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2011年10月

2011年・不忍ブックストリート「秋も、一箱古本市」を終えて

ご挨拶が遅くなりました。2011年・不忍ブックストリート「秋も、一箱古本市」におきまして私ども<とみきち屋>にお越しいただいた大勢の方々、本を購入いただいた皆様、ありがとうございました。また、ナンダロウ(南陀桜綾繁)さん、青秋部の中村さん、石井さん、実行委員の方々。助っ人のみなさま、場所を提供くださった往来堂書店さんほかの大家さん、感謝の気持ちでいっぱいです。

昨秋は参加できず、午後から客として回りましたが、冷たい雨が降りしきる中、みなさんたいへんだったと思います。今年は打って変わって秋晴れ。
大震災の影は今なお消えることはありませんが、本好きの方々の笑顔で街全体が充ち、とても楽しく心地よく過ごさせていただいたこと、ありがたく思います。
春秋通じ6度目の参加でしたが、そのつど新たな発見、出会いがあり、一箱古本市発祥の地「谷根千」のちからを体感できました。街と人と本が一体となることの魅力です。

当日の細かいエピソードは改めて書いていくつもりでいますが、二つほど。

「フーコー入門」を手にとられたおばあちゃまがいらっしゃいました。他のお客さまの迷惑にならないよう、箱から離れたところで10分近く熟読。その後フーコーを持ったまま、今度はニーチェをしばし。最後はていねいに本を箱に戻されましたが、その佇まいが一箱古本市のある一面を象徴しているかのようで、強く印象に残っています。

年配の女性の方がまず辻邦生『モンマルトル日記』(集英社文庫)を手にされる。妻とみきちとともに思わずにっこり。この本は若いころ二人して読み線を引きまくったもの。一度一箱で出品。なかなか手にとってもらえなかったのですが、退屈男さんに購入いただきました。
残念ながら『モンマルトル日記』は購入いただけず。
でも、「多和田さん好きなの」と、多和田葉子『雪の練習生』(新潮社)を。「多和田さん〇〇〇〇なんですよ」と私が伝えると少し驚かれました。多和田さんのことをしばしお話しさせていただく。
次に少し読まれてから「私詩も書くのよ。これ面白いわねえ」とくすくす笑いながら都築響一『夜露死苦現代詩』(ちくま文庫)を。さらに長田弘『読書から始まる』(NHKライブラリー)。計3冊。
楽しいひと時でした。
喜多の園さんに向われている途中声をおかけして、「ご迷惑でなければ、これを。3冊購入いただいたサービスというより、どうしても読んでいただきたいので」と『モンマルトル日記』をお渡しする。
「まあ、嬉しい。辻さんも好きなの」と受取っていただけました。

『モンマルトル日記』のことは秘めておこうかと思っていたのですが、夜の打ち上げ飲み会の席で、その一部始終をご覧になっていた北方人さん に触れられてしまいましたので、書くことにしました。
見られていたとは全く気付きませんでした(汗)
北方人さんのお店では、原田康子の話でこのお客様と盛り上がったそうです。

打ち上げ会場への道すがら、<もす文庫>ご夫妻にばったりお会いする。
春に続き、今回も全く他の会場へは足を運ぶ余裕がなく、また大きな悔いが残ったと思っていただけに胸がいっぱいになる。よかった!!

「バッグさすがに残っていませんよね」とお尋ねすると
「完売しました~」
残念だけれど、我がことのように嬉しい。
「そうでしょうねえ。じゃあ新作バッジは?」
「ああ、送り返す荷物の中に…」
いいんです、お会いできただけで。

福島原発の被害の影響による厳しい生活状況のことを聞き、重い現実に返す言葉もない。
でも、たいへんな中「一箱古本市」に参加される<もす文庫>さん。多くのファンをお持ちですし、私にとっても「一箱古本市」には欠かせない存在です。
無理は申し上げられませんが、これからも出てくださいね。

モンガさんが早速「秋も、一箱古本市」のリンク集を作成してくれています。

こちら→ http://d.hatena.ne.jp/mongabook/20111009

9日(日)。いつものごとく一箱は2時間弱の睡眠で臨み、打ち上げで飲み、準備の段階で全エネルギーを費やしてしまったために翌日は抜け殻(笑)

夕方買い物に出たついでに、地元のブックオフに寄る。本屋だけは食事で言う別腹。
店内奥の通路に置いてあったストッカーを眺めていたら
「すみません。まだ値段をつけていないものもあるのですが、何か気になる本はございますか」と、女性の店員さんに声をかけられる。平日毎晩のごとく閉店間際にやってくる怪しいおやじの顔を覚えられてしまうのも仕方ない(笑)
「いえ、後でまた見ますから」と他のコーナーへ。さすがに待たせて本を選ぶなんてできません。

■竹田青嗣『竹田教授の哲学講義21講』(みやび出版)
■三島憲一『ニーチェ以後─思想史の呪縛を超えて』(岩波書店)

どちらも読みたかった本。一箱でニーチェ特集をやった後にすぐニーチェとは。

以下は105円で。

■マッハ『感覚の分析』(法政大学出版局)

松岡正剛が『松岡正剛の書棚』(中央公論新社)の中で、「少なくとも200人に勧めたとおもう」と書いていたので気になっていた本。叢書ウニベルシタスはブックオフではめったにみかけないのでびっくり。

■デイヴィッド・グロスマン『死を生きながら イスラエル1993-2003』(みすず書房)
■堀江敏幸『本の音』(晶文社)※文庫化されたので誰かが処分したのだろう
■ベールイ『銀の鳩』(集英社)
■高橋治『雪』(集英社)
■徳永進『隔離 故郷を追われたハンセン病者たち』(岩波現代文庫)
■高木仁三郎『プルトニウムの未来』(岩波新書)
■宇都宮芳明『人と思想 フォイエルバッハ』(清水書院)

10日(月・祝)

ずっと家に閉じこもりにさせてしまっていた母を車椅子で久しぶりに外へ連れてゆく。
スロープがあったので、近くの川の土手に行くことができた。
「自宅のベランダからはいつも空を見ていたけれど、やっぱり空はいいねえ。こんなに広い空はもっといい」と、空気を存分に吸い込んでご満悦。
夏は暑すぎてとても外に連れ出せなかったのでストレスが限界を超えていたようだ。

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(1年2カ月ぶりに)買い物がしたいというので、帰り道スーパーに寄る。
「ちっちゃなスーパーだと思っていたけど、いろんなものがあってデパートみたいだ」
日常母を取り巻いている世界からすれば、デパートにも見えるのだろう。実際は平屋の小さなスーパーなのだが。

夕方、地元馴染みの古書店へ。ここに来るとやはり気持ちが落ち着く。
新しい買い取りがあったようでカウンター横に値つけを終えてない本が平積みされている。
すでに持っているが、私の好みの筋が散見されたので、期待しつつ見せてもらう。

■山城むつみ『ドストエフスキー』(講談社)

これはどうしても読みたい、いや読まねばならぬと思っていたので嬉しい。

■『作家の秘密』(新潮社)

かなり焼けているが、ヘンリー・ミラー、ダレル、ヘミングウェイ、フォークナー、エリオットほかのインタヴュー集。買わずにはいられない。
2冊とも値段は聞かずに預かってもらい店内を。

■唐十郎『下谷万年物語』(中公文庫)

もちろん定価の倍ちょっとはしたが、それでも安い。

■ウィリアム・ゴールディング『後継者たち』(中央公論社)

■今東光『毒舌文壇史』(徳間書店)
2冊目。いつか古本市に出すことを考えて。

■樺俊雄/光子『死と悲しみをこえて』(雄渾社)
樺美智子の両親がこのような本を出していたことは知らなかった。思わぬ出会い。

店主とは30分ほど雑談。

店主として古本市を終えた途端、本屋に行きたくなる、買いたくなる。
これは私だけではないと思うのですが、母と妻は呆れかえっています。

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2011年・不忍ブックストリート「秋も、一箱古本市」出品本の紹介(2)

2011年・不忍ブックストリート「秋も、一箱古本市」 10月8日(土) 11:00~16:00

詳細はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/seishubu/

私ども<とみきち屋>は往来堂書店さん前に出店いたします。
ここは3箱で、脳天松家さん、古書パタリ口さんが一緒です。
当日コシヅカハムに出店される四谷書房さん、昨秋売上部門で受賞され、今回は助っ人さんとして一箱に尽力されている駄々猫さんに、<とみきち屋>をブログで紹介していただきました。
ありがとうございます。

では、出品本の一部紹介その(2)です。

〔単行本〕

■中平卓馬『見続ける涯に火が…』(オシリス)
■草森紳一『フランク・ロイド・ライトの呪術空間』(フイルムアート社)
■滝田修『ならずもの暴力宣言』(芳賀書店)
■滝村隆一『マルクス主義国家論』(三一書房)
■林哲夫『古本デッサン帳』(青弓社)
■古井由吉『ひととせの─東京の声と音』(日本経済新聞社)
■佐野洋子『死ぬ気まんまん』(講談社) ほか

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〔文庫本・新書〕

■木山捷平『下駄に降る雨 月桂樹 赤い靴下』(講談社文芸文庫)
■正宗白鳥『自然主義文学盛衰史』(講談社文芸文庫)
■倉橋由美子『毒薬としての文学』(講談社文芸文庫)
■岡本かの子『生々流転』(講談社文芸文庫)
■関根清三『旧約聖書の思想』(講談社学術文庫)
■山本ひろ子『異神 上・下』(ちくま学芸文庫)
■小西甚一『古文の読解』(ちくま学芸文庫)
■小沼丹『清水町先生』(ちくま文庫)
■中野好夫『中野好夫 (ちくま日本文学全集)』(ちくま文庫)
■栃折久美子『モロッコ革の本』(ちくま文庫)
■ロリス/ジャン・ド・マン『薔薇物語 上・下』(ちくま文庫)
■大西巨人『神聖喜劇 全五巻』(光文社文庫)
■酒井三郎『昭和研究会』(中公文庫)
■高橋和己『邪宗門 上・下』(朝日文庫)
■フォークナー『野生の棕櫚』(新潮文庫)
■岩上安身『あらかじめ裏切られた革命』(講談社文庫)
■今村昌平企画『村岡伊平治自伝』(講談社文庫)
■山上たつひこ『喜劇新思想大系 上・下』(講談社+α文庫)
■東雅夫編『国枝史郎ベストセレクション』(学研M文庫)
■東雅夫編『ゴシック名訳集成7』(学研M文庫)
■山田宏一『増補 友よ映画よ、わがヌーヴェル・ヴァーグ誌』(平凡社ライブラリー)
■中野重治『中野重治評論集』(平凡社ライブラリー)
■大島一彦『ジェイン・オースティン』(中公新書) ほか多数

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みなさまのお越しを心からお待ちしております。

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2011年・不忍ブックストリート「秋も一箱古本市」出品本の紹介(1)

初めて古本市に参加したのが3年前の「秋も一箱古本市」。その魅力に囚われ、昨秋を除き出店を続けています。
2011年・不忍ブックストリート「秋も一箱古本市」[10月8日(土)開催予定]、私ども<とみきち屋>は往来堂書店さん前に11:00~16:00出店させていただきます。

詳細はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/seishubu/

当日は晴れの予報。全部で7か所50箱の出店。個性豊かな店主さんが思い思いの本を持寄ってきますので、きっと素敵な本と巡り合えると思います。
みなさまのお越しを心からお待ちしております。

それでは、出品本の一部を紹介いたします。

【特集 ニーチェ&フーコー】

昨今ニーチェブームのようですが、どうもニーチェの本質とは違うところで騒がれているように思えます。私が初めて全集というものを揃えたのは、ニーチェでした。貧乏学生だったため白水社版には手が出ず理想社版。毒がまわったかのように読み耽ったものです。全集はその後手放してしまったため、現在岩波文庫、ちくま学芸文庫、中公クラシックス、光文社古典新訳文庫などで所有していますが、今でも読み返す機会が多いのはやはりニーチェ。
ニーチェ自身の著作〈古本〉は、簡単に入手できる岩波文庫などを除くと、結構見つけにくく、ニーチェ論が多くなってしまいました。
また、ニーチェだけでは特集として寂しいので、恣意的ですが好きな哲学者フーコーを加えました。

■ニーチェ『ツァラトゥストラ』(中公文庫)
■ニーチェ『悲劇の誕生』(中公クラシックス)
■ドゥルーズ『ニーチェと哲学』(河出文庫)
■ドゥルーズ『ニーチェ』(ちくま学芸文庫)
■竹田青嗣『ニーチェ』(現代書館)
■村山則夫『ニーチェ ─ツァラトゥストラの謎』(中公新書)
■フーコー『狂気の歴史』(新潮社)
■フーコー『外の思考』(朝日出版社)
■フーコー『わたしは花火師です』(ちくま学芸文庫)
■ドゥルーズ『フーコー』(河出文庫)
■佐々木中『夜戦と永遠 フーコー・ラカン・ルシャンドル 上・下』(河出文庫)
■蓮實重彦『フーコーそして/あるいはドゥルーズ』(叢書エパーヴ)

ほか合計20冊

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〔佐藤泰志文庫本コレクション〕

特集ではありませんが、佐藤泰志の現在出版されている文庫本6冊(小学館文庫3冊、河出文庫3冊)すべて出品します。

≪とみきち屋セット≫

いつもの如く強引セットです。「この1冊だけでいいのに」と思われる方もいらっしゃるはず。一箱古本市というお祭りの出し物と、ご容赦ください。
ただし今回から、≪とみきち屋セット≫は14:00以降、ご希望があればバラ売りいたします。
その際、セット価格より割高感が出る場合もございますのでご諒承ください。

<山川方夫セット>

■『目的をもたない意志―山川方夫エッセイ集』(清流出版)
■『親しい友人たち』(講談社文庫) 

<田中英光・光二親子セット>

■田中英光『桜 愛と青春と生活』(講談社文芸文庫)■『オリンポスの果実』(新潮文庫)
■田中光二『オリンポスの黄昏』(集英社文庫)

太宰治の墓前で自らの命を絶った無頼派・田中英光。ジャンルは全く違うが作家となった息子の田中光二。唯一父を語った作品『オリンポスの黄昏』は懊悩に充ちています。
『オリンポスの果実』もとうとう品切れになってしまいました。これも時代の趨勢でしょうか。上記3冊とも品切れ。ただし、有名な『オリンポスの果実』は多くの方が読んでいると思われますので、実質サービスとして付けたものとお考えください。

<シモーヌ・ヴェーユ セット>

■『重力と恩寵』(ちくま学芸文庫) ■『工場日記』(講談社文庫)

その壮絶な生き方が思想の体現ともいえたヴェーユ。こんな思想家(哲学者)はもう二度と現れないのではないでしょうか。決してすらすらと読み進められるようなものではありません。息ばかりか頭の奥まで詰まってしまいます。
それでも、随所に光る言葉の輝きは、今もって失われていないと思えてなりません。

<ソーントン・ワイルダー 戯曲セット>

■『わが町』(ハヤカワ演劇文庫)■『危機一髪 (戯曲集2)』(新樹社)

ほかに塚本邦雄セット町山智弘「映画の見方がわかる本」セット考える人「クラシック音楽と本さえあれば」セットなど。

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2011年・春「第12回 不忍ブックストリート一箱古本市」回顧(2)

開店後30分経ってもHさんの姿を拝見できない。そのまま12:00、12:30と時は流れていく。
この時点で今日はお会いできないなと諦める。一箱古本市では初めてのことなので寂しい。
ご来店いただいた際には少なくとも10冊は購入いただいているHさんを思い描いて選んだ本もけっこう持って来ていた。そのほとんどは持ち帰ることになるだろうなあと思っていたが、そんなことはなかった。

■ホフマン『悪魔の霊酒 上・下』(ちくま文庫)1600円

中年の男性。この方とは五味康祐や、出品していた(須賀敦子訳)ギンズブルグ『モンテフェルモの丘の上』(ちくま文庫)などについてもお話できてとても楽しかったです。

■ブロッホ『夢遊の人々 上・下』(ちくま文庫)2000円

中央公論社発行の単行本はお持ちだが、文庫になっていたことはご存じなかったみたいです。本好きの方には単行本、文庫本両方持っていたいと思う方は多くいらっしゃいますが、まさかこの本でとは思いも寄りませんでした。

■パノフスキー『イデア』(平凡社ライブラリー)

中年男性二人連れのお一人に購入いただく。とみきちに呼ばれ箱のところまでいくと「こちらの方が値段のことで」と。「この値段(800円)はかわらない?」と訊かれました。にこやかな笑顔と手にされた本を見て、変な冷やかしではないと思えたので、「700円でいかがですか?」とお答えする。時間も随分経っていたし、さっぱり手ごたえがなかったので少し値段を下げるか、引っ込めて他の本と入れ替えようかと思っていたところでした。「これが楽しいんだな」と、購入いただきました。
対面販売における店主とのやりとりも確かに楽しみのひとつですよね。

上記のような本が、ふらっと足を運んでくださった方々の手に渡ってゆく。
「一箱古本市」の力をまざまざと感じました。

■『パウル・ツェラン詩集』(小沢書店)

みちくさ市に出品した時にはダメだったので、今回も無理かなと思いつつ補充本として持ってきました。ところが若い女性の方に。なんでだろうなあと不思議に思っていると、
「佐々木中の本を読んで…」
あっと思い当たる。
「タイトルがツェランの詩からとったものだったので興味があって」と。
書名<切りとれ、あの祈る手を>は『強輝脅迫』に収められている一篇からの引用。
こういうつながりで本が引き取られていくこともあるのですね。

■エックハルトセット『神の慰めの書』『エックハルト』(講談社学術文庫)■矢内原忠雄『アウグスティヌス〔告白〕講義』(講談社学術文庫)■浅野和生『ヨーロッパの中世美術』(中公新書)

初老の男性にお買い上げいただく。根津教会前出店を考えて、エックハルトは<とみきち屋>セットの一つとして用意したもの。
「エックハルトは読んだ方がいいかね?」と訊かれたので、
「ええ、私はそう思います。今回セットに加えませんでしたが、『神の慰めの書』の中にも少し載っている「説教集」は特に素晴らしいです。岩波文庫から『エックハルト説教集』出ていますので、一部重なりますがぜひそちらも読んでみてください」
何度も申し上げているように、私はキリスト教の信者ではありませんし、特定の宗教への信仰心もありません。それでも、心に深く届いてくる言葉はいつも真摯に受けとめたいと思っています。

■五味康祐『オーディオ巡礼 〔復刻版〕』(ステレオサウンド)

「復刻版は元の本と比べ版型が少し小さくなっていますが内容は同じものです」と説明させていただく。五味さんの音楽本を読んでもらえることほど嬉しいことはない。

■宮下誠『20世紀音楽 クラシックの運命』(光文社新書)

若い男性に購入いただく。なんと著者の講義を受けていた方でした。バタバタしていた時でゆっくりお話できなかったのが残念です。

■瀬戸川猛資『夢想の研究』(創元ライブラリ)

若い女性が「この著者の別の作品が面白かったから」と。根津教会で後半助っ人をされていたNEGIさんが、「それ面白いですよ」と力強いフォローをしてくれました。
そしてもう1冊購入いただく。■J.G.バラード『燃える世界』(創元推理文庫)。『沈んだ世界』『結晶世界』は現役なのに『狂風世界』とこの『燃える世界』は品切れ。遠い昔に読んだ懐かしい作品が若い方の手にわたり、感慨深いものがありました。

■和田芳恵『暗い流れ』(講談社文芸文庫)■『尾形亀之助詩集』(思潮社)■野呂邦暢『丘の火』(文藝春秋)ほか6冊

NEGIさんに購入いただく。実は<とみきち屋>にとっては大のお得意様の一人なのです。
だいたいいつも午後2時以降、一般のお客様がひと段落し、このままだと残りそうな感じが漂い始めたころ1、2冊引き取っていただいています。そして「最後まで残ったらこれもいただきます」と声をかけていただき、実際残ったら持ち帰ってくれるのです。ご自身が関係者の一人だからという気持ちがあるからだと思いますが、こういうお心遣い嬉しく思います。

顔見知りの方にも購入いただきました。
実行委員のお一人Yさんには木山捷平の文庫、店主、助っ人両方で活躍している駄々猫さんにはシオラン、<古書、雰囲気>さんには『貴種と転生・中上健次』、<寝床や>さんには保田與重郎を。
そして、お隣に出店され「古書ほうろう賞」を受賞された<ヴァリエテのおもちゃ箱>さんの女性お二人には、『フーコー・ガイドブック』(ちくま学芸文庫)、『日本哲学小史』(中公新書)を。女性の方に哲学関連の本を購入いただけるのは嬉しいです。
ありがとうございました。

さて、同じ根津教会には本の雑誌社さんが3人で<本屋本の雑誌>の屋号で出店されていました。
秘蔵のバックナンバー蔵出しということで、開店直後から多くの人が群がり、大盛況でした。
早い時間帯に売る本がなくなってしまい、「自分たちの所有本をもっとを持ってくればよかった」と思われたそうです。午後2時過ぎに伺った時にはもう箱の中はすかすかでした。
でも、そんな中にバシュラールの文庫が残っていたので購入しました。
「これ高くないですかね。出している当人が今いないのでわからないんだけれど」とおっしゃるので、「いいえ。これが600円ならお買い得ですよ」と私。

その後、本の雑誌社さんのお一人と妻・とみきちが楽しくお話しさせていただきました。
私どもの箱に興味を持っていただいたみたいで、
「プロなんですか?」
「とんでもない!素人の趣味です」
「どんなところで本を集めているんですか?」
「地元の古書店とブックオフがほとんどみたいです。でも、古本市に出るようになってからますます旦那が本を買うようになって困るんです。家がぐちゃぐちゃになるから。同じ本を何冊も買ってくるんですよ」
「同じ本を?」
「昔から好きな本は何冊も買っては、人にプレゼントしていたんです。それが古本市では多くの人に読んでもらいと思うようになったみたいで。その上、馴染みのお客様のことを考えては、この本は〇〇さんが喜んでくれそうだなあとか云って」
「誰にも頼まれていないのに?!(笑)」
「そうなんです。もうビョーキです(笑)(泣)」

まあこんな感じの会話だったと後から妻に聞きました。
きっと呆れられただろうなと思っていたら、本の雑誌2011年7月号の中の、「おじさん三人組一箱古本市に挑戦!」という記事で<とみきち屋>のことを写真入りで紹介いただいてしまいました(汗) なんとも面映ゆい感じです。
しかし、この記事を読んでいるとみなさんほんとうに楽しまれたのだと思えますし、お客さまとのやりとりや三人の内紛?(笑)まで書かれていて抜群に面白いです。

ひとつだけ心残りが。それは<もす文庫>さんにお会いできなかったこと。
出店場所が遠く離れていたため、伺う余裕がありませんでした。一箱はお客様の流れが途切れないので、ほぼ箱に張り付いていることになってしまうのです。
福島原発事故の被害にあい、厳しい生活を送られている中、参加されていただけに一言でもいいから声をおかけしたかった…。悔いが残りました。

〔 とみきち屋の結果 〕 下線付きが今回の結果です。

第12回  一箱古本市(春)   冊数 143冊 平均単価449円
第11回  秋も一箱古本市  不参加
第10回 一箱古本市(春)  冊数141冊 平均単価413円
第9回  秋も一箱古本市   冊数 82冊 平均単価474円
第8回  一箱古本市(春)   冊数 85冊 平均単価410円
第7回  秋も一箱古本市   冊数 85冊 平均単価548円

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2011年・春「第12回 不忍ブックストリート一箱古本市」回顧(1)

2011年4月30日。「第12回 不忍ブックストリート一箱古本市」の初日に、<とみきち屋>として出店しました。春秋通じ5回目の参加です。
「秋も一箱まで」1週間もない今頃になってではありますが、「一箱古本市」のことはやはり書いておかずにはいられません。

かなり頑丈なカートとはいえ4箱くくりつけるとさすがに重い。坂の下りで一度崩れたが、テープで留めてあったので事なきを得た。しかし既に腕が強ばっている。出店場所の根津教会では「何それ!?」と、奇異な視線を浴びる。あたりまえか(笑) 
「文京つつじまつり」が根津神社で開催されていたため、多くの人が道を行き交っている。
根津教会さんのご厚意で台も使え、お客様はしゃがまずにすむから楽に箱を見られる。
教会からは厳かな讃美歌が流れ、その歌声にしばし足を止められる方もいる。
とても恵まれた場所に出店でき、多大な恩恵に与かりました。

スタート時は何度出ていても緊張するもの。dozoさんが開店前に来られたので気持ちがいっぺんにほぐれた。dozoさん、遠慮深いので開店直前になっても箱から離れた位置で見ていらっしゃる。前の方へどうぞとご案内。私は20冊ほどの本を入れたバックを肩にかけ後ろに立ち、補充体勢を整える。それを見ていた<ゆず虎嘯>さんに笑われてしまった。。。

■佐藤泰志セット 『佐藤泰志作品集』(クレイン)+「佐藤泰志追想集 きみの鳥はうたえる」非売品■村山槐多セット■マラマッド『レンブラントの帽子』(夏葉社)■宇野功芳 企画・編集『フルトヴェングラー』(学研ムック)ほか

「いい本はあるはずだから」と、今回はブログの出品案内を見ずにdozoさんにはお越しいただいた。開店早々大きな励みになりました。佐藤泰志セットは、私の想像を超え大きな反響があったようですが、dozoさんの手に渡ってよかったなと思っています。
これまでクラシック音楽関連本を購入いただいた記憶はなかったので、フルトヴェングラーは嬉しかったなあ。お弁当の差し入れ、ほんとうに助かりました。

■金子ふみ子『何がわたしをこうさせたか』(春秋社)ほか4冊

朴烈事件で有名な無政府主義者・金子文子の獄中記はつん堂さんに購入いただく。これを読まれるならと、瀬戸内寂聴『余白の春』(中公文庫)を無理やり押しつけてしまう(笑)
バタイユの文庫を手にされたのは意外でした。今度理由を聞いてみよう。

■久生十蘭『魔都』(朝日文庫)

かつて「みちくさ市」で引き取っていただいたのに続き2度目。「他に久生十蘭はないのですか」と尋ねられました。家には出してもいい本が4、5冊あったのに持って来なかった…。このあたりの作家は複数冊用意したほうがいいのかもしれない。この本、つん堂さんも必要があって再度手元に欲しかったとのことですが、開店後すぐになくなってしまいました。

■青江舜二郎『狩野亨吉の生涯』(中公文庫)

当日出した文庫本の中では最高額の1冊。「いい本出してますね」と男性に声をかけられる。単に古本好きという以上のオーラが感じられ緊張。こういう方には無駄口叩くのは控えるべきと思いながら、嬉しさからついついつまらぬことを話してしまいました(汗)
このブログを見てくださったと聞き、驚いてしまう。
今度どこかでお会いする機会があったら、もっとお話させていただきたいと思う素敵な方でした。

■庄野潤三『ガンビア滞在記』(中公文庫)

「持っていたような気がするなあ…」とおっしゃいながらも購入いただきました。いつもありがとうございます。

■荒巻義男セット『柔らかい時計』『神聖代』(徳間文庫)

例によって<とみきち屋>の強引セット。持ち帰っていただけるとは思っていませんでしたが、いつも「えっ?」と思ってしまう本を選んでいただくYさんに。
『時の葦舟』(講談社文庫)はもちろん既読とのことでした。今度はどんなサプライズがあるのかと楽しみでなりません。

■松山巌『乱歩と東京』(ちくま学芸文庫)

久しぶりにお会いできたHさん。初めてお越しいただいた際に足立巻一『虹滅記』(朝日文庫)を購入いただき、その時の印象がとても強かったので我が家では「虹滅記のHさん」と呼ばさせていただいております。

■石橋正孝『大西巨人 闘争する秘密』(左右社)■ジュジュク『ポストモダンの共産主義』(ちくま新書)ほか7冊

いつもお越しいただく常連のお客様。佐野洋子の文庫も含まれていたのがうれしい。

■室生犀星『我が愛する詩人の伝記』(中公文庫・復刻版)

きりっとした感じの60代後半かなと思われる女性が手にされる。それを見て妻のとみきちと「やったね。嬉しいね」とアイコンタクト。<とみきち屋>お勧めの本。これまで4冊旅立っています。
そして、もう1冊手に取られ「いただくわ」と。何だと思いますか?
中上健次『破壊せよ、とアイラーは言った』(集英社文庫)!!
後ろ姿が見えなくなってから妻と思わず「かっこいいねえ~!」
自分が後10年以上経って本を買う側になっていた時、あの方のように颯爽としていられるかと思うと冷や汗ものです。

■林尹夫『わが命月明に燃ゆ』(ちくま文庫)■サン=テグジュペリ『戦う操縦士』(新潮文庫)

林尹夫の本は、この日原口統三『二十歳のエチュード』とともに、どんな方の手に渡るか最も気になっていた1冊。若い男性の方に購入いただく。じっくり手にとって読まれ、考えていらっしゃる。こんな時「その本入手しにくいですよ」などと云うのは無粋の極み。後ろから黙って見守らせていただく。しばらくして、男性がお連れの女性に何やら囁かれた。すると女性が頷かれる。
お二人と言葉を交わすことはありませんでしたが、何とも心地よい時間を共有させていただきました。

そして、
■原口統三『二十歳のエチュード』(ちくま文庫)

「どんな本なのだろう?」と興味深げに手にとられたので、「自殺すると周囲に宣言してそのとおり実行した東大生の手記なんですが、強い感染力を持っているので、まともに向き合うのは注意した方がいいかもしれません」と紹介する。
「そうなんですか…」
「失礼ですが、学生さんですか?」
「ええ」
「なら読んでみてください。読む価値はあります」
お支払いいただく際、「できるなら若い方に読んでいただきたいと思っていたので、200円値引きして600円で」と申し上げたら喜んでいただけた。
自分が大きな影響を受けた本を、世代を超え、とりあえずつなぐことができてよかった。

■八木雄一『イエスと親鸞』(講談社選書)■『田中小実昌エッセイコレクション2 旅』(ちくま文庫)

赤ちゃんを連れた若いお父様。うちは子供が喜んでくれる本は一冊もないので、親子連れの方にご来店いただくとほっとします。ちょっと変わった組み合わせだなと思いましたが、出している当人が云えることではありませんね(笑)

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