「第2回みちくさ市」エピソード2 おじいちゃままで魅了する村上春樹?
今回は一般のお客様の話を中心に。
■ 斉藤政喜・内澤旬子『東方見便録』(文春文庫)
最初にお買い上げいただいた本。イラストを描いているのは、『世界屠畜紀行』(解放出版社)で一躍脚光を浴びた、内澤旬子さん。内澤さんは、一箱古本市の創始者でもある南陀楼綾繁(ナンダロウアヤシゲ)さんの奥様。この本、前回単行本で出品した際には残ってしまったのに、今回は開店と同時に売れた。やはり文庫本の威力か?
■ 星野徹『詩とは何か-試論の歴史』(思潮社)
■ 鈴木晶『フロイト以後』(講談社現代新書)
■ 高橋昌一郎『ゲーデルの哲学』(講談社現代新書)ほか計5冊
古本市ではとみに有名で、当店最強のお馴染みさんとなっていただいたHさんが汗びっしょりでご来店。すでにビニール袋いっぱいの本を手にしていらっしゃる。ご挨拶後はいつものように集中して本を選んでいただく。お気に召したものがあるだろうかと緊張。こちらの緊張をよそに、は、はやい!複数の箱からぱっぱっと抜き取られ、重ねていかれる。均一料金でない箱の本は値段も確認されずに。<とみきち屋>なら「みちくさ市」で、この本はこれくらい(の値段)と見当をつけていらっしゃるのだろうか…。であるなら、嬉しい限り。あっと言う間に5冊購入いただく。
会計時、「5万円札でお釣りありますか?」と千円札を2枚出されたので、「お釣りはチップとして頂戴してよろしいですか?」とお答えする(笑)。素敵な方だ。
「何でしたら、廻って来られる間お荷物お預かりしておきますが」と声をかけるものの、「いやあ…今日は戻って来れないかもしれないので…。すみません」とHさん。「すみません」とお客様に言わせてしまう<とみきち屋>とはどんな店? 検問所か(笑)
見え透いた作戦失敗。2回目にご来店いただいた時にはいつも追加で買ってくださるのだが、見破られたか(笑)。「暑いのでお気をつけて」とお見送りする。
■ ガルシア・マルケス『悪い時 他9篇』(新潮社)700円
■ 楠見朋彦『塚本邦雄の青春』(ウェッジ文庫)350円
■ 永井均『ウィトゲンシュタイン入門』(ちくま新書)150円
前回のみちくさ市で『レヴィナス・コレクション』(ちくま学芸文庫)、吉田健一『シェイクスピア』(新潮文庫)、ルソーの本他4冊ご購入いただいた若い男性にお越しいただく。 この方とは読書傾向が似ていると思えるので、どんな本に興味を示されるのか気になって仕方がない。まずガルシア・マルケスを手にとられる。
<う~~ん、ツボだ>
迷っているようにも見えたのでハラハラ。
<あなたのための本ですよ>などと、おかしな事をひとりごちる。
「安いですね。この値段ではなかなか手に入れられませんよね」と言っていただき、安堵。
結局3冊購入いただく。お会いできるのが楽しみなお客様がまた一人増えて、嬉しい。
■ 鶴見俊輔『テレビのある風景』(マドラ出版)600円
知的な雰囲気の年輩男性。その手には20ページ以上あると思われる探求本リストが。1ページに50タイトルは載っている。書籍JANコードを読み込むソフトを利用され、バーコードのない古い本は手入力で作成されていると伺う。この方のすごいのは、今回持って来られたリストは「マスコミ分野」のみというところ。私が普段持ち歩いているリストなどA4ペラ1枚。しかも複数巻セットのどの巻が欠けているかを確認する際に目を通す程度。
■ 山田風太郎『戦中派不戦日記』(講談社文庫)『戦中派虫けら日記』(ちくま文庫)
■ 紅野謙介『書物の近代』(ちくま学芸文庫)
体格のいい早稲田大学仏文科の学生さんが購入。フランス文学という専門性に囚われず、この手の本を読もうとしている青年に出会えるのは嬉しい。来店時手にしていたビニール袋が既にパンパンに膨らんでいて、本の角が折れているように見えたので、大きめの紙袋を提供。許可を得て、本が縦にならず、角が折れないように入れ替えさせてもらう。その際購入済みの本のタイトルがちらっと見えたのだが、ジャンルも広範囲にわたっていた。本好きなんだなあと感心。とても丁寧な言葉遣いにも好感が持てました。
■ 高橋和巳『邪宗門 上・下』(朝日文庫)1,200円
中年男性の方がすっとやって来られて、ぱっと手にとり、そのまま差し出された。「これもらうよ」と言わんばかりの狙い打ち。会話はなし。でも、すかっとした。
現在品切れで入手しにくい(特に下巻)とはいえ、今時高橋和巳の作品を手にとってもらえるか、正直自信はなかったが一度試してみたかった。それが許されるのも古本市のいいところ。誰に制約されるわけでもないから、気になる本を出品しお客様の反応をじかに確かめられる。思い入れが強すぎると残った時のダメージも大きいが(笑)。
■ 高橋たか子『没落風景』(新潮文庫)ほか3冊
私ども<とみきち屋>は「一箱古本市」に2回、「みちくさ市」にはプレ開催含め今回で3回、計5回目の古本市参加となるが、そのうち4回お越しいだくたくことになったお客様がご購入。その都度買っていただいているので、ありがたいことです。
山川方夫『愛のごとく』『海岸公園』(新潮文庫)を目に留めると、いつもの笑顔でじっと見ていらっしゃる。「3週間ほど前に1冊手に入れたんですよね~」。う~ん、困った。この2冊<とみきち屋>強引セットとしてブログでお知らせした商品。時間からしてバラ売りするには早すぎる。かといって当店にとって、すでに大事な常連さんとも言える。どうしたものかと悩んでいたら、「ああ、気にしないで。これは2冊セットの方がいいですよ。誰か欲しい方がいるだろうから」と言っていただく。
その後いったん他の店を廻られ戻って来られたのだが、不思議なことに丁度別の方にこの2冊セットお買い上げいただく時だった。少し離れたたところから「売れましたね~」とにっこり微笑んでくださる。その上、北原武夫の本を追加購入していただく。何だが胸が熱くなった。またお会いしたい。
■ 加藤典洋『村上春樹イエローページ1・2』(幻冬舎文庫)400円→200円
■ 『鼠の心 村上春樹の研究読本』(北栄社) 300円→100円
閉店間際、地元の方かなあと思われるおじいちゃまがご来店。「なかなか村上春樹の本見つけられないんだよな~。これ2冊で200円?」と、村上春樹イエローページ1・2』を手にされて訊かれる。(1冊200円で出品していた)
<この「みちくさ市」でもどこかで売っていたと思うけれど、こんな時間だからもう無かったのかな。これは村上春樹自身の本ではないんだけどな。どうしようか…>と一瞬考え、
「1冊200円ですが2冊200円でけっこうです。でも、この本は村上春樹について書かれた本ですがかまいませんか?」とお尋ねすると、
「200円でいいのかい。助かるなあ。言ってみるもんだね」
せっかくだからと思って『鼠の心 村上春樹の研究読本』もご紹介。ぱらぱらと中身をご覧になり、お気に召したご様子。
「100円でいかがですか?」
「じゃあ、もらおうかな」と満面の笑み。
「いつもやっているの?」
「約2ヶ月に1回の割合で開催予定です」
「そうなんだ。いいねえ、こういうの」
おじいちゃままで魅了するなんて、今や村上春樹は国民的作家?
と言いながら私は未読。馴染みの古書店なら半年も経てば店頭に出て来るのだから慌てる必要は全くない。(既に1セット買い取り、店に出したら3時間で売れたらしい) すぐに読みたいと思える作家ではないし、とりあえず読んだら売ってしまうのは目に見えている。我が家には『ノルウェイの森』を最後に村上春樹の単行本は一冊もない。ブックオフあたりで105円になった頃文庫で買い直すことはあっても結局再読せずにそのまま埃をかぶってしまっている。作品によっては文庫になってから初めて読むこともある。ストーリーテラーとして圧倒的な力量を持つ世界的な作家であることと、作品が、その言葉が自分の心の奥深くまで届いてくるかどうかは別。村上春樹ファンには怒られそうだ(笑)。いけない。村上春樹の話をする場ではないのに脱線してしまった。
相変わらず当店は女性のお客様が少ない(泣)。今回も購入いただけたのはわずか10人。そのうち顔見知りの方が4人。少なすぎると、愕然。でも、それだけに、お買い上げいただいた方々には感謝、感謝です。
参考にはならないかと思いますが、著者名で言うと、武田百合子、米原万里、村田喜代子、寺山修司、内田樹、立川談志、鹿島茂、高橋竹山など。私自身意外だったのは、お隣に出店された「スプーン文庫」さんのお知り合いの方(?)に購入いただいた、永野潤『図解雑学 サルトル』(ナツメ社)。哲学関連の本を女性のお客様に買っていただくことなどめったにないので印象に残っています。
今回<とみきち屋>の売上げ冊数は76冊。
<古本 寝床や>さんの表現を使わせていただくと、打率4割2分。厳しい~(汗)。持ち込んだ本も多過ぎたようだ。新書は40冊用意して売れたのは18冊。やはり新書は難しい。
ちなみに5月の「一箱古本市」は85冊の売上げで、冊数では9冊しか違わないのに、打率は7割8分。1冊単価では180円も高かった。
今回のラインアップは魅力を欠いたのか…。もっと考えなければ。
次回(最終回)は、<わめぞ>の方々や出店者、顔見知りの方々とのエピソード。
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