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2011年・不忍ブックストリート「秋も、一箱古本市」を終えて

ご挨拶が遅くなりました。2011年・不忍ブックストリート「秋も、一箱古本市」におきまして私ども<とみきち屋>にお越しいただいた大勢の方々、本を購入いただいた皆様、ありがとうございました。また、ナンダロウ(南陀桜綾繁)さん、青秋部の中村さん、石井さん、実行委員の方々。助っ人のみなさま、場所を提供くださった往来堂書店さんほかの大家さん、感謝の気持ちでいっぱいです。

昨秋は参加できず、午後から客として回りましたが、冷たい雨が降りしきる中、みなさんたいへんだったと思います。今年は打って変わって秋晴れ。
大震災の影は今なお消えることはありませんが、本好きの方々の笑顔で街全体が充ち、とても楽しく心地よく過ごさせていただいたこと、ありがたく思います。
春秋通じ6度目の参加でしたが、そのつど新たな発見、出会いがあり、一箱古本市発祥の地「谷根千」のちからを体感できました。街と人と本が一体となることの魅力です。

当日の細かいエピソードは改めて書いていくつもりでいますが、二つほど。

「フーコー入門」を手にとられたおばあちゃまがいらっしゃいました。他のお客さまの迷惑にならないよう、箱から離れたところで10分近く熟読。その後フーコーを持ったまま、今度はニーチェをしばし。最後はていねいに本を箱に戻されましたが、その佇まいが一箱古本市のある一面を象徴しているかのようで、強く印象に残っています。

年配の女性の方がまず辻邦生『モンマルトル日記』(集英社文庫)を手にされる。妻とみきちとともに思わずにっこり。この本は若いころ二人して読み線を引きまくったもの。一度一箱で出品。なかなか手にとってもらえなかったのですが、退屈男さんに購入いただきました。
残念ながら『モンマルトル日記』は購入いただけず。
でも、「多和田さん好きなの」と、多和田葉子『雪の練習生』(新潮社)を。「多和田さん〇〇〇〇なんですよ」と私が伝えると少し驚かれました。多和田さんのことをしばしお話しさせていただく。
次に少し読まれてから「私詩も書くのよ。これ面白いわねえ」とくすくす笑いながら都築響一『夜露死苦現代詩』(ちくま文庫)を。さらに長田弘『読書から始まる』(NHKライブラリー)。計3冊。
楽しいひと時でした。
喜多の園さんに向われている途中声をおかけして、「ご迷惑でなければ、これを。3冊購入いただいたサービスというより、どうしても読んでいただきたいので」と『モンマルトル日記』をお渡しする。
「まあ、嬉しい。辻さんも好きなの」と受取っていただけました。

『モンマルトル日記』のことは秘めておこうかと思っていたのですが、夜の打ち上げ飲み会の席で、その一部始終をご覧になっていた北方人さん に触れられてしまいましたので、書くことにしました。
見られていたとは全く気付きませんでした(汗)
北方人さんのお店では、原田康子の話でこのお客様と盛り上がったそうです。

打ち上げ会場への道すがら、<もす文庫>ご夫妻にばったりお会いする。
春に続き、今回も全く他の会場へは足を運ぶ余裕がなく、また大きな悔いが残ったと思っていただけに胸がいっぱいになる。よかった!!

「バッグさすがに残っていませんよね」とお尋ねすると
「完売しました~」
残念だけれど、我がことのように嬉しい。
「そうでしょうねえ。じゃあ新作バッジは?」
「ああ、送り返す荷物の中に…」
いいんです、お会いできただけで。

福島原発の被害の影響による厳しい生活状況のことを聞き、重い現実に返す言葉もない。
でも、たいへんな中「一箱古本市」に参加される<もす文庫>さん。多くのファンをお持ちですし、私にとっても「一箱古本市」には欠かせない存在です。
無理は申し上げられませんが、これからも出てくださいね。

モンガさんが早速「秋も、一箱古本市」のリンク集を作成してくれています。

こちら→ http://d.hatena.ne.jp/mongabook/20111009

9日(日)。いつものごとく一箱は2時間弱の睡眠で臨み、打ち上げで飲み、準備の段階で全エネルギーを費やしてしまったために翌日は抜け殻(笑)

夕方買い物に出たついでに、地元のブックオフに寄る。本屋だけは食事で言う別腹。
店内奥の通路に置いてあったストッカーを眺めていたら
「すみません。まだ値段をつけていないものもあるのですが、何か気になる本はございますか」と、女性の店員さんに声をかけられる。平日毎晩のごとく閉店間際にやってくる怪しいおやじの顔を覚えられてしまうのも仕方ない(笑)
「いえ、後でまた見ますから」と他のコーナーへ。さすがに待たせて本を選ぶなんてできません。

■竹田青嗣『竹田教授の哲学講義21講』(みやび出版)
■三島憲一『ニーチェ以後─思想史の呪縛を超えて』(岩波書店)

どちらも読みたかった本。一箱でニーチェ特集をやった後にすぐニーチェとは。

以下は105円で。

■マッハ『感覚の分析』(法政大学出版局)

松岡正剛が『松岡正剛の書棚』(中央公論新社)の中で、「少なくとも200人に勧めたとおもう」と書いていたので気になっていた本。叢書ウニベルシタスはブックオフではめったにみかけないのでびっくり。

■デイヴィッド・グロスマン『死を生きながら イスラエル1993-2003』(みすず書房)
■堀江敏幸『本の音』(晶文社)※文庫化されたので誰かが処分したのだろう
■ベールイ『銀の鳩』(集英社)
■高橋治『雪』(集英社)
■徳永進『隔離 故郷を追われたハンセン病者たち』(岩波現代文庫)
■高木仁三郎『プルトニウムの未来』(岩波新書)
■宇都宮芳明『人と思想 フォイエルバッハ』(清水書院)

10日(月・祝)

ずっと家に閉じこもりにさせてしまっていた母を車椅子で久しぶりに外へ連れてゆく。
スロープがあったので、近くの川の土手に行くことができた。
「自宅のベランダからはいつも空を見ていたけれど、やっぱり空はいいねえ。こんなに広い空はもっといい」と、空気を存分に吸い込んでご満悦。
夏は暑すぎてとても外に連れ出せなかったのでストレスが限界を超えていたようだ。

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(1年2カ月ぶりに)買い物がしたいというので、帰り道スーパーに寄る。
「ちっちゃなスーパーだと思っていたけど、いろんなものがあってデパートみたいだ」
日常母を取り巻いている世界からすれば、デパートにも見えるのだろう。実際は平屋の小さなスーパーなのだが。

夕方、地元馴染みの古書店へ。ここに来るとやはり気持ちが落ち着く。
新しい買い取りがあったようでカウンター横に値つけを終えてない本が平積みされている。
すでに持っているが、私の好みの筋が散見されたので、期待しつつ見せてもらう。

■山城むつみ『ドストエフスキー』(講談社)

これはどうしても読みたい、いや読まねばならぬと思っていたので嬉しい。

■『作家の秘密』(新潮社)

かなり焼けているが、ヘンリー・ミラー、ダレル、ヘミングウェイ、フォークナー、エリオットほかのインタヴュー集。買わずにはいられない。
2冊とも値段は聞かずに預かってもらい店内を。

■唐十郎『下谷万年物語』(中公文庫)

もちろん定価の倍ちょっとはしたが、それでも安い。

■ウィリアム・ゴールディング『後継者たち』(中央公論社)

■今東光『毒舌文壇史』(徳間書店)
2冊目。いつか古本市に出すことを考えて。

■樺俊雄/光子『死と悲しみをこえて』(雄渾社)
樺美智子の両親がこのような本を出していたことは知らなかった。思わぬ出会い。

店主とは30分ほど雑談。

店主として古本市を終えた途端、本屋に行きたくなる、買いたくなる。
これは私だけではないと思うのですが、母と妻は呆れかえっています。

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ひと休み

5月3日は2011年・春「不忍ブックストリート一箱古本市」二日目を午後2時頃から2時間駆け足で廻り、夜の打ち上げに参加。普段全くアルコールを口にしないので4日は、ぐったり蟄居。連休最終日5月5日はひと休み。といっても地元の本屋めぐりで結局「本」絡み。これではひと休みと云えないか。

5日は妻が一人で実家へ。このところ二人で出かける機会が多く、8日には「みちくさ市」も控えているため、母を半日以上一人にさせるのはよくないという結論。
妻の両親とは、月一回義母の病院通いの際、送迎のどちらかを担当するので顔を合わせている。
義母は昨秋私の母と同じ病院に一緒に入院。がんの手術を受けてから7ヶ月が経つ。抗ガン剤治療は受けていない。義父も黄斑変性症のためほとんど目が見えないので心配の種は尽きない。

地元馴染みの古書店の近くまで車に同乗し、そこから妻とは別行動。
みかん箱一箱分の本を持ち込む。古本市向きとは云えぬ、みすず書房ほかの精神医学や哲学関連の大判本はすでに用意して置いた。そこに、春の一箱で引き取り手のなかった本の中から文庫を中心に20冊ほど選んで加える。6000円くらいと思っていたら9000円。これは買わねばならんと店内を丹念に見る。

■香月康男(画)・香月婦美子(文)『夫の右手 香月康男に寄り添って』(求龍堂)

つい最近ブックオフで立花隆『シベリア鎮魂歌-香月康男の世界』(文藝春秋)を購入したばかり。
こういう流れになっているのかな。
『夫の右手』はかつて図書館で妻が借りてきたが家にはないので迷わず手にとった。

この本に関しては妻がブログに書いていますので興味のある方はよかったら。
http://yomuyomu.tea-nifty.com/dokushononiwa/2007/10/post_656a.html#more

■W.スタイロン『見える暗闇』(新潮社)

もともと寡作な作家。『ナット・ターナーの告白』、『ソフィーの選択』は読んでいたがこの本は知らなかった。著者自身のうつ経験を下敷きに書き上げたようだ。ぱらぱらと読んでみたところ、ぐいぐいと引きこまれる。危ない。全編読み通すのはもう少し時間をおいてからにしよう。
「みちくさ市」で『ソフィーの選択』新潮文庫版を出品するつもりで箱に入れてあったので、不思議な巡り逢わせを感じる。

■『情況 緊急特集『実録・連合赤軍』をめぐって』(2008年6月号・情況出版)

若松孝二監督、映画『実録・連合赤軍』の特集。監督自身の鼎談も掲載されているので購入。

■『現代思想 特集アナーキズム』(2004年5月号・青土社)

平井玄「アナーキズム新論」が面白そうなので。

外の均一台へ。

■ポール・ニザン『アデン・アラビア』(角川文庫) 100円

晶文社版は残してあるが、角川文庫は初めてだ。訳者が違うのであのあまりにも有名な出だしも微妙に違う。

■モーム『作家の手帳』(新潮文庫) 100円

モームは若い頃かなりまとめて読んだはずなのにこれは抜けていた。

再び店内へ。
思わず「えっ!?」。危うく見逃すところだった。学生時代に単行本で読んだが、例によって生活費の足しにと処分した中に入れた1冊。この一年ほど再読したくなって探していたがなかなか見つけられなかった。
しっかり古書価がついているものの、良心的。読み終えて手放してもいいと思えたら、「一箱に出せばいいか」などと思って購入。

■イエール・コジンスキー『異端の鳥』(角川文庫)

大満足で新刊書店に向かう。

■文藝別冊『佐野洋子追悼総特集 100万回だってよみがえる』(河出書房新社)

先日買いに行くも既に品切れ。佐野さんの人気が一向に衰えていないことを実感し嬉しくなる。
ようやく入手できた。息子の広瀬弦と元夫・谷川俊太郎の特別対談は、所々「へえ~」とは思ったもののインパクトに欠けた。まあ、当然ではあろうが母・佐野洋子の器は大き過ぎる。
それでも、盛り沢山の内容。佐野洋子ファンならずっと手元に置いておきたくなるMOOKに仕上がっている。

■仲正昌樹『改訂版 <学問>の取扱説明書』(作品社)

学生との対話という形をとっていて語り口はいつも以上に平易だが、内容は充実しており、初版は十分楽しめた。改訂版はマイケル・サンデル、『超訳ニーチ』、裁判員裁判制度などについて新たに言及しているとのことなので買ってしまう。

その後スーパーで買い物をして、帰路にあるブックオフをのぞく。

■岡本太郎(撮影・文)・内藤正敏(プリント)『岡本太郎 神秘』(二玄社)
曰く言い難い写真集。異界へ引きずり込まれそうになる。
■ 『連合赤軍 "狼"たちの時代―1965-1979』(毎日新聞社)
ふんだんに盛り込まれた写真が当時の様子をリアルに伝えてくれる。

以上雑誌半額セール対象だったので定価の4分の1で購入できた。

■植田正治・鷲田清一『まなざしの記憶』(阪急コミュニケーションズ) 105円
この本の中に流れている時間はとっても心地よい。言葉がやわらかく寄り添ってくる。

こういうものを買えた時は本の重さがこたえない。

夜は母と二人で食事。食後に薬を飲ませてからしばしお喋り。
一箱古本市帰りの本、みちくさ市に出そうか迷っている本、未整理本などが積んである小さな山に母が手を伸ばす。
古井由吉、洲之内徹、木山捷平などがどんなものを書いているかを簡単に説明する。
突然『小林秀雄対話集』(講談社文芸文庫)を手にとって頁をめくり始める。
「この坂口というのは安吾のこと?」
「そうだよ」
しばらく黙って読んでいる。
安吾が「教祖の文学」を書いた後の有名な対談だ。
そのうち<ふ~ん>とか<ふふふ>という声。
「梅原龍三郎が(安吾に)けなされてるねえ」と小さく笑っている。

その後三島由紀夫との対談を少し読んで元に戻す。
小林秀雄は好みでないようだが、この対談集は気に入った様子。
(翌日どこかに消えたと思ったらベッドで本格的に読み始めていた)

夜10時に寝る前の消炎鎮痛剤、睡眠導入剤を飲みあとは眠くなるのを待つのみ。
私は自室に戻り小出弘章氏の発言に耳を傾ける。
http://hiroakikoide.wordpress.com/

原発問題は鎮静化するどころか、日々形を変え拡がっているようにすら思える。

次回は5月8日(日)開催「みちくさ市」(http://kmstreet.exblog.jp/)出品本の一部を紹介します。

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こんな本を(1) 2010年5~8月

古書蒐集の趣味はなく、5~8月の4ヶ月の間に購入した本の9割近くがブックオフ。珍しい本はない。
しかし、読みたいと思っていた本、思わぬ本にも出会えたばかりか、本全品半額、単行本半額、単行本500円均一セールなどを計7回くらい利用でき、恩恵にも与った。また、平日仕事帰り、閉店間際20分ほどの日参も後押ししてくれた。

■ヘーゲル『精神現象学』(長谷川宏訳・作品社) 105円

学生時、河出書房から出ていた『世界の大思想12 ヘーゲル 精神現象学』(樫山欽四郎訳)で挑戦するも「理性」あたりで沈没。
竹田青嗣・西研『完全読解 ヘーゲル 精神現象学』(講談社選書メチエ)を昨年読み、この6月、同著者たちの『超解読!ヘーゲル「精神現象学」』(講談社現代新書)を一気に読み終え、再挑戦する気持ちが湧き起こっていた。
何というタイミング。美本、半額2400円でもいいと思ってカゴに入れる。会計前念のために中をチェック。鉛筆による線引きが、特定部分10頁ほどに見つかる。全く問題ないが、ダメもとで交渉。あっさり105円に。
本の値段、価値って何?と考えると、喜んでばかりもいられないというのが正直なところだ。

■ラ・ロシェフコオ『箴言と考察』(内藤濯訳・グラフ社) 105円

愛読した岩波文庫版はボロボロ。加えてはるか前に絶版。やむなく二宮フサ訳を購入するも、馴染めなかった。状態のいい内藤濯訳を探し続けたもののついぞ巡り逢えず。
ややくすんだ茶色の背表紙が105円棚にひっそりと収まっているのが目に止まった。こんな本が出ていたとは知らなかった。これも出逢いなのだろう。

■ヘッセ『若き人々へ』(角川文庫) 105円 読了

これもまた初めて見る本。手にとってパラパラとページをめくると、何とニーチェの『ツァラトゥストラ』、ドストエフスキーの『カラマゾフの兄弟』、『白痴』について書かれている。ドストエフスキー作品に対するヘッセの、畏怖にも近い感情が伝わってくる。

■結城信一『石榴抄』(新潮社) 読了

7月のみちくさ市で、モンガ堂さんから購入。
表題にもなっている「石榴抄」(せきりうせう)は惻々と胸に迫ってくる。著者が師と仰いだ会津八一。その八一に献身的に尽くした高橋きい子の最期に寄り添う八一の苦悩が切ない。
空襲ですべてを失い疎開。身を寄せた先でも、肺病患者のきい子を伴っているために篤くはもてなしてもらえず、ついには観音堂の庫裏の一室へと移ることを余儀なくされる。

八一はきい子の死を悼み三十七首の歌を詠んだ。以下はそのうちの三首(この本の中でもとりあげられている)。

いたづきのわれをまもるとかよわなる
ながうつせみをつくしたるらし

わがためにひとよのちからつくしたる
ながたまのをになかざらめやも

かなしみていづればのきのしげりばに
たまたまあかきせきりうのはな

※ いたづき・・・病  ひとよ・・・一生  たまのを(玉の緒)・・・命 

著者結城信一は最後に、八一の著書『南京新唱』から序を全文引いているのだが、その中から一部を紹介したい。

 もとよりかかる世のさまとて頼むべき人手も無く薬餌にも乏しきを看護に炊事に予みづから迂拙の力瘁(つく)したるも七月十日といふここにして白昼遂に眠に入れり
 きい子は平生学藝を尚び非理と不潔とを好まず絶命に臨みてなほ心境の明晴を失はざりしに時恰も交通のたよりあしく知りたる人の来たりて枕頭を訪ふもの殆ど無かりしかば予ひとり側にありて衷心の寂寞を想うてしきりに流涕をとどめかねたり
 やがて隣人に授けられて野外に送り荼毘に附し翌朝ひとり行きて骨を拾うて帰り来たりしも村寺の僧は軍役に徴せられて内に在らざるを以て雛尼を近里より請じ来るにその年やうやく十余わづかに経本をたどりて修證義の一章を読みて去れり

■谷川雁『原点が存在する 谷川雁詩文集』(講談社文芸文庫) 375円 読了

この春『谷川雁 詩人思想家復活』(河出書房新社)を読み、谷川雁の書物のほとんどを若い頃処分してしまったことを後悔していた。久しぶりに味わう谷川の文章、時に息が詰まるくらい濃密だ。
谷川を優れた組織者(オルガナイザー)と見なしていた吉本隆明は、『追悼私記』の中で谷川の姿勢を次のように表現している。

谷川雁が保った実践家の姿勢は、有効かどうかを第一義としなかったと思う。現実を文字どおり腕力で切り取って完結したひとつの世界にしてしまう実験が「実践」ということの意味だった。有効性など何ら誇るに足りない。それは時に応じ無効になったり、有害になったりするに決まっている。だが、切り取った現実をひとつの完結した世界にまで仕上げてしまえば、その有効性は崩壊するはずがない。これが谷川雁が生涯をかけて「実践」してやまなかったことだ。

■池澤夏樹『世界文学を読みほどく スタンダールからピンチョンまで』(新潮選書) 500円
池澤夏樹個人編集による世界文学全集(河出書房新社)が刊行中なので、読んでみようと思った。

■ソーントン・ワイルダー『わが町』(鳴海四郎訳・早川書房) 105円
かつて額田やえ子訳の単行本で読んだが、新訳によるこの文庫は魅力だ。

■ルソー『社会契約論/ジュネーブ草稿』(中山元訳・光文社古典新訳文庫) 225円
何と云ってもジュネーブ草稿が目玉。

■中井久夫『精神科医がものを書く時』(ちくま学芸文庫) 325円 読了
中井久夫、霜山徳爾、岩井寛、木村敏。この4人の精神科医の本はできる限り読みたいと思っている。

■椎根和『平凡パンチの三島由紀夫』(文春文庫) 105円 読了
これまで知らなかった三島像を描いていて面白い。三島に結婚式のスピーチまでしてもらった著者は、若き編集者としても三島に信頼されていたのだろう。解説は川本三郎。

■井伏鱒二『井伏鱒二対談集』(新潮文庫) 105円
■鶴見俊輔『思い出袋』(岩波新書) 200円 読了
■鶴見俊輔・上坂冬子『対論 異色昭和史』(PHP新書) 105円

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本の整理、気持ちの整理

この3ヶ月、本を売った数は購入した数の10倍近くに及んでいる。
既に限界を超えている自宅を、人間として生活できるくらいに回復させる。
これだけでは単なる物理的処理でしかない。
そうではなくて、本を取り巻く環境を整理する。
生活の基盤を見つめ直し、気持ちの整理を図ろうと思い始めている。

50を過ぎて何を云っているのだと思われかねないが、まだ地に足がついていない。
生活にリズムがない。だから穴に落ち込む。

本を買わない、読まないということではないのです。
古本市に参加しない、足を運ばないということでもありません。

気付かないまま、一昨年秋の一箱古本市以来闇雲に突っ走ってしまったようです。
足下を見つめ直す。
言葉で云うほど容易なことではありませんが、少しずつであれ変えていかねばならない。
二ヶ月に及ぶ冬眠中に、そんなことを考えていました。

本断ちするなど至難の業。というより、そういうやり方で何かが変わるとも思えないので、まずは大量に本を整理することから始めようかと。
そして、実際始めています。

おかげさまで5月の一箱古本市で141冊、みちくさ市で118冊手元から旅立っていきました。
その後、地元馴染みの古書店、新しく見つけた古本屋、ブックオフ数店舗へ今日までに持ち込んだ数800冊強。
合わせれば1000冊以上。しかし新刊含め100冊は購入しているので、家の中の段ボール箱山積みの風景はさして変わらない。

本をコレクションする趣味はなかった。
結婚までの6年間、風呂も冷房もないアパート暮らしの頃の蔵書数はせいぜい700冊くらい。
結婚直後も狭いアパートだったので、増えて1000冊。そんなものだった。
今のマンションに引っ越し、自室をもらってから増殖し始める。
そしてこの2年弱、古本市に参加するようになって一気に拍車がかかってしまった。

どうしても2冊とって置きたいものを除き、複数冊所有しているものは1冊にする。
それだけでも、かなりの数減らせるはず。
さらに、再読しそうにないと現時点で思える本は処分する。
この選定、本好きには極めて厳しいものがあるが、ここはもう思い切るしかないだろう。

まあ、能書きばかりたれていないで、実行あるのみですね。

今後も可能なら、年に2,3回は古本市に出たいと思っていますので、「なんだ<とみきち屋>、魅力なくなったな」と思われないくらいの本は確保して置きます(笑)

で、今夜はこの三ヶ月で6回本を引き取ってもらっている地元馴染みの古書店へ3箱、100冊ほど持ち込んだ。25年以上の付き合いで、6000冊近く買ってもらっただろうか。
それなりの信頼関係があるゆえ、ブックオフあたりで105円棚にある、月並みな本を多数持ち込むわけにはいかない。外の均一ワゴン行きが見えている本が若干混じるにしても。
売りに行く前には顔を出して、店内の在庫とかぶっていないか確認している。

こういうことを長年積み重ねてきたので、不景気なご時世にもかかわらず、均一行きを除き、納得してもらえた本は、平均して定価の15%、良い時は20%くらいで引き取ってもらえる。
ほんとうにありがたいことだ。

どんな本を処分しているのか、初めての試みですが、その一部を紹介します。

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たいしたことないですね(笑)

購入した本は以下6冊。おまけしてもらって、計2000円。

■『小林秀雄全作品 別巻1 感想(上)』(新潮社)
■『小林秀雄全作品 別巻2 感想(下)』(新潮社)
最近小林秀雄に関する本を何冊か読んでいたこともあって手が伸びた。
■檜垣立哉『生と権力の哲学』(ちくま新書)
フーコーの思想を中心に据え、ドゥルーズ、アガンペン、ネグリらの「権力」の捉え方に触れている。
■稲垣直樹『サドから「星の王子さまへ」 フランス小説と日本人』(丸善ライブラリー)
サド、バルザック、ユゴー、モーパッサン、サン=テグジュペリ、サルトル、アゴタ・クリストフが取りあげられている。各作家の日本人の読み手として、澁澤龍彦、三島、谷崎、漱石、黒岩涙香、徳富蘇峰、田山花袋、須賀敦子、池澤夏樹、大江健三郎、池内紀、川本三郎の名が。ちょっと面白そうだ。
■井上紀子『城山三郎が娘に語った戦争』(朝日文庫)
■林芙美子『めし』(新潮文庫)

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こんな本を (2010.4)

先週、平日は帰宅が午後11時過ぎ。土曜は一箱古本市助っ人集会、日曜は父の米寿の祝いと続き、今週もいろいろあってブログを書く余裕がなかった。
本番まであと6日しかないのに一箱古本市の準備も手つかず。みちくさ市前に、一箱はこれでいこうと仕分けしておいた本が段ボールに入ったまま。いつものことだがこんなんでいいのだろうか(笑)

この一ヶ月、仕事帰りの地元ブックオフと、地元馴染みの古書店を除くと、それほど古本屋は廻れなかったが、少しずつ本は購入していた。
嗜好にやや偏りがあるとはいえ、決してマニアックではないと自分では思っているものの、親しい友人からは「知らない本が多い!」と、何故か云われてしまう(笑)

〔地元馴染みの古書店にて〕

■『虐殺50周年出版 大杉栄秘録』(1973・黒色戦線社)

店主に「大逆事件、幸徳秋水、大杉栄、堺利彦関連の本最近入ってきませんでしたか」と尋ねたところ、「そういえば…」と、カウンターの後ろに積み上げられた本の山から取り出してくれたのがこの冊子。
虐殺事件前に書かれたものではあるが、前妻・堀保子による「大杉栄と別れるまで」からは、大杉の男あるいは夫としてのどうしようもない部分も伺われ、興味深く読んだ。伊藤野枝、神近市子、山川菊栄、堺利彦等の名前が当たり前のように出てくるあたりが生々しい。
「婦人公論」大正12年11月号より<殺された野枝さんのこと><「甘粕という人間」批判>、大杉栄の妹・あやめによる<甘粕事件以後>、「文藝春秋」昭和30年10月増刊より<大杉栄・遺骨奪取事件>なども載っている。1976年の増補版ではないが、いいものを入手できた。

■松下竜一『ルイズ-父に貰いし名は』(講談社)

大杉栄と伊藤野枝の間に生まれた三女ルイズ(留意子)を描いたノンフィクション。

■三木成夫『海・呼吸・古代形象-生命記憶と回想』(うぶすな書院)

専門家による科学的な判断は私の与り知らぬところだが、『胎児の世界』(中公新書)には感銘を受けた。以来、読みたいと思いながら、高額のためなかなか手が出なかった。
積み上げられていた本の中にぽつんとまぎれていた。カバー無し。一向に構わない。300円で頂戴する。

■ 霜山徳爾『素足の心理療法』(みすず書房)

版元品切れに近いと聞いていたので2冊目を購入。言わずと知れた、フランクル『夜と霧』(みすず書房)の訳者である。
岩波新書『人間の限界』を読んだのは30年近く前のことになるだろうか。その底知れぬ教養、豊饒な言葉、そして人間をみつめる眼差しの限りない深さに畏敬の念さえ覚えた。
中公新書『人間の詩と真実』も期待に違わぬ素晴らしい本だった。この2冊は何度読んだか知れない。
精神医学用語も出ては来るが、読む上で障害にはならない。上記2冊の新書は残念ながら品切れだが、もっと多くの人に読まれていい本。
古本屋で見つけたら、是非購入し、読んでみてください。そんなに高い値段はついていないと思います。
『素足の心理療法』は文字通り、心理療法に主眼を置いているため、この分野の知識を欠いていると読みにくいかもしれない。しかし、人が人の心をみつめ、ひとつの道筋を示すことにどれほど自分自身への厳しさを求められ、同時に謙虚であらねばならないかを教えてくれる、尊い本である。専門性を超えて訴えてくるものにあふれている。

〔その他の古本屋にて〕

■シオラン『シオラン対談集』(法政大学出版局)

シオランの本は6冊持っているが、理由あって2冊目となるものを探している。今回は現在蔵書にない本に遭遇。
「ライン有り」と記され定価3700円強が800円で売られていた。チェックすると、わずか4行のみ、水色のラインマーカーで線が引かれていた。読むのに全く問題なし。

■南陀楼綾繁『路上派遊書日記』(右文書院)

ブログ「ナンダロウアヤシゲな日々」の2005年分からの抜粋とある。
妻のとみきちは昔からナンダロウさんのブログを読んでいたが、私は2008年10月に「一箱古本市」に参加するまで、ナンダロウさんのことは知らなかった。というよりブログというものを読んだことがなかった。
初めての「一箱古本市」が開催されるまでの様子ほか、興味深いことが盛りだくさんに詰まっている。上下2段組430頁超の本なので持ち歩けず、自宅で少しずつ読み進めている。

■竹田青嗣『言語的思考へ…脱構築と現象学』(径書房)
みちくさ市終了間際、<わめぞ>本部で購入。古書現世さんから。

■山之口貘『山之口貘詩文集』(講談社文芸文庫)650円
■バタイユ『戦争/政治/実存』(二見書房)300円
■『ドキュメント日本人3 反逆者』(学藝書林)300円
責任編集として鶴見俊輔、村上一郎の名が挙がっている。扱われているのは、雲井竜雄、金子ふみ子、大杉栄、磯部浅一、西田税、北一輝、尾崎秀美ほか12名。

以下は古本市出品用として購入(いつ出すかは未定)

■笠井潔『物語のウロボロス』(ちくま学芸文庫) ■『考える人 戦後日本の「考える人」100人100冊』(2006年夏号・新潮社)

〔ブックオフにて〕

■髙山文彦『エレクトラ 中上健次の生涯』(文藝春秋) 500円

この本が発売された2年半前頃、本をまともに読める状態になかった、本来ならすぐに飛びついていたに違いない。
購入後一晩で一気に読んでしまった。『枯木灘』『紀州』『千年の愉楽』を読んだ時の衝撃が甦って来た。あまりにも早い死が惜しまれる。

■佐伯一麦『からっぽを満たす』(日本経済新聞社) 500円
寝る前に1日4~6頁ずつくらい、読んでいる。心洗われる書物だ。

■村井弦斎『食道楽』 上・下2冊1000円 ※下巻は現在品切れのようなのでありがたい。

<105円>

■今村仁司『ベンヤミンの<問い>』(講談社選書メチエ)
■水村美苗『日本語が亡びるとき』(筑摩書房)
■ライクロフト『精神分析学辞典』(河出書房新社)
■平林直哉『クラシック100バカ』(青弓社)
■宮下誠『ゲルニカ  ピカソが描いた不安と予感』(光文社新書)
■大橋良介『京都学派と日本海軍』(PHP新書)
■井上光晴『地の群れ』(新潮文庫)
■野坂昭如『東京十二契』(文春文庫) ほか

〔新刊〕

■『考える人 はじめて読む聖書』(2010年春号・新潮社)
これはいい。特集部分はすぐに読んでしまった。何がいいかは別の機会に。

■『一個人 奈良 古寺と仏像』(5月号・KKベストセラーズ)
パラパラとめくっていたら、郷愁に誘われ買ってしまう。大和路をのんびり散策しながら仏像めぐりをしたい。

『Witchenkare(ウィッチンケア)』VOL..1
高校の友人Aの友人・多田洋一さん(http://www.t3.rim.or.jp/~yoichi/)が編集したリトルプレス。
(神田ぱん/我妻俊樹/藤森陽子/浅生ハルミン/友田聡/多田洋一 :敬称略)
浅生ハルミンさんは初の小説「文化祭」を掲載。
多田さんは「ごくせん」「ウォーターボーイズ2」「アンフェア」などのノベライズも手がけられている。
私の高校同期・稲葉なおととも交流があるみたいなので、いつか一度お会いできたらと思っています。

〔頂戴した本〕

今年3回目となる本の数々を段ボール一箱分、葉っぱさんから送っていただいた。
御礼が遅くなってしまい、すみません。いつもありがとうございます。

■大杉栄選『日本脱出記・獄中記』(現代思潮社)
■『磯田光一著作集5 思想としての東京 鹿鳴館の系譜』(小沢書店)
■『林達夫著作集5 政治のフォークロア』(平凡社)
■『芥川龍之介未定稿集』(岩波書店)
■バリー・ユアグロー『一人の男が飛行機から飛び降りる』(柴田元幸訳・新潮社)
■坂下昇ほか『アメリカの雑誌を読むための辞書』(新潮選書)
■『宮沢賢治全集』1~8(ちくま文庫)
■田中小実昌『猫は夜中に散歩する』(旺文社文庫)ほか多数

大杉栄は岩波文庫版しか持っていないので嬉しい。
磯田は昔『殉教の美学』『吉本隆明論』『戦後批評家論』『永井荷風』『左翼がサヨクになる時』ほかけっこう読んだ。しかし今手元に残っているのは、『鹿鳴館の系譜』(文藝春秋)と『戦後史の空間』(新潮文庫)2冊のみ。『思想としての東京』が読めるのが嬉しい。

『アメリカの雑誌を読むための辞書』は懐かしい。妻も私も英文科だったのでこれは当時読んだものの、その後処分してしまっていた。

専門とはまるで違うのに、義父の書斎には柴田元幸の本が多い。先般尋ねてみたら、ご夫妻ともに親しい間柄とか。それで納得。『一人の男が飛行機から飛び降りる』は未読。

土日でなんとか「一箱古本市」の目処をつけます。
出品本の紹介もしていかなくては。
店主・とみきち、番頭・風太郎の二人で、いつも通り出店します。

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雨の外市

7日(日)、午前6時に布団にもぐり込み、9時にいったん起きる。仕事へ出かける妻を車で駅まで送る。帰宅後1時間半ほど寝て、所用をすませ、古書往来座へ。
しとしとと降りやまぬ雨は冷たく、冬が戻って来たかのようだった。

3周年を迎えた<わめぞ>の「第19回 古書往来座 外市」。二日続きの雨の影響もあって売上げはいつもの半分とのこと。天気に恵まれていれば大盛況だったはず。残念でならない。

立石書店・岡島さん、往来座・瀬戸さん他スタッフの方々、薄田さん、NEGIさん、退屈男さん、u-senさんにご挨拶しながら、1時間半近くじっくり、往来座の本も含め見て回る。
外は雨の影響を受けないようギリギリの数だけ棚がしつらえてあった。20分も見ていると手がかじかんでくる。
いつもなら多くの熱い視線をいっせいに浴びる本たちも、少し寂しげだ。とはいえ、並べられている本はいいものばかりで、光を放っていた。
店内はいくつかのエリアに分け、出品者の箱が見事に置かれている。この作業もたいへんだったはず。<わめぞ>の力を再認識。

会計をすませ、雨の中傘も差さずに立っているわめぞのボスこと古書現世・向井さんと少しお話。
まずは、ずっと探していた『中野重治評論集』(平凡社ライブラリー)を相場の半額くらいの値段でいただいた御礼。あまり見かけないこともよくご存じ。前日追加されたらしい。
以前「月の湯古本まつり」で、カバー付の2冊目が欲しくて欲しくてしかたなかった五味康祐『五味オーディオ教室』(ごま書房)を、信じられない値段でいただいたのも古書現世さんだったことを思い出す。

向井さんの話によると、二日続きの雨は初めてらしい。「今までなかったことの方が不思議なくらい」と、今回は前もって覚悟していた様子。
「こんな天候なのに、いつもの半分の売上げを達成できたのは、皆さんの下支えがあってのこと」と、笑顔で感謝の気持ちを表す向井さん。人柄が滲み出ていた。
羊三さんを紹介していただく。
そこへ、グラマラスな女性が突然現れる。
胸にボールを2個入れた武藤さん。何故?
「ボールが入っているわりには………」と私。セクハラだったかな(汗)。
そこは器の大きい武藤さん。ひと言「これは○○!」
すみません、とてもでないが書けません(笑)
「せっかく古本の深遠な世界に浸ってきたのに、最後にこれですか(笑)」と、私。
武藤さんの眼鏡フレームが壊れたらしく、目玉の絵が描かれているテープでくっつけてあった。瀬戸さん作成。それを自慢げに見せてくれる武藤さん、いいなあ。寒さも吹き飛んだ。

〔購入本の一部〕

■中野重治『中野重治評論集』(平凡社ライブラリー) 古書現世さん
■堀江敏幸『アイロンと朝の詩人 回送電車Ⅲ』(中央公論新社) 藤井書店さん
■村山槐多『槐多の歌へる 村山槐多詩文集』(講談社文芸文庫)
近代デカダンスの一典型と称されながら、結核のため22歳の若さで亡くなった画家にして詩人。すでに1冊持っているが、もう1冊欲しいと思っていた。誰の出品かなと思ったら、Pippoさんでした。今回は残念ながら会えず。
■飛鳥井雅道『幸徳秋水』(中公新書)
う~ん、やはり…と何故か納得。u-senさんの有古堂。
■長田弘『箱舟時代』(角川文庫)
退屈男さんの箱から。今回も不思議な本がいろいろありました。泉鏡花の渋い品切れ本と戸塚宏の文庫がいっしょに入っているのだから、謎です。

往来座を後にして、ジュンク堂池袋店へ。どんな本が出ているのやらと小一時間ほどぶらぶら
チャールズ・ラムの『エリア随筆』(岩波文庫)が復刊されていた。旧かなで読みづらいかもしれないけれど、いい本ですよ。

■むのたけじ『たいまつ十六年』(岩波現代文庫)
黒岩比佐子さんが聞き手になっている『戦争絶滅へ、人間復活へ』(岩波新書)がとてもよかったので、迷わず購入。

■石橋正孝『大西巨人 闘争する秘密』(左右社)
こんな本が出ていたなんて知らなかった。新刊コーナーに平積み。(ふつうの書店では考えられない?)

以上2冊購入。

高田馬場で下車、夕食。その後ブックオフ2店舗覗き、1冊のみ購入。
■黒岩比佐子『食育のススメ』(文春新書)を見つける。新刊で購入し持っているので2冊目。
黒岩さんの本は、古書店ではほとんど見かけない。買って読んだ人は、きっと手放なさないんだろうな。
ほんとうは、版元品切れになってしまった、サントリー学芸賞受賞『「食道楽」の人 村井弦斎』が欲しいのだけれど…。

睡眠不足で歩き回ったので、どっと疲れが出る。珈琲飲んでひと休み。
先日ブックオフで購入し昨夜から読み始めた、福岡伸一『世界は分けてもわからない』(講談社現代新書)を読了。帰りは『たいまつ十六年』を車内本にする。

午後10過ぎに帰宅した途端、妻から「既に電車に乗っている」とのメール。事前に連絡もらっていたみたいだが、携帯を忘れて外出してしまっていたため気付かず。着替える間もなく駅まで車で迎えに行く。日付が8日に変わる午前0時。「一箱古本市」の申し込み。無事出店できたかどうかは、メールでの返事待ち。
長い一日だった。

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もうすぐ古本市の季節到来

三寒四温の気配漂い、本格的な春の訪れはまだ先のようだが、古本市の季節はもうすぐ始まる。

まずは今週末3月6日(土)・7日(日)、<わめぞ>による「第19回 古書往来座 外市」。前回は所用で行けなかったので、今回は何とかしたい。とにかくいい本がたくさん揃っている。値段もお手頃なので、ついつい財布の紐も緩くなってしまう。

続いて、3月22日(祝・月)、<わめぞ>協賛「第5回 鬼子母神通り みちくさ市」。こちらは、一般参加できる。
昨年11月は出られなかったけれど、今回は申し込みます。私ども<とみきち屋>としては半年ぶり。
この6ヶ月で700冊以上処分したものの、何だかんだと買ってもいるので、蓄えは十分。というより、少しでもいいから(できれば二箱分)減らすことを厳命されています(笑)。
『散歩の達人』ほか、記事で紹介されることが更に増え、古本好きの間でも当然口コミ含め拡がっているので、人気はかなり高くなっているはず。申し込みは2日夜。幸い夜の仕事はないのだが、緊張するなあ。
正式に参加が決まったら、いつものようにブログで出品本の一部を紹介していきます。

4月は<わめぞ>「第4回 月の湯まつり」が4日(日)に開催。お風呂屋さんでの古本市なので風情もあって楽しめます。まだ、行ったことのない方は是非。

ナンダロウ(南陀楼綾繁)さん『一箱古本市の歩き方』(光文社新書)で、全国的に知名度の高まった「第10回 不忍ブックストリート 一箱古本市」が、4月29日(祝・木)と5月2日(日)の2日間。

5月1日(土)・2日(日)は「第20回古書往来座 外市」もあります。古本好きは休む間もない。そして16日(日)には「第6回鬼子母神通り みちくさ市」。

すごいですね。まさに黄金の2ヶ月間。

本日、葉っぱさんから本の贈り物が届く。今年2回目。わたしたち好み、<とみきち屋>のツボとも言える本がぎっしり。ただただ感謝です。

■武田百合子『富士日記 上・下』(中央公論社・初版)

中公文庫(上中下3巻)で読み、単行本は見たことなかったので、こんなに嬉しいことはない。昭和54年5月26日付け日経新聞の記事の切り抜きまで附いている。これはもう、ガラス本棚入り決定。

■花田清輝『乱世今昔談』(講談社)・『古典と現代』(未来社)

つい先日、駄々猫さんのご主人・ちゅうたさんと花田清輝に関して、簡単なコメントのやりとりをしたばかり。2冊とも未読。

■平岡正明『ヨコハマ浄夜』(愛育社)

平岡正明はそれほど読んでいないので、昨年あたりから少しずつ古本屋で購入しては、ぽつりぽつりと読み始めていたところ。う~ん、どうしてこの本(未読)を送っていただけたのか不思議でならない。

■『考える人 一九六二年に帰る』(2006年冬号 新潮社)

何と言っても大好きな佐野洋子のインタビュー「貧乏の力」に痺れる。他には津野海太郎、山田稔、和田誠、関川夏央、古井由吉、さらに植木等らが寄稿。特別読み物として、鶴見俊輔、加藤典洋、黒川創「座談 鶴見俊輔と日米交換船」も掲載されている。嬉しいですねえ。

上記以外にもサルトル、サド、ロープシン、吉本隆明、辺見庸ほか盛りだくさん。
ここでは書けませんが、今後古本市でテーマに添って出品したいと思う本も入っていました。

今日、『新書大賞2010』(中央公論新社)を購入。2009に関して昨年ブログで書いたので、今回も追って取りあげてみたい。
併せて、武田花『犬のあしあと 猫のひげ』(中公文庫)も購入。大きな書店ではなかったが平積み最後の1冊。人気ありますね。
『猫―TOKYO WILD CATS』、 『One Day―そして、陽は落ちる』、『SEASIDE BOUND』、『嬉しい街かど』の4作の中から著者が選び、加筆訂正、編集したものになっている。すべて品切れなのでファンにとってはありがたい文庫。

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プラマイゼロ? 古本購入と怪我

金曜夜、仕事帰り。コートに左手を突っ込み、右手に鞄を持ってぼうっと歩いていたら、段差に気付かず足をとられ、2、3歩つんのめり、立て直そうとしたものの敢えなく撃沈。胸のあたりをコンクリートの路面に激しく打ち付けてしまった。痛みでしばらくまともに呼吸できず。
とっさに首を上げたので、顔だけは強打を免れた。しかし、いきなり上体を反らしたので首も痛い。
転ぶまいとこらえようとしたため、腹筋と腿の裏もつっぱっている。何とも情けない。
帰宅しても痛みはひかず「もしや、この痛みは…」。

この10年ほどで2回肋骨をやっている。1回は疲労骨折。もう1回は畑道を自転車に乗っている最中、よそ見をした瞬間に石に乗りあげ転倒。頭をかばおうとしてからだを投げ出したら、胸を激しく打って、ひびが入った。
軽傷だが、今回もまちがいなくひびが入っている。咳、くしゃみはもちろん、笑った時にも痛みが走る。まいったな。

と、言いながら翌土曜は段ボール3箱、約150冊の本を地元馴染みの古書店へ処分。もうこれ以上箱詰めの本を放置しておけぬ我が家の状況。加えて、春からの古本市に参加するために、妻との約束もあり、もう待ったなし(笑)。
何故なら、本というのは不思議なことに自然増殖してしまうものだからだ。

いつものように査定してもらっている間、店内を隅々まで探索。めぼしいものをいつも置かせてもらう場所に積み上げていく。
私が本を持ち込む前、店主はジャック・アタリ『21世紀の歴史―未来の人類から見た世界』(作品社)を読書中だった。それでアタリの、とりわけ超民主主義について少し話した後に、最近の本の動きなどを聞く。
以下の本を購入。

■絲谷寿雄『増補改訂 大逆事件』(三一選書)
■人類の知的遺産『バクーニン』(講談社)

最近自宅では幸徳秋水、大杉栄、アナーキズム関連の本を手に取ることが多くなってきた。黒岩比佐子さんが、ここらあたりの事を何度か書かれているのを読んだ影響だと思う。

■リルケ『フィレンツェだより』(筑摩書房)
■ジュリアン・グラック『アルゴールの城にて』(白水社)
■深沢七郎『東北の神武たち』(新潮文庫)

いずれも、今後の古本市で考えているテーマを前提に2冊目を購入。リルケはちくま文庫版を。グラックはUブックス版を。深沢七郎は同じ新潮でも、旧版ではなく復刊文庫の方を、それぞれ出品しようかと思っている。

■シュレーディンガー『生命とは何か-物理的にみた生細胞-』 ほか

処分本を持ち込んだ後、車は妻に運転して帰ってもらう。で、一人ぶらぶらと地元ブックオフ経由で帰る。雑誌半額セール実施中。

■文藝別冊『総特集 武田百合子』(河出書房新社)275円
■新潮社100年記念『新潮名作選 百年の文学』53円

2冊ともありがたい。うちは二人とも武田百合子ファンなので、特に前者は嬉しい。

■兵頭正俊『ゴルゴダのことば狩り』(大和書房)105円
昔どこかで見たことのあるタイトルだなと思いながら、パラパラめくっていたら、何と吉本隆明が解説を書いている。そういえば、兵頭は昔、『試行』に寄稿していたような。
■松下竜一『怒りていう、逃亡には非ず 日本赤軍コマンド泉水博の流転』(河出文庫)105円

本日日曜は朝から夕方まで仕事。ひどくはないが、肋骨が痛む。当分湿布のお世話になるな。
仕事を終え、久しぶりに沿線の、おじいちゃんがやっている小さな古本屋さんへ。目立たない店だが、けっこういい本置いている。

驚きました。ついについに念願の2冊目購入。
篠山紀信・中平卓馬『決闘写真論』(朝日文庫)。絶版になって以来ずっと足を使って探し続けてきたが、古書買いエリアの狭い私にはお目にかかる機会が全くなかった。ネットでの相場よりは安かった(ネットで買うつもりは全くなかったが)。でも、値段ではない。見つけられたことが嬉しくてならないのだ。これを古本市に出すかは迷うな。
しばし喜びに浸る。その後、ふっと目を移すと、洲之内徹『気まぐれ美術館』(新潮文庫)。新古書店ではないので半額というわけではないが、これも頂戴する。これで何冊買ったことになるのか。
期待はさらに膨らむ。棚をじっくりゆっくり見ていく。
「どうしてここに…」と思わず絶句。
五味康祐『いい音、いい音楽』(読売新聞社)! 昨秋の一箱古本市で手持ちの中から出品し、喜んで持ち帰っていただいた本だ。1000円でも安い。しかし…。あまりにも汚れが酷い。現在2冊持っているので、この状態ではさすがに追加購入は無理と諦める。
しかし大満足。

帰り、懲りもせず、地元のブックオフを覗く。単行本500円均一セール。こんな時間では何も残っていないだろうと、冷やかし半分で棚を眺める。けっこう隙間ができている。朝から大量買いの跡がくっきり。ところが。
いやあ、残っているものですね。運がよかったというのか。

■田中美代子『三島由紀夫 神の影法師』(新潮社) 525円

これは『決定版 三島由紀夫全集』(新潮社)月報連載がもとになっている。女性による本格的な三島論はこれまで読んだことはなく、著者は全集の編集委員でもあった。期待大。

ついでに、■木下和寛『メディアは戦争とどうかかわってきたか 日露戦争から対テロ戦争まで』(朝日新聞社) ■臼井吉見『肖像八つ』(筑摩書房)を各105円で購入。

夜、妻に、「肋骨にひび入ったけれど、その分いい本買えて、元とったよ」と得意げに話すと、唖然とされた。変なこと言ったかな?(笑)

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「羽鳥書店まつり」へ

このイベントの企画を「古書ほうろう」さんのブログで知ってから、ずっと気になり注目していた。しかし、初日の11日は祝日なのに仕事で行けない(泣)。この時点で足を運べるとしたら、最終の日曜くらいか…と消沈。
10,000冊近い出品本の中からごく一部をブログで紹介していたが、そのラインナップを見るだけで、100円、500円、1,000円での均一販売がいかに凄いことになるかは、私のような素人でも想像がついた。
故に、開催後は「羽鳥書店まつり」に関するブログはできるだけ見ないようにした。
だってそうでしょ。「こんな本を100円、500円で買いましたよ」なんて報告を見てしまったら、地団駄踏み、臍を噛み、倒れてしまいかねない(笑)。

<どすこいフェスティバル>のKさんから、行かねばきっと後悔するーと思わせてくれる、温かいご案内をいただき、最終日に駒込大観音光源寺へ駆けつける。
終了1時間半前到着。既に9割以上売れてしまっていたような。
それでも、けっこう人がいる。女性も多い。
じっくり手にとり、ところどころ目を通しながら買いたい性分なので、押し合いへし合いは苦手。輪の外から指をくわえて順番を待つこともなく、落ち着いて見られたのでその点はよかった。(半ば悔し紛れ)

「古書好きどもが夢の跡」、不図こんな言葉が口をつく。空しさを感じたという謂いではない。
むしろ、「新たな胎動」を、残っていた本からインスピレートされた。
多くの本好きの方が、目を光らせ、驚きと歓喜とともに数々の本を手にする様子が、ありありと目に浮かぶ。
そんな夢のような時の名残が、なんとも言えぬ心地よさとともに伝わってきた。

羽鳥和芳氏個人の圧倒的な蔵書が多くの人動かした。
既に補充分も尽き、残されたわずかな本を見ただけで、そう実感できたことを嬉しく思う。

まだまだ本は多くの人に求められている。
書痴に限らない。本好きは多種多様だ。

一箱古本市、みちくさ市、古書往来座外市などにも、ふらっと立ち寄った人が、「ああ、こんな本があるんだ」「昔読んだ、懐かしいな…」「何だか面白そう」と、創出された空間に触発され、持ち帰る光景を何度も見てきた。

個人蔵書による古本市への興味だけで、これだけの盛況を極めることはなかったのではないかと思える。出品された本の量、ジャンルの幅広さ、質。他の古本市では無理と思われる値段(安価)での、3段階均一販売も大きな要因になっていたはず。
そして、この企画を考案した宮地さんはじめ「古書ほうろう」の皆さんの情熱、不忍ブックストリートの中心的な役割を担っている方々や地元の支え、そして<わめぞ>の方々の頼もしく、暖かいバックアップがあったことを忘れてはならないだろう。
羽鳥書店および羽鳥社長が東大出版会時代に手がけた出版物も新刊本として、地域雑誌「谷根千」とともに、往来堂書店の協力により販売されていた。

残り香を堪能したに過ぎないが、かつてない画期的な試みであったと言える。

会場では過日定年を迎えられたモンガ堂さんにご挨拶。さすがモンガ堂さん、4日連続の皆勤。
ご家族で来られていたjunglebooksさんにお会いする。かわいい息子さんに「こんにちは」と声をかけて貰った。残りわずかな時間を、お互い本探しに専念。短い立ち話のみでお別れする。Yさんも皆勤とか。そのエネルギーに脱帽。

<わめぞ>立石書店・岡島さん、やまがら文庫のYさんたちが、どんどんなくなってゆく本の整理をひっきりなしにされていた。箱に空きができると、客が見やすいよう、思わず手に取りたくなるよう、絶妙にレイアウトを変えていた。こういう心配りが、本の売れ行きをさらに加速させているのだなと実感。
岡島さんからは「次は3月ですよ!」と言われる。そう、「古書往来座外市」(3月6・7日開催)「第5回鬼子母神通り みちくさ市」(3月22日開催)と続く。
今のところ仕事の予定はない。問題は、私が店主とみきち(妻)との約束を果たせるかどうかだ(笑)

宮地さん、ミカコさんともお話しさせていただく。
「みなさんの喜ぶ様子を見ていられるのが嬉しくてならない」という宮地さん。
疲れはピークに達しているはずなのに、淡々と、穏やかな笑顔でおっしゃる。
ああ、こういうところに惹かれるんだなあと、思いを新たにする。
ミカコさんからは、羽鳥社長には断腸の思いもあったのではないかというようなことをうかがう。
20年かけて購入された本たちへの愛情はいかばかりか。本好きなら想像つくはず。
売ることを前提にして買った本ではないのだから。

宮地さんたちは、愛蔵書が旅立つにふさわしい場をつくり上げた。
素晴らしいことだと、心から思う。

<購入本>

■三浦雅士『夢の明るい鏡』(冬樹社)
■西谷修・鵜飼哲・宇野邦一『アメリカ・宗教・戦争』(せりか書房)
■西谷修・鵜飼哲・港千尋『原理主義とは何か』(河出書房新社)
■鶴見俊輔『戦時期日本の精神史』(同時代ライブラリー・岩波書店)
■丸山圭三郎『カオスモスの運動』(講談社学術文庫)
■井上健『作家の訳した世界文学』(丸善ライブラリー)
■現代思想『いまなぜ国家か』(青土社)
■現代思想・臨増『思想としてのパレスチナ』(青土社)
■大航海『カリスマ 天皇制からイスラム原理主義まで、現代社会を解く鍵!』(新書館)
■大航海『1990年代 新世紀への飛躍のためのこの10年!』(新書館)

三浦雅士は、先日触れた堀江敏幸『書かれる手』(平凡社ライブラリー)に刺激されたかな。昔読んで売ってしまったが、パラパラめくっているうちに当時が思い起こされ、手元に置きたくなった。
『ユリイカ』1970-1975、 『現代思想』1975-1981における編集後記集。巻末には各誌の総目次も載っている。(『ユリイカ』1970.7-1975.1・『現代思想』1975.4-1981.12)
西谷修は、『不死のワンダーランド』(講談社学術文庫)を読み終えたばかりなので、もう少し拡げてみようかと。鶴見、丸山は持っているが100円に惹かれ2冊目。

会場を後にし、「古書ほうろう」へ。私の好きな人文系の魅力ある本がたくさん揃っている。古書組合に属さず店買いだけで、どうしてこれだけの本が集められるのか、いつも不思議に思う。千駄木という地域性を差し引いても。

選んだ本をカウンターへ持っていこうとしたら、聞き覚えのある声が。古書市で知らない人はいないというHさん。店内で購入され、そのまま店を出て行かれそうになったので、慌ててご挨拶。
「いやあ、Hまつりかと思いましたよ」と満足気なご様子。いったいどれくらい買われたのだろう。想像もつかない。
店にいらっしゃった山崎さんとも少しお話しさせていただく。今までにない大きな試みで、さぞかしたいへんだったことが言葉の端々からうかがわれた。
私が店内にいる間にも、「羽鳥書店まつり」の後、店に寄られる方が何人もいらっしゃって、皆さん「よかったですよ」「すごい催しでしたね」と感想を伝えていた。それを聞く山崎さんの嬉しそうな横顔がとても印象的だった。

第10回不忍ブックストリート「一箱古本市」は4月29日・5月2日開催。こちらも楽しみだ。

<購入本>

■エリ・ヴィーゼル『夜・夜明け・昼』(みすず書房)
■プリーモ・レーヴィ『アウシュヴィッツは終わらない』(朝日選書)

ヴィーゼルは『死者の歌』と『夜』は読んでいた。(『夜』は最近新版が出たみたいだ)
『夜』に始まる3部作の残りをようやく読める。少し傷みはあったが、1000円でいいのですか?と思わず口に出そうになる。
フランクル『夜と霧』(みすず書房)は幾度となく読み返しているのに、レーヴィは、恥ずかしいことに『いまでなければ いつ』(朝日新聞)しか読んでいなかった。つまり肝心要の本を未読。さっそく読まなければ。

■ビュトール『心変わり』(清水徹訳・岩波文庫)

かれこれ30年前に読んだ河出書房新社版はまだ手元に残っているのだが、全面的に改訳したと書かれている上に、文字も大きくなっているので思わず買ってしまう。

■リテレール別冊4『1993年 単行本・文庫本ベスト3』(メタローグ) 100円

これは買いそびれていた。帰りの電車の中でパラパラ拾い読み。久世光彦がこんなことを書いている。
「つい先ごろ、たまたま『パルムの僧院』を読まねばならぬことがあって読み出したら、面白くて夜が明けてしまった。私が毎日、習慣だけで通っている書店の本棚に並んでいる膨大な新刊本の中に、これより面白い本が一冊でもあったら、お目にかかりたい。となると、新しい本は、好きで、信用している作者のものしか読まないということになるのだ」
生きているうちにあと何冊本が読めるかを考えた上とはいえ、こう言い切れるところがすごい。いまだに乱読三昧の私には耳が痛い。

■北上次郎『感情の法則』(早川書房) 100円

新刊で読み、幻冬舎で文庫化された際、文庫を買い単行本は売ってしまった。しかし、先日夜中に何とはなしに手にとって読み始めたら、しみじみ。単行本もとっておけばよかったなと後悔。それから1週間も経っていない。何というタイミング。

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こんな本を(2)

久しぶりの休日休み。地元馴染みの古書店に出かけ、至福の時間を享受。昼間だったので、客の出入りも多く、店主との会話は短め。

■キルケゴール『誘惑者の日記』(ちくま学芸文庫)■リラダン『未来のイヴ 上・下』(岩波文庫)■庄野潤三『野菜讃歌』(講談社文芸文庫)購入。

庄野潤三の随筆はまだ出たばかりではなかったか。この一年、いい本を早めに、或いはきれいな状態で処分してくれる新しい客が何人かついたようで、その恩恵に与ることがふえてきた。

『野菜讃歌』は佐伯一麦による解説がいい。<チャールズ・ラムに親しみ、「平明で、悠々としていて、しかも胸に迫ってくる」表現を目指した庄野潤三によって差し出された、手のひらで自分から触れさすった人生の断片断片が、目に見えぬ波紋となって、こちらに伝わってくる>
たとえ庄野潤三ファンでなくとも、思わず手にしてみたくなる。

暮れから正月の休みを除いた12月から1月は、仕事帰りに、土日も含めほぼ毎日のように閉店(23時)間際の20分ほど、地元のブックオフに寄る機会があったので、定点観測できた。単行本500円均一、雑誌半額セールも多かった。カウンター横のストッカーに翌日出し予定の本が補充されたばかりという時も多く、おっというものも結構目にし、いただいた。
かなり前から購入しなくなったレコード芸術のバックナンバーが30冊ほど大量に出ていて、半額53円に惹かれ、10冊も買ってしまった。ワルター、トスカニーニ、クレンペラー、プッチーニ、黄金の50年代、名録音列伝ほか読みたい特集が掲載されている号をメインに。図書館でコピーすることを考えてもはるかに安上がりだ。必要なところだけ切り取って、残りは即資源ゴミに出した。

ブックオフ500円(単行本均一セール)購入本

■栗原裕一郎『<盗作>の文学史』(新曜社)

500頁に及ぼうかという大部の労作を、この値段で入手するのは著者に申し訳ないなと思いつつ購入。「この本は読んでおかねば」と思いながら、一年半近い月日が流れてしまった。
「盗作」「盗用」「剽窃」「無断引用」「借用」「無断借用」などのマスコミが使うジャーゴンと、司法判断の絡む「著作権侵害」は一線を画するものとして、これまでの盗作問題に触れると著者は「まえがき」に書いている。かような視点は自分にも明確には無かったので、とても興味深い。

■柳田邦男『新・がん50人の勇気』(文藝春秋)

『ガン50人の勇気』の出版が1981年だから、四半世紀以上経ての第二弾になる。1986年には『「死の医学」への序章』が出版され2作とも深く心に刻まれている。以来、同著者によるこの分野の本は欠かさず読むようになった。
「自身が同じ境遇になったら、どう受けとめていけるか」。そんな思いで読むわけではない。ほんとうの苦悩は本人にしかわからないと思えるから。だらしない自分の生き方を突きつけられるばかりだ。
近しい人が病に罹ったとき、どう気持ちを寄せていけばいいのか、その縁となればという、考えようによっては情けない動機で繙いていると言えなくもない。

■加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)

この本、昨年の夏に出版されて以来かなり売れているようだ。
『戦争の日本近現代史』(講談社現代新書)における、「なぜ戦争になったのか」「深いところで人々を突き動かした力は何だったのか」を問うために、戦争を相互性という観点で捉える著者のスタンスは新鮮でもあったが、一般民衆(国民)の認識の変化を描くという点ではもの足りず、為政者側や各国の思惑、国家間のパワーバランスの説明に傾いているのでは、という印象を拭えなかった。文章もこなれておらず、やや読みにくかった。
『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』は、高校生相手の講義をまとめたもので、新書では扱われなかった太平洋戦争に触れているだけではなく、序章において9・11テロ、南北戦争、ベトナム戦争、E・Hカーの歴史観にも言及しているようなので、期待したい。

■古井由吉『人生の色気』(新潮社)
■青海健『三島由紀夫の帰還』(小沢書店)
■仲正昌樹『<学問>の取扱説明書』(作品社)

ブックオフ105円購入本

■『植草甚一スタイル』(平凡社・コロナブックス)

昨年ナンダロウ(南陀楼綾繁)さんと津野海太郎さんのトークを聞き、津野さんの『したくないことはしない 植草甚一の青春』(新潮社)を読んでから、俄然興味が湧いてきた。(正直それまでは、自分の読書対象から外れていた)
その途端、こういう本が飛び込んで来るのだから何とも不思議なものだ。スクラック・ブック、コラージュ、イラスト、手紙など何度も何度も食い入るように見てしまう。

■青澤唯夫『名指揮者との対話』(春秋社)
ケーゲル、クレンペラー、チェリビダッケとの対話が魅力。
■車谷長吉『文士の生魑魅』(新潮社)
■森川哲郎『暗殺百年史』(図書出版社)
■『アメリカの中の原爆論争-戦後五〇年スミソニアン展示の波紋-』(ダイヤモンド社)

■加藤清・鎌田東二『霊性の時代 これからの精神のかたち』(春秋社)

鎌田東二の本は、中上健次との対談『言霊の天地―宇宙・神話・魂を語る』(主婦の友社)を読んで以来になるかな。帯に「新たなスピリチュアリティへ」と謳ってあったので迷ったが、パラパラ読んでみたら(対談相手の精神科医・加藤清も相当な変わり者だが)、シモーヌ・ヴェイユのことを「創造の病」と捉え、親鸞との類似性を語っているところが面白く、読んでみようと思った。

■五味川純平『人間の條件』上・中・下(岩波現代文庫)

昔読んだのは、三一新書(学生の頃だったので売ってしまった)。棚を眺めていたら厚い3冊の文庫本が目に飛び込んできた。岩波現代文庫に入っていたとは。読み返してみたくなる。

■木村敏『偶然性の精神病理』(岩波現代文庫)
■廣松渉『唯物史観と国家論』(講談社学術文庫)
上記2冊は以前単行本で読んだものを買い戻したかたち。

■西谷修『不死のワンダーランド 戦争の世紀を超えて』(講談社学術文庫)

ハイデガーが説く「死」と「存在」の問題に、レヴィナス、バタイユ、ブランショの思想を対比させ、彼らのテキストから次のような教えを読み解いている。

ひとが死とほんとうに関わるのは主体としではなく、「私」の固有性を形成する力を失いつつ、つまりは死を「私の死」として保持する力を失いつつ、固有性の解体の中なかで、誰にも属さない無縁な死に包まれながらその死の圏域に呑み込まれてゆくのであり、ひとはついに死を手に入れることなく、主体として完結することなく消滅してゆく。

アウシュヴィッツ、戦争、テクノロジーの進化、核、あるいはまた尊厳死、脳死まで多くの問題のなかに、ひとを固有の「死」から遠ざけさせるものが潜んでいることを示唆する本書は、読むに値すると思えた。

■久松真一『東洋的無』(講談社学術文庫)
■デューイ『哲学の改造』(岩波文庫)
■フィヒテ『ドイツ国民に告ぐ』(岩波文庫)
■ワーグナア『芸術と革命』(岩波文庫)
■三島由紀夫『荒野より』(中公文庫)
■稲垣正美『可能性の騎手 織田作之助』(現代教養文庫)
■パルマー『サルトル』(ちくま学芸文庫)

■鶴見俊輔『ひとが生まれる』(ちくま文庫)

金子文子と林尹夫について書かれている。
朴烈事件(1923年)で死刑判決を受ける(1926年)も、特赦により無期懲役に減刑。しかし、獄中数え年23歳で縊死した金子文子。彼女の『何が私をこうさせたか 獄中手記』(春秋社)のことを鶴見俊輔はいろいろなところで触れている。
終戦わずか19日前に四国沖で散華した林尹夫の『わがいのち月明に燃ゆ』(ちくま文庫)を読んだのは15年ほど前だった。
戦時下の手記を読むつど、理不尽とも言える死を覚悟せねばならぬこの時代の青年たちの多くは、なんと濃密な時間を生きていたのだろうと思わされる。複雑な思いに囚われる。

国家、それは強力な支配権力の実体である。それを無視し、この点から遊離して論じてはならない。ぼくは、もはや日本を讃美すること、それすらできないのだ。むしろ無用にして有害な感傷として排除したい。
戦争は国体擁護のためではない。そうではなくして、日本の基本的性格と、そのあり方が、日本という国家に、戦争を不可欠な要素たらしめているのだ。現実に、日本が戦争を要求している事実こそ、戦争への道なのだ。
ぼくらはこの戦争に耐えねばならぬ。そして根本的に日本の国家をよくしよう。それは、日本の人間そのものをよくし、発展させるためには、もっとも効果的な方法なのだ。
だが、ぼくは、この戦争で死ぬことが、我ら世代の宿命として受けとめねばならぬような気がする。根本的な問題について、ぼくらは発言し、批判し、是非を論じ、そして決然たる態度で行動する、そういう自主性と実践性を剥奪されたままの状況で戦場に出ねばならぬためである。だから宿命というのだ。
戦争で死ぬことを、国家の、かかる要求で死ぬことを、讃えたいとは露ほども思わぬ。その、あまりにもひどい悲劇ゆえに。
ああ、すべては宿命だ。その宿命を世代としてにないながら、しかもこれに抵抗せねばならぬ矛盾のなかに、われら、人の子の悲しい定めがあるのだ。
感情は恐ろしい。だが、理性に従わねばならぬのだ。精神が歪んではならない。 (昭和16年10月12日 第三高等学校二年)

太平洋戦争勃発二ヶ月前に書かれたものだ。そして2年後の昭和18年12月、京都帝国大学在籍時、学徒出陣で海軍へ。
林尹夫のことは、神坂次郎も『特攻―若者たちへの鎮魂歌(レクイエム)『』(PHP文庫)の中で、不羈の俊才として触れている。

『何が私をこうさせたか 獄中手記』、『わがいのち月明に燃ゆ』とも是非読んでもらいたい手記。(後者は古書でしか入手できないが)

■烏賀陽弘道『「朝日」ともあろうものが』(河出文庫)

記者クラブの存在がジャーナリズムの病巣の要因になっていることは、岩瀬達哉『新聞が面白くない理由』(講談社文庫)に詳しい。そこでも朝日とリクルートの結びつき、朝日による『Views』広告掲載拒否事件ほか、他社への厳しい批判の根底にある理念を自社問題となるとないがしろにする悪しき体質を撃つことに紙幅の多くを割いている。
朝日新聞社に17年間記者として務めた著者烏賀陽が自身の経験を土台に、マスメディアの問題点をどう抉っているのか興味深い。

■吉田秀和『モーツァルトを求めて』(白水Uブックス)
■小川洋子『心と響き合う読書案内』(PHP新書)
■務台理作『現代のヒューマニズム』(岩波新書)
■栄沢幸二『日本のファシズム』(歴史新書・教育社) など多数

さして期待もせずに買って読んだ『BRUTUS 吉本隆明特集』(2月15日号)、思っていた以上の出来で驚いている。私にとって新しいと言える情報は少ないが、若者向けの情報発信としては十分及第点ではないか。こういう切り口の吉本特集雑誌、見たことなかった。

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