大綱 第一巻』(勁草書房)を読まねばならないのだが、その質・量からして山ごもりでもしなければ、今の自分には読み通せそうにない。

さらにブックオフで。

■ 「文藝春秋2009年 新年特別号」と「文藝春秋2009年 四月号」を各105円で入手。

前者は、梯久美子による特集「昭和の遺書[53通]」、後者は村上春樹の独占インタビュー&受賞スピーチ「僕はなぜエルサレムに行ったのか」と半藤一利らによる「教科書が教えない昭和史」が目当て。図書館でコピーをとるよりも安い。村上春樹の記事を早速熟読し、「何を考えているのだろう・・・危ういな」と思うところ大。

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古本市 「みちくさ市」「一箱古本市」に向けて

4月25日(土)<わめぞ>「みちくさ市」、5月3日(日)、4日(祝・月)不忍ブックストリート「一箱古本市」開催まで1ヶ月ないではないかと、この土日に気がつき焦る。みちくさ市は申し込みが4月7日なので、決まっているわけではないが。

※「とみきち屋」の店名で、5月4日(祝・月)に「一箱古本市」への参加は決定しています。

本は揃っているので2週連続参加は可能だが、どちらに何を出品するかとなると迷ってしまう。値付け、スリップ、リスト作成もけっこうたいへんな上、レイアウトを決めるのにも時間がかかる。今週末までに選定を終えておかねば。

「一箱古本市」の方は「みちくさ市」とは違って、本を持参しなければならないし、スペースはまさに一箱分。その中でテーマを設けるのは意外と難しい。一箱のほぼ3分の1を占めるので、それがこけると重い本をえっさえっさと持ち帰らなければならないからだ(笑)。

今回は「デカダン・無頼派」、「日記・自伝」を考えている。前者は太宰、安吾、壇一雄に関する本で、彼ら自身の作品というより解説や評伝が中心。今のところ20冊出品のうち12冊、品切れ文庫本を用意できた。後者の主役はドストエフスキー「作家の日記」(岩波文庫・全6冊・1991年重版)。問題は値付け。どれくらいならお手頃なのか悩む。自伝はナボコフ、ホッファー、堺利彦、長谷川如是閑などになりそう。

あとは、洲之内徹『気まぐれ美術館』(新潮社)『絵の中の散歩』(新潮文庫)2冊セットとか、前から考えていたのだが、林語堂の本を出品しようかと。

林語堂は、南陀楼綾繁さん著『山からお宝』(けものみち文庫)の表4を飾っていた写真の右手前に、ど~んとアップで写っている『人生をいかに生きるか』(講談社学術文庫)。どうせなら(品切れ本ではないが)『蘇東坡』も加えよう。写真の部屋の主、退屈男さんにあやかって(笑)

「みちくさ市」は、200円、300円とかの均一箱をいくつか用意しなくてはならないだろうな。こちらは、本を宅急便で送れるし、残ったものも送り返せるので助かる。ただ、プレ開催でも感じたのだが、工夫しないと同じ本がかなりの数、ほかのお店とかぶりそうなので、そこをどうするかが難しいところ。

プレ開催では、野呂邦暢、樋口修吉、「本の本」など、ミニ特集で揃えたものは動きがとてもよかった。やはり、そういう箱もつくっていこう。でないと、お客様と話せる機会も減ってしまいそうだし、出店する側としてもつまらない。素人なのだから、結果云々より、まず楽しまねば。

今思いつくのは、当ブログでも触れた足立巻一の『虹滅記』『やちまた 上・下』(朝日文芸文庫)3冊セット。森田草平『夏目漱石』(講談社学術文庫)全3冊セットくらい。ミニ特集はこれから考えよう。当店「とみきち屋」にしかないものを少しでも多く出品したい。

そうだ、東峰夫『オキナワの少年』(文春文庫)『ママはノースカロライナにいる』(講談社)2冊セットも。 「往来座通信」の中で、よむみちさんが、上原隆『友がみな我よりえらく見える日は』(幻冬舎アウトロー文庫)を取りあげ、東峰夫に触れていた。

上原隆の本は市井の人々のエピソードを淡々と描いていて、押しつけがましさもなく、不思議なペーソスが漂う秀作。東峰夫が登場する「芥川賞作家」は、とくに印象深い。わめぞの「みちくさ市」なのだから、こういう出品もいいだろう。

実際の作業は手がかかるが、あれこれ考えるのは楽しくてならない。

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