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第14回 古書往来座「外市」でのひと時

30日(土)、<わめぞ>外市へ。降雨に対応できるようディスプレイがいつもと違っていたためか、ややすっきりした感じ。でも、棚や箱の中身はいつもの「外市」。
古書現世、立石書店さんの外市用の品揃え、往来座さん店内探求だけでなく、店を構えていない<わめぞ>メンバーの出品を見るのも楽しみのひとつ。何故なら、出品者の個性が何とはなしに滲み出ているように思えるからだ。
荻原魚雷さんの箱は、じっくり読んで味わう渋めの本が多い。魚雷さんが書く内省的な文章に似ているというか。退屈男さんは、幅広い。月の湯古本市以来、ちくま文庫のアウトロー系ありとインプットされたのだが、案の定今回、笠原和夫の本が出ていた。『「妖しの民」と生まれきて』を購入。ふぉっくす舎NEGIさんの棚からは高橋健二『ヘッセ紀行』(駸々堂ユニコーンカラー双書)。ほかの本とは少し傾向が違うように思え、目に飛び込んで来た。
「えっ!?」と思ったのがu-senさんの箱の中。宝島の『マルクス』、三一新書から出ていたゲランの『現代アナキズムの論理』。昔読んだ時の懐かしさが甦って来た。同時に、この手の本が出品されていることに驚きを覚えた。
他の出品者の箱にも、その若さでどうしてこんな本を・・・ということが多く、楽しみは尽きない。

今回のゲスト火星の庭さんの棚からは『別冊新評 深沢七郎の世界』(新評社)を購入。これはすごい。秋山駿、吉田知子らの鼎談。伊藤整、武田泰淳、三島由紀夫による中央公論新人賞選後評(「楢山節考」)、正宗白鳥、江藤淳、室生犀星、藤枝静男、塚本邦雄、高橋和己等による作品論。風流夢譚事件に関する中野重治、大岡昇平、平野謙、吉本隆明のコメントなど圧倒的な内容。

「早稲田古本村通信」で連載「ゲーテを読んでハッピーライフ」を始めたPippoさんとはゲーテの話をあれこれ。『ゲーテ格言集』は私のお気に入り。よって、いろいろな言葉が頭の中に染みついている。その中からいくつかをPippoさんに投げかけると即座に的を射た反応が返ってくる。さすがと言うほかない。ゲーテの二面性については意見が一致。
単なるゲーテ解説にとどまらないPippoさんの連載の今後が楽しみだ。何故かいきなり血液型を聞かれ、Bと正直に答えてしまう。。奇異な目で見られがちなBだが、Bであることになんら引け目を感じないところもBたるゆえんか(笑)。

文系ファンタジックマスクの売れ行きも好調。横光利一編はひとつしか残っていなかった。取り上げたフレーズが気に入って横光の作品を読んでみたくなったという方がいらっしゃったようで、その話をする時のPippoさんの嬉しそうな顔がとても印象的だった。
Pippoさんからは、『荒地詩集1956』を購入。まだ読んだことはないのだが、衣更着信の詩がいいとのこと。じっくり味わってみたい。

そして、そして。あの「はにかみ高校生」に遭遇!! 学生服姿の凛々しいこと。本を見る横顔には微かな笑み。その優雅な佇まい。もう言うことなし。
手には単行本が2冊。「後ろにまわってどんな本を買うのか確かめたいなあ」と漏らしたら、「それじゃあストーカーですよ!」と古書現世・向井さんとPippoさんに笑われてしまう。泣く泣く諦める(笑)。
古書現世や往来座にも来たことがあると知る。向井さんも自分からは話しかけないようにしたとか。都内某私立高校生らしい。その高校名を聞いてびっくり。高校受験の際、1校だけ私立を受け、合格したのがその高校。都立志望だったため、結局都立に入学したが、(都立に)落ちていたら彼はもしかして私の後輩?う~ん、これは巡り合わせというしかない。これからも、そっと遠くから見守っていきたい。

古書現世から『世界教養全集別巻2 東西文芸論集』(平凡社)を購入。サント・ブーヴ、サルトル、カミュ、ベンヤミン、エリオット、ボードレール、ヴァレリー、ハックスリー、魯迅、埴谷雄高、小林秀雄、花田清輝、神西清、川端、啄木、鴎外、横光利一、斎藤綠雨ほか総勢39人の文芸論集。46年前発行とは思えぬほど充実している。この世界教養シリーズ、林語堂「生活の発見」が収められている第4巻を持っている。

帰り際、編集長武藤さん渾身の作「わめふり」創刊準備号を入手。発行までにいろいろあってたいへんだったようだが、仙台まで足を運んだ武藤さんの執念が感じられる。共同編集、図案担当、豆惚舎・山本さんの力も遺憾なく発揮されている。A3用紙六折りは斬新だ。武藤さんのイラスト、手描き文字が見事なアクセントになっているし、記事の囲みも工夫が凝らされている。
個人的な希望としては、本文の文字の大きさをもう一回り大きくしてもらえたら嬉しい。若い方には何の抵抗感もないと思うが、50代目前のおじさんにはちょっとつらい。また、縮小して収めざるを得ないために(手書きということも加わって)、漫画の中の文字には読みとれない部分があった。武藤さん自身ブログで書いていたように、写真の掲載はやはり厳しいかなと思う。旅猫雑貨店・金子さんが撮った鉄砲坂の見事な写真(→こちら)は、高いクオリティの印刷にかけ、それなりの紙を用いなければその細かいニュアンスを(残念だが)伝えられないからだ。

武藤さんの記事は、仙台に行かなければ決して伝わって来ない趣がある。「ぼうぷら屋古書店」のエピソードも味わい深く面白かった。秘境のような古本屋が眼前に迫って来た。仙台在住者でなくとも行ってみたくなる。
白シャツ王子こと古楽房・薄田さんの文章が素敵だ。ものが近すぎることから感じる都会生活の閉塞感。その中にあって「隙間」を持っていることの大切さ、豊かさが詩的に語られている。さわやかな風を感じた。

31日(日)私は知人の演奏会に行っていたが、夕方近く強い雨が降り始め、外市の現場はたいへんだろうな・・・と思ったりした。実際、そうだったらしい。それでも、お客さんは絶えなかったとか。雨が降っていない方がいいのは言うまでもないが、天気が悪くても、足を運ぶだけの価値が「外市」にはある。

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