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2013年春 「第15回不忍ブックストリート 一箱古本市」エピソード(5)

15:00―残り1時間。
青秋部の中村さん、石井さんがお見えになる。妻のとみきちが台湾関連の仕事もしているので、しばしその話をされていったようです。石井さんには■シャルチエ『書物の秩序』(ちくま学芸文庫)を購入いただく。手にとられているのを素早く見つけ、「入手しにくい本ですよ~」と悪魔のささやき。
700円なら押し売りにはならなかったと思うのですが。やっぱり押し売りか(笑)
そういえば石井さんにもよく買っていただいているなあ。

■小池寿子『死を見つめる美術史』(ちくま学芸文庫)のほかに青柳いづみこ、A.ケストラーの著書など3冊購入いただいた男性の方に、「これ(古本市)は時々やるの?」と訊かれる。たまたま通りがかった人にも楽しんでいただけるイベントであることを実感。

持ち込んだ本を一度には並べられないため、開店からかなりの時間が経ってから箱に出す本も多い。或いは、最初にしばらく出した後ひっこめ、後半また出すということもある。ほとんど勘に頼っているわけだが、お客さんの様子を見ながら出し入れを繰り返す。
自分では最後まで残ってしまうとは思えなかった本があっさり引きとられていったりする。これもまた、楽しみのひとつだ。

■クライスト『チリの地震』(河出文庫)■安東次男『百首通見』(ちくま学芸文庫)などはそういった類の本。
前者は絶品。ひさしく品切れでしたが、東北大震災後にとりあげられることがけっこうあって、新装再刊されたようです。以前からクライストの作品に親しんできた者としては複雑な気持ちです。
地震というテーマに絞らずとも、人間のかかえる矛盾、愚かさなど実存的な問題を鋭く抉っていて、唸らされます。一般的な人気はないようですが、『ペンテジレーア』『ミヒャエル・コールワースの運命』『O侯爵夫人』『こわれがめ』他名作揃い。

15:30頃。エピソード(1)にも書いたように古本屋ツアー・イン・ジャパンさんが二度目のご来店。さらに2冊購入いただく。

■杉本秀太郎『洛中生息』(ちくま文庫)■フィリップ『フィリップ傑作短篇集』(福武文庫)が別々の方の手元へ。こういう本が渡っていくのは嬉しい。閉店が近づいてきた時間帯に2冊売れることが嬉しいわけではありません。数の問題ではないんですよね、この喜びは。今も手元には同じものが置いてあって再読することもあるーそんな本はやはり思い入れも強くなるのです。

15:40頃、30代くらいの男性が■竹中労『エライ人を斬る』(三一書房)■ドゥルーズ『千のプラトー』(全3冊・河出文庫)を。こういう組み合わせでお求めになられる方とはぜひお話させていただきたいところですが、閉店後に提出するアンケート用紙記入中だったため叶わず。とても残念でした。

15:50―哲学を専攻されていたという男性の方が■バシュラール『夢想の詩学』(ちくま学芸文庫)を。
続いて昨年の一箱の際、「貸しはらっぱ音地」で一緒に助っ人をしたTさんが来てくれました。
■バルベー・ドールヴィイ『悪魔のような女たち』(ちくま文庫)を購入いただく。この本は山村修が『書評家<狐.>の読書遺産』(文春新書)でとりあげていて、その作風を「苛烈で、狂おしく快美」と表現しています。短い言葉で本質を突くのが巧いなあといつも感心させられます。しかも読みたいと思わせてくれる。

この新書では68冊紹介されており、うち私が読んだことがあるのは42冊。そしてその中からこれまでの古本市などで31冊(複数回出したものを入れればのべ40冊)出品しましたがすべて(出した時に)売れました。山村修(狐)の根強いファンがいるのだなと思えますし、、良質な本を確かな目で選んでいることの証ではないでしょうか。

<とみきち屋>最後のお客様は<ゆず虎嘯>のyuzuponさんでした。お連れの方に■山口昌男『天皇制の文化人類学』(岩波現代文庫)■庄野潤三『文学交友録』(新潮文庫)■蓮實重彦『映像の詩学』(ちくま学芸文庫)ほか5冊も買っていただき驚くばかり。
yuzuponさんと話しているうちになんとタイムアップ。

手にされていた■フロベール『三つの物語』(福武文庫)、お売りするわけにはいかないのでプレゼントしました。せっかく来ていただいたのですから。
そこで、はっと気が付きました。お連れの女性には5冊も買っていただいている。慌てて「この中から1冊お好きな本をどうぞ」と声をかけました。選ばれたのが■『神秘の詩の世界―多田不二詩文集』(講談社文芸文庫)。思わずのけぞりそうになりました(笑)。
全くと言っていいほど見向きもされなかった本。それだけではなく、引きとっていただいた本の分野が多岐にわたっていて、どんな読書をされているのか興味が尽きなかったからでもあります。
ほんとうに「一箱古本市」は奥が深い。

秋も含め8回目の参加でしたが、古本を通じて毎回毎回いろいろな方と出会え、自分の好きな本が旅立っていくのを目の当たりにできるのは格別な味わいがあります。さらに、繰り返し足を運んでいただくようになった方、店主仲間、スタッフの方々との語らいも様々な喜びをもたらしてくれます。こんな素敵な場をつくり、支えてこられた多くの方々にはただただ感謝の言葉あるのみです。
今年もほんとうにありがとうございました。
可能な限り参加していきたいと、思いを新たにしました。これからもよろしくお願いいたします。

<とみきち屋>の結果

[2013年] 5月3日 (金・祝) 2日目
第15回  一箱古本市(春)   冊数 162冊  平均単価512円

第14回  一箱古本市(春)   冊数 142冊  平均単価500円
第13回  秋も一箱古本市    冊数 151冊  平均単価460円
第12回  一箱古本市(春)   冊数 143冊  平均単価450円
第11回  秋も一箱古本市                不参加
第10回  一箱古本市(春)   冊数141冊  平均単価413円
第9回   秋も一箱古本市    冊数 82冊   平均単価474円
第8回  一箱古本市(春)    冊数 85冊   平均単価410円
<黒岩比佐子賞>
第7回  秋も一箱古本市    冊数 85冊    平均単価548円
<南陀桜綾繁賞> 初参加

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コメント

お疲れ様でした。15日も来られるんですよね。猛暑で大変ですが、私も頑張って行こうと思います。

投稿: jindong | 2013年7月12日 (金曜日) 10:56

遅くなってもちゃんと記録を残される風太郎さん、さすが!です。
私もみならって、前の分は放置したまま、6月から頑張っておりますが、だんだん怪しくなってきました。

yuzuponさんの連れは、私の盟友どんぐりさんです。
タテキンで岡崎さんにお会いして「君たち・・・ほかに行くとこないんか」と言われた時も一緒でした。

3日は、助っ人が終わる頃に2人で迎えに来て、3人でお茶&夕飯し、戦利品自慢をされました。

15日、みちくさ市でお目にかかれることを楽しみにしています。

投稿: 駄々猫 | 2013年7月12日 (金曜日) 21:32

jindong さん

2か月も経ってしまったものを読んでいただき恐縮です。
8月15日「みちくさ市」出店します。来ていただけるだけでも嬉しいですし、力がわいてきます。
でも、無理はなさらないでくださいね。半端ではない暑さですから。

投稿: 風太郎 | 2013年7月13日 (土曜日) 02:16

駄々猫さん

まさに八面六臂の活躍ですね。ブログ楽しく読ませていただいています。反動が出ないといいなと、こちらが心配になるくらいです。
無理はしないでくださいね。

>yuzuponさんの連れは、私の盟友どんぐりさんです。

タテキンでかの岡崎さんから「ほかに行くとこなんか?」といわれるくらいですから、駄々猫さんに劣らず本好き、読書好きの方なんですね。

みちくさ市、暑さとの闘いになりそうですね(笑)
がんばりましょう。私たちより年上の岡崎さん、北方人さん、塩山さんも参加されるのですから。

会えるのを楽しみにしています。

投稿: 風太郎 | 2013年7月13日 (土曜日) 02:27

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