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「第9回 鬼子母神通り みちくさ市」 回顧(1)

午前10時過ぎ、斜め前の駐車場で開店準備をされていた岡崎武志さんにご挨拶。亡くなられた黒岩比佐子さんの『古書の森逍遙』(工作舎)が刊行された際、岡崎さんと黒岩さんのトークを聞きに行った時のことが甦り、「黒岩さんが会場に来てくれるような気がします」と思わず口にしていた。
午後遅めに<岡崎武志堂>にて、尾崎一雄『虫のいろいろ』(新潮文庫)を購入。『暢気眼鏡』(新潮文庫)は手元に残っているが、こちらは何かの折手放してしまったような気がしたので。尾崎一雄を再読したくなったのも、やはり関口良雄『昔日の客』(夏葉社)の影響だろうか。

山村修(狐)が『遅読のすすめ』(新潮社)の中で尾崎一雄に触れている。
「虫のいろいろ」からは作家のザラリとしぶとい意志を感じ、「書かれているのは、どうでもよい日常のささやかなことだが、ささやかであるだけに、かえって作家の手にした生きかたの太さを思う」と云っている。
また「かまきりと蜘蛛」をとりあげ、次のように書いている。「暮らしの時間とは、めぐるというより、めぐらせるものだとつくづく思う。作家は、そして小説の主人公は、時間がゆるゆるとめぐるのをたのしんでいるのではなく、自分のほうから腹をくくって、ゆるゆるとした時間をめぐらせているのだ」 濁りなき目で捉えている文章がいい。

10時20分頃、年輩のご婦人が「ここだここだ」と言って店に来られたので驚いた。<とみきち屋>目当てなんて、考えられない。ところが…
私が書いた佐野洋子さん逝去の記事を読まれ、今回の「みちくさ市」で追悼特集を設けることを知って、お越しくださったとのこと。
確かに、佐野さんは女性に特に人気があると思われるが、年輩の方がこの無名のブログを読まれていることが今以て不思議でならない。
本はほぼ並び終えていたが、11時開店の旨をお伝すると、「後で寄るはね」と云っていただきほっとする。

10月に開かれた高校2年のクラス会(同窓会)で約30年振りに再会したOさんが、10時半頃遊びに来てくれる。お子さんの文化祭に行く前とのこと。彼女も佐野洋子のファン。開店準備でゆっくりと話せず残念だった。「ここが黒岩さんと最後に話した場所」と伝えると、Oさんもあまりに早過ぎる死を悼んでいた。「チャコ先輩には応援団で指導してもらったのよ」と聞き、その時のことをいろいろ知りたくてならなかったが、時間がない。いずれ改めて聞かせてもらいたい。

開店15分前、dozoさんがお見えになる。顔がほころぶ。「まだ開店前なので…」とこちらが口にしかけた途端、「他を見て11時まで時間を潰して来ますから」と云っていただく。
こういう心遣いがありがたくてならない。
「みちくさ市」は「一箱古本市」とは違い、開始および終了時間はきっちりでなくてもいいことになっている。しかし、開催前に出品本を紹介し、常連さんもいらっしゃるので<とみきち屋>の場合、開始時間は準備が整っていても早めないことにしている。

開店11時ジャスト、dozoさんを含め四人の方が箱の前に。

■津野海太郎『おかしな時代』(本の雑誌社)
■小沼丹『小さな手袋』(講談社文芸文庫)

二人の方がそれぞれ購入。小沼丹が好きな方は多い。これまで5冊ほど出品してきたが残ったことはない。だから古書店で見つけると値段のことはあまり考えず入手し、出品してしまう。

■四方田犬彦『マルコ・ポーロと書物』(枻出版社)ほか4冊
お名前は存じ上げないが、よくご来店いただいている方。

■中沢新一『アースダイバー』(講談社)■陣内秀信『東京の空間人類学』(ちくま学芸文庫)■富岡多恵子『室生犀星』(ちくま学芸文庫)ほか7冊

東京関連の本を中心に7冊も購入頂く。dozoさんなら既にお持ちではないかと思われる本も混じっていたので、古本市復帰のご祝儀のような感じ。
dozoさんにはいつも温かい言葉をかけていただいているばかりでなく、素敵な笑顔に力をもらっている。

■野口冨士男編『座談会 昭和文壇史』(講談社)ほか2冊

11時15分頃。5月中旬から2ヶ月ほど季節はずれの冬眠に入り、7月にブログを再開した際、まっさきに励ましの言葉をかけてくれたjindongさんが購入。「元気そうでよかった」と何度か云っていただく。ブログ再開後もいろいろあって、なかなか更新できずにいるが、「無理をしてでも書かねば」という気持ちにならずにいられるのは、jindongさんから頂戴したコメントの影響が大きい。

■ぜーバルト『アウステルリッツ』(白水社)
■ジジェク『ラカンはこう読め!』(紀伊國屋書店)
■吉田裕/バタイユ『聖女たち バタイユ遺稿からの』(書肆山田)
■日夏耿之介『荷風文学』(平凡社ライブラリー)
■シュレーゲル『ロマン派文学論』(冨山房百科文庫)
■デリダ『言葉にのって』(ちくま学芸文庫)
■ヴェルレーヌ『叡智』(新潮文庫) ほか18冊

当ブログ古本市の記事ではお馴染みのHさん。(詳しく知っているわけではありませんが)古書業界では有名な方なので、軽々に書くのは本来憚れるのですが、これまで一度もお叱りを受けることはなかったので書いてしまいます。
11時30分、既に何店か寄って来られたようで、満杯の袋を手にご来店。18冊選ばれるのに要した時間5分足らず。
これくらいのことではもう驚きません。
9月のみちくさ市でお会いした際、「カムバック楽しみにしていますよ」と声をかけていただいたので、出品本を選ぶ際、Hさんを何度も思い浮かべた。もちろん、Hさんだけでなく常連の方々のことはいつも頭にあります。
18冊購入いただいたうち9割近くはHさんならと思った本。この快感は出店しなければ味わえないもの。もっとも、素人ゆえの気楽さもありますが。
そしていつものように本をお預かりし、Hさんは本探しの旅へ出られる。

午後になって戻られた際、更に5冊購入いただく。(これで計23冊) その中に『マラルメ詩集』(岩波文庫)が混じっていたので、<あれ?>と首を傾げてしまった。
春の「一箱古本市」でブランショとサルトルのマラルメ論セットを、「強引セットですね」とおっしゃりながらも購入いただいことは鮮明に覚えている。
「Hさん、当然お持ちでは?」
「持っているけれど、どこにあるかわからないんですよ(笑)」
??!! ……押入奥のどの箱に入れたかわからないなどというレベルであろうはずがない。巨大な蔵が目に浮かんだ。それで、
「しまってある場所の見当がついても、そこまで辿りつけないということですね(笑)」と私。
Hさん、何もおっしゃらずにっこり。
お話させていただく度に謎が深まってゆく。

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コメント

おばあさんて私のこと?
そうみたい。
確かに買った『問題があります』は家に帰ったらもう存在しておりましたね。
やっぱり、おばあさんでした。

投稿: おばあさん | 2011年1月12日 (水曜日) 10:01

年輩のご婦人ならまだしも、おばあさんなどと、たいへん失礼いたしました。私も50代ですので、それほど年齢が離れているわけではありません。ご容赦ください。

私も既にある本を買ってしまうとはあります。そればかりか、固有名詞が出てこない、何をしようとしていたのか、言おうとしていたのか思い出せないことも多くなってきました(汗)

当日は二度も足をお運びいただいた上に、佐野さんの本も購入いただきありがとうございました。

佐野さんの本がお好きなご友人もいらっしゃると伺いましたが、佐野さんの本を通じて語れるのは嬉しいことだと思います。

私ども<とみきち屋>では、この一年以上毎回のように佐野さんの本を出品しております。まだ知らない方に是非読んでもらえたらという気持ちから。今後も続けていくつもりでおります。

また何かの機会がございましたら、お越しください。
心よりお待ちしております。

投稿: 風太郎 | 2011年1月13日 (木曜日) 14:54

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