好きな本を通して人と出逢える。たとえ会話を交わすことがなくても、お客様が本をじっと手にとり、ページをぱらぱらとめくり、時に気になった箇所を読まれ、確認を終えた後にそっと差し出される。
自分が気に入っている本を、お客様が手にとられた時のドキドキ感。結果箱に戻されることになっても、残念というより、少しでも興味を抱いてもらえたことが不思議な喜びとなって心に満ちてくる。
かなり迷われている時に、その本の特長をどう説明しようかなと考え、話しかけるタイミングを待つ時間が楽しい。そしてお客様が嬉しそうに本を持ち帰っていかれる時の表情を見られるのが、何より嬉しい。
日常では決して経験できない、そういう一瞬一瞬を心に刻めるのがたまらなく心地よいものだから、「古本市」となると参加したくてうずうずしてくる。
それでは、みちくさ市当日のお客様の様子や、購入していただいた本や自ら買った本などについて一部をご紹介いたします。(読みにくくなりそうなので、お客様ではありますが丁寧な表現は避けました)
午前中、特に開店から1時間以内の11時ころまでは、来店者はそう多くはなかったのですが、明らかに本好きの方が来られた気がします。
まず売れないだろうと思っていた、秋山駿『人生の検証』(新潮文庫)。「秋山さんがこんな文庫出していたなんて知らなかったな」。200円という値段関係なし。内心<やった!>。
発売直後読み終えてしまった、岩佐東一郎『書痴半代記』(ウエッジ文庫)を出品。
「なんだ~、昨日新刊買っちゃったよ。でも、なんで出してるの?」と中年の男性。
「もう読み終え、いい本だけれど再読はしないかなと思いまして。雨で今日に順延にならなかったら購入していただけたかもしれませんね。」
10分と経たないうちに、別の男性が来店、400円でご購入。その後、最初の男性が戻って来たので、
「あれ、売れちゃいました(笑)」
「そりゃそうでしょ(笑)」
値段とは関係なく、ブックオフでは1年待っても出てきそうにない類の本ということで意見が一致。
洲之内徹『気まぐれ美術館』(新潮文庫)。5月4日の「一箱古本市」では文庫3冊セットを出品予定だが、単行本があるので、「みちくさ市」にも試みに出品。 開店間もなく男性がすっと寄ってこられ、他の本には目もやらず「探してた。ありがとう。」とお持ち帰り。
大学生と思われる若い男性。オシャレな装い、知的な雰囲気を湛えている。 「お待ちしておりました」と声をかけたくなるような、番頭好みの(本の好きそうな)お客様。
まずは『レヴィナスコレクション』(ちくま学芸文庫)を手にとって、何ページか読まれ、値段を確認。ちょっと躊躇うが箱には戻さず、とりあえずキープ。次に吉田健一『シェイクスピア』(新潮文庫)。
<いいなあ。話しかけたい。> しかし、じっと我慢。ゆっくり選ばせてほしいという感じがしてならないので。しばらく迷ってからレヴィナスと合わせ2冊ご購入。「嬉しいです。気持ち割引させていただきます」
で、店を離れるかと思いきやまたしゃがんで、今度は、ルソー『人間不平等起源論』、トルストイ『イワン・イリイチ/クロイツェル・ソナタ』、いずれも光文社古典新訳文庫を手にとり、ご購入。計4冊、ありがとうございました。
永江朗の本を手にとった若い女性が連れの方に、「この人の授業今受けているんだけど、面白いよ」と声をかける。しかし反応なし。永江さんの話を近くで聞いたことのある店主とみきちが、「そうですよねえ。たくさん本も書いていらっしゃるし」。すると、W大生と思われる彼女、「へぇ~、知らなかった」。おそらく入学したばかりで、まだ詳しくは知らないのだろう。永江さん、自著の宣伝はされていないご様子。
ちょっと足のご不自由そうな高齢の女性が、杖をつきショッピングカートを引きながら、ご来店。今東光『毒舌日本史』(集英社文庫)を手にとられ、じっくり3分ほど読んでいる。箱に戻される際かがむのはお辛いだろうと思い、前ににじり寄って受け取る体勢を整える。すると、手は箱ではなく私の方に伸びてきた。日本史に興味があるのか、今東光のファンなのかわからないが、嬉しくてならない。とみきちが了解をとった上で、女性がかがまないですむようにカートのバッグの中へ本を入れさせていただく。当店で購入後お隣でも足を止められたことから、一店一店見ていらっしゃるご様子。からだへの負担があるはずなのに、本がお好きなんだな。お会いできてよかった。
こんなことを思った。年輩の方がかかんだまま本を探されるのは辛いだろうなと。といって、立ったままだと文庫本の(特に背表紙は)タイトルは読みとりにくい。
箱やかごを多く用意するのは、閉店後返送するにも、持ち帰るにも手間にはなるけれど、許す限り持っていこうと思った。均一料金で箱を分ける際も、ジャンルの似たものをできるだけ近くに置くように。アットランダムに並んだものの中から、お目当ての本を見つけだす楽しみもどこかで残しつつ、基本はやはりお客様が見やすいようにしていこうと。「とみきち屋」は品揃えの影響もあってか、若い方が極端に少なく、年輩の方が多いから。
高齢の男性が、空箱を立てた上に載せたかごの中の、森田草平『夏目漱石(1)~(3)』(講談社学術文庫)に興味を持たれた時には、<おっ、もしかして>。 しかし、(値段がご不満だったか、状態がよくなかったのか)あえなく撃沈。次にヘンリー・ジェームス『鳩の翼上・下』(講談社文芸文庫)を手にとられる。<大事に読んだ本だから状態はいい。でも値段が。これもダメかな・・・>と諦めかけていたところ、何と買っていただけた!「みちくさ市」は外国文学の動きがよくないですねと、プレ開催以来「あり小屋さん」と話していただけに嬉しい。そう言えばマルセル・エイメの福武文庫も店を離れている間に売れていた。こういう作品に興味のある方も来店してくれたのだなと思えたりする。自ら出品しておきながら変な感想ではあるが。
独特の雰囲気を持った女性がご来店。うまく表現できないのだが、単に本にかなり詳しいというだけでなく、自分の世界を持っていて、不思議なオーラを感じるというような。言葉はほとんどなく、じっと手にとった本と対話をしているようにも見えた。高見順『いやな感じ』(新潮文庫)、『昭和文学盛衰史』(講談社)、壇一雄『リツ子その愛・その死』(新潮文庫)をまとめて3冊ご購入いただく。
それぞれ単行本、文庫本、同じ文庫というように所有しているので出品したのだが、格別に嬉しい。
島尾敏雄『日の移ろい』『続・日の移ろい』他3冊購入いただいた女性ほか3人ほどから「ふだんはどこでお店出されてるの?」という感じで尋ねられ、言葉に窮したものの嬉しくなったのも事実。
「『パイプのけむり23』はないの?それだけ持っていないよねえ」と訊かれ、團伊玖磨の本とはわかっても、どうお答えしていいやら。
「ねえ、この市はいつやってるの?今日はちょっと買っている時間がないのよね」と話しかけてこられる女性や、林語堂『蘇東坡上・下』(講談社学術文庫)と小島政二郎『葛飾北斎』(旺文社文庫)を嬉しそうに購入されていく女性がいたり。
プレ開催以来勝手に私どもが「はにかみ高校生」と呼ばせていただいている高校生にも再び来店いただき、中野好夫『人間うらおもて』(ちくま文庫)を持ち帰ってもらったりと、もりだくさん。
昨秋の「一箱古本市」以来何かとお心遣いいただいている「四谷書房」さんにも購入いただく。ブログも読ませていただいて感じるのは、購入する本に「ポリシー」をお持ちだということ。私など、とにかく好きなものだけ、カオスの如く(笑)
同じく「一箱古本市」以来仲良くさせていただいている「もす文庫」さん。今回はmasubonさんには、小川洋子『沈黙博物館』(ちくま文庫)、ご主人には、水木しげる『猫楠』(ちくま文庫)を購入していただく。いつもありがとうございます!
四谷書房さん、もす文庫さんとも「不忍ブックストリート 一箱古本市」には5月3日(日)に出店されます。もす文庫さんのご主人が作られた新作バッジ素敵です。masubonさんが描かれた文庫カードのイラストもかわいい。(→こちら)
★とみきち屋は4日(月・祝)に出店いたします。
それから、それから。出店されていた「古書 北方人」さま、「嫌記箱(塩山)」さま、「たけうま書房」さま、「あいうの本棚」さま、「あり小屋」さま、「居夢来巣堂」さま、「ツグミ文庫」さま、「酒池肉林」さま、「岡崎武志堂」さま。お買い上げいただきありがとうございました。番頭風太郎が把握している限りなので、もし漏れていたらすみません。
とみきち屋から本をお持ち帰りいただいたすべてのお客さま、ほんとうにありがとうございました。
結果は130冊揃えて、87冊お買い上げいただきました。
やはりとみきち屋としては持ち込んだ本が多すぎたと反省。
プレ開催の様子から、こだわりの本以外は値段を最初から安めに設定したこと、最後の方にかなり値下げしたこと、文庫を多めにしたこともあって、単価は330円弱でした。
もっとPOPをつけたり、お話しできる機会を増やして、まだ読んだこと無い著者の本でも、読んでみようかなと買っていたげるよう、工夫をこらしていかねばと思うことしきり。
昨秋の「一箱古本市」の際は、ほぼ同数の85冊売れ、単価が530円ほどでしたので、かなり違うことは確かなようです。
客として買った本についても書こうと思っていたのですが、長くなり過ぎました。次回にします。
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