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「羽鳥書店まつり」へ

このイベントの企画を「古書ほうろう」さんのブログで知ってから、ずっと気になり注目していた。しかし、初日の11日は祝日なのに仕事で行けない(泣)。この時点で足を運べるとしたら、最終の日曜くらいか…と消沈。
10,000冊近い出品本の中からごく一部をブログで紹介していたが、そのラインナップを見るだけで、100円、500円、1,000円での均一販売がいかに凄いことになるかは、私のような素人でも想像がついた。
故に、開催後は「羽鳥書店まつり」に関するブログはできるだけ見ないようにした。
だってそうでしょ。「こんな本を100円、500円で買いましたよ」なんて報告を見てしまったら、地団駄踏み、臍を噛み、倒れてしまいかねない(笑)。

<どすこいフェスティバル>のKさんから、行かねばきっと後悔するーと思わせてくれる、温かいご案内をいただき、最終日に駒込大観音光源寺へ駆けつける。
終了1時間半前到着。既に9割以上売れてしまっていたような。
それでも、けっこう人がいる。女性も多い。
じっくり手にとり、ところどころ目を通しながら買いたい性分なので、押し合いへし合いは苦手。輪の外から指をくわえて順番を待つこともなく、落ち着いて見られたのでその点はよかった。(半ば悔し紛れ)

「古書好きどもが夢の跡」、不図こんな言葉が口をつく。空しさを感じたという謂いではない。
むしろ、「新たな胎動」を、残っていた本からインスピレートされた。
多くの本好きの方が、目を光らせ、驚きと歓喜とともに数々の本を手にする様子が、ありありと目に浮かぶ。
そんな夢のような時の名残が、なんとも言えぬ心地よさとともに伝わってきた。

羽鳥和芳氏個人の圧倒的な蔵書が多くの人動かした。
既に補充分も尽き、残されたわずかな本を見ただけで、そう実感できたことを嬉しく思う。

まだまだ本は多くの人に求められている。
書痴に限らない。本好きは多種多様だ。

一箱古本市、みちくさ市、古書往来座外市などにも、ふらっと立ち寄った人が、「ああ、こんな本があるんだ」「昔読んだ、懐かしいな…」「何だか面白そう」と、創出された空間に触発され、持ち帰る光景を何度も見てきた。

個人蔵書による古本市への興味だけで、これだけの盛況を極めることはなかったのではないかと思える。出品された本の量、ジャンルの幅広さ、質。他の古本市では無理と思われる値段(安価)での、3段階均一販売も大きな要因になっていたはず。
そして、この企画を考案した宮地さんはじめ「古書ほうろう」の皆さんの情熱、不忍ブックストリートの中心的な役割を担っている方々や地元の支え、そして<わめぞ>の方々の頼もしく、暖かいバックアップがあったことを忘れてはならないだろう。
羽鳥書店および羽鳥社長が東大出版会時代に手がけた出版物も新刊本として、地域雑誌「谷根千」とともに、往来堂書店の協力により販売されていた。

残り香を堪能したに過ぎないが、かつてない画期的な試みであったと言える。

会場では過日定年を迎えられたモンガ堂さんにご挨拶。さすがモンガ堂さん、4日連続の皆勤。
ご家族で来られていたjunglebooksさんにお会いする。かわいい息子さんに「こんにちは」と声をかけて貰った。残りわずかな時間を、お互い本探しに専念。短い立ち話のみでお別れする。Yさんも皆勤とか。そのエネルギーに脱帽。

<わめぞ>立石書店・岡島さん、やまがら文庫のYさんたちが、どんどんなくなってゆく本の整理をひっきりなしにされていた。箱に空きができると、客が見やすいよう、思わず手に取りたくなるよう、絶妙にレイアウトを変えていた。こういう心配りが、本の売れ行きをさらに加速させているのだなと実感。
岡島さんからは「次は3月ですよ!」と言われる。そう、「古書往来座外市」(3月6・7日開催)「第5回鬼子母神通り みちくさ市」(3月22日開催)と続く。
今のところ仕事の予定はない。問題は、私が店主とみきち(妻)との約束を果たせるかどうかだ(笑)

宮地さん、ミカコさんともお話しさせていただく。
「みなさんの喜ぶ様子を見ていられるのが嬉しくてならない」という宮地さん。
疲れはピークに達しているはずなのに、淡々と、穏やかな笑顔でおっしゃる。
ああ、こういうところに惹かれるんだなあと、思いを新たにする。
ミカコさんからは、羽鳥社長には断腸の思いもあったのではないかというようなことをうかがう。
20年かけて購入された本たちへの愛情はいかばかりか。本好きなら想像つくはず。
売ることを前提にして買った本ではないのだから。

宮地さんたちは、愛蔵書が旅立つにふさわしい場をつくり上げた。
素晴らしいことだと、心から思う。

<購入本>

■三浦雅士『夢の明るい鏡』(冬樹社)
■西谷修・鵜飼哲・宇野邦一『アメリカ・宗教・戦争』(せりか書房)
■西谷修・鵜飼哲・港千尋『原理主義とは何か』(河出書房新社)
■鶴見俊輔『戦時期日本の精神史』(同時代ライブラリー・岩波書店)
■丸山圭三郎『カオスモスの運動』(講談社学術文庫)
■井上健『作家の訳した世界文学』(丸善ライブラリー)
■現代思想『いまなぜ国家か』(青土社)
■現代思想・臨増『思想としてのパレスチナ』(青土社)
■大航海『カリスマ 天皇制からイスラム原理主義まで、現代社会を解く鍵!』(新書館)
■大航海『1990年代 新世紀への飛躍のためのこの10年!』(新書館)

三浦雅士は、先日触れた堀江敏幸『書かれる手』(平凡社ライブラリー)に刺激されたかな。昔読んで売ってしまったが、パラパラめくっているうちに当時が思い起こされ、手元に置きたくなった。
『ユリイカ』1970-1975、 『現代思想』1975-1981における編集後記集。巻末には各誌の総目次も載っている。(『ユリイカ』1970.7-1975.1・『現代思想』1975.4-1981.12)
西谷修は、『不死のワンダーランド』(講談社学術文庫)を読み終えたばかりなので、もう少し拡げてみようかと。鶴見、丸山は持っているが100円に惹かれ2冊目。

会場を後にし、「古書ほうろう」へ。私の好きな人文系の魅力ある本がたくさん揃っている。古書組合に属さず店買いだけで、どうしてこれだけの本が集められるのか、いつも不思議に思う。千駄木という地域性を差し引いても。

選んだ本をカウンターへ持っていこうとしたら、聞き覚えのある声が。古書市で知らない人はいないというHさん。店内で購入され、そのまま店を出て行かれそうになったので、慌ててご挨拶。
「いやあ、Hまつりかと思いましたよ」と満足気なご様子。いったいどれくらい買われたのだろう。想像もつかない。
店にいらっしゃった山崎さんとも少しお話しさせていただく。今までにない大きな試みで、さぞかしたいへんだったことが言葉の端々からうかがわれた。
私が店内にいる間にも、「羽鳥書店まつり」の後、店に寄られる方が何人もいらっしゃって、皆さん「よかったですよ」「すごい催しでしたね」と感想を伝えていた。それを聞く山崎さんの嬉しそうな横顔がとても印象的だった。

第10回不忍ブックストリート「一箱古本市」は4月29日・5月2日開催。こちらも楽しみだ。

<購入本>

■エリ・ヴィーゼル『夜・夜明け・昼』(みすず書房)
■プリーモ・レーヴィ『アウシュヴィッツは終わらない』(朝日選書)

ヴィーゼルは『死者の歌』と『夜』は読んでいた。(『夜』は最近新版が出たみたいだ)
『夜』に始まる3部作の残りをようやく読める。少し傷みはあったが、1000円でいいのですか?と思わず口に出そうになる。
フランクル『夜と霧』(みすず書房)は幾度となく読み返しているのに、レーヴィは、恥ずかしいことに『いまでなければ いつ』(朝日新聞)しか読んでいなかった。つまり肝心要の本を未読。さっそく読まなければ。

■ビュトール『心変わり』(清水徹訳・岩波文庫)

かれこれ30年前に読んだ河出書房新社版はまだ手元に残っているのだが、全面的に改訳したと書かれている上に、文字も大きくなっているので思わず買ってしまう。

■リテレール別冊4『1993年 単行本・文庫本ベスト3』(メタローグ) 100円

これは買いそびれていた。帰りの電車の中でパラパラ拾い読み。久世光彦がこんなことを書いている。
「つい先ごろ、たまたま『パルムの僧院』を読まねばならぬことがあって読み出したら、面白くて夜が明けてしまった。私が毎日、習慣だけで通っている書店の本棚に並んでいる膨大な新刊本の中に、これより面白い本が一冊でもあったら、お目にかかりたい。となると、新しい本は、好きで、信用している作者のものしか読まないということになるのだ」
生きているうちにあと何冊本が読めるかを考えた上とはいえ、こう言い切れるところがすごい。いまだに乱読三昧の私には耳が痛い。

■北上次郎『感情の法則』(早川書房) 100円

新刊で読み、幻冬舎で文庫化された際、文庫を買い単行本は売ってしまった。しかし、先日夜中に何とはなしに手にとって読み始めたら、しみじみ。単行本もとっておけばよかったなと後悔。それから1週間も経っていない。何というタイミング。

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コメント

風太郎さん、出かけることができたのですね、良かったぁ。
今後も、ずーっと語り続けられる「まつり」だったと思いますし、本を愛するひとたちの結びつきを感じさせられるできごとでした。わめぞの方々の協力も、新たなイベントを創出する前触れのような気もいたします。
羽鳥さんは一応社長ですが兼編集者ですので、いまだに某T大生協にて、ごっそり本を購入していただいております。
10年後位には、また「まつり」が開催されるのでは、と(笑)
プリーモ・レーヴィ『アウシュヴィッツは終わらない』(朝日選書)は、こころにずっしりと残る本ですね。
感想楽しみにしております。

投稿: どすこいフェスティバル(K) | 2010年2月16日 (火曜日) 23:26

風太郎さま、こんばんは!
大変ご無沙汰しております。

「まつり」に行かれたのですね。
風太郎さんが境内にいらした頃ちょうど、うち(どすこい)
のRくんもいたようです。彼も卒論提出で忙しく、最終日
のみの出陣。本は少なくとも、滅多にない「まつり」
の雰囲気を楽しめたとのこと。

わたしの収穫のなかでは『文学問答』(山田詠美、河野多恵子/著
文藝春秋/刊)は面白く、お買い得でした。

お忙しいことと思いますが、どうぞお身体に気をつけて…
またどこかの古本市でお会いしましょう!

投稿: どすこいフェスティバル(T) | 2010年2月17日 (水曜日) 23:49

>どすこいフェスティバル Kさま

「最終日の午後遅くに行っても、本は当然ないだろうし、そうなると雰囲気も味わえないかな…」などと迷うところもあったので、Kさんのご案内が後押ししてくれました。おかげで後悔せずにすみました。ありがとうございます。

本をめぐって多くの方々の気持ちが共振し、波及してしてゆく。その一端に触れられるだけでも、素敵なことだなと実感しています。

>10年後位には、また「まつり」が開催されるのでは、と(笑)

あれだけ幅広く読まれる方がぱったり本を購入しなくなるなんて、考えられませんよね。
10,000冊処分の決断もすごいし、それをあのような形で成し遂げた「古書ほうろう」さんもすごいと思います。
もちろん、多くの方々の力添えがあってのものですが。

『アウシュヴィッツは終わらない』、内容が内容だけに、読み終え、かつ感想を書くとなると、相当時間を要すると思います。ただでさえ、遅筆ですので(笑)
でも、いつか書きたいと思います。

投稿: 風太郎 | 2010年2月18日 (木曜日) 00:50

>どすこいフェスティバル Tさま

こちらこそ、ご無沙汰しております。
Tさんのご様子は、時折とみきちから聞いています。

もうほとんど本はない状況でしたが、残っていた本から「まつり」の熱気は想像できました。「ああ、真っ先にではなくとも、2目くらいには来れたらなあ」と、ためいきも出ましたが(笑)

山田詠美は好きなので、『文学問答』すぐに読みました。先輩作家である河野多恵子相手なので、やや大人しい感もありましたが、面白かったです。
小説もいいけれど、山田詠美の文学論、作家論を読んでみたいとずっと思っています。

古本市が動き始める春にはお会いできますよね。楽しみにしています。

投稿: 風太郎 | 2010年2月18日 (木曜日) 01:41

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