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佐野洋子さん逝去

仕事を終え夜11時過ぎに帰宅し、PCを立ち上げ目を疑った。ブログのアクセス数が異常に多い。何が起こったのかと、検索ワードを調べたら「佐野洋子」「佐野洋子 がん」「佐野洋子 息子」となっている。言葉を失う。予想した通りのことがネットの記事に出ていた。佐野洋子さんが亡くなられた。
遠くないうちにこの日が訪れることは分かっていた。
しかし、実際もう佐野さんの文章を読むことも、絵を見ることもできないのだと思うと、大きな喪失感に襲われる。

歯に衣着せぬ表現で、すかっとさせてくれることが多かった。
ものごとをこんなふうにも見れるのだと、感心もさせられた。
でも、どことなく寂しげで孤独を感じさせるところもあって…。
ほんとうに繊細な人だったと思う。
そうでなければ、あの名作『100万回生きたねこ』は生まれていなかっただろう。

2年半前『役に立たない日々』(朝日新聞出版2008.05)を読んで佐野さんが癌を患っていることを知った。何の前置きもなしに「ガンになったので、髪の毛がメリメリと抜ける」という文章が目に飛び込んできた時の衝撃は今も忘れない。

乳ガンの手術をし、過酷な一年を送った後、骨への転移が見つかる。
あと何年持つかと医者に尋ね、ホスピスを入れて二年と云われ、抗ガン剤治療も延命も拒んだ佐野さん。
治療を続けたらかかると思われる費用1千万で、病院からの帰りにいきなりジャガーを購入し、1週間でボコボコにしてしまい、毎日カラスの糞がボンネットにのっていると淡々と語っていた。
がんのおかげで苦しかったうつ病が消えたと、喜んでいるようにも思えた洋子さん。

その後、『天使のとき』 朝日新聞出版 (2008.12)、『問題があります』 (筑摩書房 2009.7)、『クク氏の結婚、キキ夫人の幸福』 (朝日新聞出版 2009.10)と出版されたが、自身の闘病生活を書かれてはいない。
他の媒体で佐野さんが語っていたとも聞いていない。ほとんど何も伝わってこない。
佐野さんらしいなと思う。

『問題があります』のあとがきの日付が2009年5月31日となっているが、これが最後の文章になったのだろうか。(以下抜粋)

今日箪笥をあけたら着物が一枚もない。誰かにあげたのだが誰だか思い出せない。昔から忘れっぽかったが、多分それは自分とってどうでもいい事だったからで、それにしてもどうでもいい事が多すぎた一生だったと思う。
そして強く思った。まるで生きていてもいなくても同じ一生だった。
しかし、必死こいた一生だったはずである。あんなこともう二度と出来ないというような事を歯を食いしばってやって来たことも沢山あった。
でも今や、そういう事も鮮度が次第に落ちてぼんやりはるかである。
忘れないと人間は生きていけない。
年月を経て生きて来ると記憶も膨大になるが、覚えていたら芥川龍之介のように若死にしなくてはならない。私など三度位死ななくてはならない。幸い私は芥川ではない。神様ありがとうございます。
そういうわけで、私は自分が書いたものもへーいつ書いたんだっけと思うばかりである。
死んで閻魔様に「名前は?」ときかれて「へっ、誰の?私?忘れました」と答えると思う。

まさか閻魔様に会うとは思えないが、何かも忘れてのんびりゴロゴロしている姿が浮かんでくる。

佐野洋子さんのご冥福を心からお祈りいたします。

〔追記1〕葬儀・告別式は近親者のみで行われるみたいですが、喪主の長男・弦さんと発表されているのは、『かってなくま』ほか何冊も佐野さんと一緒に絵を描かれている広瀬弦さんだと思います。

〔追記2〕これまでに佐野洋子さんのエッセイに関して2度触れました。

佐野洋子のエッセイ(1) http://ramble-in-books.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-5983.html

佐野洋子のエッセイ(2) http://ramble-in-books.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-8ce3.html

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コメント

今日、本屋さんに行きましたら、「百万回生きたねこ」が山のように積んでありました。あ!佐野洋子さんが亡くなられたのだ。信じられなくて、家に帰るとすぐインターネットをひらきました。
 「いちばんだいじなのはいのちです」と言うお話しの中で
 佐藤千郎先生がこの「百万回生きたねこ」のおはなしをしてくださったのです。百万回「死んだ」(生きた)ねこなんていないのです!「本当に生きたねこだけが本当に死ぬのです」本当の「生」は、愛する者の死も自分自身の死も、神の祝福の業として受容できる空間を持っているのです。生涯のお働きに感謝します。

投稿: 柴山  | 2011年1月11日 (火曜日) 16:12

コメントありがとうございます。
「百万回生きたねこ}はほんとうに素晴らしい絵本だと思います。

佐藤千郎さんのことは存じ上げず、信仰もない私ですが、このねこは、愛する者を喪うまで、生きることも、死ぬこともできなかったのだと思います。

生は死とともにある。「死」がなければ「生」もないことを、この絵本を読むたび、考えさせられます。

末永く読み継がれてもらいたい絵本です。
いや、きっとそうなると確信しております。

投稿: 風太郎 | 2011年1月13日 (木曜日) 15:06

佐野洋子さんが亡くなってからもうまる2年が過ぎました。
2012年10月9日ラジオ深夜便で「わが心の人」を放送していたので工藤直子さんの話を聞きました。
 毎日毎日またあした
 毎年毎年またあした
 またあした、と太陽は
 帰って行くでも太陽は
 きえたあとのぽっかりあいたところへ
 なにかやさしいものがそっと入ってくる

 百万回生きたあとあなたは静かな世界で一休み
 しているのだろうか   それとも・・・・・
 わたしは、ひととき「佐野洋子」さんの世界を
 工藤さんと一緒にみまわした気がしました。
  
 風太郎さんありがとうございました。

投稿: 柴 | 2013年2月12日 (火曜日) 17:10

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