カテゴリー「写真」の投稿

古本の日 いつもの古書店で

夜、馴染みの古書店へ。店主とは写真集の話に興じる。「中平卓馬の写真集はありませんかね」と尋ねたら、現在は在庫なしとのこと。それを機に、いろいろと昔の面白い話を聞かせてもらう。

●中央公論社から発行された映像の現代シリーズをセットで売ろうとしたものの、半年経っても買い手が見つからず、それぞれ値段を考えてバラ売りしたところ、3ヶ月後には完売。しかも、当初セット価格でつけた値段をはるかに上回った。ちなみに森山大道の『狩人』は20万円で売れたみたいだ。

●ある日、細江英公の『薔薇刑』を探しているという女性から電話。持っていると伝えると、「実物を見たい」と言う。やって来たのは豪華な装いの年輩女性で、少しアルコールが入っていたらしい。それでも、手にとって見る目は真剣そのもので、ひととおり目を通すと、「いただくわ。ほかに、面白いものある?」と訊かれ、これはと思う写真集を何点か見せると、計4冊40万円分購入。「彼氏へのプレゼントよ」と微笑みながら、店を後にしたとのこと。

店の奥から森山大道の写真集を出して来てくれたので、見せてもらう。値段もけっこうするが、彼にはこんな写真集もあったのかと思えるものだった。写真集は、来店時、実物があるならすぐ見たいというお客様ばかりなので、めぼしいものは倉庫にではなく店内に置いておくらしい。その後、牛腸茂雄の話を聞かせてもらう。写真についてほとんど知識がないので、初めて聞く写真家だった。どのような写真かを聞いているうちに、魅力を感じ欲しくなる。ネットで調べたものの、高価なものが多い。「SELF AND ATHERS」なら、手の届く範囲だが、とにかく一度図書館で探して、牛腸の写真を見てみよう。

〔 購入本 〕

■ クルト・シュナイダー 『病態心理学序説』(中央洋書出版部) 1000円

20年前に、『臨床精神病理学』(改訂増補第6版・文光堂)を読んだが、この本の存在は知らなかった。「心の異常、心の病態とは、いかにして了解され得るものか?今日の精神病理学の発展に重大な影響を与えた、ヤスパースとならぶハイデルベルク学派の代表的精神科医が、冷たく美しい結晶のような文体で綴るこのうえなく簡潔で端正な精神病理学総論」と、帯に銘打ってある。

■ 三浦つとむ 『マルクス主義の復原』 (頸草書房) 800円

吉本隆明『言語にとって美とはなにか』で、この著者の存在を知った。官許マルクス主義をどう捌いているか、楽しみだ。何度か読んだ、三浦つとむ『日本語はどういう言語か』(講談社学術文庫)は、実に斬新で刺激的な本だ。今なお色褪せていないと思う。他に『弁証法はどういう科学か』(講談社現代新書)、『ものの見方考え方』(頸草書房)を読んでいる。『こころとことば』(明石書店)も是非読んでみたい。

■ 井上日召 『一人一殺』 (新人物往来社) 200円

あの血盟団事件を起こした背景に何があったのかを知る、ひとつの縁(よすが)にはならないかと思い購入。井上本人は「一殺多生」をスローガンにしていたと聞いている。それにしても200円は安すぎる。まだ店頭に出していないものを、ちらっと見かけ、この値段で譲ってもらった。

■ 鶴見俊輔 ほか 『まげもの のぞき眼鏡』 (旺文社文庫) 200円

鶴見俊輔、多田道太郎ほか6名が大衆文学の魅力を伝える本。『虹滅記』『やちまた』の著者、足立巻一が執筆者に名を連ねているのだから、買うしかない!

帰宅後、昼間読み始めていた、篠山紀信 中平卓馬『決闘写真論』(朝日文庫)を一気に読了。13年以上前に購入した本だが、これで通読は5回目になるだろうか。部分的には何度も読んでいる。いつかブログで取りあげてみたい。

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「古書ほうろう」さんとの出逢い、そして縁

仕事帰りに千駄木へ足を運ぶ。「古書ほうろう」を訪ねた。噂に違わぬ、いや噂以上に魅力ある古書店だった。

想像していたよりも広いスペースの中、ジャンル別に仕分けされた本が、ぴっちり整然とではなく、一冊ずつ時間をかけて見たくなるような、心地よい案配で並べられていた。昔風の古色蒼然たるイメージはなく、清潔感があって、店内のあちらこちらに目移りしてしまう工夫も凝らされている。様々なイベントのチラシ、小物、こだわりの商品や本も、訪れた者を飽きさせない。私のような素人には、お初にお目にかかる本ばかりだ。なのに、その多くの本からは(実際は稀少で高価な本であっても)「さあどうだ」と、こちらを圧倒せんばかりの表情は感じられず、購入しなくとも、出逢えたことに喜びすら感じられるのが不思議でならなかった。経営する4人の方のこだわりが随所に見えながら、繊細かつ控えめに、店そのものを表現しているようにも感じられた。

漏れ聞こえてくるお客様との会話からも、店のポリシーが感じられた。買値を付けられる本とそうでない本を丁寧に説明している様子に、こちらまでやさしい気持ちになってしまう。

私の周りには、「古本屋さんに一度本を売りに言ったら、ひどく横柄な態度で、怒られているように思えた。以後、二度と行く気にならない。」と言う者も少なくない。
「古書ほうろう」さんのような古書店に最初に巡り逢えていたら、抱くイメージも違っていただろう。

「秋も一箱古本市」で、私どもが並べた箱を見て「いいですねえ。テーマがあって。こういうの好きですよ」と声をかけていただいたのが、今日お店に出られていた宮地さんとの初めての出逢いだった。単に髪を短くされているからではなく、穏やかでありながら、内面には厳しく鋭い目を持つ、「僧侶」のような印象を私は受けた。その後、茶話会でお会いし、いろいろと話をさせていただいた。「本にも念が宿るんですよ」という宮地さんの言葉が忘れられない。営業のお邪魔をするわけにはいかないので、話せたのは、本を購入した際の、ほんのわずかな時間ではあったが、今もって私の印象は変わらない。店内のBGMは、ピアノ演奏によるクラシック音楽だった。宮地さんの好みと思われた。

帰宅してから、宮地さんが昨年11月に書いた記事を見つけて読み、自分の推測が間違いではなかったと知る。「50年前の音楽会」の魅力的なこと!クラシック音楽ファンにはたまらない内容だ。コルトー、バックハウス、ハイフェッツ、シゲティ、ケンプ・・生で聴けたらどんなに素晴らしかったことだろう。想像するだけでため息が出る。すべて、私が生まれる前の演奏会ゆえ、はかない夢に過ぎないが。

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