「第14回不忍ブックストリート 一箱古本市」レポート(2)
12時半頃から13時まではパタッと人の流れが途絶える。この雨では仕方ない。
この間売れたのは、■ユリイカ臨増『矢川澄子・不滅の少女』(青土社)1冊のみ。
13時過ぎ、出店場所である特別養護老人ホーム谷中の助っ人をしてくれていたつん堂さんに(助っ人終了後)、■『【秘蔵版】談志喰い物咄』(講談社・直筆通し番号、サイン入り)を購入いただく。
立川談志ファンのご友人にプレゼントされるとのこと。
同じ場所に出店されていた<脳天松家>さんも、引き取り手がないようだったらと声をかけていただいていたが、どうやらつん堂さんに譲られた様子。大人ですね。脳天さんには差し入れも頂戴する。
13:05、u-senさんご来店。お会いするのは昨秋の一箱、往来堂書店前で一緒に出店して以来。あの時、<パタリ口(くち)>(u-senさんの屋号)の箱を見てしまったらすぐに欲しいと思ってしまう本があるに違いないので、見まいと思ったものの誘惑に負け見てしまった(笑)軽く5、6冊目にとまり、昼過ぎ様子を伺ったら全部なくなっていた。
■『小沢信夫さん、あなたはどうやって食ってきましたか』(SURE)を購入いただく。
ほぼ同じ時間、根津教会で出店されていた<つぐみ文庫>さんがいらした。つつじ祭りに足を運ぶ方が少ない影響もあって、お客さんの数も少なく他会場を回ってみようと思われたらしい。昨春根津教会に出店したが、その時は好天だったこともあり、すごい人の流れだった。
■『百年文庫12 釣』(ポプラ社)を購入いただく。
当日プレゼンターをされた<わめぞ>の方々がご来場。「朝からすごいらしいじゃないですか(笑)」というようなことを古書現世・向井さんから言われる。「ああ、ツイッターか」と思うも、私はやっていないので何がつぶやかれているのかさっぱりわからない。「常連さんには来ていただいたけれど、なんだか尾ひれがついておおげさなことになってますよ(笑)」と答える。
立石書店・岡島さんも交え楽しくお話。
岡島さんのある冗談発言に、向井さんと思わず「それバレますよ(笑)」と盛り上がる。
14時を過ぎると他会場から回られて来た方が増え、活気を取り戻す。
14時10分、いつもの笑顔でMさんご来店。Mさんの奥様は4月28日往来堂書店前に<神崎屋紫堂>の屋号で初出店、「蝉の店賞」を受賞されました。箱を拝見したのですが、猫関連の本が多い中「えっ!なぜ?」と思える文芸書がちょこちょこと混じっていたので、Mさんの本ではないかなと思いました。お話させていただいたところ、案の定Mさんが提供されたとのこと。
「○○○○を100円で売っちゃったみたいなんですよ(笑)」「でも、楽しんでくれたならいいかな」とMさん。その笑顔がとても柔らかくなんと素敵なこと。
Mさんも是非ご一緒に出られてはいかがですか。楽しいですよ。
■堀江敏幸『なずな』(講談社)■岩崎恵子『木山さん、捷平さん』(新潮社)をお買い上げいただく。いつもありがとうございます。
ピッポさんのポエトリーカフェの影響で、室生犀星が気になっているという<ますく堂>さんには■室生朝子『晩年の父 犀星』(講談社文芸文庫)を購入いただく。これは当日朝追加でかばんに入れたもの。<とみきち屋>お薦め本の一つなので嬉しい。
14:15分ナンダロウ(南陀楼綾繁)さんが透明の雨合羽をかぶり、例のたすきをかけ、自転車で回られてきた。雨の中素敵だ。
「ナンダロウさんが欲しい本はないですよ~」という、いつもの決まり文句はやめにする。一冊手に取られたが戻されたのをしっかり見ておく。箱の前から去ろうとされたので思わずその書名を告げ、「ナンダロウさん、それはやっぱり引き取っていただかなくては(笑)」と声をかける。
「なんだ、見てたんだ(笑)」
「もちろんですよ」(ナンダロウさんが触れる本はいつも目を皿にして見てますよ~)
半ば押し売り。ありがとうございました!!
黒岩比佐子さんが解説を書かれているので、どうしても持ち帰ってほしかったのです。
当日助っ人をされていたNEGIさんには■大原富枝『アブラハムの幕舎』(講談社文芸文庫)を。大原富枝の著書は未読とのことでしたが、「個人的にはこの作品が一押しなのでぜひ」と、これも半ば押しつけ。お試しとしてちょっとだけ割引させていただく。
14:20分。かなり本を読まれているのではないかなと思える若い女性が二人連れで。楽しそうに本を見ていらっしゃいました。
■色川武大『唄えば天国ジャズソング』(ちくま文庫)■田中小実昌『イザベラね』(中公文庫)を差しだされたので、思わず「ああ、この二人組ですね」と口にすると、くすっと笑われてしまいました。
14:30分頃、駄々猫さんご来店。助っ人を終えた後全箱見て回るという猛者。今日は気になる本があっても1冊くらいだろうなと思っていたが、なんと3冊も購入いただいた。
■山田稔『北園町九十三番地 天野忠さんのこと』(編集工房ノア)■ル・コルビュジェ『伽藍が白かった時』(岩波文庫)に佐野洋子の文庫。意外だったのはコルビュジェ。ほんと幅広く読まれているのだなあ。
半日で4,50冊は買いそうな勢いでしたね。雨の一箱を支えた一人であったに違いないと思います。
水玉さんとご一緒されていた(と思われる)女性の方に馬場マコト『花森安治の青春』(白水社)を、30代くらいの静かな雰囲気の男性に■吉田健一『瓦礫の中』(中央文庫)■色川武大『遠景 雀 復活』(講談社文芸文庫)をお買い上げいただく。
<盛林堂書房>さんが来られ、当日出品した中では高額の本含め3冊購入いただく。
15時。■今橋映子『異都憧憬 日本人のパリ』(平凡社ライブラリー)を私と同年代(50代)と思われる男性の方に購入いただく。これは、どうして品切れのままなのだろうと思えてならない、見事な労作。岩村透、永井荷風、島崎藤村、高村光太郎、金子光春(及びその作品)などに触れ、大量の資料を丁寧に読みとき、新たな視点からパリの魅力、パリと芸術家たちとの関わりを伝えています。
15:15分頃<古書、雰囲気>のSさんが来てくださる。<古書、雰囲気>さん、5月20日の「鬼子母神通り みちくさ市」には久しぶりに出店されるので楽しみ。私好みの本を必ず出されているので。(ちなみに、<とみきち屋>も「みちくさ市」に出店します)
■若桑みどり『マニエリスム芸術論』(ちくま学芸文庫)を購入いただきました。
15:30分。当日特別養護老人ホーム谷中を担当していただいた実行委員Oさんに■『吉本隆明×吉本ばなな』(ロッキングオン)を。こんな本のことはご存じなかったらしい。いろいろお世話になりました。そしてお買い上げありがとうございます。
妻・とみきちに店を任せ、離れたところで売り上げの集計を始める。
その10分ほどの間に、とても落ち着いた感じの20代と思われる男性に■国木田独歩『運命論者・号外』(旺文社文庫)■沼昭三『家畜人ヤプー』(角川文庫)を購入いただいた模様。残念。独歩の本はめったに見ないので(ちょっと高いかなと思いつつ)800円の値段をつけていました。これを若い方が購入されたのだから、お話しさせていただきたかった…残念。
残り20分を切ると、「ここで最後だから」と財布の紐が緩み、「どうしても欲しい」とまでいかない本でも持ち帰っていただけるのでしょうか、この時間帯は毎回不思議なくらい本が出ていくのです。
「多和田葉子に最近はまっているんです」とおっしゃる女性が■『溶ける街 透ける路』(日本経済新聞社)。
15:50分。■フルトヴェングラー『音楽を語る』(河出文庫)■宇野常寛『ゼロ年代の想像力』(ハヤカワ文庫)■大森荘蔵・坂本龍一『音を視る、時を聴く』(ちくま学芸文庫)の3冊を若い男性の方。
初老の紳士の方には■高野慎三『つげ義春を旅する』(ちくま文庫)を。若い男性が■伊藤俊治『20世紀写真史』(ちくま学芸文庫)。
上記以外にも、■川原栄峰『ニヒリズム』(講談社現代新書)■村上一郎『北一輝論』(角川文庫)
■国枝史郎『神州纐纈城』(河出文庫)■鶴見俊輔『限界芸術論』(ちくま学芸文庫)■庄野潤三『ザボンの花』(福武文庫)■デリダ『尖筆とエクリチュール』(朝日出版社)ほか20冊以上が閉店わずか前に旅立って行きました。
そして古書ほうろうの宮地さん。
私どもが出品していたある文庫本のタイトルと同じタイトルで出されたCD、さらに同文庫の単行本版にまつわるエピソードを聞かせていただく。
それもあって、宮地さんの手に渡れば(この文庫)本も喜ぶのではと思い、「少し下げしますから」とプッシュ。「ちょっと考えさせて下さいね」とおっしゃって、その場を離れられました。
私も売り上げ最終チェックのため、また一旦店を離れる。
なんとそのわずかの間に、購入いただきました。その場では御礼を申し上げられず失礼しました。
大トリは同じ場所に出店されていた<悪い奴ほどよくW(ダブ)る>さん。「最後まで残っていたらいただきますね」と言っていただいていた本を引き取ってもらう。
私もWさんから文庫を1冊購入。なんだか物々交換のようになってしまいました(笑)
以前からずっと気になっていたWさんの箱を当日初めて見せていただく。
小ぶりのシックな棚に、良質の本が絶妙のバランスで配されていて、どうしたって隅から隅まで見たくなってしまう。しかも「この値段なら有難く頂戴したい」と思える本多数。さらにその本への拘り、リスペクトが感じられる値段のものも、さり気なく混じっている。また、(私は半可通ゆえその価値がわからないのですが)映画関連の本やDVDも置いていらっしゃる。
ほんと久しぶりに、素敵な店に出会えたなと嬉しかったです。
お隣で出店されていた、<mondobooks>さん。出たり入ったりで忙しなくご迷惑おかけしました。店の配置上やむを得ないとはいえ、お尻を向けっぱなしになってしまった<JUNGLE BOOKS>さん、失礼いたしました。恒例のジャングル通信(いただき)、ありがとうございます。
特別養護老人ホーム谷中の助っ人をしていただいた、Tさん、つん堂さん、Fさん、T・Mさん、ありがとうございました。
最後に改めて、ご来場いただいた、お買い上げいただいたすべてのお客様。実行委員、助っ人のみなさん、大家さん、ほんとうにありがとうございました。店主のみなさん、おつかれさまでした。
<とみきち屋>の結果
第14回 一箱古本市(春) 冊数 142冊 平均単価500円
第13回 秋も一箱古本市 冊数 151冊 平均単価460円
第12回 一箱古本市(春) 冊数 143冊 平均単価450円
第11回 秋も一箱古本市 不参加
第10回 一箱古本市(春) 冊数141冊 平均単価413円
第9回 秋も一箱古本市 冊数 82冊 平均単価474円
第8回 一箱古本市(春) 冊数 85冊 平均単価410円
第7回 秋も一箱古本市 冊数 85冊 平均単価548円
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
いつもお世話になっております。
しのばず一箱古本市、お疲れ様でした。今回もとてもよいお買い物をさせていただきました。
ちなみに、『矢川澄子・不滅の少女』購入者は、今回初めて連れて行った私の大学の後輩くんでした。
雨天につき「買い」モードでの参加を厳命していたからかどうかわかりませんが、はぐれていた彼と合流したときにはすでに件のユリイカを抱えていて「いい本買いました!」と喜んでいました(買ったお店を聞いて、「よしよし」と褒めてやりました)。
悪天候でしたが、初めての子たちはみんな、「楽しかった」と言っておりました。これも〈とみきち屋〉さんはじめとする店主の皆さんとスタッフの皆さんのおかげです。
本当にありがとうございました。
「みちくさ市」にもお伺いする予定でおります。
よろしくお願いいたします。
投稿: Mこと〈神崎屋〉荷物持ち | 2012年5月17日 (木曜日) 23:14
Mさん
悪天候の中わざわざお越しいただいたばかりか、お買い上げいただきありがとうございました。
実は『矢川澄子・不滅の少女』、Mさんのことを思い浮かべ持って行きました。それが後輩の方の手に渡るなんて、不思議なものですね。驚いています。
当日は後輩の方を含め、何人かの方々といらしてくださっていたのですね。
お連れの方々に「楽しい」と思っていただけ、とても嬉しいです。
前々からご来店いただき、そのお人柄が心に留まり、「いつか」と思っていました。昨年暮れの「くにたちコショコショ市」の際、思い切って声をかけさせていただいてよかったと思っています。
「みちくさ市」お待ちしております。
投稿: 風太郎 | 2012年5月18日 (金曜日) 13:56
実は今日初めて読んだのでした。過分なお言葉をいただき恐縮です。また何かと一緒に遊んで下されば幸いでございます!
投稿: 悪い奴 ほどよくW(ダブ)る | 2012年8月 1日 (水曜日) 20:47