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2011年・春「第12回 不忍ブックストリート一箱古本市」回顧(2)

開店後30分経ってもHさんの姿を拝見できない。そのまま12:00、12:30と時は流れていく。
この時点で今日はお会いできないなと諦める。一箱古本市では初めてのことなので寂しい。
ご来店いただいた際には少なくとも10冊は購入いただいているHさんを思い描いて選んだ本もけっこう持って来ていた。そのほとんどは持ち帰ることになるだろうなあと思っていたが、そんなことはなかった。

■ホフマン『悪魔の霊酒 上・下』(ちくま文庫)1600円

中年の男性。この方とは五味康祐や、出品していた(須賀敦子訳)ギンズブルグ『モンテフェルモの丘の上』(ちくま文庫)などについてもお話できてとても楽しかったです。

■ブロッホ『夢遊の人々 上・下』(ちくま文庫)2000円

中央公論社発行の単行本はお持ちだが、文庫になっていたことはご存じなかったみたいです。本好きの方には単行本、文庫本両方持っていたいと思う方は多くいらっしゃいますが、まさかこの本でとは思いも寄りませんでした。

■パノフスキー『イデア』(平凡社ライブラリー)

中年男性二人連れのお一人に購入いただく。とみきちに呼ばれ箱のところまでいくと「こちらの方が値段のことで」と。「この値段(800円)はかわらない?」と訊かれました。にこやかな笑顔と手にされた本を見て、変な冷やかしではないと思えたので、「700円でいかがですか?」とお答えする。時間も随分経っていたし、さっぱり手ごたえがなかったので少し値段を下げるか、引っ込めて他の本と入れ替えようかと思っていたところでした。「これが楽しいんだな」と、購入いただきました。
対面販売における店主とのやりとりも確かに楽しみのひとつですよね。

上記のような本が、ふらっと足を運んでくださった方々の手に渡ってゆく。
「一箱古本市」の力をまざまざと感じました。

■『パウル・ツェラン詩集』(小沢書店)

みちくさ市に出品した時にはダメだったので、今回も無理かなと思いつつ補充本として持ってきました。ところが若い女性の方に。なんでだろうなあと不思議に思っていると、
「佐々木中の本を読んで…」
あっと思い当たる。
「タイトルがツェランの詩からとったものだったので興味があって」と。
書名<切りとれ、あの祈る手を>は『強輝脅迫』に収められている一篇からの引用。
こういうつながりで本が引き取られていくこともあるのですね。

■エックハルトセット『神の慰めの書』『エックハルト』(講談社学術文庫)■矢内原忠雄『アウグスティヌス〔告白〕講義』(講談社学術文庫)■浅野和生『ヨーロッパの中世美術』(中公新書)

初老の男性にお買い上げいただく。根津教会前出店を考えて、エックハルトは<とみきち屋>セットの一つとして用意したもの。
「エックハルトは読んだ方がいいかね?」と訊かれたので、
「ええ、私はそう思います。今回セットに加えませんでしたが、『神の慰めの書』の中にも少し載っている「説教集」は特に素晴らしいです。岩波文庫から『エックハルト説教集』出ていますので、一部重なりますがぜひそちらも読んでみてください」
何度も申し上げているように、私はキリスト教の信者ではありませんし、特定の宗教への信仰心もありません。それでも、心に深く届いてくる言葉はいつも真摯に受けとめたいと思っています。

■五味康祐『オーディオ巡礼 〔復刻版〕』(ステレオサウンド)

「復刻版は元の本と比べ版型が少し小さくなっていますが内容は同じものです」と説明させていただく。五味さんの音楽本を読んでもらえることほど嬉しいことはない。

■宮下誠『20世紀音楽 クラシックの運命』(光文社新書)

若い男性に購入いただく。なんと著者の講義を受けていた方でした。バタバタしていた時でゆっくりお話できなかったのが残念です。

■瀬戸川猛資『夢想の研究』(創元ライブラリ)

若い女性が「この著者の別の作品が面白かったから」と。根津教会で後半助っ人をされていたNEGIさんが、「それ面白いですよ」と力強いフォローをしてくれました。
そしてもう1冊購入いただく。■J.G.バラード『燃える世界』(創元推理文庫)。『沈んだ世界』『結晶世界』は現役なのに『狂風世界』とこの『燃える世界』は品切れ。遠い昔に読んだ懐かしい作品が若い方の手にわたり、感慨深いものがありました。

■和田芳恵『暗い流れ』(講談社文芸文庫)■『尾形亀之助詩集』(思潮社)■野呂邦暢『丘の火』(文藝春秋)ほか6冊

NEGIさんに購入いただく。実は<とみきち屋>にとっては大のお得意様の一人なのです。
だいたいいつも午後2時以降、一般のお客様がひと段落し、このままだと残りそうな感じが漂い始めたころ1、2冊引き取っていただいています。そして「最後まで残ったらこれもいただきます」と声をかけていただき、実際残ったら持ち帰ってくれるのです。ご自身が関係者の一人だからという気持ちがあるからだと思いますが、こういうお心遣い嬉しく思います。

顔見知りの方にも購入いただきました。
実行委員のお一人Yさんには木山捷平の文庫、店主、助っ人両方で活躍している駄々猫さんにはシオラン、<古書、雰囲気>さんには『貴種と転生・中上健次』、<寝床や>さんには保田與重郎を。
そして、お隣に出店され「古書ほうろう賞」を受賞された<ヴァリエテのおもちゃ箱>さんの女性お二人には、『フーコー・ガイドブック』(ちくま学芸文庫)、『日本哲学小史』(中公新書)を。女性の方に哲学関連の本を購入いただけるのは嬉しいです。
ありがとうございました。

さて、同じ根津教会には本の雑誌社さんが3人で<本屋本の雑誌>の屋号で出店されていました。
秘蔵のバックナンバー蔵出しということで、開店直後から多くの人が群がり、大盛況でした。
早い時間帯に売る本がなくなってしまい、「自分たちの所有本をもっとを持ってくればよかった」と思われたそうです。午後2時過ぎに伺った時にはもう箱の中はすかすかでした。
でも、そんな中にバシュラールの文庫が残っていたので購入しました。
「これ高くないですかね。出している当人が今いないのでわからないんだけれど」とおっしゃるので、「いいえ。これが600円ならお買い得ですよ」と私。

その後、本の雑誌社さんのお一人と妻・とみきちが楽しくお話しさせていただきました。
私どもの箱に興味を持っていただいたみたいで、
「プロなんですか?」
「とんでもない!素人の趣味です」
「どんなところで本を集めているんですか?」
「地元の古書店とブックオフがほとんどみたいです。でも、古本市に出るようになってからますます旦那が本を買うようになって困るんです。家がぐちゃぐちゃになるから。同じ本を何冊も買ってくるんですよ」
「同じ本を?」
「昔から好きな本は何冊も買っては、人にプレゼントしていたんです。それが古本市では多くの人に読んでもらいと思うようになったみたいで。その上、馴染みのお客様のことを考えては、この本は〇〇さんが喜んでくれそうだなあとか云って」
「誰にも頼まれていないのに?!(笑)」
「そうなんです。もうビョーキです(笑)(泣)」

まあこんな感じの会話だったと後から妻に聞きました。
きっと呆れられただろうなと思っていたら、本の雑誌2011年7月号の中の、「おじさん三人組一箱古本市に挑戦!」という記事で<とみきち屋>のことを写真入りで紹介いただいてしまいました(汗) なんとも面映ゆい感じです。
しかし、この記事を読んでいるとみなさんほんとうに楽しまれたのだと思えますし、お客さまとのやりとりや三人の内紛?(笑)まで書かれていて抜群に面白いです。

ひとつだけ心残りが。それは<もす文庫>さんにお会いできなかったこと。
出店場所が遠く離れていたため、伺う余裕がありませんでした。一箱はお客様の流れが途切れないので、ほぼ箱に張り付いていることになってしまうのです。
福島原発事故の被害にあい、厳しい生活を送られている中、参加されていただけに一言でもいいから声をおかけしたかった…。悔いが残りました。

〔 とみきち屋の結果 〕 下線付きが今回の結果です。

第12回  一箱古本市(春)   冊数 143冊 平均単価449円
第11回  秋も一箱古本市  不参加
第10回 一箱古本市(春)  冊数141冊 平均単価413円
第9回  秋も一箱古本市   冊数 82冊 平均単価474円
第8回  一箱古本市(春)   冊数 85冊 平均単価410円
第7回  秋も一箱古本市   冊数 85冊 平均単価548円

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