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雨の「秋も一箱古本市2010」 (2)

ライオンズガーデンを後にしてすぐ近くの大円寺へ。境内中央はブルーシートの屋根に覆われていた。箱に直接かかってはいなかったが、店を出している辺りの頭上からは水が落ちて来ていて、バケツで水滴を拾っている。立ちっぱなしでの応対も含め、ここは特にたいへんだなと思えた。

<やまがら姉弟文庫>のYさん、Kさん、<ドンベーブックス>ご夫妻にご挨拶。ドンベーさんは今話題の人やものに関する本を遊び心たっぷりに出品されていた。もちろん、メインはいつものように渋い本。
渡辺英綱『新宿ゴールデン街』(晶文社)を購入。ドンベーさんが著者と飲んだ時の面白いエピソードを聞かせてもらう。

<古書赤いドリル>さん、店名に入っている「赤」を象徴する硬派な本に痺れた。このテイスト、好きな者にはたまらない。箱を見た瞬間、云いようのない懐かしさが湧いてくる。そうか、1970年代か、と納得。
鈴木亜繪美『火群のゆくへ 元楯の会会員たちの心の軌跡』(柏艪舎)を購入。
三島由紀夫、森田必勝に残された彼らの声を聞いてみたいという思いもあったが、〔菅原文太と歩く「内ゲバ」の一九七〇年代〕という掲げられていたテーマの中に、三島の自決を入れている視点に共感を覚える。

本購入時に目録をいただく。帰りの電車の中で一気に読み終えてしまったのだが、これが半端じゃない。単なる出品目録ではなく、70年代のクロニクルになっている。しかも、そこに菅原文太主演の映画をからませ、ストーリーを展開しているのだから驚いた。
目録の最後は小嵐九八郎『蜂起には至らず 新左翼死人列伝』(現・在講談社文庫)の、中原一に触れた文章からの引用で締められているのだが、この本、7年前に単行本が刊行されて以来、何度も読んでいるだけに、強く印象に残った。
<古書 赤いドリル>さんは春の一箱に参加後、下北沢に店舗を構えられたと聞いている。ある意味、今回の一箱に素人として参加している店とは違って当然。しかし、プロならではの凄さを堪能させてもらい、清々しくさえ感じた。

時は既に3時半。全部は廻れないだろうなと思ってはいたが、この時点で諦める。さてどうしよう。
往来堂書店から古書ほうろうに行くか、古書信天翁から古書ほうろうに行くか迷ったが、信天翁にはまだ行ったことがなかったので後者を選択。

谷中ぎんざを抜け、だんだん坂を上ると右側のビルの2階に灯りが点っている。店内に足を踏み入れると鮮やかな本の世界が拡がっていた。ほんとうなら、お店そのものをじっくり見たいところだが、時間がないので出店者の箱に集中。雨の中なのにお客さんも多く、各箱が店の中に溶け込んでいて不思議な空間になっている。

<カリプソ文庫>のTさんにご挨拶。ご本人も「恵まれています」と云っていたが、確かに雨が凌げ、寒くなく、お客さんも他に比べれば多い。
カリプソさんの箱は村上春樹新訳のチャンドラー『ロング・グッドバイ』(ハヤカワ・ミステリ文庫)が安価で出されているかと思うと、おっと唸ってしまうような古本も混じっていて、惹きつけられた。
川西政明『評伝 高橋和巳』(講談社文芸文庫)を購入。
<オヨヨ書林>さんにお会いできなかったのは残念。

道はおおよそ分かるので、傘をさしていると邪魔なためMAPをカバンの中にしまって置いたのが失敗。すぐお隣の谷中松野屋さんが大家さんになっていることに後から気付く。それで、店を出るとコシヅカハムへ向かってしまった。

ここにも春の一箱参加後に雑司ヶ谷に古本屋を開いたお店が参加している。<JUNGLE BOOKS>さんだ。テーマはタイトル買いも含めた「ジャケ買い」。難しいテーマに挑戦されたなあと思う。しかも今回のような雨の中では見映えが殺がれてしまう。それでも、考えられた本が多数並んでいた。
<JUNGLE BOOKS>ファンの一人としては、奥様のYさんだけではなく、ご主人Kさん選定の本ももっと見たかったというのが正直な感想。
配られていた(3回目となる)「ジャングル通信」は、Yさんの手書きと表現に独特の味わいがあって、楽しませていただいた。

お隣の<文庫善哉>さんに、森本哲郎『ぼくの旅の手帖―または、珈琲のある風景』(ダイヤモンド社)があったので懐かしさから思わず手に取ってしまう。森本哲郎は若い頃新刊が出る度に買って読んだ。中でも『ことばへの旅』シリーズが好きで、いまだに愛読書として時折読み返している。ウィトゲンシュタインを知ったのもこの本。
「ほかに森本哲郎の本はないですか?」とお尋ねしたが、残念ながらないとのこと。しかし、森本哲郎の本は古本市でこれまで見たことがなかったので嬉しかったな。(森本哲郎は森本毅郎の兄)

コシヅカハムを後にした時にはもう午後4時を若干回っていた。焦る。古書ほうろうさんへ。まずはほうろうの宮地さん、ミカコさんご夫妻にご挨拶。読み応えたっぷりの「ほうろうつうしん」を頂戴する。

親しくしている<もす文庫>さんが出店されているのでここを外すわけにはいかない。会えるのは年2回だけ、しかも、遠く郡山から来られるのだから。
今回はかなり売れたとのことでmasubonさんの表情も明るい。ブログで積極的に発信しているし、拘りをもって本を出されているからなあ。加えてバッジや写真など様々な工夫をされて、確実にリピーターを増やしている。ご主人が描かれた看板も毎回インパクトがある。
なんだか、こちらまで嬉しくなってしまった。

『オリンポスの果実』のことをきっかけに田中英光、田中光二親子の話をしばし。いつお話ししてもmasubonさんの感性は面白いなあと思う。
「もす通信」第2号とままどおる(お菓子)を頂戴する。

古書ほうろうにはお馴染み塩山さんの<嫌気箱>、<朝霞書林>さんも箱を出されていた。塩山さんの箱は「おおっ」と云うような本がずらり。<朝霞書林>さんも、いつものようにはいかないがマメに本を入れ替え、並び替え、売れていたご様子。
タイムアップ直前に見た<よみますよみます書房>さんの箱がとても気になったものの時既に遅し。もっと見たかった。

ということで、往来堂書店さんには行けず。<岡崎武志堂>の岡崎さん、ごめんなさ~い。岡崎さんにはみちくさ市でもお会いできるからと思ってしまいました。

一日雨が降り止まない「一箱古本市」、実行委員、助っ人、店主の方々ほんとうにお疲れさまでした。撤収の頃にはかなり強い雨足、たいへんだったと思います。
雨の中とはいえ、半日楽しませていただきました。

一箱を堪能し、午後6時前、病院に到着。母も義母もわたしたちが<とみきち屋>で古本市に参加した時の話をいつも楽しそうに聞いてくれる。
今回は出ずに、見て回ったんだよと簡単に報告。
母の「偵察に行ったの?」には思わず笑ってしまった。
「ちがうちがう。知り合いの方が何人も出ているからだよ」と伝えたが、今ひとつピンと来ないようだ。入院が一ヶ月半続いているのだから無理もないか。

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コメント

こんにちは。もす文庫です。
秋も一箱、お会いできてうれしかったです。雨の中ご来店ありがとうございました。風太郎さんのブログで各会場の様子が分かり、楽しく読んでいます。

『オリンポスの果実』にはすっかり参りました。秋子さんの気持ちがほんとうのところどうだったのか非常に気になります。『~黄昏』を今度は探して読んでみようと思います。

またお会いできますように。
では。

投稿: masubon | 2010年10月18日 (月曜日) 15:31

<もす文庫>masubonさん

ギリギリでしたが、お会いできてよかった。
お話しできて、楽しかったです。
『オリンポスの黄昏』は息子である田中光二が唯一父・英光のことを書いた本なので、是非読んでみてください。絶版のため入手しにくいですが図書館ならあるかもしれません。

売上げ点数ベスト3入賞おめでとうございます。
以前、「やはり結果もついてきてほしい」とおっしゃっていましたよね。
スタンスを変えず、自分の好きなものを、工夫しながら紹介し続けて来たことが実を結んだのだと思います。
周囲を気にせずmasubonさんらしさをなくさないでくださいと、いささか生意気なことを申し上げただけに、嬉しくてなりません。

嗜好の対象が違うところが多いとはいえ、<もす文庫>さんの
これからをますます楽しみにしています。

投稿: 風太郎 | 2010年10月19日 (火曜日) 01:32

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