2011年・不忍ブックストリート「秋も、一箱古本市」を終えて
ご挨拶が遅くなりました。2011年・不忍ブックストリート「秋も、一箱古本市」におきまして私ども<とみきち屋>にお越しいただいた大勢の方々、本を購入いただいた皆様、ありがとうございました。また、ナンダロウ(南陀桜綾繁)さん、青秋部の中村さん、石井さん、実行委員の方々。助っ人のみなさま、場所を提供くださった往来堂書店さんほかの大家さん、感謝の気持ちでいっぱいです。
昨秋は参加できず、午後から客として回りましたが、冷たい雨が降りしきる中、みなさんたいへんだったと思います。今年は打って変わって秋晴れ。
大震災の影は今なお消えることはありませんが、本好きの方々の笑顔で街全体が充ち、とても楽しく心地よく過ごさせていただいたこと、ありがたく思います。
春秋通じ6度目の参加でしたが、そのつど新たな発見、出会いがあり、一箱古本市発祥の地「谷根千」のちからを体感できました。街と人と本が一体となることの魅力です。
当日の細かいエピソードは改めて書いていくつもりでいますが、二つほど。
「フーコー入門」を手にとられたおばあちゃまがいらっしゃいました。他のお客さまの迷惑にならないよう、箱から離れたところで10分近く熟読。その後フーコーを持ったまま、今度はニーチェをしばし。最後はていねいに本を箱に戻されましたが、その佇まいが一箱古本市のある一面を象徴しているかのようで、強く印象に残っています。
年配の女性の方がまず辻邦生『モンマルトル日記』(集英社文庫)を手にされる。妻とみきちとともに思わずにっこり。この本は若いころ二人して読み線を引きまくったもの。一度一箱で出品。なかなか手にとってもらえなかったのですが、退屈男さんに購入いただきました。
残念ながら『モンマルトル日記』は購入いただけず。
でも、「多和田さん好きなの」と、多和田葉子『雪の練習生』(新潮社)を。「多和田さん〇〇〇〇なんですよ」と私が伝えると少し驚かれました。多和田さんのことをしばしお話しさせていただく。
次に少し読まれてから「私詩も書くのよ。これ面白いわねえ」とくすくす笑いながら都築響一『夜露死苦現代詩』(ちくま文庫)を。さらに長田弘『読書から始まる』(NHKライブラリー)。計3冊。
楽しいひと時でした。
喜多の園さんに向われている途中声をおかけして、「ご迷惑でなければ、これを。3冊購入いただいたサービスというより、どうしても読んでいただきたいので」と『モンマルトル日記』をお渡しする。
「まあ、嬉しい。辻さんも好きなの」と受取っていただけました。
『モンマルトル日記』のことは秘めておこうかと思っていたのですが、夜の打ち上げ飲み会の席で、その一部始終をご覧になっていた北方人さん に触れられてしまいましたので、書くことにしました。
見られていたとは全く気付きませんでした(汗)
北方人さんのお店では、原田康子の話でこのお客様と盛り上がったそうです。
打ち上げ会場への道すがら、<もす文庫>ご夫妻にばったりお会いする。
春に続き、今回も全く他の会場へは足を運ぶ余裕がなく、また大きな悔いが残ったと思っていただけに胸がいっぱいになる。よかった!!
「バッグさすがに残っていませんよね」とお尋ねすると
「完売しました~」
残念だけれど、我がことのように嬉しい。
「そうでしょうねえ。じゃあ新作バッジは?」
「ああ、送り返す荷物の中に…」
いいんです、お会いできただけで。
福島原発の被害の影響による厳しい生活状況のことを聞き、重い現実に返す言葉もない。
でも、たいへんな中「一箱古本市」に参加される<もす文庫>さん。多くのファンをお持ちですし、私にとっても「一箱古本市」には欠かせない存在です。
無理は申し上げられませんが、これからも出てくださいね。
モンガさんが早速「秋も、一箱古本市」のリンク集を作成してくれています。
こちら→ http://d.hatena.ne.jp/mongabook/20111009
9日(日)。いつものごとく一箱は2時間弱の睡眠で臨み、打ち上げで飲み、準備の段階で全エネルギーを費やしてしまったために翌日は抜け殻(笑)
夕方買い物に出たついでに、地元のブックオフに寄る。本屋だけは食事で言う別腹。
店内奥の通路に置いてあったストッカーを眺めていたら
「すみません。まだ値段をつけていないものもあるのですが、何か気になる本はございますか」と、女性の店員さんに声をかけられる。平日毎晩のごとく閉店間際にやってくる怪しいおやじの顔を覚えられてしまうのも仕方ない(笑)
「いえ、後でまた見ますから」と他のコーナーへ。さすがに待たせて本を選ぶなんてできません。
■竹田青嗣『竹田教授の哲学講義21講』(みやび出版)
■三島憲一『ニーチェ以後─思想史の呪縛を超えて』(岩波書店)
どちらも読みたかった本。一箱でニーチェ特集をやった後にすぐニーチェとは。
以下は105円で。
■マッハ『感覚の分析』(法政大学出版局)
松岡正剛が『松岡正剛の書棚』(中央公論新社)の中で、「少なくとも200人に勧めたとおもう」と書いていたので気になっていた本。叢書ウニベルシタスはブックオフではめったにみかけないのでびっくり。
■デイヴィッド・グロスマン『死を生きながら イスラエル1993-2003』(みすず書房)
■堀江敏幸『本の音』(晶文社)※文庫化されたので誰かが処分したのだろう
■ベールイ『銀の鳩』(集英社)
■高橋治『雪』(集英社)
■徳永進『隔離 故郷を追われたハンセン病者たち』(岩波現代文庫)
■高木仁三郎『プルトニウムの未来』(岩波新書)
■宇都宮芳明『人と思想 フォイエルバッハ』(清水書院)
10日(月・祝)
ずっと家に閉じこもりにさせてしまっていた母を車椅子で久しぶりに外へ連れてゆく。
スロープがあったので、近くの川の土手に行くことができた。
「自宅のベランダからはいつも空を見ていたけれど、やっぱり空はいいねえ。こんなに広い空はもっといい」と、空気を存分に吸い込んでご満悦。
夏は暑すぎてとても外に連れ出せなかったのでストレスが限界を超えていたようだ。
(1年2カ月ぶりに)買い物がしたいというので、帰り道スーパーに寄る。
「ちっちゃなスーパーだと思っていたけど、いろんなものがあってデパートみたいだ」
日常母を取り巻いている世界からすれば、デパートにも見えるのだろう。実際は平屋の小さなスーパーなのだが。
夕方、地元馴染みの古書店へ。ここに来るとやはり気持ちが落ち着く。
新しい買い取りがあったようでカウンター横に値つけを終えてない本が平積みされている。
すでに持っているが、私の好みの筋が散見されたので、期待しつつ見せてもらう。
■山城むつみ『ドストエフスキー』(講談社)
これはどうしても読みたい、いや読まねばならぬと思っていたので嬉しい。
■『作家の秘密』(新潮社)
かなり焼けているが、ヘンリー・ミラー、ダレル、ヘミングウェイ、フォークナー、エリオットほかのインタヴュー集。買わずにはいられない。
2冊とも値段は聞かずに預かってもらい店内を。
■唐十郎『下谷万年物語』(中公文庫)
もちろん定価の倍ちょっとはしたが、それでも安い。
■ウィリアム・ゴールディング『後継者たち』(中央公論社)
■今東光『毒舌文壇史』(徳間書店)
2冊目。いつか古本市に出すことを考えて。
■樺俊雄/光子『死と悲しみをこえて』(雄渾社)
樺美智子の両親がこのような本を出していたことは知らなかった。思わぬ出会い。
店主とは30分ほど雑談。
店主として古本市を終えた途端、本屋に行きたくなる、買いたくなる。
これは私だけではないと思うのですが、母と妻は呆れかえっています。
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