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2009年10月

友からのメール

以前このブログに書いた、小児科医の友(高校同級)から携帯にメールが届いた。
男同士のメールは短い。長いのなんてかえって気持ち悪いと、私などは思ってしまう。

1.五味康祐をもっとも象徴する本を一冊
2.長沢延子遺稿集、読んだらそのうち貸して
急いでない

五味さんの本2冊プレゼント。週末までに送るよ。
○○に読んでもらえるなら、これ以上嬉しいことはない。
長澤の本のこと了解。
また、飲もう。

五味さんはありがたく貰っちゃう
飲みたいね
また連絡する

こんな感じのやりとり(笑)

これだけで済んで、気持ちが通じる友というのは楽だ。
「そんなのわかりきったことだろ」「ごちゃごちゃ面倒だよ」なんて言葉は一切不要。
楽だけではないな。ありがたいと思う。

かげにまわったら、何を言ったりやったりしているんだか…と思える輩が多すぎる。
もっとも、私の場合あからさまな言動が災いしてよく衝突したものだ。
わざわざ腹をたてるのも馬鹿ばかしいと思えるくらいには、大人になった気はしている。

互いのブログを読んでいるので、友は五味康祐に興味を抱いたのではないだろうか。
古本市に参加する遙か前、「この本はこの人に」と思える近しい人に、いつか読んでもらえたらという思いで、お気に入りの本は最低3冊揃えるようになっていた。
だから、今回の旅立ちは嬉しい。

長澤延子はたぶん原口統三の名前を挙げたからだろう。
4年前、ちくま文庫で『定本 二十歳のエチュード』が復刊されたとはいえ、今の若い人たちがどれくらい読んでいるか見当もつかない。東大生でも、そう多くは読んでいないのかもしれない。

★アマゾンを調べて残念なことが…。『定本 二十歳のエチュード』早くも品切れ。ちなみに私は、初めて読んだ時の角川文庫を2冊、光芒社版1冊、ちくま文庫3冊、日本教養全集<16>、計7冊所有。

友とは今年の2月に二人で飲んだ。気がついたら終電を過ぎていた。
普段、アルコールを口にすることはほとんどないのだが、しみじみ、或いは楽しく飲める酒はいい。美味いと感じる。ビールかバーボン。バーボンが無い時はジン。これくらいしか飲めないが。

年内、彼と飲めるだろうか。他にも、飲みたい友人は何人かいるが、皆忙しそうだからな。

倉田百三、吉本隆明の本を教えてくれた、現・小児科医の友について書いた記事。
未読で、興味のある方はよかったら。

「友と出逢い 本と出会う -高校から浪人時代にかけての回想」
こちら→ http://ramble-in-books.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-b092.html

「信頼できる心の友 小児科医」
こちら→ http://ramble-in-books.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-7e6c.html

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〔お知らせ〕 <とみきち屋>今後の予定

<とみきち屋>としての古本市への参加は来春以降となります。
みちくさ市当日、私番頭、仕事関連の講習会のため一日の参加は不可。店主とみきちも11月はスケジュールびっしりで余裕なし。
家庭内紛争勃発による不参加ではありません(笑)。

この一年突っ走るかのように7回、古本市に参加してきましたが、正直玉切れ、エネルギー切れの感も拭えず、「少し充電せよ」とのお告げではないかと。
<とみきち屋>を楽しみにお越しいただく方も少しずつではありますが、確実に増えてきましたので、そういった方々の期待を裏切る品揃えは避けたいという思いも強く、ちょうどいいタイミングだったかもしれません。

冬眠中は、古本市メインだった生活から少し離れ、(たまってしまった)読みたい本を読む、好きな音楽を聴く、積年の宿題となっている本の整理などに時間を充てていくつもりです。
とはいっても、古本屋通いをやめられるはずもなく、購入した本のことなどはブログで触れていきます。
自分の蔵書を残しておくために買い足す本は、古本市に出品したい本の場合が多いので、購入本の中には来春以降の出品本も含まれます。ちょっぴりご期待ください(笑)

開催される古本市には、(都合のつく限り)客として足を運び、楽しませていただこうかと思っています。古本市を介して知り合い、お会いしたい人もいますので。

暖かくなりましたら、皆さまとお会いできるのを楽しみにしております。

<とみきち屋>
店主・とみきち
番頭・風太郎

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本が舞い込んできた  長澤延子・五味康祐ほか

本が舞い込んできたとしか思えない。そんな一箱古本市後の2週間だった。

先週の日曜、仕事を終え18時頃帰宅。夕食後処分本2箱持って、地元馴染みの古書店へ。
もう25年の付き合いになる。店主といろいろ話しながら過ごす時間は、心が和む。
処分したのは、みちくさ市、一箱古本市で引き取り手のみつからなかった本の一部と、一般的、一箱向きではない読了本をほぼ半分ずつ。かなり前から単行本は動きがよくないと聞いているので、1箱分は文庫にする。講談社文芸、講談社学術、ちくま、中公、岩波など喜ばれそうなものを多めにした。 いつものごとく値付けをしてもらっている最中に、欲しい本を取り、カウンターの端に積んでいく。

■横光利一『夜の靴 微笑』 『愛の挨拶 馬車 純粋小説論』(講談社文芸文庫)

どちらも2冊目。蛇足ながら、吉本隆明『悲劇の解読』に収められている横光利一論は秀逸。

■ジュリアン・グラック『シルトの岸辺』(ちくま文庫)

■足立巻一『やちまた 上・下』(朝日文庫)

今春の一箱古本市で1セット出品したため、蔵書しか手元にない。それで、入手。いずれまた出品しよう。

■五味康祐『天の聲 -西方の音-』(新潮社)
■五味康祐『五味康祐 音楽巡礼』(新潮文庫)

『天の聲 -西方の音-』は、ようやく2冊目を入手。これで五味康祐の音楽本は全て2冊以上揃った。
この本の中の「ベートヴェン <弦楽四重奏曲 作品一三一>」、「マタイ受難曲」は、わずか7~8頁の文章だが、いずれも100回は読んでいる。(『五味康祐 音楽巡礼』(新潮文庫)にも収められている)
そして、文庫には載っていない「三島由紀夫の死」。三島への哀悼の念に満ち、悲しい光を放っている。死ぬべきは自分ではなかったかという煩悶。「自動車で二人の生命を轢いた」著者の、贖罪の涙も塗り込められている。
この自動車事故の際、五味の執行猶予を乞う嘆願書が10名の連署で裁判所に提出された。
志賀直哉、川端康成、小林秀雄、井伏鱒二、井上靖、三島由紀夫、柴田練三郎、水上勉、亀井勝一郎、保田與重郎。

■串田孫一・二宮敬編『渡辺一夫 敗戦日記』(博文館新社)

一時間も居座ってしまい、そろそろお暇しようとした時、カウンター横に積み上げられた本が目に入ってきた。『ユイスマンス伝』の背表紙を見て、これは…とアンテナが反応する。店主に尋ねると、年に何回か処分される方が持ち込んだとのこと。上から下まで顔を横にして目で追っていくと、一番下に『渡辺一夫 敗戦日記』が。
既に買い取りは終わっていても、値付け前。ものによっては、ネット販売に回す。こういった事情は心得ている。しかし、たまにわがまま言わせてもらう。長年の付き合いの中で培った信頼関係がなければとても言えない。
「すみません。それ、いただけませんか?」と指さす。
この本に関しては定価を知らなかった。しかし、いつものように提示された値段で、そのまま頂いた。美本・2,000円。

『考える人 2008年夏号』の特集「自伝、評伝、日記を読もう」において、堀江敏幸が挙げていた本なので探していた。堀江敏幸は他に、『木下杢太郎日記』(岩波書店)、串田孫一『日記』(実業之日本社)、『アミエルの日記』(岩波文庫 一九七二年改版以後の版による)を挙げている。
『アミエルの日記』は30代前半に魅入られるように読んだ記憶が残っている。全4巻、旧字体・旧仮名づかいのため、一気にというわけにはいかなかったが。辻邦生も著書『微光の道』(新潮社)の中で、「旧制高校時代から時に触れて読む」と書いている。現在品切れ。

<某私鉄沿線の古書店にて>

■『海 友よ私が死んだからとて 長沢延子遺稿集』(都市出版社)1,500円

遺稿集はけっこう読んできたつもりなのに、長澤延子はすっぽりと抜け落ちていた。今春、福島泰樹『悲しみのエナジー』(三一書房)を読んで彼女の存在を知った。37年前に発行された本とは思えぬくらい状態がいい。
『二十歳のエチュード』を遺した原口統三は、彼女にとってどんな存在だったのだろうか。
彼女の「別離」という詩の冒頭には、原口のあの有名な言葉 「別離の時とはまことにある…… 朝が来たら 友よ 君等は僕の名を忘れて立去るだろう」が記されている。
そして、

友よ
私が死んだからとて墓参りになんか来ないでくれ
花を供えたり涙を流したりして
私の深い眠りを動揺させないでくれ

で始まり、

友よ
別離の時とはまことにある
朝が来たらー
君等は私の名を忘れて立ち去るだろう

で終わっている。

彼女を苛んだものとは。幼い頃から抱えてきた孤独とは。なぜ17歳で服毒自殺してしまったのか。
すぐにでも読んでしまいたいと思ったのだが、この本のことを妻に話したら、
今はやめたほうがいいのではないかと言われる。

当分この本は寝かせておくことにした。
あまりにも重い。まともに向き合えず、精神のバランスを崩しかねない。
ポツポツ拾い読みして、私自身がそう感じた。

■村上一郎『評論集 イアリンの歌』(国文社)700円
■クロード・シモン『フランドルへの道』(白水社)500円

<ブックオフの単行本500円セールで>

■佐野眞一『甘粕正彦 乱心の曠野』(新潮社)500円

黒岩比佐子さんが、ブログ<古書の森日記 by Hisako>で大杉栄墓参のことを書かれた際、この本に触れていたので読みたかった。こんなにすんなり、廉価で手に入れられるとは。

■半藤一利・保坂正康・井上亮『「東京裁判」を読む』(日本経済新聞社)500円
■渡邊順生『チェンバロ・フォルテピアノ』(東京書籍)500円

<ブックオフ4店舗くらいで>

■黒岩比佐子『伝書鳩 もうひとつのIT』(文春新書)350円

読みたいと思った時には、残念なことに新刊書店で入手できなくなっていた。嬉しい。

■『世界ノンフィクション全集19 アウシュヴィッツの五本の煙突 白バラは散らず ダヴィッドの日記 戦没学生の手記』(筑摩書房)100円
■大西巨人『縮図・インコ道理教』(太田出版)100円
■吉岡逸夫『漂白のルワンダ』(牧野出版)100円
■大岡昇平『戦争』(岩波現代文庫)100円
■吉田健一『旅の時間』(講談社文芸文庫)100円
■今村仁司『現代思想の展開』(講談社学術文庫)100円
■三好達治『諷詠十二月』(講談社学術文庫)100円
■木田元『木田元の最終講義』(角川文庫)100円

■松岡正剛『多読術』(ちくまプリマー新書)100円
■小谷野敦『私小説のすすめ』(平凡社新書)100円
■平岡正明『昭和マンが家伝説』(平凡社新書)100円
最近のブックオフはよくわからない。どうしてこれらの新書がもう100円なのか。折り跡、汚れ、水濡れなど一切ない美本なのに。
こういうことがあるから、新書はどうしてもすぐに読みたいと思えるもの以外、新刊では買わなくなってしまった。

次にCD。ゲームソフト、CD、DVD、コミックの販売を主体にしているチェーン店。ここに良い本はない。昨年くらいまで、結構クラシックCDを廉価で入手できたのだが、今年はごくたまに覗いても、さっぱり。ダメもとで寄ったら、3枚以上購入すれば表示価格の半額セール。いやあ、ありがたい。カンチェーリのみ輸入盤。

●カンチェーリ『Light Sorrow /Mourned by the Wind』 <TELARC> 200円
●ハイドン『《天地創造ミサ》《ハルモニー・ミサ》』ガーディナー イングリッシュ・バロック・ソロイスツ 400円
●バッハ『マタイ受難曲(抜粋)』ガーディナー イングリッシュ・バロック・ソロイスツ 50円
●ヴェルディ 歌劇『仮面舞踏会』 カラヤン ウィーン・フィル 600円

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「第9回 秋も一箱古本市」エピソード(4)最終回

ようやくここまで辿り着いたという感じです。それでは最終回、知人・友人の方篇とご報告。

この前の助っ人集会で初めてお話した<トンブリン>さんにお越しいただく。一部のファンが鶴首して復刊を待っていたスタージョン『一角獣 多角獣』。復刊直後になんと3刷。これを引き取っていただく。赤い装丁も、もしかしたら気に入っていただけたかな。

<書肆紅屋>さんと共に、ナンダロウさんの『一箱古本市のあるき方』(光文社新書・11月17日発行予定)の資料作成を手伝われた退屈男さんがお見えになる。お客様が何人かいらっしゃったため、お話しできず残念。

古本市では何度も購入いただいているNEGIさんが午後になってご来店。一箱、みちくさ両方の古本市で頼もしいサポートをされている姿をよくお見かけする。ちなみにNEGIさんは「一箱古本市」において過去に「谷根千賞」、「古書ほうろう賞」を受賞されている方。
今回、当店の数少ない目玉というか強引セット、木山捷平『酔いざめ日記』『耳学問・尋三の春他 』をお求めいただく。

NEGIさん滞在時、「古書ほうろう」の宮地さんがお見えになる。ほうろうさんは憧れの古書店。
村上春樹強引セットをご覧になり、「とみきち屋さん、今日はこれが出るか出ないかだよねえ(笑)」と宮地さん。何というプレッシャー(汗)。もうその時点でこれはあかんと薄々感じていたから余計に。予想通り、持ち帰りとなりました(笑)。ミカコさんとお話できなかったのは残念です。

詩の朗読、歌、ブログ、ポエトリーカフェ(今月末から)など様々な形で詩の素晴らしさを伝えているPippoさんと、リコシェの豆子さんをよみせ通りで見かける。「怪しいお二人ですね(笑)」と声をかけたら驚かれた。そのままエスコートならぬ客引きという風情でお二人をゲントにお連れする。お互い「相手の話なんか聞いちゃいないと」と言っているけれど、ほんとに仲がいいんだなあとほっこり。豆子さん、Pippoさんのマネージャーとして仙台まで行くんだから。
Pippoさんには大森荘蔵『流れとよどみ』(産業図書)を購入いただく。大森荘蔵は『時は流れず』(青土社)が一番好きな本と聞き、新しい一面を見せてもらったように思える。

u-senさんがお仕事前にスーツ姿でご来店。一瞬「?」。しかし、違和感がない。当たり前か。
宇佐美承『池袋モンパルナス』(集英社文庫)を購入いただく。u-senさんがゲントから去った途端、一人の女性に声をかけられる。
「もしかして、今の方があの有名なu-senさんですか?」
ブログと実際のイメージが異なっているように感じられ「あの」と言われたのかなと思いつつ、「そうですよ」とお答えする。他の会場ではどうだったのだろう。多くの方がu-senさんをご存じのはず。ゆっくり本を見るのは無理だったのではないかな。

<オムライス堂>のNさんがお見えになったので、
「調子はどうです。大丈夫ですか?」といきなり声をかけてしまう。
「どうしてですかねえ。他でもそう声をかけられるんですよ」
「そりゃそうでしょう。ブログを読めば」
そこにくちびるごうさんが突然現れ、
「大丈夫なの?」
「ほら、みんなそう思っているでしょう!」と私。

それからしばしNさんとお話。ハレとケの落差、モノローグとダイアローグの違いなどをベースに(何のことやら)勝手に私が喋りまくり、「どこか似ているところありますよね」と訊くと、Nさん苦笑。
「そうだよなあ、ありがたくもないよなあ」と反省(笑)

佐伯一麦『芥川賞を取らなかった名作たち』(朝日新書)を購入いただく。新刊で買われるつもりだったとのこと。喜んでもらえよかった。最近ようやく2冊目を入手できたので、出品。意外に思われるかもしれませんが、佐伯一麦は『木を接ぐ』で海燕新人文学賞受賞の頃から注目しており、けっこう好きで読んできているのです。『ア・ルース・ボーイ』は残っていても、『一輪』『木の一族』(いずれも新潮文庫)が品切れなんて…。

仙台文学館での連続講座がもとになっている朝日新書はお薦めです。参加者の声に答える著者の真摯な姿勢、作品に対する愛情が伝わってきます。
エピソード(3)で触れた、洲之内徹『『棗の木の下』。実は佐伯一麦が取り上げた12作品の中のひとつなので飛びついてしまいました。これで後は、『おじいさんの綴方 河骨 立冬』(講談社文芸文庫)が入手できれば、全作品手元に揃うのだが、なかなか出会えない。
他には太宰、北條民雄、木山捷平、小山清、小沼丹、山川方夫、吉村昭、萩原葉子、森内俊雄、島田雅彦、干刈あがたの作品に触れています。人によっては、(私自身も)名作と呼べるかとなると「?」がつくものもあると思いますが、著者の解説には目を引くものがあります。

さて、先ほどちらっと登場したくちびるごうさん。「みちくさ市」では渋い、良質の本を廉価で出されています。「本が好き!!」が半端ではなく、オーラが出ている方。今回<とみきち屋>の強力な助っ人さんになっていただきました。

まず、ご本人に野呂邦暢・長谷川修『往復書簡集』をご購入いただく。
その後私の不在時に再度お越しいただき、ご来店されたお知り合いの方に、野呂邦暢『愛についてのデッサン』(角川書店)を強力にプッシュしていただく。
この作品いいんだよ。しかも安い。この版で読みたかったなあという感じで。(みすず書房版でお持ちのご様子)。さらに<古書、雰囲気。>さんもお見えになり、みすず版でもこの値段では手に入れくいとバックアップしていただく。その甲斐あって、お知り合いの女性に引き取っていただくことになりました。
その間、店主・とみきちは何も言えず黙したまま。そして最後に、目の合ったお客様に「強烈な営業でしたねえ」。まるで他人事のように(笑)。

<古書、雰囲気。>さんには、小山清『落ち穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)を。くちびるごうさんには太田治子『斜陽日記』ほか2冊を追加で購入いただく。ありがとうございました!!

店主・とみきちの友人ぶーやんさん。その博識ぶり、行動力はまさに驚異。たとえば伊藤若冲。とみきちは東京での展示を観に行くのが精一杯。ぶーやんさんは、遠く四国(香川)金刀比羅宮まで飛び「書院の美」展へ。「動植綵絵」33幅が揃うと聞くと京都・相国寺へ。室生犀星が気になれば、金沢へ赴いてしまうのです。
昨年小布施に行かれたので、お隣の<まちとしょテラソ>さんとも話が弾んでいたご様子。さらにさらに。ナンダロウ(南陀楼綾繁)さん著『山からお宝 本を積まずにはいられない人のために』(けものみち文庫)に寄稿されているのです。それでナンダロウさんに紹介。面識はなかったのに編集の都合で写真を掲載できなかったことを憶えているナンダロウさん、やはりすごい。

徳富蘇峰の孫にピアノを習ったことがあるとのこと。それもあってか、徳富蘇峰『読書法』(講談社学術文庫)など3冊購入いただく。

店主・とみきちの仕事上の師匠Nさん。ロシア文学科出身ということもあって、ナボコフの本などは全て所有されているご様子。ドストエフスキーにもめっぽうお詳しい。亀山郁夫訳の『カラマーゾフの兄弟』が話題になった時には、原卓也訳との違いなども聞かせていただいた。店主・とみきちは亀山郁夫訳を読了したが、私はとりあえずどんなものかと「プロとコントラ」のみ読んで、ダメだあと挫折。原卓也訳、池田健太郎訳、米川正夫訳と読んできたが、亀山訳はどうもドストエフスキーを読んでいるという気がしない。頭が古いのか、かたいのか(笑) 亀山の評論はけっこう面白く読んでいるのだけれど。
Nさんには、「文章読本」というタイトルのついた本に目がないということで、向井敏『文章読本』(文春文庫)を購入いただく。

昨秋、今春とお目にかかれた岡崎武志さんとお会いできなかったのは残念です。

古本市で黒岩比佐子さんの姿を拝見できないと、ジクソーパズルの大事なピースを欠くような感じで淋しい。体調を崩されたご様子。お大事になさってください。

9月のみちくさ市でお隣に出店された<モノンクル・ブックス>さん。10月9日が「BLIND BOOKS」さんの開店日だったので、翌日一箱訪問は厳しいですよね。お会いできず残念でした。お店の方には、とみきちと二人で遊びに行かせていただきますね。
「BLIND BOOKS」店主さんの日記はこちら→  http://blog.livedoor.jp/chobin3/

多くの方々のお力添えをいただき、今回も楽しい一日を過ごさせていただきました。
心から御礼申し上げます。ありがとうございました。

〔 とみきち屋の結果 〕 下線付きが今回の結果です。

第9回 秋も一箱古本市  冊数82冊 平均単価474円

第8回 一箱古本市(春)   冊数85冊 平均単価410円
第7回 秋も一箱古本市  冊数85冊 平均単価548円

店のスタイルを変えないので、あまり大きな変動はありません。
今回冊数の割に平均単価が上がったのは、高めの本を多く引き取っていただけたからだと思います。また、リピーターの方、知り合いの方にお買い上げいただいていることが支えになっていると強く感じております。

次回<とみきち屋>の古本市への出店は、ひょっとしたら来春以降になるかもしれません。
年内出店できるか否かに関しては、1週間以内にご報告させていただけるのではないかと思っております。

店主・とみきち http://yomuyomu.tea-nifty.com/dokushononiwa/ 
番頭・風太郎

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「第9回 秋も一箱古本市」エピソード(3)

この一年、本と古本市を介して、多く方々と出会えた。一年に一回しか会えなくても、数分しか話せる時間がなくても、どこかしら通じるものがあって、会えるのが楽しみと思えるのは、やはり「本が好き」という気持ちが根底にあるからだろう。こういう関係は大切にしていきたいと思う。
それでは、出店者篇。

時間的な余裕がなく、今回は一番近い【コシヅカハム】にしか行けなかった。
引っ越し直後でありながら、遠く福島から出店された<もす文庫>のmasubonさんとご主人に会えてよかった。昨秋お隣同士の出店だったことをきっかけに親しくさせていただいている。一足先にうかがっていたとみきちが、素敵な缶バッジを頂いていたので私は本を頂く。masubonさんには当店にて小川洋子の新書をご購入いただく。いつもありがとうございます。来春またお会いできたら嬉しい。

<あり小屋>さん、今回は春よりもやや強気の値付けをされたとのこと。そうは言っても、木山捷平の品切れ講談社文芸文庫など、どう考えても良心的で安価。伺ったのが3時を過ぎていたので、箱の中に見つけショック。不況の影響もあって、お客様の財布の紐も年々かたくなってきているのだろうか…。
でも、やはり個人的には<あり小屋>さんの姿勢が好きだ。勝手な思い込みと言われようが、<あり小屋>さんが『白兎・苦いお茶・無門庵』を100円、200円とかで出されていたら、寂しい。
田中小実昌ほか文庫本を3冊いただく。あり小屋さんには宇野功芳『名指揮者ワルターの名盤駄盤』(講談社+α文庫)を当店から購入いただいた。ちょっと意外でした。

<ドンベーブックス>さん。相変わらずいい本を出されているなあとため息。
ついに見つけました。井上究一郎『ガリマールの家』の単行本!文庫本は持っているが、単行本は目にするのも初めて。申し訳ないと思える値段でいただく。他には田中光二『オリンポスの黄昏』(集英社文庫)。以前人に差し上げたので、1冊しか手元に残っておらず嬉しい。田中光二はあの『オリンポスの果実』の作者で、太宰を追いかけるように自死した田中英光の息子。唯一父のことを書いた小説。

<やまがら姉弟文庫>のYさん。春に私たちが映画保存協会で出店した際にお世話になり、先日の助っ人集会後の飲み会では楽しい話をたくさんさせていただいた。
『en-taxi』 2005年10月号をいただく。何より嬉しいのが、洲之内徹の復刻『棗の木の下/砂』が特別付録としてついていたこと。
『en-taxi』がかつて今よりも小さい判型で、かつ付録つきで売られていたことなど知らなかった。<とみきち屋>がいかに偏っているか暴露しているようなものですね(笑)

私の好きなお店<つん堂>さん。ご主人は外見からは人気ロックシンガーではないかと見まごう感じの方。ところが黒いケースにきちんと並べられている本の渋いこと。多くが品切れ、絶版本。今回は野坂昭如『一九四五・夏・神戸』(中公文庫)をいただく。

初めてお目にかかった<静温堂>さん。屋号にぴったりの雰囲気、品揃え。ここも私好みの本が多く困ってしまった。福永武彦の文庫2冊いただく。個人的な実感として、福永の本は品切れでも思うように引き取ってはもらえない。だから、持ってはいても欲しくなる。

店主・とみきちがバッジを購入した<だいこん洞>さん。「古書ほうろう賞」受賞おめでとうございます。戻らなければならない時間になっていたため、ゆっくり見れず残念。

昨秋以来懇意にさせていただき、貴重な情報をたくさんいただいている<四谷書房>さん出店の【ライオンズガーデン谷中三崎坂】には行けなかった。なのに、こちらにお越しいただき、中平卓馬『なぜ、植物図鑑か』(ちくま学芸文庫)を購入いただく。ありがとうございました。

古本市終了後に書かれるレポートが楽しい<古本 寝床や>さんにも会えず。
同じくライオンズガーデンに出店されていた<本棚やどかり>さん。「オヨヨ書林賞」受賞おめでとうございます。私の不在時に何人かでご来店いただき、牧村健一郎『獅子文六の二つの昭和』(新潮選書)、武田百合子『ことばの食卓』(ちくま文庫)をお買い上げいただきました。ありがとうございます。何かの機会にご挨拶に伺いたいと思っています。

【C.A.G.+Negla】にも行けず。<あいうの本棚>さんに会えないは寂しい限り。今回も写真で拝見すると引き出しが目を惹く素敵なレイアウト。大雑把なうちの構えとは全く対照的なので憧れます。
ブログへのコメントありがとうございました。いつも心が温かくなります。

素敵なご夫妻で出店されている<たけうま書房>さん。私の不在時にお見えになられたみたいでお話しできず残念。店主日記の中で、一番印象に残った一箱として<phtogramme>さんを挙げていらっしゃいます。同じゲントに出店していたので、そうだろうなあと思えます。

集会でお話しさせていただいた<霧のタンス本>のKさんの箱も拝見したかったのに…。同じく<野ぎく堂>さんにも会えなかった。開催当日伺いますねと言いながら叶わず、恐縮の至り。一箱古本市がどんな様子かを、好き勝手に話してしまっただけに。またお目にかかりたいと思っています。

当然の如く、一番遠くの【宗善寺】には行けず。なのに、<駄々猫舎>どんぐりと駄々猫>の屋号で出店されていた駄々猫さんにはわざわざお越しいただく。しかも息を切らせて。その姿に感激。お父様が哲学の先生でいらしゃると聞き、9月の「みちくさ市」の際、なぜシオランなのか秘密が判りました。鶴見俊輔の本ということで『鶴見俊輔書評集成3』(みすず書房)を購入いただく。加えて坪内祐三『考える人』(新潮文庫)も。実は、鶴見俊輔のこの本、最後まで残っていたらナンダロウさんに引き取ってもらえたであろう本。不思議な感じがする。「みちくさ市」ではご主人と二人合わせて10冊も購入いただいたこともあり、足を向けて寝られません(笑)

駄々猫さんがブログで今回の「一箱古本市」の詳細なレポートを書かれています。一箱初参加とは思えない充実ぶり。3回目の参加になる私も参考にさせてもらいました。またどこかでお会いできますよね。楽しみにしています。ご主人にも!

東京に限らず、全国の一箱古本市にこの人あり!と言っても過言ではない<モンガ堂>さん。ご挨拶に伺えず、すみません。また、リンク集の作成ありがとうございます。このリンク集のおかげで、当日の様々な様子を知ることができます。
リンク集はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/mongabook/20091011

<嫌気箱>の塩山さんにもご挨拶できず。仲正昌樹の(アーレントについて書いた)新書をめぐってある方と交わされた言葉が素敵です。(塩山さんご自身のブログに書かれていたものではありませんのでご了承ください)

<カリプソ文庫>さんの箱はぜひぜひ覗いてみたかったのに…。残念でならない。先日いろいろお話しさせていただき、(私自身共感を覚える)こだわりをお持ちの方と思えたのでいっそう。
エロスをテーマに品揃えされ「青秋部賞」を受賞された<junglebooks>さんを見逃したのも残念。様々なブログやコメントを拝見し、素敵なお二人を想像する。きっと「みちくさ市」ほか、これからもどこかで出店されるだろうから、その折りにはお話しさせていただきたい。

エピソード(4)知人・友人篇。現在執筆中です。

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「第9回 秋も一箱古本市」エピソード(2)

古本市が終わる度、長々書き綴っているものだと自分でも思います。一箱3回、みちくさ4回、これで7回目。飽きもせず、懲りもせず。
少しでも強く記憶に留めておきたいから-今のところそれ以外の理由が思いつきません。
言葉によるアルバム。写真は頭の中といったところでしょうか。

それでは、一般のお客様とのエピソードの続きから。

■利倉隆『天使の美術の物語』(美術出版社) 500円

開店時箱に入りきらず後から補充した本。気がつくと、ひとりの女性が手にされていました。ゆっくりとページを括る表情の何と穏やかなこと。ずっと見ていたい気持ちを抑え、視線をそらしてお待ちする。「これ、ください」「ありがとうございます」。交わした言葉はこれだけ。お声をかけたら、かえって何か大切なものを壊してしまいそうな気がして。

印象に残る店にしたい。一人でも多くの方に喜んでいただきたい。そんな思いで一日限りの<とみきち屋>を出しています。名前を憶えていただけるのはこのうえなく嬉しいことではありますが、憶えていただけなくてもいいかなと思えることもあります。このお客様が何かの折り、これは谷中の古本市で手に入れた本と思い出していただけたら、それも印象に残ったことに変わりはないのですから。

■佐川光晴『牛を屠る』(解放出版社) 300円
■洲之内徹『気まぐれ美術館』(新潮文庫) 700円

年輩の男性の方がご購入。残念ながら私の不在時だったため、お話しすることはかないませんでした。
洲之内徹が旅立っていくのは予想がつきました。文庫版の人気は安定しているので。気になっていたのは『牛を屠る』(解放出版社)の方。

屠畜或いは人が他の動物(生物)を食することに関しては、1998年鎌田慧『ドキュメント屠場』(岩波新書)、2004年森達也『いのちの食べ方』 (理論社)、2007年 内澤旬子の労作『世界屠畜紀行』(解放出版社)、2008年妻夫木聡主演による映画『ブタがいた教室』、2009年(春)ドキュメンタリー映画『いのちの食べ方』(※森達也の本とは全く別物)など、話題となったものが多い。
日本における屠畜は差別の問題を避けて通れない面もあり、焦点のあて方が難しい。そんな中、内澤旬子、佐川光晴の著作は屠畜・屠殺そのもの現場を克明に描くことによって、ひとつの職業としての尊厳さを唱えている。遠ざけられ、隠されているがゆえに、差別意識を生じさせるのではないかという考え方が(微妙な違いこそあれ)両者の根底にあるように思える。

動物は、エサをやるだけじゃなく、かわいがって話しかけて飼えば、犬だけじゃなく、豚だって牛だって、飼い主の呼びかけに喜んだりするんじゃないだろうか。つまり、家畜として(情けをかけ過ぎずに)飼えば家畜となって、使役したり食べたり、皮を取ったりするのに適した存在となり、ペットとして愛情をかければ、どんな動物でも感情のある相棒となる。

これからも動物をときにかわいそうと思いつつ、でも自分で擬人化したイメージに流されず、責任をもって丁寧に食べていきたい。

『世界屠畜紀行』の中でこう述べていた内澤氏は、その後、自ら豚を飼育し、食している。その様子がブログに書かれています。(→こちら)

一方、佐川氏は1990年から2001年まで屠場で働いていた経験をもとにあくまで「屠殺」という言い方に拘る。

「死」には「冷たい」というイメージがつきまとう。しかし、牛も豚もどこまでも熱い生き物である。ことに屠殺されてゆく牛と豚は、生きているときの温かさとは桁違いの「熱さ」を放出する。(略)差別・偏見を助長しかねない「殺」の文字を重ねなければ、われわれが触れている「熱さ」に拮抗できないと考えていたのではないだろうか。(略)牛や豚を殺しているのではないと言い張りながら、「殺」を容認するのは矛盾だが、われわれは「屠殺」という二文字の中に作業場でのなにもかもを投げ込んでいた。

「命をいただく」ことを考える上で、多くのヒントを与えてくれる2冊です。

ご存じの方も多いと思いますが、不忍ブックストリートMAPのイラストは内澤さんが描いていらっしゃいます。

■仲正昌樹『デリダの遺言』(双風舎)
■中上健次・村上龍『ジャズと爆弾』(角川文庫) ■ランボオ『ランボオの手紙』(角川文庫)

カップルでご来店いただき、30代と思われる男性にご購入いただく。ああ~~。先方が嫌でなければ、いろいろお話ししたいという選書。この時も不在。わずか30分弱店を離れていた時間帯に、応対できなかったお客様の多かったこと(泣)

■内田樹『ためらいの倫理学』(角川文庫)
若い女性のお客様。みちくさ市でもそうだったのですが、内田本は女性の方の購入が多い。
「内田樹の本は読まなくてもいいんだけどなあ」
「ブログとか講演をベースにした著作が多いですものね」と店主・とみきち。
「そうそう。ブログと同じような感じ」
でも、本を元には返されないお客様。そこで、とみきち。

「『ため倫』!」
「うん、『ため倫』!安いからもらっておこうかな」とお買い上げいただく。

この流れ、私番頭・風太郎には全くわかりません(笑)。でもご購入ありがとうございます!!
デビュー作ということもあって、文章がややかたく読み辛いかもしれませんが、内田樹のエッセンスは詰まっているので、読んで損はないと思います。と、弁解。

■佐野洋子『シズ子さん』(新潮社)

ご夫妻でご来店。野呂邦暢ほか渋めの本を手にとられては、お二人で会話を交わされる。その内容からしてかなり本に詳しく、当店が出している本のめぼしいものは既にお読みか、お持ちのご様子。このまま他に移られるのかなと思った時、二段重ねにしてあった下段左端から手に取られたのが『シズ子さん』。
「なんか、この値段では申し訳ない感じよね」と奥様。
「はい、確かに。ただ、佐野洋子の本は、当店の一押しなので、繰り返し同じ本であっても出品させていただいております。一人でも多くの方に読んでもらいたいという気持ちからこの値段にしております」とお話しする。

実はこの本、その直前、遠く宗善寺から素敵な和服姿でわざわざお越しいただいた<どすこいフェスティバル>さんのTさんがお気づきにならなかったもの。「佐野洋子さんの本があったのね」という言葉に恐縮。2段にびっしり重ね過ぎたため、和服をおめしになられていたTさんには見つけにくかったのだと思います。ごめんなさい。次回からはもっと本を探しやすいよう工夫いたします。
<どすこいフェスティバル>さんからは、Kさん、ご友人のYさんもご来店。Kさんにはカナファーニー『ハイファに戻って 太陽の男』もご購入いただき、ありがとうございます。
「一箱」「みちくさ市」何度もお越しいただき、親しくさせていただいているのに、こちらからは伺えずすみませんでした。
売上げ点数111点、ぶっちぎりのトップ。凄い!のひと言です。いい本を、お客様がお求めやすい値段で数多く提供されたのでしょうね。伺っていたら10冊くらい頂いてしまったかもしれません(笑)。

中平卓馬の本、写真集ほか3冊とも引き取っていただきました。手に取る方が多く、人気のあることを実感。追悼の意を込めて1冊のみ出した庄野潤三。『文学交友録』(新潮文庫)500円も思った通り行き先が決まりました。マルグリット・デュラス『ヒロシマ私の恋人』(ちくま文庫)600円は30代と思われる女性の元へ。アラン・レネ監督による映画『二十四時間の情事(ヒロシマ・モナムール)』はご覧になられたものの、原作本は未読。文庫の古書なので、値段的に「少し高いかな」と迷われたようですが、品切れ本であることをご説明すると、次回どこで出会えるかわらないからと、引き取っていただけました。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

出店場所アートスペースゲントさんを担当していただいたナンダロウ(南陀楼綾繁)さんには、初めて当店からお買い上げいただく。当店がウェイトを重くして揃えている、文学、思想本もナンダロウさんにとっては月並みであろうし、かといってそそるような珍しいもの、面白いものもなし。諦めていただけに嬉しいです。購入いただいたのは雑誌『東京人』でしたが、実は『鶴見俊輔 書評集成3』を、残っていたら購入いただけたことを伺いました。この本、(次回書かせていただく)駄々猫さんに引き取っていただき、箱から消えておりました。
ナンダロウさんからは、『本が好き!vol.41』(光文社)を頂戴する。ナンダロウさんの記事「本町通り(ブックストリート)を歩こう」<最終回>が掲載されています。

右隣には、<ゆず虎嘯>さんが出店されていました。お名前は存じ上げていたものの、お話させていただくのは初めて。昔よく通った、今でもたまに訪れる素敵な街、国立(くにたち)にお店を出されています。旭通り沿い。あの有名な「谷川書店」さんのすぐ近くとのこと。

左隣には、信州小布施から参加された<まちとしょテラソ>さん。小布施町立図書館長・花井さんとは楽しくいろいろお話しさせていただきました。9月に催された「まちとしょテラソ市 <一箱古本市>」、来春4月17日・18日と実施されるみたいですね。

同じくアートスペースゲントさんには<古書 北方人>さんもご出店。みちくさ市などでは、毎回のようにいい本を安くいただいております。私などが全く知らない、しかし見る人が見ればすごい本が並んでいるのは、お客様の嬉しそうな顔、驚きの声を聞けばわかります。
今回初めて素敵なお嬢様にもお会いできて、嬉しかったです。
<photogramme>さん、<books195>さん、<orz文庫>さんとはほとんどお話しできず、残念でした。またどこかでご一緒させていただくこともあろうかと思います。その折りにはよろしくお願いいたします。

……………エピソード(3)に続く。

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〔お知らせ〕 ひとやすみ

「秋も一箱古本市」終了後の12日にエピソード(1)をアップ。その日、大事な薬を飲み忘れ、翌日から調子を崩してしまう。さらに首から肩にかけ岩のように固くなってしまい毎日頭痛薬。これはまあいつものこと。

お世話になった方、こちらから伺えなかった方への御礼やお詫びのメール、コメントを書くので精一杯。こんな状態のため、続きを書けていません。

日曜は朝から夕方まで仕事が入っていますが、エピソード(2)続・一般のお客さま篇、(3)顔見知りの方・出店者の方篇、週末には書き終えたいと思っています。

ナンダロウさんの『一箱古本市の歩きかた』(光文社新書)がいよいよ11月17日頃出ますね。一ヶ月も待てない!と思えるくらい楽しみな本です。

こちら→ http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20091015

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「第9回 秋も一箱古本市」 エピソード(1)

にわか雨による一時間近い中断にもかかわらず、大勢の方々に一箱の会場、そして<とみきち屋>に足をお運びいただき、ありがとうございました。
また、不忍ブックストリート青秋部のお二人、実行委員ほかスタッフの方々、助っ人の方々。場所を提供くださった大家さん。後援いただいた古書ほうろうさん往来堂書店さんオヨヨ書林さんにも、心から御礼申し上げます。

スリップを見ながら、この本はどなたに引き取っていただいたか、その時どんなご様子だったかを思い起こしています。
今回はスペースの関係もあり、店主・とみきちと二人一緒にお客様とお話しさせたいただくことが思うようにできませんでした。従ってお客様のやや後ろから見守ることも多く、私が不在だった30分弱の時間帯も含め店主・とみきちからのヒアリングの時間も増えています。

それでは、恒例のエピソード集始めます。いつもどおり、一般のお客さまとのお話から。

出店場所「アートスペースゲント」さんでは、ナンダロウ(南陀楼綾繁)さん、助っ人のIさん(早番)、青秋部石井さんの教え子でいらっしゃる大学生のお二人(遅番)にお世話になりました。箱の後ろ側にはすでに移動済みの植木が並んでおり、一人が坐るとその後ろは人が通れず。お隣との間が40㎝ほどなので、店主・とみきちとの連携作業が困難と判断。番頭の私がお客様の後ろからフォローする方針を固める。

11時開店前に早くもお客様の姿が。開店の合図と共に一人の男性がお見えになる。いつも早い時間に来られ、何度かお顔は拝見している方。何度古本市に参加しても、最初のお客様にご来店いただく際には緊張します。その日がどんな流れになりそうか、そこである程度決まっていまいそうに思えるからです。
ひととおり箱をご覧になられ、何冊か手にとられた後一冊お求めいただき、ほっとしました。

■内堀弘『ボン書店の幻』(ちくま文庫)350円

自分の蔵書から手放せる本ではありません。たまたま古書店で見かけ2冊目を入手できたので出品。「この値段なら」と満足いただけたご様子。ありがとうございます。
一箱古本市翌日、店主・とみきちのブログ「とみきち読書日記」に一人のお客様からコメントを頂戴しました。

「毎度楽しみにさせていただいております。お気に入りの店主さんを先に回ろうと一番に伺いました。欲しい本が5冊はあったのですが1冊で我慢してしまいました。ごめんなさい。その後すぐ雨で、大変でしたね。午後は青空でよかったです。次回も楽しみにしております。」

私ども<とみきち屋>にとって、かようなコメントをお客様からいただけることは、ほんとうに嬉しいことです。しかも、雨のことまでお気遣いいただけたなんて。
雨粒が落ちてきたのは開催後20分も経過していなかったので、コメントの内容と私たちの記憶、スリップへの記載を考え合わせると、コメントをお寄せくださったのは、まずまちがいなくこの最初のお客様だった思います。(万が一間違っていたら、すみません)。来春も参加させていただくつもりでおりますので、ぜひお立ち寄りください。今度はゆっくりお話しさせていただければと思っております。

二人目のお客様に、■尾形仂『芭蕉・蕪村』(岩波現代文庫)■国枝史郎『神州纐纈城』(河出文庫)をご購入いただいた直後雨が降り始め、中断に入る。

一瞬今日は終わったか…と思ったが、東京は地域によってにわか雨という予報を朝方耳にしていたので、気を取り直す。ナンダロウさんがいてくれたのも心強かった。

そのナンダロウさんに、普段私たちが参考にしている「東京アメッシュ」を携帯で見てもらう。PCで見れる時ほどクリアではないが、雨は文京区から台東区にかけての一部、しかも局地的にしか降っていない。「回復する!」という期待が膨らむ。空を見渡せる場所に移動し見やると、遠くは雲がさけ、青空もちらっと見える。

本を屋内に入れさせていただき、一旦解散。再開時には各人の携帯に連絡をいただく、携帯を持っていない、バッテリー切れの方は助っ人Iさんに連絡を入れるということにして。
とみきちと二人、早めの昼食をとりに「谷中銀座」へ。85歳のおじいちゃまがやっているおそば屋さんへ。当日の人力車による結婚披露のこと、谷中のことなどいろいろ教えていただき、谷中情緒を思わぬ形で味わえた。食後「よみせ通り」をぶらぶら歩いていたら携帯が鳴り、再開のお知らせ。12時をまわっていたが、続けられることが嬉しくてならない。残り4時間弱楽しもうと、ゲントさんに戻る。

雨による中断でお客様にどれほど来ていただけるか、一抹の不安はあったものの、再開後途切れることなく大勢のお客様がお見えになる。「一箱」の認知度の高さ、谷根千という街の魅力、底力を実感する。もちろん、多くの顔見知りの方々にも午後から続々とご来店いただき、励まされる。心強くもあり、楽しい。

■深沢七郎『人類滅亡的人生案内』(河出書房新社)
■古井由吉『円陣を組む女たち』(中公文庫) 『櫛の火』(新潮文庫)
■柄谷行人・中上健次『小林秀雄をこえて』(河出書房新社)
■長谷川宏『ヘーゲル『精神現象学』入門』(講談社選書メチエ) 計5冊

若い男性の方に、こういう選書で引き取っていただけるのは嬉しいです。「幅広くお読みになられるのですね」と声をかけさせていただくと、「そうでもないです」と微笑まれる。それから少しお話しさせていただく。深沢七郎はお好きな作家で、古井由吉『円陣を組む女たち』は探されていたとのこと。また、お会いしたい。

■ナボコフ『ナボコフ全短篇集〈1〉』(作品社) 
■バフチン『小説の言葉』(平凡社ライブラリー)
■鶴見俊輔『夢野久作と埴谷雄高』(深夜叢書社)
■内堀弘『石神井書林日録』(晶文社)
■林芙美子『林芙美子紀行集 下駄で歩いた巴里』(岩波文庫) ほかに文庫3冊
計8冊 5,000円

雨天中断後間もなく、リュックを背負われた男性がご来店。今回、当店で冊数、金額ともに一番のお買い上げいただきました。「安いよねえ。もっともっとほしいんだけれど」と言っていただく。そんなに安くはしていないのに…。ありがたいことです。
「ナボコフは〈2〉も出品できればよかったのですが」とお声をかけると、「いやあ、〈1〉だけでも、この値段なら十分」と。またのお越しをお待ちしております。

先に紹介させていただいた若い男性の方もそうですが、当店に初めてお越しいただいたにもかかわらず、まとめて購入くださる方が毎回のようにいらっしゃるのが驚きであり、嬉しいことでもあります。

■五味康祐『いい音いい音楽』(読売新聞社) 800円

一人のお客様が箱の前にしゃがんで本を選んでいらっしゃる。そのため、他のお客様が箱の前までは近寄れなません。前2回とは違い、ほぼ一日中このような状態だったので、申し訳ないなと思う。もちろん、先に見ていただいているお客様が迷惑などと言うことでは決してありません。二人のお客様が同時にご覧になれるスペースがなかったのです。

私の左後方から人影が。当店の箱をやや離れたところからご覧になり、いきなり「えっ?おっ、あったよ!」。お客様の目線が何をとらえたのか何とはなしに感じられ、思わず期待を抱いてしまいました。「今手にしておかなければ」という感じで、他のお客様の邪魔にならないよう、1冊の本に手を伸ばされました。
ビンゴ!! いてもたってもいられず、箱の前にいらっしゃるお客様に「横をちょっと失礼します」と声をおかけして、私は店主・とみきちと場所を交替。

箱の前が空いたタイミングを逃さず、「五味さん、お探しでしたか?」とお声をかける。「そう、探していたんだよ」と満面の笑み。その表情から、どんな本かご存じなのはわかりました。こうなると、中身をくどくど説明するのはかえって野暮というもの。

お買い上げいただく際、「巻末にある、娘さんの父への追悼文(「父と音楽」)が素晴らしいです」とひと言だけ。「そうですか。楽しみです」とお客様。

脱線しますが、一部だけ紹介させてください。自らピアノを弾き、これこそ理想と思える音に関して意見が一致すると、うれしそうな父と握手して喜ぶ娘の言葉です。(文中タンノイオートグラフとあるのは、今や伝説と化した有名な英国製スピーカーのこと)

母は音楽を聴いているときの父が一番好きだという。父がひとり静かにタンノイオートグラフの前に坐り、音楽を聴いているときの表情はとても厳しい。まだ二十年余りしか生きていない私に、父の音楽への姿勢を語りうるとは思っていないが、瞭(あき)らかに、父は、流れる音楽のなかに神を観ていた。バッハ、モーツァルトをとおして神の聲(こえ)をきいていた。それは父にとって、もっとも敬虔な時間であったと思う。だから、私は、音楽と対峙している父の真摯な横顔をみるたびに、どうしても声をかけられなかった。(略)父亡き今、最高の鎮魂は音楽を鳴らすこと、それはわかっている。しかし、あまりに悲惨でなかなかかけられなかった。(略)できることならば、毎晩のように、父の愛した音楽を聴かせてあげたい。しかし、私の手ではタンノイは鳴ってくれない。あの素晴らしい澄明な、ふっくらした気品にみちた音をきかせてはくれない。父の死とともに、殉死したのだ。

■森山大道『犬の記憶』『犬の記憶終章』(河出文庫)
■川村湊ほか『戦争文学を読む』(朝日文庫)
■熊野純彦 編『現代哲学の名著』(中公新書)

以前「みちくさ市」で閉店間際ということもあり、けっこう値引きさせていただき、加藤典洋『村上春樹のイエローページ1・2』ほか3冊をご購入いただいたおじいちゃまにご来店いただく!昔から本はよく読まれるとおっしゃっていました。その時古本市っていいねえという感想もいただいたのですが、一箱に来ていただけるとは感激。しかし、私の不在時(泣)。とみきちが「以前もお買い上げいただきましたので」と、100円分だけ気持ちサービス。それでも喜んでいただけたご様子。きっと店主さんとのやりとりをと楽しまれていらしゃるのでしょう。

■荒川洋治『文学が好き』(旬報社)
■鮎川信夫・大岡信編『戦後代表詩選』(詩の森文庫)ほか3冊

<とみきち屋>常連のお客様のお一人。お名前も伺えたので今回からYさんと呼ばせていただきます。9月の「みちくさ市」で荒川洋治『夜のある町で』(みすず書房)を引き取っていただいたのですが、今回はまず荒川洋治の本を手にされました。昨秋以来何冊も当店から本を購入していただいてますが、図書館で読める本はお借りになって、読後購入するかどうかをじっくり考えられる方。自らの足でこれはと思える本を探される方なのです。
出品していた辻邦生・水村美苗『手紙、栞を添えて』(単行本)をご覧になり、「最近ようやく文庫本のほうを手に入れたんですよ、格安で」とYさん。本に対する姿勢と愛情の深さを感じます。そのような方に対して番頭・風太郎(私です)はあろうことか、押し売りに入る(笑)。

「きっとYさんをお待ちしていたんですよ~、この本。持って帰ってもらいたいって(笑)」
「そうですか?まいったなあ。う~~ん」といつもの素敵な笑顔で迷われるYさん。
「巻末の一覧表が荒川ファンにはたまらないのです」と背中を押すどころか、背中に負ぶさる。
「じゃあ、もらおうかな」とYさん。ありがとうございます!!

これまで荒川さんの本を何冊も出品してきたので、今後出品できるのは残すところ1冊となってしまいました。もちろん『文学が好き』は、自分の蔵書1冊のみで、どこかで入手しない限り出せません。ほんとうによかったと思っているんです。Yさんの手元に渡って。いつも本を介しての楽しい時間をありがとうございます。

『手紙、栞を添えて』を読まれ、水村美苗のイメージが変わったとのこと。きっと書簡を交わした相手がよかったのではないかと思います。

■保田與重郎『後鳥羽院』(保田與重郎文庫・新学社)
■ローデンバック『死都ブリュージュ』(岩波文庫) ほか4冊

もう、古本市ではおなじみのHさん。もちろん、当店にとっても大のお得意さまです。

いきなり伊藤勝彦『天地有情の哲学』(ちくま学芸文庫)を手にとられる。

「伊藤勝彦よく読んだよ」とHさん。それからしばし伊藤勝彦の話。吉本隆明との対談があることを教えていただく。(おそらく「思想の発生する基盤」のことではないだろうか) その後、スタージョン『一角獣・多角獣』(ハヤカワ書房)ほか何冊かの本についてお話させていただく。

もうすでに一袋分お買いになられていて、この先他店を廻られるのはきついでしょうという状態だったので、Hさんの本をお預かりする。するとまあ、長い旅に出られる。お戻りになられた時には合わせて3袋か4袋になっていたような。お買いになったものの中から「こんなの買ったよ」と一冊みせていただく。その作家の本を以前当店から買っていただいたことがあったので、その点は何とも思わなかったのですが、雑誌としては珍しくはないのです。「誰もが飛びついて買う普通の雑誌(本)はかえってHさんのアンテナに引っかからないのかも」と思うと不思議に納得がいく。「それ、面白いですよ」とお答えすると、「そう。楽しみだな」とHさん。そのお顔がなんともキュート。私の想像など及ばないくらい本に造詣がおありだろうし、本を選ばれる速さ、ご覧になるときの鋭い眼光。本来ならこんな感じで接するのは失礼なのかなと思いつつ、一向に変わらない<とみきち屋>でございます。

お隣で出店されていた「まちとしょテラソ」の小布施町立図書館長・花井さんにHさんの事をお話ししたら、とても驚かれていました。どれだけの本を買われたか、実際ご覧になられたわけですし。(小布施のことはまた改めて)

古本市に参加する回数が増える度に、新しいお客様、店主さん、スタッフの方との出会いがあります。また、親しくさせていただくようになった方にわざわざお越しいただいたり、メールで励ましていただいたりと、嬉しいことがどんどん増えていきます。そのため、終了後のブログも少しずつ長くなっていくような。今回は、1週間がかり(これは変わらず)、4回くらいになるでしょうか…(笑)。
初めてお読みいただいた方も既にお気づきかと思いますが、「一箱古本市」全体のレポートではありません。私ども<とみきち屋>の目に映った、いわば風景を描いたものです。その点、ご了承ください。

今回の「秋も一箱」、春の「一箱」、そして素敵な谷根千の街の様子が写真でアップされています。まだ訪れたことのない方にも、その雰囲気がきっと伝わると思います。ぜひ、ご覧になってください。スライドショーも楽しめます。

こちら→ http://f.hatena.ne.jp/shinobazukun/

また、モンガ堂さんがリンク集を作成してくれています。こちらもぜひ。

こちら→ http://d.hatena.ne.jp/mongabook/20091011/p1

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2009「秋も一箱古本市」出品本の紹介(2)

ようやく出品本の選定を終える。満足度は70%といったところ。一日の古本市で100%など所詮無理。では何故70か。出られるかどうかもわからない来春の一箱用に、50冊近い本を別の箱にしまい込んだからです。こうなるともう、病気ですね(笑)。

今回は前回の春(120冊)よりもさらに増やし、随時補充するつもり。増やした分は、200~300円の価格帯で出品します。また、一度出品したことのある本の多くは値を下げて。よってこの価格帯は春の約3倍の数になるでしょうか。そのかわり、びっしり2段に積み重ねますので、ちょっと見づらくなりますがご了承ください。

それでは、出品本の紹介続編です。

■野呂邦暢『愛についてのデッサン』(角川書店・初版)
■野呂邦暢・長谷川修『往復書簡集』(葦書房)
■ガッサン・カナファーニー『ハイファに戻って 太陽の男』(河出書房新社)

3冊ともこの一年間で、自分の蔵書用として2冊目を入手できたので、出品します。カナファーニーは荒川洋治推薦の書。二十一世紀に読み継ぎたい十冊の本の一冊として挙げていました。

カナファーニーは「戦争」と戦い、三十六歳で暗殺されたパレスチナの作家。夢のように悲しく美しいものを残した。文学のもっているもの、そして期待のすべてがこの作品のなかにある。 『文学が好き』(旬報社)

さて、その荒川洋治。今回もまた出品します。

■荒川洋治『文学が好き』(旬報社)

巻末近くに掲載されている「一年一作百年百篇-一九九〇~一九九九」が曲者。これを読んだがために、いったい何冊の本を買うはめになったことか(笑)。いまだに入手できない作品も多い。

■荒川洋治『読んだような気持ち』(ベネッセ・コーポレーション)

レアな部類に入ると思います。廉価での出品はできませんので、手にとってご覧いただくだけでも。荒川ファン<とみきち屋>の、今回の看板。滋味ですね(笑)。

■アンヌ・フィリップ『ためいきの時 若き夫ジェラール・フィリップの死』(ちくま文庫)

36歳の若さで亡くなったジェラール・フィリップ。その未亡人による(夫への)鎮魂の書。解説でも触れられているが、「この"わたくしたち"は、あなたプラスわたしではないもの、生まれつつあるもの、わたくしたちを超え、わたくしたちを包含すべきものだった」というアンヌの言葉が二人の在り方を象徴している。

■伊藤勝彦『天地有情の哲学 大森荘蔵と森有正』(ちくま学芸文庫)

人類の知的遺産シリーズでパスカルを執筆した著者。この本初版のみで部数が少なく、購入者も手放なさないのか(わからないのだけれど)、ネットも含めあまり見かけない。読後9年も経過している古本ですが、定価ぐらいで出してみます。

ブログで紹介させていただいた以外にもいろいろ出品します。蜷川幸雄、佐伯一麦、古井由吉、蓮実重彦、室生犀星などなど。

開催当日は晴れそうですが、まもなく上陸しそうな巨大台風の被害が心配されます。みなさま、お気をつけください。

私ども<とみきち屋>は、アートスペースゲントさんに出店します。

『秋も一箱古本市』 10月10日(土)開催予定 11:00~16:30
 (http://d.hatena.ne.jp/seishubu/

チラシ http://d.hatena.ne.jp/seishubu/20090924#p1
出店者一覧 http://sbs.yanesen.org/projects/sbs/wiki#店主一覧

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2009「秋も一箱古本市」出品本の紹介(1)

9月のみちくさ市参加前、既に7割方「一箱」用の本は別に選んでストックしておいたものの、その後遅々として作業は捗らず。結局、もう4日しか準備期間が残されていない。まあ、毎度のことですが(笑)

前にも書きましたが、いいなと思った本のうち、品切れになりそう、或いは品切れになってしまったら同じ本を、それこそ条件反射のように買っていました。古本市に参加する遙か前から。
書き込み用、持ち歩き用、保存用、時に贈呈用と4、5冊所有しているものがかなりありました。そこから、一箱2回、みちくさ(プレ開催含め)4回、計6回の中でけっこうな数を出品。しかも、できる限りかぶらないように。

しかし、素人ゆえの限界もあり、いいと思っても、簡単に入手できるものではありません。加えて、自身の性格もあります。古本市に参加するようになってから、買う本の幅が多少拡がったものの、やはり自分の好きなジャンルに偏るのは変えられません。

前置きが長くなりました。今回から<とみきち屋>は、直前のみちくさ市に出品した本、昨秋、今春のいずれかの一箱に出品したのと同じ本も出します。おそらく10冊~20冊。
何度も当店にお越しいただいている方には、「なんだ、同じ本が出ているじゃないか」という印象を与えてしまうと思います。しかし、いいと思える本は、「誰かに読んでもらえたら嬉しい」という気持ちがありますので、敢えて申し上げました。

だからといって、当店に一度はお越しいただいた方、ブログをご覧になった方など、<とみきち屋>の傾向をご存知の上で、足をお運びいただく方々を落胆させてしまうような箱は出さないつもりでおります。ぜひ、お越しください。

それでは、出品本のごく一部をご紹介させていただきます。2~3回の予定。

ミニ特集 【 西行と定家 】 写真参照

なぜ西行と定家なのかと訊かれても、答えに窮してしまいます。自分の好きな歌人だから、それに尽きます。そして、もうひとつ加えるならば、全品複数所有しているので手元に1冊残っていればいいという、単純な理由です。
西行の『山家集』(岩波文庫)、定家の『定家八代抄』(岩波文庫)が新刊で入手できないということ自体、不思議でならない。岩波なら、いつか重版されるとわかってはいても。
上記以外にも、4冊品切れ本を揃えました。

【 中平卓馬 】 写真参照

 『原点復帰ー横浜』(オシリス)、『なぜ、植物図鑑か』(ちくま学芸文庫) 『中平卓馬 来るべき写真家』(河出書房新社)。
中平卓馬ほか森山大道、東松照明論などが入っている大竹昭子『眼の狩人 戦後写真家たちが描いた軌跡』(ちくま文庫)も出します。(5年半前に出た文庫なのに、もう品切れのようです)
『決闘写真論』など、品切れ、絶版本は含まれませんので、出品数含め中平卓馬特集と呼べる品揃えにはなっておりません。一冊しか持っていない蔵書から出すのは困難なため、特集が組めればと自分なりに探してはみたのですが、入手できませんでした。一度入手困難な写真集を見つけましたが恐ろしいほどの高額で。

【 木山捷平2冊セット 】 写真参照

■『酔いざめ日記』(講談社) ■『耳学問・尋三の春他』(旺文社文庫)

いわゆる<とみきち屋>の強引セットです(笑)

【 村上春樹 付録付き 】

■『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(新潮社・初版

これだけでは、珍しくも何ともないですよね(笑)。そこで、付録を用意します。
1980年『文學界』9月号に掲載され、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の元になったと言われる作品の切り抜き です。雑誌本体は残っておりませんが、全文読めます。ただし、経年変化による黄ばみがあること、ホッチキスでとめてあることをご了承ください。
この作品、単行本、文庫本含め、著者本人の意向により未掲載です。

私ども<とみきち屋>は、アートスペースゲントさんに出店します。

『秋も一箱古本市』 10月10日(土)開催予定
 (http://d.hatena.ne.jp/seishubu/

チラシ → http://d.hatena.ne.jp/seishubu/20090924#p1
出店者一覧→ http://sbs.yanesen.org/projects/sbs/wiki

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「秋も一箱古本市」まで1週間もないというのに…

3日(土)は「秋も一箱古本市」前の最後の集会に参加。
青秋部のお二人、昔から「一箱」を支えてきた方々がテキパキと作業を進められるのを、傍らで見ているような感じになってしまい、ほとんど役に立たず(汗)。
しかし、ごくごく一部とはいえ、舞台裏を見れたのは貴重な経験でした。出店者からは見えない様々な苦労を知り、感謝の気持ちが深まりました。

終了後、近くの居酒屋へ。開催当日の打ち上げ飲み会には残念ながら参加できないので、お誘いいただいたのをこれ幸いと、何も考えずについて行ってしまいましたが、まわりを見たら私一人が新参者(笑)。
しかし、みなさんフランクで、温かく、まったく緊張することなく過ごせました。
石井さんご夫妻、 「古書ほうろう」宮地さんご夫妻、「やまがら姉弟文庫」のお二人、モンガ堂さん、ドンベー(ブックス)さん。そして初めてお話しさせていただいた「霧のタンス本」のKさん、カリプソ文庫さん、トンブリンさん。楽しいひと時をありがとうございました。

「古書ほうろう」さんで、山口昌男『トロツキーの神話学』(立風書房)、『増補 思想の流儀と原則吉本隆明対談集』(勁草書房)を購入。いずれも300円! 吉本隆明の対談集は増補以前のものしか持っていなかったので、ありがたい。今回はYさんにも初めてご挨拶できてよかった。
「古書ほうろう」さんが自宅の近くだったら、どんなにいいだろうかと思うことしきり。

4日(日)は夕方早稲田青空古本祭へ。古書現世・向井さん、立石書店・岡島さんにご挨拶。
『浪漫 』1973年12月号「特集 三島由紀夫」、『ユリイカ』1976年10月号「特集 三島由紀夫 傷つける美意識の系譜」ほか、国文学、新潮などの三島特集の雑誌をまとめて購入。
『浪漫 』には中河与一による三島論が掲載されており、思わぬ収穫。
探していた、L..マンフォード『芸術と技術』(岩波新書)も手に入れることができた。

その後、高田馬場ブックオフ2店舗を覗き、加藤典洋『文学地図 大江と村上と二十年』(朝日新聞出版)1冊のみ購入。半額になったら買おうと思っていたら、なかなか見つけられず10ヶ月近く経ってしまった。

自宅最寄り駅からの帰り、畑に挟まれた道から眺めた月の美しかったこと。広々とした夜空に、女王のごとく輝いていた。高い建物が周囲になく、空を見渡せる環境はいいものだと、ひとりごちる。単に駅から歩くと20分かかり、田畑の多い場所に住んでいるだけのことなのだが(笑)。

帰宅後、車で実家へ顔を出し、出かけていた妻を駅まで迎えに行ったりしているうちに、日付が変わり、一箱の準備は全く進まず。

さらに、今回出品しようかなと思って手にとった、五味康祐『人間の死にざま』(新潮社)をちらっと読んだのが大失敗。数え切れないくらい読んでいるのに、止まらない。いつの間にか窓の外が白んでいた。

こんな状況なので、出品本の紹介は今夜からになりそうです。もうしばらくお待ち下さい。

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ブラームス、ブラームス!

先日何を見るともなくたまたまつけたテレビ。N響(NHK交響楽団)をバックに従えた女性ヴァイオリニスト、ジャヤニーヌ・ヤンセンの演奏を聴く。曲はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。既に第1楽章の終わり近くであったが、ぐいぐい引きこまれ、最後まで釘付にされてしまった。音楽が彼女のからだからほとばしり出て来る。技巧面の不安を全く感じさせず、曲と一体となり、弦を数本切りながら最後まで弾き切った。
<素晴らしい>と、思わず声が漏れてしまうような演奏を堪能。
この演奏が強く印象に残っていたからだろう。後日、久方ぶりにゆっくり音楽を聴く時間がとれた際、ジニット・ヌブー(女性ヴァオリニスト)を聴きたいという気持ちになっていた。

有能な演奏家が年輪を刻んだ末、深い表現力を得、強い存在感を醸し出すことは少なくない。そのことを考えると、30歳という若さでこの世を去ったヌヴーは夭折以外のなにものでもない。
ヌヴーは飛行機事故で命を落とした。その飛行機には奇しくも、あのエディット・ピアフの恋人も同乗していた。余りにも有名なピアフの『愛の讃歌』。絶唱の底から、恋人を喪ったピアフの慟哭が聞こえてくる。
聴く者の心を激しく揺さぶる点では、ヌブーの演奏も同じだ。
死を予感し、何かに取り憑かれているように感じられてしまうほどの、圧倒的なヌヴーのブラームス。亡くなる一年前の演奏。

■ブラームス『ヴァイオリン協奏曲 ニ長調』
 ジニット・ヌヴー(ヴァイオリン) イッセルシュテット指揮 北ドイツ放送交響楽団 1948年ライヴ 〔写真左〕

一音一音に全身全霊を傾け、まるで自らを切り刻み、流れ出る血を注ぎ込んでいるかのようだ。情熱の炎に包まれながら、王女の如き気品すら感じられる美しさ。稀有の名演と称えられ、長年にわたり多くの人を魅了してきたことは、一聴すればわかる。
古いモノラル録音ゆえ、音がいいとは言えない。それでも、ヌブーの迫力、演奏の素晴らしさは十二分に伝わってくる。
最初はLP、次にCD(EMI盤)と聴いてきたのだが、何かの記事でSTIL盤の音質がいいと知り、中古CDショップを探し回り、ようやく入手したのは5年ほど前だっただろうか。以来そのCDを愛聴している。現在もSTIL盤の入手は難しいようだ。(一度ディスクユニオンが入荷していたのを見た記憶はあるが)
ハイフェッツ、オイストラフ、シェリング、クレーメルほか男性ヴァイオリニストの演奏も定評はあるが、(未聴の方は)是非一度ヌブーの演奏を聴いてみてほしい。

■ブラームス『交響曲第4番 ホ短調』
 ザンデルリンク指揮 ベルリン交響楽団 〔写真右〕

ブラームスに華美な演奏は似つかわしくないと思っている。また、個人的には、細部まできちんと仕上げられた演奏、あまりにテンポが早かったり、激しすぎる表現も苦手だ。(例外もあるが) さらに音色。観念的であいまいな言い方ではあるが、どこかに暗さを漂わせていてほしい。
そういうわけで、名演の誉れ高い、ミュンシュ指揮パリ管によるブラームスの交響曲第1番などは音色、クライマックスの部分が肌に合わない。同じく評価の高いヴァントのブラームス演奏もじっくりと味わえない。敬愛するヴァントですら、そう感じてしまう。1番はベーム、ベイヌム指揮を好んで聴く。
話を4番に戻そう。カルロス・クライバー、フルトヴェングラー、ワルターほか名盤は多い。それでも、私にはザンデテルリンク指揮 ベルリン交響楽団の演奏がベストだ。

ドレスデン・シュターツカペレとのブラームス交響曲全集の水準が高かったので(とりわけ「第3番ヘ長調」は今もってベストに近いと思っている)、輸入盤を目にした時迷わず購入した。発売後じわじわと人気が高まり、国内仕様盤も登場(現在品切れ)。地道に売れ続けたようだ。しかし残念ながら、昨年夏に(ジャケットが変わり)再入荷(輸入)されたのを最後に、今は輸入盤も入手できない。

ただひたすら美しい演奏。華やかさは微塵もない。夾雑物をいっさいそぎ落とした後に残る、静謐な美しさと言えばよいだろうか。第3楽章を除き、テンポはかなりゆったりとしている。人によっては遅いと感じるかもしれない。しかし、それがまた絶妙のテンポで、音楽そのものに浸らせてくれる。
仄暗い夕闇の中から、ひとひとつの音がやわらかく立ちあがってくるかのようだ。
ザンデテルリンクの演奏が円熟した大人の演奏なら、発売当時、熱狂し、繰り返し聴いたC.クライバーの演奏が青年の音楽に思えてくるから不思議だ。それが悪いわけではないのだが…。

ヌブーが奏でる音楽もザンデルリンクが奏でる音楽、いずれも「深い」。だがその「深さ」は、同じとは言い難い。それだけ音楽、芸術の表現には多様性があるということである。そして深さをもたらすのは表現者たる人間だ。
人の心を動かす芸術と呼べる表現を獲得できるまで、どれほど困難を極めることか。
同じジャンルの作品に触れれば触れるほど、朧気ながらであれ、素人にもわかってくる。
だから芸術は厳しい。それゆえに、芸術は奥が深い。

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