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2011年9月

第12回 鬼子母神通り みちくさ市」エピソード(2)

このところよく購入いただいている若い男性のお客様が、いつものにこやかな笑顔でご来店。じっくり、慈しむように本を選ばれる姿が印象的。■矢川澄子『兎とよばれた女』(筑摩書房)■『永井荷風 (ちくま日本文学全集)』(ちくま文庫)を購入いただく。

前回出店した5月のみちくさ市に続き、高校同期友人Aが来てくれる。その時購入してくれた小川国夫『アポロンの島』や大岡昇平『戦争』についてはその後ブログで感想を書いてくれた。嬉しいと同時にこういう見方もあるのだなと教えられた。

みちくさ市当日16時開始の同窓会前に顔を出してくれたのだが、私は19:30に始まる2次会から合流。
Aとは4次会まで飲み、午前3:30頃別れる。Aは、ほとんど睡眠時間もとらず「さようなら原発 5万人集会」とデモに参加。ほんと、タフで行動的だ。

2次会も70名ほどいたので、一人一人とはなかなかゆっくり話せない。そんな中、稲葉なおとと久しぶりに言葉を交わせたのは嬉しかった。

今年1月には『0(ゼロ)マイル』、7月には『まだ見ぬホテルへ』がそれぞれ小学館文庫から発売された。前者は単行本『ゼロ・マイル』を加筆・改稿した作品。稲葉なおと作品の愛読者でもある重松清が、著者の魅力を伝える素晴らしい解説を書いています。

後者は多くの読者を獲得したデビュー作(旅行記)『まだ見ぬホテルへ』を加筆・修正、新たに6作品(書き下ろし)を加え短篇集として発売されたもの。解説は藤田宜永。
元の旅行記(エッセイ集)『まだ見ぬホテルへ』(新潮文庫)は残念ながら品切れですが、ブックオフではたまに見かけることもありますので、是非入手してみてください。著者自らが撮った美しい写真が数多く載せられ、装い新たな新刊と比べると楽しみも倍加します。解説は著者の従兄、B’zの稲葉浩志。

さて、話はみちくさ市に戻ります。

去年まで高校生だった<とみきち屋>最年少のお得意様が今回もまた来てくれました。
■現代詩文庫『辻征夫詩集』(思潮社)■三浦雅士『自分が死ぬということ』(筑摩書房)ほか3冊ご購入。Pippoさんのポエカフェによく参加されているようなので詩集に関しては頷けたものの、三浦雅士には驚きました。年齢を考えた時、どうしてこの本がひっかかるのか見当もつかないのです。こういう喜びがあるから、古本市への出店がやめられないのだと思います。
再度ご来店いただいた時には、5月と同様、とみきちが購入本を見せていただきました。何とも渋い選書だったとのこと。少しずつ距離が縮まっていくようで嬉しいですね。
■加藤典洋『敗戦後論』(ちくま文庫)を追加購入いただく。

3年前、<とみきち屋>が初出店した秋も一箱古本市以来のお客様Yさんには■富岡多恵子『壺中庵異聞』(集英社文庫)ほか2冊。
この本、『本の雑誌7月号』の特集「私小説が読みたい!」で岡崎(武志)さんが挙げていたもの。これまで女性作家の小説を何冊か購入いただいているので、その流れかななどと想像してしまう。秋の一箱でもお会いできたら嬉しいです。

3時過ぎにdozoさんが、なんとなんと黒の礼服姿でお見えになる。昨春の一箱古本市、、披露宴出席前に足を運んでいただいた時には驚きましたが、もう驚きません(笑)
ただただ嬉しい限りです。(今回は法事をすまされた後とか)
2年前の秋、初めてお話させていただいた時からずっと、<とみきち屋>が出店した古本市にはすべてお越しいただいているのです。
お得意様という範疇を超え、今や私たちにとってはとても大切な方と云えばいいでしょうか。古本市に出ればdozoさんに会える。大きな楽しみになっています。
■橋爪紳也『増補 明治の迷宮都市』(ちくま学芸文庫)ほか2冊購入いただく。

ここからは、一箱古本市にはよく出店されている方々や、当日みちくさ市に出店されていた知り合いの方々についてです。

脳天松(家)さんがご来店。都内の古本イベントに脳天松さんがいらっしゃらないことのほうが少ないというくらい精力的で、お顔の広い方です。うちでもよく本をお買い上げいただいております。今回は矢田津世子の文庫を。
脳天松さんとは10月8日(土)開催予定、不忍ブックストリート「秋も一箱古本市」で、同じ出店場所(往来堂書店さん)になりました。騒がしい二人組ですがよろしくお願いいたします。

一箱古本市ほかで名の知られているW(ダブり)さん、古本Tさんご夫妻にご挨拶いただいた上に、ご購入いただきました。ありがとうございます。
同じ古本市に参加していても、すれ違ったり、きっかけがなかったりで、お話しする機会のない方も多く…。もっとも私があまり社交的でない、活動的ではないということも大きな要因と云えるのですが。

W(ダブ)りさんのところからはいつも多くの本が旅立っていかれるので、どんな本を出品されているのかと、以前から見てみたいと思っているのですがまだ叶いません。
古本Tさんは第10回一箱古本市で受賞されていますし、一箱古本市直前の出品本案内が圧巻で、いつも驚いています。

午後1時過ぎ頃から会場内の別のお店を回り始めた。一箱と違い、出店していても顔見知りの方々と話せる時間をつくれるのが「みちくさ市」の楽しみの一つ。

3年前の秋に初めて古本市に参加した(秋も一箱)際、開催前から親切にしていただき、以来お付き合いいただいている四谷書房さんへ。
古本市を通じて知り合いが増えていくことの喜びを語られていました。
山村修『禁煙の愉しみ』、単行本は見たことがないので見たかったのですが、やはり引き取り手があったようです。

北方人さんのところで■三浦雅士『小説という植民地』(福武書店)■山崎昌夫『旅の文法』(晶文社)を各300円でいただく。前者は未読だったので即決。後者はなんとはなしに気になって手に取り、目次を見たら読みたくなった。どちらも相場がどれくらいなのか知らなかったが、かなりのお買い得感を感じた。それで北方人さんに聞いてみたところ案の定かなり価格を抑えての出品。
北方人さん曰く、「けっこういい本だと思うんだけれど、ほとんど手にしてもらえないんだよね」
わずか5時間ほどの間に本と人との出会いをつくり出すのは難しいものだといつも思います。値段の設定も同じく。

間もなく発行の北方人(盛厚三)さんの著書『「挽歌」物語ー作家原田康子とその時代』(釧路新書)楽しみです。

モンガさんと朝霞書林さんが一緒に出店しているブースへは何度か遊びに行く。
いつもの如く「とりあえず目に付いた本を持ってきた」と云うモンガさん。どこまでほんとうなのか今もってわかりません(笑)
持っているとは思うのだけれど、倉庫の方へ持って行っってしまったのか見当たらない■海野弘『世紀末の街角』(中公新書)を購入。
閉店間際には、気になっていた『ユリイカ 特集ドストエフスキー』(2007年11月号)をただで譲っていただいてしまいました。いつもありがとうございます。

朝霞書林さんは昨年9月のみちくさ市の時と同じく、Kでの古本バザーに寄ってから来られた。私にはとても真似できません。
今回もかなりいい本を入手されたようで、いろいろ見せていただく。その質のよさ、値段の安さには驚きを禁じ得ない。

「これは風太郎さん向きですね」と、まずバタイユ『エロティシズム』(二見書房)。確かに、もうぼろぼろに近い状態になってはいるが、ガラス付本棚に収まっている。
続いてシモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』(春秋社)。秋の一箱でちくま学芸文庫版を出品することを決めていたので不思議な縁を感じる。渡辺義愛訳の春秋社版は持っていないので食指が動く。すると、
「どうぞ」
「えっ?」
「差しあげます」
「???」思わず目が点になってしまいました。
図々しいとは思いながら、お言葉に甘え頂戴してしまう。
さすがにこのままではダメでしょうと思って福武文庫の後藤明生作品を500円で購入。
そうしたらまた1冊思想系の新書を1冊いただいてしまった。
朝霞書林さん、ありがとうございました!大切にさせていただきます。

岡崎武志さん、<くちびるごう>(工作舎I)さん、<古書、雰囲気>さん、<暢気文庫>さんのブースにお邪魔する。みちくさ市の黄金カルテットですね。
思いなしか岡崎さんにいつもの元気がないように感じられました。日差しよけのテントは張られていましたが、あの暑さは応えたのではないでしょうか。
遠くからカートを引き、重いバッグに本を詰めて古本市に参加される岡崎さんの姿は、いつも何かしら心に訴えかけてくるものがあります。
岡崎さんのいない古本市は寂しいに違いないはずですが、お身体の調子がすぐれない時には、無理をせず休まれた方がいいのではないだろうかと、個人的には思ってしまいます。
春の一箱古本市2日目雨の中、ほんとうにしんどそうだった岡崎さんを見ているだけに…。

どすこいフェスティバルさん。女性お二人は今回、着物姿ではではなく洋服でしたが、それでも艶やかでした。一方で、男性Kさんが着てらした東京大学Tシャツは強烈なインパクトがありましたね。
東大クイズに挑戦したもののあえなく撃沈。昨秋の一箱の時と同じ問題だったのに不正解。
もの忘れの激しさを実感いたしました(笑)

ゆず虎嘯さん、今回はお一人での参加でたいへんだったと思います。私がフラフラ歩き回ってしまったためにお手伝いできず、すみませんでした。

出店がお隣だったミウ・ブックスさん。選書、レイアウト、接客などすべてに拘りと、思いが感じられ、貴重な経験をさせていただきました。ありがとうございます。

<とみきち屋>の結果
冊数90冊 平均単価397円
新書好きとしては、10冊出品して残ったのが1冊だったのは嬉しく思いました。
次は10月8日(土)、「秋も一箱古本市」に出店いたしますので、よろしくお願いいたします。

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「第12回 鬼子母神通り みちくさ市」エピソード(1)

残暑というよりまるで夏のような日差し。熱中症にならぬよう首に濡れタオルを巻いて臨む。暑さと3連休の中日が影響してか、いつもに比べ道行く人の数も少なく感じられる。
それでも「みちくさ市」は「みちくさ市」、満喫させていただきました。
わめぞのスタッフの方々、店主の皆さん、足をお運びいただいたお客様には心より御礼申し上げます。

11時の開店少し前にはよくお越しいただくお客様の姿が目に入り、開店と同時に4人ほどの方が箱をご覧になり始める。この緊張感がたまらない。

まずはお馴染みの男性。「これなかなか出てこなくて」と、■片山杜秀『ゴジラと日の丸』(文藝春秋)をご購入。片山杜秀は右翼関連の著書もあり、多才。私の場合クラシック音楽メインの本を残しておけばいいので出品した。
「ずっと読みたかったので嬉しいです」という言葉をかけていただき、満足のスタート。

直後、お二人の男性が■青木正実『古本屋群雄伝』(ちくま文庫)、■四方田犬彦『回避と拘泥』(立風書房)をそれぞれ購入される。四方田犬彦はこれまで20冊くらい出品してきたが一度も残ったことがない。根強い人気があるのだろうか。

端の方にしゃがんで静かに本を手にとっている女性がいらした。本を箱に戻す時のご様子から本をとても大切にされる方と伺えた。
■吉田健一『東京の昔』(中公文庫)■吉田健一『本当のような話』(集英社文庫)■中沢新一『僕の叔父さん 網野善彦』(集英社新書)など4冊購入いただく。
詳しくお話しさせていただいたわけではないが、箱を挟んで流れるやわらかい時間がとても心地よかった。

続いて中年の男性のお客様に■伊藤計劃『伊藤計劃記録』『伊藤計劃記録 第弐位相』(早川書房)2冊セットを購入いただく。

さらに年配の女性が■佐野洋子『人生のきほん』(講談社)をご購入。加藤陽子『戦争を読む』(岩波書店)が気になるご様子でしばらく読まれていた。結局箱に戻されたので、800円はやや高いと思われたのかなと勝手に推測する。
ところが、しばらくしてから戻って来られ再び手にとられた。
「買っても今読めるかしら…」と囁かれる。どうやら加藤陽子の他の著作を先に読んだ方がいいのかもと迷われているようだった。確かに人気の『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』は好著だし読みやすい。でも、この岩波の本もお勧めなので「是非読んでいただきたいので、700円でいかがですか?」と申し出たら、快く引き取っていただけた。

jindongさんがお見えになる。ややお疲れのご様子。実際休みの日を使って出かけるのがしんどくなってきたとのこと。それでもこの暑い中来ていただけるのだから嬉しいです。

<とみきち屋>のレギュラークラスは、所有されている本とかぶっているため、いつも迷われる。ほとんどお付き合いのように買っていただくのでいつも恐縮。
いったん■大西巨人『巨人の未来風考察』(朝日新聞出版社)を手に取られたが、「持っていたような気がするなあ」と■山田稔『旅のなかの旅』(新潮社)に変更。■内田百閒『随筆億劫帳』(旺文社文庫)と併せて購入いただく。
その後再度ご来店。「やっぱりないような気がする」と大西巨人お持ち帰りいただく。ありがとうございます。

この間、プレ開催から来ていただいている年配男性のお客様が■『文藝 特集山田詠美』(河出書房新社)ほか2冊ご購入。

そしてそして、ブログでも紹介した日野日出志セット■『地獄小僧』『悪魔の招待状』は当店のお得意様Sさんのもとへ。少しお迷いになられていたが、「Sさんを除いて持ち帰っていただけそうな方はいらっしゃいません」と半ば押しつけ(笑)
すると、「誰も引き取り手がなさそうなら持って帰ろうか」と力強いお言葉。
救いの神現るという感じでした。
「ブログには出品本の写真も必ず載せてね」とリクエストいただく。
秋の一箱の前にもしっかり紹介しますので是非お越しください。

お待ちしておりました。<とみきち屋>の大お得意様Hさんご来店。

■野口武彦『近代小説の言語空間』600円
■アガンペン『例外状態』(未来社)600円
■彌永信美『幻想の東洋 上・下』(ちくま学芸文庫)1800円
■ウォーカー『ルネッサンスの魔術思想』(ちくま学芸文庫)800円
■パノフスキー『ゴシック建築とスコラ学』(ちくま学芸文庫)800円
■ドゥルーズ『カントの批判哲学』(ちくま学芸文庫)500円
■樫山欽四郎『哲学の課題』(講談社学術文庫)400円
■ヘーゲル『キリスト教の精神とその運命』(平凡社ライブラリー)600円
■レニエ『水都幻談』(平凡社ライブラリー)
■日夏耿之介『風雪の中の対話』(中公文庫)
■矢沢永一『大正期の文藝評論』(中公文庫)
■臼田捷治『杉浦康平のデザイン』(平凡社新書)
ほか計20冊を5分もかけずに選ばれる。

「ど真ん中ですね」といつもの素敵な笑顔。
パノフスキーを指して「これなんか何回か見かけたけど買わないでおきましたよ。この手の本は<とみきち屋>さんで買おうと思ってね」と嬉しい殺し文句。
思わず、「惜しまずに蔵出しします」と答えてしまう。実際は段ボールまたはガラス付本棚から出しますが(笑)
秋の一箱の日程を訊かれたのでお伝えする。春はご事情があってお見えになれなかったが、秋はいらしていただけそう。う~ん、ご期待に添うのはたいへんだ(汗)
「(古書現世の)向井さんに渡しておいてください」といつもようにおっしゃって行かれました。

11時20分過ぎ。昨春の一箱の際、助っ人同士として知り合った女性Mさんご来店。
■荒川洋治『夜のある町で』(みすず書房)■林哲夫『古本スケッチ帳』(青弓社)をお買い上げいただく。
Mさん、10月中旬西池袋(立教大裏)に「古書ますく堂」を開店されるとのことです。
http://d.hatena.ne.jp/mask94421139/

ここで私は少しだけ店を離れる。その間にモノンクルさんが来られた。追いかけたものの見つけられず。何というタイミングの悪さ。久しぶりだったのでお会いしたかったな。
お連れの方に2冊購入いただいたとのこと。ありがとうございました。

11時45分。よくお越しいただく男性のお客様に、■辻まこと『虫類図譜<全>』『画文集 山の声』(ちくま文庫)セットをお買い上げいただく。
以前後藤明生の帯付文庫を当店で購入。帯付のものを探していたのだけれどなかなか見つけられなかったから、あの時は嬉しかったよとお話しいただく。

正午。まさに時の人、つん堂さん登場。私などがわざわざ紹介する必要はないでしょう。
みちくさ市に来られると聞いていたので、瀬戸内寂聴の流れで『諧調は偽りなり 上・下』(文藝春秋)。そしてこれまで3冊買っていただいている辻潤の本を箱に用意してお待ちしていた。せっかく来ていただくのに目に留まるものがゼロではさびしいかなと思って。幸い3冊とも残っていた。

つん堂さん、まず単行本『諧調は偽りなり』を手にとって、
「こういうかさばるのは嫁に怒られるんですよね~」
続いて辻潤『辻潤 孤独な旅人』(五月書房)へと手が伸び、
「風太郎さん、よく辻潤出されてますよね」と云われるので、
「ええ、今日もつん堂さん用に(笑)」
「???」
「『諧調は偽りなり』も同じく」
「なんですかそれ。つん堂専用ルアーですか。まいったな(笑)」
<とみきち屋>の押し売り商法と気付いた上で3冊まとめて買ってくださったつん堂さんはやさしいなあ。

つん堂さん、この秋は長野で開催される古本市のために全力投球です。遠くからですが応援しています。
そのうちのひとつ「長野門前古本市」のチラシを預かったので店頭に設置。
多くの方が持っていかれました。娘さんの嫁ぎ先がすぐ近くとか、よくその辺りに行くから楽しみという方もいらっしゃいました。
「長野は遠いわ。東京のはないの?」と訊かれる方には「早稲田青空古本祭」のチラシをお渡しすると喜ばれました。
本好きの方はまだまだいらっしゃるのだなと実感でき嬉しかったです。

開店後1時間で50冊強引き取っていただく。
12時半ころまでがピークはいつもとほぼ変わらず。
午後の様子は次回エピソード(2)でご紹介します。

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「第12回 鬼子母神通り みちくさ市」出品本紹介

9月18日(日)に開催される「第12回 鬼子母神通り みちくさ市」に<とみきち屋>出店します。場所は池田ビル大シャッター前。

http://kmstreet.exblog.jp/

今回特集は設けていませんが、いつものレベルは保てたのではないかと思っています。
みなさまのお越しを心よりお待ちしております。

遅くなりましたが出品本の紹介です。

■辻潤『辻潤 孤独な旅人』(五月書房)
■加藤陽子『戦争を読む』(勁草書房)
■片山杜秀『ゴジラと日の丸』(文藝春秋)
■林哲夫『古本スケッチ帳』(青弓社)
■津野海太郎『電子本をバカにするなかれ』(国書刊行会)
■町山智弘『トラウマ映画館』(集英社)
■『神道集』(東洋文庫)
■『最終講義』(実業之日本社)
西脇順三郎、矢内原忠雄、渡辺一夫、田中美知太郎、大塚久雄、清水幾多郎、鶴見和子、加藤秀俊ほか18名の最終講義集成。

■ウォーカー『ルネッサンスの魔術思想』(ちくま学芸文庫)
■パノフスキー『ゴシック建築とスコラ学』(ちくま学芸文庫)
■ドゥルーズ『カントの批判哲学』(ちくま学芸文庫)
■橋爪紳也『増補 明治の迷宮都市』(ちくま学芸文庫)
■石川淳『荒魂』(講談社文芸文庫)(ちくま学芸文庫)
■田村隆一『詩人のノート』(講談社文芸文庫)
■樫山欽四郎『哲学の課題』(講談社学術文庫)
■ヘーゲル『キリスト教の精神とその運命』(平凡社ライブラリー)ほか

〔とみきち屋セット〕

●日野日出志セット

『地獄小僧』(ちくま文庫)『悪魔の招待状』(ぶんか社)

かなりグロテスクな描写なのでこの手のものが苦手な方にはお勧めできません。
前者など、えも言われえぬ悲哀に包まれているように感じるのですが、購入される方がいるとは思えません(笑)

●伊藤計劃セット

『伊藤計劃記録』『伊藤計劃記録 第弐位相』(早川書房)

●チェーホフセット

トロワイヤ『チェーホフ伝』(中公文庫)『チェーホフの手帖』(新潮文庫)など

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難民を生み出す国

去年の今頃は精神面での不調から失語症のようになってしまった。
今年もまた同じ時期に長い間ブログを書けなかったが、事情は全く違う。
一連の古本市を終え、原発関連の本、雑誌を読み出したら止まらなくなった。役立ちそうな情報はネットで毎日欠かさずチェック。
不明を恥じ、恥は上塗りされていった。
原発問題が視野から抜け落ちていたのは、己の怠慢以外のなにものでもなかったことを嫌というほど思い知らされた。

一方で、今日までの原発推進の過程と福島第一原発事故対策におけるあまりにむごい状況に吐き気すら覚えた。
次々と言葉が湧いてきた。だが、そのほとんどは呪詛と大差ないもので、とうてい書き留められない。中途半端に言葉を吐けば己に返ってくるだけに思えた。
実際、感情的に言葉をまき散らしているとしか思えぬ言説には違和感を覚えた。
かといって本のこと、日常のことを淡々と書いていく強靱な精神は自分にはなかった。
知れば知るほど、軽々にものを云えなくなってしまい、変わらずにいることの難しさが身に沁みた。

加えて、7月半ば頃から毎日のように頭痛に悩まされ、血圧が上がり、8月の頭には脳の血管が切れたか詰まったかと思われるような激痛に襲われる。MRIの結果脳に異常は認められなかったものの、日々何とか暮らしていくことで精一杯だった。

渦巻く思いを落ち着かせるまでに随分と時間を要してしまった。
「安易に語れない」という気持ちは今も変わらない。
しかし、何も無かったかのようにブログを再開できないので、少しだけ原発のことに触れておこうと思う。

核の「平和利用」というスローガンが、原発を進めたい日本の中枢とアメリカによる隠れ蓑に過ぎなかったことは既に様々な報道によって白日のもとに晒されている。
「軍事利用」、「平和利用」いずれにせよウラン、プルトニウムの核分裂によって膨大なエネルギーを発生させる点で違いはなく、有事の際その気になれば、いつでも核兵器を製造できる体勢にあると知らしめおくことは、「技術抑止力」として働いてもいる。
それぞれの思惑の中で癒着した政・官・財の構造は想像以上に堅固で、彼らはチェルノブイリの大事故も、国内の度重なる重大な事故をものともせず原発を推進してきた。そこに御用学者と呼ばれるヒルがべったりと張りついている。

綻びだらけの危機管理体勢だけではない。まともな見通しすら立てられずに(半ば放棄し)完璧な制御など不可能な原発を推進していく側の歪な体質は異常過ぎる。しかも彼らには「命」(人間のみならず、ペット、家畜ほかを含めた生命)を重んじる思想がまったく欠如している。このことは、情報の隠蔽、お粗末なデータ訂正及びその無神経な開示の仕方。或いは安全基準の、無根拠かつなし崩し的引き上げ等枚挙にいとまない。
恐ろしいのは、政府、東電含めた推進側の無責任さがこれだけの甚大な事故をもってしても変わっていくとは思えないことだ。

マスメディアになぞもとより期待はしていないが、「レベル7」の事故であることの重大さを早くも忘れているかのような現在の報道にはうんざりする。

自然の中に潜んでいる破壊的なエネルギーを人間が想定できるとは思えない。
原発が抱える恐ろしいリスクを愚かな人間がコントロールできるとは思えない。
最低限度の安全すら保障されずに、何が「平和利用」か。

避難民だけではない。まさしく「難民」を生みだし、一部の国民に多大な犠牲を強いている。
土地を奪われ、人生そのものを破壊された多くの人々の悲痛な叫びが聞こえないのか。
原発以外にも大きな問題を抱えたこの国でこれから生きていかねばならぬ、或いは生まれ来る者たちに、目に見えぬ不安を押しつけ、健康上のリスクを負わせていいわけがない。
今の日本は国家の体を成していない。

可能な限りネットワークを拡げつつ、わたしたち一人一人が自分の身を守っていくしかないようだ。

これまでに読んできた東日本大震災、原発に関する本や雑誌を以下に挙げておきます。

■辺見庸『水の透視画法』(共同通信社)

震災に触れているのは最後の一編のみ。原発には直接言及していない。2011年3月までの原稿で編まれているからだ。
しかし、日本社会が内包するカタストロフ的状況をつぶさに観察し鋭く抉っている。
著者本人が<まえがきに代えて>で述べているように、大震災は結末ではなく新たな始まりの景色であり、この本は未来への予感で満ちている。

震災直後に書かれた<非情無比にして荘厳なもの 日常の崩壊と新たな未来>から引用する。

混乱の極みであるがゆえに、それに乗じるのではなく、他に対しいつもよりやさしく誠実であること。悪魔以外のだれも見てはいけない修羅場だからこそ、あえて人に誠実であれという、あきれるばかりに単純な命題は、いかなる修飾もそがれているぶん、かえってどこまでも深玄である。
(略)非常事態の名の下で看過される不条理に、素裸の個として異議をとなえるのも、倫理の根源からみちびかれるひとの誠実のあかしである。

そろそろ発刊されるであろう『神話的破壊とことば(仮)』(角川書店)を早く読んでみたい。

■小出裕章『原発のウソ』(扶桑社新書)
■小出裕章『原発はいらない』(幻冬舎ルネッサンス新書)
■小出裕章『隠される原子力・核の真実』(創史社)
■広瀬隆『原子炉時限爆弾』(ダイヤモンド社)
■広瀬隆『FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン』( 朝日新書)
■広瀬隆・明石昇二郎『原発の闇を暴く』( 集英社新書)
■武田徹『私たちはこうして「原発大国」を選んだ 増補版「核」論』(中公新書ラクレ)
■武田徹『原発報道とメディア』(講談社現代新書)
■高木仁三郎『原発事故はなぜくりかえすのか』(岩波新書)
■山本義隆『福島の原発事故をめぐって』(みすず書房)
元東大全共闘議長という経歴は関係ない。人としての真摯な訴えが感じられる。
100頁ほどのコンパクトさ、1050円(税込み)という価格に加え、様々な情報をまとめての発言ゆえとても読みやすく、的も射ている良質な本。
■神保哲生・宮台真司『地震と原発 今からの危機』(扶桑社)
ビデオニュース・ドットコムでの放映内容と重なるが、この視点とアプローチの仕方は棄て難く。教えられることも多かった。いつもは敬遠しがちな宮台も、わかりやすく、まともに発言している。
■宮台真司・飯田哲也『原発社会からの離脱』(講談社現代新書)
■『思想としての3・11』(河出書房新社)
期待したほどの内容ではなかった。
■広河隆一『暴走する原発』(小学館)
■広河隆一『福島 原発と人びと』(岩波新書)
しっかりとしたルポ。
■菊地洋一『原発をつくった私が、原発に反対する理由』(角川書店)
■佐野眞一『津波と原発』(講談社)
■古賀茂明『日本中枢の崩壊』(講談社)
■石橋克彦編『原発を終わらせる』(岩波新書)
■田中三彦『原発は何故危険か 元設計技師の証言』(岩波新書)
■佐藤栄作久『福島原発の真実』(平凡社新書)
■鈴木真奈美『核大国化する日本 平和利用と核武装論』(平凡社新書)
■武田邦彦『原発事故 残留汚染の危険性』(朝日新聞出版)
■武田邦彦『原発大崩壊! 第2のフクシマは日本中にある』(ベスト新書)
■内田樹・中沢新一・平川克美『大津波と原発』(朝日新聞出版)
■上杉隆『この国の「問題点」』(大和書房)
■堀江邦夫『原発労働記』(講談社文庫)
■『朽ちていった命-被爆治療83日間の記録』(新潮文庫) 再読
■『決定版 原発大論争! 電力会社VS反原発派』(宝島文庫)
ブックオフの105円棚から購入。文庫化前の原本は1988年9月。小出裕章、高木仁三郎らの記事も載っている。24年も前に今語られている原発の危険性の多くはこの書の中で語られている。
読むのが遅すぎた…。最近、再版されたみたいです。
■吉岡斉『原発と日本の未来』(岩波ブックレット)

■文藝春秋2011年5月号・6月号・7月号
■朝日グラフ『東北関東大震災全記録』(朝日新聞出版)
■AERA緊急増刊『東日本大震災100人の証言』(朝日新聞出版)
■エコノミスト臨増『福島原発事故の記録』(毎日新聞社)

■FRYDAY臨増『福島第一原発「放射能の恐怖」全記録』(講談社)
■別冊宝島『日本を脅かす!原発の深い闇』(宝島社)
FRYDAY、宝島社の名で敬遠するのはもったいない。上記2誌はとてもよい出来映えで参考になることが多かった。

■Newsweek日本版別冊『原発はいらない』(阪急コミュニケーションズ)
■WEDGE7月号『それでも原発 動かすしかない』(ウェッジ)
原発推進側の意見はいかなるものかと手にしてみたが、予想通り内容空虚。
■新潮45(6月号)『震災後をどう生きるか』(新潮社)
■ダヴィンチ8月号『東日本大震災 無力感を祈りに変えて』(メディアファクトリー)

震災、原発関連のものを読んでばかりでは気が滅入ってしまうので、次のような本や雑誌も合間に読んだ。

■佐野洋子『対談集 人生のきほん』
■『佐野洋子 追悼総特集 100万回だってよみがえる』(河出書房新社)
■山川方夫『目的を持たない意志』(清流出版)
■高野和明『ジェノサイド』(角川書店)
■勢古浩爾『最後の吉本隆明』(筑摩選書)
■合田正人『吉本隆明と柄谷行人』(PHP新書)
■合田正人『レヴィナスを読む』(ちくま学芸文庫)
■円堂都司昭『ゼロ年代の論点』(ソフトバンク新書)
■星野仁彦『発達障害に気づかない大人たち』(祥伝社新書)
■豊崎由美『ニッポンの書評』(光文社新書)
■吉田健一『書架記』(中公文庫) 
手元に残っていた文庫は焼けがひどく、ボロボロだったので再版されたものを再読。
■斎藤貴男・鈴木邦彦・森達也『言論的自滅列島』(河出文庫)
■H・ジェイムズ『ねじの回転』(新潮文庫)
原文を読み合わせする機会があり、自分の解釈が大きく間違っていないか
確認する意味もあって再読。
■サン=テグジュペリ『夜間飛行』(光文社古典新訳文庫)
■フィリンガム『フーコー』(ちくま学芸文庫)
■岡崎武志『女子の古本屋』(ちくま文庫)
増補部分と解説のみ読む。
■山村修『増補 遅読のすすめ』(ちくま文庫)
単行本で読んだ回数を含めると5回目だろうか。130頁強増補されたことは、嬉しい限り。
著者の読書及び書評スタイルには共感を覚える。
■朝日ジャーナル『知の逆襲第2弾 日本破壊計画』(朝日新聞出版)
何といっても巻頭を飾った辺見庸の記事が圧巻。
■『本の雑誌7月号』(本の雑誌社)
岡崎武志さん、荻原魚雷さん対談の「私小説を読みたい!」を目当てで購入。それぞれの特徴が出ていて面白かった。二人が選んだベスト20の中では古山高麗雄『身世打鈴』のみ未読。いつか手に入れて読んでみたい。
本の雑誌社の方々の「おじさん三人組 一箱古本市に挑戦!」には驚いた。<とみきち屋>のことが取りあげられている。
■『Witchenkare ウィッチンケアvol.2』
震災発生直前、多田洋一さんから送っていただいた。多田さんの作品、浅生ハルミンさんの初小説、高校同期稲葉なおとの小説が載っている。どれも味わい深いものでした。寄稿者のなかには福島出身で親戚を亡くした方もいらしたと聞いている。困難な道のりになるかとは思いますが第3号の発行も期待しています。

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