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本が舞い込んできた  長澤延子・五味康祐ほか

本が舞い込んできたとしか思えない。そんな一箱古本市後の2週間だった。

先週の日曜、仕事を終え18時頃帰宅。夕食後処分本2箱持って、地元馴染みの古書店へ。
もう25年の付き合いになる。店主といろいろ話しながら過ごす時間は、心が和む。
処分したのは、みちくさ市、一箱古本市で引き取り手のみつからなかった本の一部と、一般的、一箱向きではない読了本をほぼ半分ずつ。かなり前から単行本は動きがよくないと聞いているので、1箱分は文庫にする。講談社文芸、講談社学術、ちくま、中公、岩波など喜ばれそうなものを多めにした。 いつものごとく値付けをしてもらっている最中に、欲しい本を取り、カウンターの端に積んでいく。

■横光利一『夜の靴 微笑』 『愛の挨拶 馬車 純粋小説論』(講談社文芸文庫)

どちらも2冊目。蛇足ながら、吉本隆明『悲劇の解読』に収められている横光利一論は秀逸。

■ジュリアン・グラック『シルトの岸辺』(ちくま文庫)

■足立巻一『やちまた 上・下』(朝日文庫)

今春の一箱古本市で1セット出品したため、蔵書しか手元にない。それで、入手。いずれまた出品しよう。

■五味康祐『天の聲 -西方の音-』(新潮社)
■五味康祐『五味康祐 音楽巡礼』(新潮文庫)

『天の聲 -西方の音-』は、ようやく2冊目を入手。これで五味康祐の音楽本は全て2冊以上揃った。
この本の中の「ベートヴェン <弦楽四重奏曲 作品一三一>」、「マタイ受難曲」は、わずか7~8頁の文章だが、いずれも100回は読んでいる。(『五味康祐 音楽巡礼』(新潮文庫)にも収められている)
そして、文庫には載っていない「三島由紀夫の死」。三島への哀悼の念に満ち、悲しい光を放っている。死ぬべきは自分ではなかったかという煩悶。「自動車で二人の生命を轢いた」著者の、贖罪の涙も塗り込められている。
この自動車事故の際、五味の執行猶予を乞う嘆願書が10名の連署で裁判所に提出された。
志賀直哉、川端康成、小林秀雄、井伏鱒二、井上靖、三島由紀夫、柴田練三郎、水上勉、亀井勝一郎、保田與重郎。

■串田孫一・二宮敬編『渡辺一夫 敗戦日記』(博文館新社)

一時間も居座ってしまい、そろそろお暇しようとした時、カウンター横に積み上げられた本が目に入ってきた。『ユイスマンス伝』の背表紙を見て、これは…とアンテナが反応する。店主に尋ねると、年に何回か処分される方が持ち込んだとのこと。上から下まで顔を横にして目で追っていくと、一番下に『渡辺一夫 敗戦日記』が。
既に買い取りは終わっていても、値付け前。ものによっては、ネット販売に回す。こういった事情は心得ている。しかし、たまにわがまま言わせてもらう。長年の付き合いの中で培った信頼関係がなければとても言えない。
「すみません。それ、いただけませんか?」と指さす。
この本に関しては定価を知らなかった。しかし、いつものように提示された値段で、そのまま頂いた。美本・2,000円。

『考える人 2008年夏号』の特集「自伝、評伝、日記を読もう」において、堀江敏幸が挙げていた本なので探していた。堀江敏幸は他に、『木下杢太郎日記』(岩波書店)、串田孫一『日記』(実業之日本社)、『アミエルの日記』(岩波文庫 一九七二年改版以後の版による)を挙げている。
『アミエルの日記』は30代前半に魅入られるように読んだ記憶が残っている。全4巻、旧字体・旧仮名づかいのため、一気にというわけにはいかなかったが。辻邦生も著書『微光の道』(新潮社)の中で、「旧制高校時代から時に触れて読む」と書いている。現在品切れ。

<某私鉄沿線の古書店にて>

■『海 友よ私が死んだからとて 長沢延子遺稿集』(都市出版社)1,500円

遺稿集はけっこう読んできたつもりなのに、長澤延子はすっぽりと抜け落ちていた。今春、福島泰樹『悲しみのエナジー』(三一書房)を読んで彼女の存在を知った。37年前に発行された本とは思えぬくらい状態がいい。
『二十歳のエチュード』を遺した原口統三は、彼女にとってどんな存在だったのだろうか。
彼女の「別離」という詩の冒頭には、原口のあの有名な言葉 「別離の時とはまことにある…… 朝が来たら 友よ 君等は僕の名を忘れて立去るだろう」が記されている。
そして、

友よ
私が死んだからとて墓参りになんか来ないでくれ
花を供えたり涙を流したりして
私の深い眠りを動揺させないでくれ

で始まり、

友よ
別離の時とはまことにある
朝が来たらー
君等は私の名を忘れて立ち去るだろう

で終わっている。

彼女を苛んだものとは。幼い頃から抱えてきた孤独とは。なぜ17歳で服毒自殺してしまったのか。
すぐにでも読んでしまいたいと思ったのだが、この本のことを妻に話したら、
今はやめたほうがいいのではないかと言われる。

当分この本は寝かせておくことにした。
あまりにも重い。まともに向き合えず、精神のバランスを崩しかねない。
ポツポツ拾い読みして、私自身がそう感じた。

■村上一郎『評論集 イアリンの歌』(国文社)700円
■クロード・シモン『フランドルへの道』(白水社)500円

<ブックオフの単行本500円セールで>

■佐野眞一『甘粕正彦 乱心の曠野』(新潮社)500円

黒岩比佐子さんが、ブログ<古書の森日記 by Hisako>で大杉栄墓参のことを書かれた際、この本に触れていたので読みたかった。こんなにすんなり、廉価で手に入れられるとは。

■半藤一利・保坂正康・井上亮『「東京裁判」を読む』(日本経済新聞社)500円
■渡邊順生『チェンバロ・フォルテピアノ』(東京書籍)500円

<ブックオフ4店舗くらいで>

■黒岩比佐子『伝書鳩 もうひとつのIT』(文春新書)350円

読みたいと思った時には、残念なことに新刊書店で入手できなくなっていた。嬉しい。

■『世界ノンフィクション全集19 アウシュヴィッツの五本の煙突 白バラは散らず ダヴィッドの日記 戦没学生の手記』(筑摩書房)100円
■大西巨人『縮図・インコ道理教』(太田出版)100円
■吉岡逸夫『漂白のルワンダ』(牧野出版)100円
■大岡昇平『戦争』(岩波現代文庫)100円
■吉田健一『旅の時間』(講談社文芸文庫)100円
■今村仁司『現代思想の展開』(講談社学術文庫)100円
■三好達治『諷詠十二月』(講談社学術文庫)100円
■木田元『木田元の最終講義』(角川文庫)100円

■松岡正剛『多読術』(ちくまプリマー新書)100円
■小谷野敦『私小説のすすめ』(平凡社新書)100円
■平岡正明『昭和マンが家伝説』(平凡社新書)100円
最近のブックオフはよくわからない。どうしてこれらの新書がもう100円なのか。折り跡、汚れ、水濡れなど一切ない美本なのに。
こういうことがあるから、新書はどうしてもすぐに読みたいと思えるもの以外、新刊では買わなくなってしまった。

次にCD。ゲームソフト、CD、DVD、コミックの販売を主体にしているチェーン店。ここに良い本はない。昨年くらいまで、結構クラシックCDを廉価で入手できたのだが、今年はごくたまに覗いても、さっぱり。ダメもとで寄ったら、3枚以上購入すれば表示価格の半額セール。いやあ、ありがたい。カンチェーリのみ輸入盤。

●カンチェーリ『Light Sorrow /Mourned by the Wind』 <TELARC> 200円
●ハイドン『《天地創造ミサ》《ハルモニー・ミサ》』ガーディナー イングリッシュ・バロック・ソロイスツ 400円
●バッハ『マタイ受難曲(抜粋)』ガーディナー イングリッシュ・バロック・ソロイスツ 50円
●ヴェルディ 歌劇『仮面舞踏会』 カラヤン ウィーン・フィル 600円

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