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2011年11月

「第2回くにたちコショコショ市」エピソード(1)

第2回くにたちコショコショ市」楽しく終えることができました。実行委員のゆず虎嘯さん、国立本店さん、そして店主のみなさん、お疲れさまでした。
足をお運びいただいたお客様、ありがとうございます。

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場所決めのくじを引いたら「1番」。甲州街道沿いの駐車場スペースとは離れた路地の奥左端。石畳の上はせんべい缶を積む<とみきち屋>にはやや辛い。でも荷物が多いので端はありがたい。この後驚くべきことが。お隣にやまがら文庫。そこから旅猫雑貨店、岡崎武志堂、junglebooks、モンガ堂と続くことに。くじ引きとはいえ、これはなんだ(笑)という濃いメンバーが並ぶ。でも、こんな形で出店できるなんて、一箱、みちくさではあり得ないので楽しみ倍増。
岡崎武志さん をお目当てに来る方が大勢いらっしゃるから、ラッキー!とにんまり。

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最初のお客様はなんと駄々猫さん!純粋に客として行きますよ~と聞いていたが一番乗りとは。午前様続きで寝不足なのに、当日パッと目が覚めてしまったとか。駄々猫さんが来るならと、鶴見俊輔とシオランの本を持って来ていた。よかったよかった。値段も確認せずに鶴見俊輔『悼詞』(SURE)を差し出される。「いくらでも買います」なんて格好いい!
「自分はやっぱり読む側のポジション」と云う駄々猫さん。そうかもしれないなあと思う。私もこの3年、古本市で売る楽しさにずっぽりはまってはいるけれど、どちらかと云えば買って読む方が性に合っている気がする。

その駄々猫さん、岡崎さんのところで引いた古本おみくじは「凶」。このところ「凶」か「エロ」しか出ないみたいだ。
やまがらさん、モンガさんの代わりに店番したり、他の店主さんとの会話を楽しんで過ごしていた駄々猫さん。午後になって、う~ん、どうして「大吉」が出ないんだと悔しがる。
すると岡崎さんが、「なら残り全部一括で買(こ)うて。大吉出るよ~(笑)」
「そんなの無理」
そこで私が、「駄々猫伝説つくれるよ」とプッシュ。
「カード払いできますか(笑)」と切り返す駄々猫さん。
岡崎さんがいるだけで雰囲気ががらっと変わりますねえ。
今回は久しぶりに映画関連の本を岡崎さんに買っていただいたばかりか、地元のお知り合いの方を「ここはいいもの安いですよ」と<とみきち屋>にご案内いただいて。
知人の方には立川談志『世間はやかん』を購入いただく。なんと岡崎さんにはスリップまで抜いていただいてしまった(汗)

「一箱でどんな本がどうやったら売れるか書いてよ」と岡崎さんにリクエストされる。
海千山千の岡崎さんの参考になるようなことがあるはずないので、
「とんでもないです。秘訣があるわけでもありませんし」と動じてしまう(汗)
せいぜい私も含めた素人の方のちょっとしたヒントになりそうな、あくまで自分が感じる傾向くらいしか書けません。

「春の一箱」どしゃぶりの雨が降った2日目。お身体の調子がほんとうにつらそうだった岡崎さんを見ているだけに、こうしてまた古本市に出て来られる岡崎さんにお目にかかれるのは嬉しいものです。

お隣の<やまがら文庫>さん、大勢の方が箱をご覧になったばかりでなく、最後には駆け込みで買いに来られるお客様がいらして、数冊しか残らない人気。厳選された品揃えはさすがだなあと思うことしきり。中学生の女の子も購入していました。

<旅猫雑貨店>さん。ブログで拝見する魅力あふれる品々の、きめ細かで、写真を駆使された美しい紹介はすごいです。今回,古い石鹸の缶をさりげなく使ったレイアウトなども含め、やはりプロの方は一味もふた味も違う店構えとため息がでました。

会場にお見えになった<じんた堂>さんと、初めてゆっくりお話できた。深川の催し、<しまぶっく>さんのことなどいろいろ聞かせていただく。
じんたさんには大島洋『アジェのパリ』(みすず書房)を購入いただく。ウジェーヌ・アジェの写真がお好きだと聞いて嬉しかったな。私も以前妻と一緒に東京都写真美術館で開催されたアジェ展に足を運んだこともあり、アジェノのファン。
じんたさんと話している時に、男子中学生が箱の前にしゃがみこむ。
じんたさんも私も目が釘付け。まず『二・二六事件』(河出文庫)を手に取る。次に半藤一利『昭和史』(平凡社ライブラリー)。歴史好きなんだろうけれど、二・二六にはびっくり。しばらく箱を眺めてから最後にA.A.フェア『猫は夜中に散歩する』(ハヤカワ・ミステリ文庫)。ミステリでタイトルが気になったのかな。結局購入してもらえなかったが、中学生が熱心に本を手に取っている姿に和みました。

おや、朝霞書林さん。まさに神出鬼没ですね。失礼、その行動力には脱帽です。
本を求めていったいどれでけ歩かれているのか想像もつかない。装備も万全。これを風太郎さんに見せたくて」と、バックから本を出される。
後藤明生『挟み撃ち』初版帯付美本。本のタイトルが記されているサイン本。次に充実した特集の月刊アサヒ。田村書店の道端に設置された無料箱から入手されたとか。
某ブックオフで良質の思想、哲学本が次々と105円棚に移されてゆくのをまめに購入されている話は耳に毒(笑)。
美味しい飴の差し入れもいただき、ありがとうございました。

一箱古本市出店者としては他に追随を許さない、全国区のドンベーブックスさんご夫妻もいらした。
「第1回くにたちコショコショ市」には参加されていたので、今回出店なしは寂しい。

からだよりも大きいのではないかと思われるトランクを持って来られた<文庫善哉>さん。いつもの本の間隔をあけて並べるオシャレな本棚にはいい本たくさん。でも、当日の出しもの、阿波踊りには目がないらしく、太鼓入りの踊りが始まると店主不在になってましたね(笑)
うちの箱の中にピピッっときた本があったとのことで、午後遅めまで売れないよう念を送っていただいたようです。2冊とも<文庫善哉>さんの手に渡りました。本も喜んでいると思います。

<どすこいフェスティバル女子部>のお二人はトレードマークの着物姿。花を添えてくれます。きょうこさんには太宰関連の本を購入いただきました。

まだまだ書きとめておきたいことがあります。
次回は常連のお客様を中心に。

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「第2回くにたちコショコショ市」出品本紹介

<とみきち屋>は明日11月27日(日)、「くにたちコショコショ市」に出店いたします。
詳細はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/kunikosyo-market/

場所はJR南武線「谷保駅」近くの「やぼろじ」( http://www.yabology.com/)。
江戸時代からの旧家、本田家の敷地を利用。緑に囲まれた、カフェ、工房、ガーデンなども併設されている素敵な場所です。「秋のガーデンパーティー」との同時開催となりますので、そちらの方もお楽しみいただけます。
また、すぐ近くには谷保天満宮(http://www.yabotenmangu.or.jp/)もありますので、お散歩がてらお越しいただければ嬉しく思います。

〔参加店主一覧〕(敬称略)

●岡崎武志堂●傾き者と落伍社●junglebooks●ソラシカ散歩●TIME ADVENTURE RECODE●旅猫雑貨店●つぐみ文庫●ドーナッツブックス●トカゲ書林●どすこいフェスティバル女子部●とみきち屋●文月文庫●古本・泡山●ふるぼん・まあぶる舎●文庫善哉●モンガ堂●やまがら文庫●ユタカタ●RAINBOW BOOKS ●国立本店●ゆず虎嘯

<とみきち屋>今年最後の出店となりますので、無謀とも思われますが(笑)、160冊ほど持っていく予定です。「秋も一箱古本市」または先週の「みちくさ市」で引き取り手のなかった本も約30冊ほど含まれますが、お買い得感を持っていただけるよう概ね値下げしてあります。
よろしかったら、お出かけください。お待ちしております。

それでは、出品本の一部を紹介いたします。

■鶴見俊輔『悼詞』(SURE)
■一又正雄『杉山茂丸 明治大陸政策の源流』(原書房)
■パスカル・キニャール『さまよえる影』(青土社)
■シオラン『四つ裂きの刑』(法政大学出版局)
■辻邦生『楽興の時 十二章』〔CD付〕(音楽之友社)
■藤枝静男『石心桃夭』(講談社)
■佐野洋子『死ぬ気まんまん』(光文社)
■木村敏・檜垣立哉『生命と現実』(河出書房新社)
■大島洋『アジェのパリ』(みすず書房)
■『現代詩手帖 「現代詩文庫」入門』(思潮社)
■大杉栄『漫文漫画』 〔復刻・文庫版〕(ARS)
■庄野潤三『ザボンの花』(福武文庫)
■牧野信一『父を売る子 心象風景』(講談社文芸文庫)
■木山捷平『長春五馬路』(講談社文芸文庫)
■石田義貞『隠者の文学』(講談社学術文庫)
■柏木隆雄『謎解き「人間喜劇」』(ちくま学芸文庫)
■合田正人『レヴィナスを読む』(ちくま学芸文庫)
■イーヴリン・ウォー『ブライヅヘッドふたたび』(ちくま文庫)
■池島信平・嶋中鵬二『文壇よもやま話 上下』(中公文庫)
■ジュネ『女中たち/バルコン』(岩波文庫)
■太田静子『斜陽日記』(小学館文庫)
■アガンペン『開かれ』(平凡社ライブラリー)
■A.A.フェア『猫は夜中に散歩する』〔田中小実昌訳〕(ハヤカワ・ミステリ文庫)
■桑原武夫『詩人の手紙―三好達治の友情』(レグルス文庫)
■酒井健『シュルレアリスム』(中公新書)
ほか
300円以下の本も多数用意しました。

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「みちくさ市」御礼&「くにたちコショコショ市」

11月20日(日)、「第13回鬼子母神通り みちくさ市」ご来店お買い上げいただきました皆様、みちくさ市スタッフおよび商店街の方々、大家さん、ありがとうございました。
本を通じ、本に囲まれ、心ゆくまで楽しませていただきました。

当日<嫌気箱>の塩山(芳明)さんに会えて、話ができたこと嬉しく思っています。
重い病に倒れられたわけですから、とてもお元気とまでは云えませんが、みちくさ市になくてはならぬ方が帰って来られたことが、会場を一段と賑わしてくれました。

塩山さんのところは、デリダ、アーレントほか思想本もよく出されていて好みの本も多いのですが、高めの値段設定ゆえ、なかなか手が出ないのですが、今回は是非とも購入せねばとじっくり拝見。
リサイクル本だとはわかりましたが、何冊でも持っていたいと思える本が午後なのに残っていました。野呂邦暢『小さな町にて』(文藝春秋)。
「拾ったようなもんだから500円でいいよ」と、ほんとに500円で頂戴してしまいました。ありがたいやら申し訳ないやら。
これから寒さも一段と厳しさを増していくと思いますので、塩山さんどうか無理をなさらず、ご自愛ください。
当日出店されていた駄々猫さんには、ブックオカ2011の貴重なパンフをいただきました。ありがとうございます。
先日出席した「黒岩比佐子 語り継ぐ会」の発起人のお一人で、当日いろいろとお世話になった工作舎の石原さんが会場にお見えになり、ご挨拶できました。

dozoさん、jindongさん、Hさん、Eさん、長谷川さん、つん堂さん、ドンベーさん、脳天松さん、古書、雰囲気。さん、mondobooksさん。他にもよくお見かけする方を含め多くの方にお買上げいただきました。ありがとうございます。
今回200円以下の本には時間が無くてスリップを入れられなかったためチェックできず、顔見知りの方でお名前が漏れた方がいるかもしれません。そうであったらご容赦ください。

まだ「秋も一箱古本市」の報告もきちんと書けずにいる状況ですので、この「みちくさ市」のことを細かく書けるのは当分先になるかと思います。

<とみきち屋>はこの後、11月27日(日)、JR南武線「谷保駅」近くで開催される「第2回くにたちコショコショ市」に参加予定です。岡崎武志さん、ゆず虎嘯さん、モンガ堂さん、やまがら文庫さん、旅猫雑貨店さん、文庫善哉さん、junglebooksさんほか古本市の常連さんも参加されます。
古民家「やぼろじ」( http://www.yabology.com/)という素敵な場所で、「秋のガーデンパーティー」との同時開催となります。
目と鼻の先には谷保天満宮もありますのでお散歩がてらお越しいただければ嬉しく思います。

詳細はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/kunikosyo-market/

出品本はいつものように当ブログにてご紹介させていただきますが、土曜も昼間は仕事が入っているため、アップできるのは夜になるかと思います。ご諒承ください。

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「第13回 鬼子母神通り みちくさ市」出品本紹介

「第13回 鬼子母神通り みちくさ市」出品本紹介

明日11月21日(日)11:00~16:00開催予定の「第13回 鬼子母神通り みちくさ市」において、名取ふとん店前に<とみきち屋>は出店します。
雨で中止の場合、11月23日(水・祝日)に順延となります。
明日午前7:50に開催か否かが決まりますので、出店場所、出店者も含め詳しくは「みちくさ市」公式ブログをご覧ください。
こちら→ http://kmstreet.exblog.jp/

20日19:00現在、激しい風雨となっていますが、予報では明日は回復しそうです。
開催の折には、ぜひみなさま足をお運びください。

では、出品本の紹介です。

〔特集 須賀敦子〕

河出文庫の須賀敦子全集は全8巻揃えました。(バラ売りです)
『考える人 特集 書かれなかった須賀敦子の本』(新潮社)ほか関連本も含め全17冊出品します。

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〔単行本〕

■四方田犬彦編『ザ・グレーテスト・ヒッツ・オブ平岡正明』(芳賀書店)
■松下竜一『未刊行著作集2 出会いの風』(海鳥社)
■高橋康成『ノンセンス大全』(晶文社)
■森内俊雄『幼き者は驢馬に乗って』(文藝春秋)
■立岩真也『人間の条件 そんなものない』(理想社)
■ウルリッヒ・ベック『<私>だけの神』(岩波書店)
■アドルノ『アドルノ 音楽・メディア論集』(平凡社) ほか

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〔文庫本ほか〕

■団鬼六『花と狼』(桃園文庫)
■渡辺京二『神風連とその時代』(洋泉社新書)
■しまね・きよし『転向―明治維新と幕臣』(三一新書)
■牧野伸顕『回顧録 上・下』(中公文庫)
■酒井三郎『昭和研究会』(中公文庫)
■内村剛介『生き急ぐ スターリン獄の日本人』(講談社文芸文庫)
■三好達治『月の十日』(講談社文芸文庫)
■小池寿子『死を見つめる美術史』(ちくま学芸文庫)
■カール・ポランニー『経済と文明』(ちくま学芸文庫)
■大塚康生『ジープが町にやってきた』(平凡社ライブラリー) ほか

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今回はかなり雑多な品揃えになりました。これまでの<とみきち屋>とは少々テイストの違うものもあります(笑)

今年最後の<みちくさ市>ですので150円~300円の本も多めに出します。
いつの間にか、ダイニングルームには段ボール箱が積みあがってしまい、妻・とみきちの厳しい「指導」いや「警告」はが入っていますので、たくさん持ち帰るわけにはいきません。
14:00以降は一部の本を除き、徐々に値下げしていきますので、どうかご協力のほどお願いいたします。

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黒岩比佐子さん一周忌 「語り継ぐ 黒岩比佐子の会」のこと

3年前の11月17日に私はこのブログを書き始めたのですが、その2年後の同じ日に黒岩比佐子さんが亡くなられるなんて、言葉もありませんでした。

黒岩比佐子さんが他界されてから今日で一年になります。
この一年、みちくさ市や一箱古本市に出るたび、比佐子さんがひょっこり現れてくれるのではないかと探してしまう自分がいました。逝ってしまったとは思えない、思いたくない気持ちが心を占めていたからだと思います。
そんな中、11月14日、神保町の学士会館で催された「語り継ぐ 黒岩比佐子の会」に出席し、黒岩さんはもうこの世にはいないのだと、初めて実感するに至りました。

今も黒岩さんのブログ「古書の森日記 by HISAKO」を管理、代筆され、事務局の中心として不眠不休で動かれた宮崎さんにこの会のご案内いただき、感謝の念にたえません。
私は黒岩さんと親しくお付き合いさせていただいたわけではありませんし、メールを除けば、直接お話しできた時間もわずかだったので、語り継げるほどのものがあるだろうか…と躊躇い、ひょっとしたら足を運べなかったかもしれないからです。

宮崎さんは、黒岩さんが亡くなられた直後に私が書いたブログ記事「いつかパラソルの下で…」を以前読んでくれていました。私に連絡がいっていないかもしれないと、今回わざわざブログにコメントくださいました。
その際、「追悼・黒岩比佐子さんDVD上映会」で(私が黒岩さんにお見舞いとして差し上げたCD)ラインベルガー『ヴァイオリンとオルガンのための作品集』から選曲し、音楽として使っていただいたことを伺い、感無量です。ありがとうございました。当日お話しできて嬉しかったです。

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100人を超える方々がそれぞれの思いを抱き、集って来られました。
献杯後には、昨年6月のトークセッション、10月の講演会のダイジェスト版が会場正面のスクリーンに流されたのですが、黒岩さんが実際に話しているような、不思議な感覚に囚われました。岡崎武志さんの問いかけに、楽しそうに受け答えする比佐子さん。その眩しいばかりの笑顔は闘病中という事実を束の間忘れさせてくれるものでしたが、改めて見ても同じ気持ちになってしまいます。
しかし一方で、亡くなる一か月ほど前の『パンとペン』刊行記念講演には、言葉をひとつひとつ噛みしめ、紡ぎ出す比佐子さんがいます。
今でも忘れられない結びの言葉。
難産のすえに産み出した我が子の如く著書に手を触れ「私にとってはこれは、いろんな意味で忘れられない、一冊に、なると、思います…」
そして、
「堺利彦も、楽天囚人として乗り切ったわけなので、ええ…これから頑張って乗り切っていきたいと思います。ほんとうに今日はありがとうございました」
絞り出すように語り終えた黒岩さんの心の中に渦巻いていたものを想像するだけで、胸が詰まります。

会場には黒岩さんの直筆原稿、メモ、絵、スケジュール帳ほかさまざまなものが展示され、これまで知ることのなかった黒岩さんの一端に触れることができました。

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黒岩さんの息吹が生々しく伝わってくるものもあれば、いかにも女の子らしい絵があったり、ライターとしての矜持が滲み出ていて、こちらの肺腑に染みわたってくるものなど、目が眩んでしまいました。
小学校卒業後に書かれた400字詰め原稿用紙135枚におよぶ「わが生い立ちの記」には枚数、書かれている内容ともども目を瞠りました。タイトルからして小学生が思いつくものではありません。家の間取りまできれいに描かれていて、黒岩さんの几帳面さが伝わってきました。多くの方が魅入られるように読んでいたのも当然でしょう。

強く印象に残ったのは大学生になられた時に書かれた断章のようなものです。
ご自身の未熟さを自覚しながらも、奥底から湧き上がってくる「書く」ことへの切迫した、熱き思いが感じられました。
そこには「私の頭に浮かぶ未来の設計というのは、やはり作家になるということなのである」「私は人の心に触れるものを書きたい」「そうだ私は書かねばならない」という言葉が、力強い筆致で刻まれていました。

黒岩さんが生きていらっしゃったら、こういう貴重な資料のほとんどは見る機会もなかっただろう。そう思うと、「黒岩さんは逝かれてしまったのだな…」という実感が湧いてきて、言い知れぬ悲しみに襲われてしまいました。

膵臓癌におかされることがなかったとしても、黒岩さんという方は一切妥協せず、すべての精力を注ぎ、身を削るように書かれる方だったいう思いを強くしました。ほんとうに凄い方です。
それゆえ、「あなたは大切なことに背を向けていませんか。ほんとうにやりたいことをやっていますか」と問われているように思えてしまうのです。

会の終わり近く、高校時代からの大親友Hさんの歌とともに、スクリーンに黒岩さんの生涯を辿る写真が数多く映し出されました。
亡くなる前の時から幼小の頃へと徐々に遡り、そこからまた還ってくるかのように大人へと成長していく。これを見て胸を打たれない人はいないはずです。実際すすり泣きが会場のいたるところから聞こえてきました。

黒岩さんの著作とともに、黒岩さんが書評された本、或いは書評としてとりあげなかったまでも興味を持たれた本など、蔵書の一部がチャリティの一環として販売されました。売り上げは東日本大震災被災地義援金として、各自治体あるいは現地NPOなどに、寄付されるとのことです。
買いたいと思っていた書評本は既に売れてしまっていたので、それ以外の本を購入。

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『精神分析と美』には思わず目を引かれました。『川の地図辞典 多摩東部編』は工作舎・石原さんのお勧めで購入。

●2010年6月26日「作家・黒岩比佐子が魅せられた明治の愛しき雑書たち 日露戦争・独歩・弦斎」スペシャル・トークセッション
●2010年11月14日「『パンとペン』出版記念講演会」
特別映像として<編集者が語る黒岩比佐子>付

どちららも聞きに行ったものなので迷わず上記2枚組DVDも購入。
特典として黒岩さんの描いた絵ハガキをつけてもらいました。

帰りに戴いたお土産も嬉しい。
黒岩さんの遺稿となった西日本新聞掲載の「歴史と人間を描く」と、2006年5月から8月にかけて日刊ゲンダイに掲載された「ようこそ古書の森に!」のコピーに加え、黒岩さんの講演「食育のススメ─現代に通じる明治人の知恵」が収められた「お茶の水図書館設立60周年記念講演記録」。
歌人穂村弘氏との対談「読書の楽しみ」も載っている。

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読売新聞で同時期に書評委員をされていた松山巌さん、井上孝治さんのご長男、井上一さん、黒岩さんの弟さん、黒岩さんの著書『「食道楽」の人 村井弦斎』を担当された元岩波書店の編集者Hさんの話もあり、盛りだくさんの内容でした。

最後になってしまいましたが、発起人、事務局、スタッフの方々、このような機会を設けていただき、ほんとうにありがとうございました。
また、当日あらゆるところに気を配られ、会を支えられていた工作舎の石原さん、おつかれさまでした。黒岩さんのことではいつも何かとお心遣いいただき、感謝しております。

久しぶりの神保町、学士会館を後にした時には雨足が強くなっていた。
本屋など一軒も開いていない時間なのに、そのまま帰る気持ちになれず1時間以上もふらふらしてしまった。

パラソルではなく、雨傘の下でもいいから比佐子先輩と高校時代の話ができたら…などと決して叶わぬことを夢見るなんて、感傷的過ぎるだろうか。

〔参考〕

闘病中の比佐子さんに、「一番気持ちに寄り添ってくれます」と言っていただいたCDはこちらです。

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ラインベルガー『ヴァイオリンとオルガンのための作品集』 NAXOS 8.557383

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