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不忍ブックストリート「一箱古本市」で思いがけない受賞

5月4日(月・祝)、「第8回不忍ブックストリート 一箱古本市」において映画保存協会さま の軒先(公園)に出店し、黒岩比佐子さんから「黒岩比佐子賞」を頂戴いたしました。

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賞品として、夏目漱石『道草』(大正三年九月二十日發行 岩波書店 壹圓九拾五銭)、黒岩さんのご著書、 『明治のお嬢様』(角川選書)。夏目漱石といえば猫ということで、かわいい子猫の写真が載っているメモ帳(小さなハムスターに頭をちょこんと凭れて眠っています)をいただきました。
貴重な、そして素敵な品々、ほんとうにありがとうございました。

『道草』は我が家初の、いわゆる黒っぽい本となりました。しかも漱石。装幀に関しては素人なのでうまく表現できないのですが、表紙まわりは布製で、背表紙の文字が浮かび上がっています。
『明治のお嬢様』は、当時の写真、絵、図版、広告などがふんだんに載っていて、興味をそそられます。もちろん、サイン入り。大事に拝読させていただきます。メモ帳はもったいなくて使えません。

正直申し上げると、黒岩さんの著書は『音のない記憶-ろうあの天才写真家 井上孝治の生涯』(文藝春秋)と、第26回サントリー文芸賞を受賞された『編集者国木田独歩の時代』(角川選書)の2冊しか読んだことがありません。しかも、つい先日までお顔を存じ上げませんでした。

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先般参加した「第1回みちくさ市」の際、当店「とみきち屋」から本をご購入いただいた方の中に、特別なオーラを放つ素敵な方がいらっしゃったと、当ブログで書きました。
「いったいどんな方だろう」と、とみきち(妻)と二人で話しておりました。
数日後、ほかの方のブログを読んでいるうちに、「ひょっとしたら黒岩さん?」と思い始め、考えれば考えるほど黒岩さんに違いないと思うようになりました。
そしてついにネットで検索。黒岩さんの写真が載っている記事を見つけ、確信へと変わりました。「今度お会いできたら声をかけさせていただきたいね」と、二人。何という脳天気ぶり(笑)。

そして今回の「一箱古本市」。
なんと、その黒岩さんが朝一番とも言える時間にお見えになりました。
二人とも緊張~!!
それでも勇気を振り絞って、「失礼ですが、ひょっとして黒岩さんでいらっしゃいますか?」とお尋ねすると、「ええ」というお答えでした。
「堺利彦の本を2冊も出されているなんて珍しいですね」と言っていただいたのですが、何とお答えしたのか、緊張していたため覚えていません。現在堺利彦について書いていらっしゃるそうで、とみきち屋のテーマの一つ「日記・自叙伝」の中から『堺利彦伝』(中公文庫)をお買い上げいただきました。もう1冊の、テーマとは関係なく出していた『文章速達法』(講談社学術文庫)はすでにお持ちだとのことでした。
去られる間際に、「今日はこれから全部のお店を回らなければならないので」とおっしゃられたような。「もしかして審査員のお一人なのかな」と一瞬思ったものの、お会いできたことが二人とも嬉しくて、「素敵な方だねえ」と興奮。
その余韻も冷めやらぬうちにナンダロウさんがお見えになったので、「今し方黒岩比佐子さんにお会いしました」とお伝えしたら、「えっ、こんな早い時間から廻ってくださってるんだ。今回審査をお願いしたんだよ」と。

私たちの古本市初参加は、昨秋の不忍ブックストリート「一箱古本市」でした。どんな催しなのかも全く知らず、素人でも参加できるというだけで、何気なく「ちょっと参加してみたくなった」と、とみきち(妻)に漏らしたのが、きっかけです。

本の好きな方と話したり、本を買ったり選んでいる時の様子を、いつもと違う売る側になって、見たり感じたりできることがあまりにも楽しくて、あっという間の5時間でした。咋秋は賞の選考は無しとのことだったので、緊張から疲労困憊、多くの本を引きずって持ち帰ることも目に見えており、終了後の懇親会のような集まりは失礼させていただいたのでした。

数日後、南陀楼綾繁さんのブログに、「ナンダロウ賞は<とみきち屋>さんに」と書かれていたのは驚天動地の出来事でした。何故なら、当日廻って来られたナンダロウさんに、「お世話になっています」とご挨拶はしましたが、特にお話もできませんでした。両隣の「あいうの本棚」さん、「もす文庫」さんはご存知のようで、立ち止まって会話を交わされ、しかも気に入られたものを購入されたのを羨ましく眺め、「うちの本は魅力がないのかなあ」と思っていたからです。

我が箱に凝らした工夫らしき事といえば、複数所有している本を選んで3つほどのテーマに分類し、それを小さなかごや箱に分けて並べた程度。まったくもって自分好みの選書。デザイン的な美しさ皆無でした。
そういうところがかえってよかったのかな、と思うことができましたし、ナンダロウさんご自身の本の嗜好と関係なく選んでいただけたことも、たいへん嬉しく感じたものでした。

今回で2度目の参加となる「不忍ブックストリート 一箱古本市」。各賞の発表を兼ねた打ち上げに出席したのは、他のお店も廻ったうえで、どんな方が受賞されるのか確かめたい、という思いがあったからでした。残念ながら、今回もまた他の出店場所を訪れる余裕が無く、受賞された方のお店を実際に見られませんでしたが。昨秋、賞をいただいた自分たちは対象外、とハナから思っていましたので、ドキドキ感は全くなく、リラックスして、ぎっしり満員の会場に座っていました。

昨秋の一箱で知り合い、その後も親しくさせていただいている「あり小屋」さんが新潮社の「yom yom賞」を受賞されたことは、自分たちのことのように嬉しくて、妻と二人「やったね!」と、少し興奮。
その後、「古書ほうろう」の宮地さん、東京堂書店勤務の畠中理恵子さん、私もご著書をよく読んでいる豊崎由美さん(恥ずかしいことに、会場で豊崎さんを見かけた際、「あの方はどなただろう」と二人で話していたのです。)からの賞などが続々と発表されていきました。

そして、黒岩さんの登場。
「先週、みちくさ市でナンダロウさんにお会いしたら、急に、"来週の一箱で審査員をやって"と頼まれました」。
「それで、初めは私の好きな黒い本ばかりを出されているお店があればそこに・・・」
<それはそうだろうなあ>
「でもそういうお店は残念ながらなく・・・」
<そんなお店が一箱に出てきたら確かに驚異だ>
「買う立場で選べば、好みの本を安く買えるお店がいいお店なんですね」
という黒岩さんの言葉に、会場が和む。
それを受けて、「立場が変わると、確かに見る目が変わりますね」とナンダロウさん。

<ではいったい、今回は何を基準にされたのかな>という気持ちになったところで、前夜、ほとんど寝ていないために、聞いているつもりでしたが、記憶が切れ切れです。しかも、勝手に自分たちは賞の対象外と決めつけていたこともあり、正確さには欠けますが、選考理由を次のようにおっしゃったたような覚えがあります。

「本を一冊一冊考えて選んで並べている、と感じたお店を選びました」。

ナンダロウさんが「なるほど。では、その受賞者はどなたですか?」
黒岩さん「映画保存協会に出店された『とみきち屋』さんに・・・」。

その瞬間、二人で「へっ??」と顔を見合わせてしまいました。

一箱までの数日間、我が家の話題を独占していた黒岩さんご本人から賞をいただけるなど夢にも思っていなかったので、完全に舞い上がってしまいました。コメントを求められたのですが、何をしゃべったのか思い出せません。

「一冊一冊を考えて選んだ」

無理やり詰めても100冊も入らない小さな箱に、どんな本を選んで並べるか。
その時点から一箱は始まっています。
迷いに迷って選びます。
そういう思いが伝わる箱になっていた。

賞をいただいたことはもちろん本当に光栄ですが
黒岩さんが、並んだ本からそういう思いを感じ取ってくださった。
そのことが嬉しくてなりません。

一日経ち、頂戴した本やメモ帳を手にしては、喜びが実感として湧き上がってきます。
黒岩比佐子さん、ほんとうにありがとうございました。

お客様や本にまつわるエピソードは、次回から2回ほどにわたって紹介させていただきます。

3日・4日それぞれの各賞及び売上げ総数、金額などが「しのばずくん便り」に発表されました。興味のある方はこちらをどうぞ。

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コメント

もす文庫のmasubonです。

一箱、お疲れさまでした。受賞、おめでとうございます!!とみきち屋さんの「本で勝負」というところはなんとも当然かつすごいなぁと思います。わたしはあまり本には詳しくないのですが、とみきち屋さんの本への愛情と知識はすごいなぁと思います。そして見事な番頭さんの見事な接客です!!
とにかくおめでとうございます。またお会いしましょう。
では。

投稿: masubon | 2009年5月 7日 (木曜日) 20:40

>もす文庫masubonさん

ありがとうございます。
賞については、出店場所やタイミングにも恵まれ、思わぬご褒美だったと思っています。
「本への愛情」とmasubonさんに言っていただけ、嬉しく思います。目玉商品と銘打たなくても、お勧めの本だとお客様との会話も弾みますし、お買い上げいただけた時は嬉しさも格別です。
知識に関しては怪しいもので、出品本のうちの2割あるいは3割は、お客様に満足いただける説明ができるかどうか、ヒヤヒヤしながら店に立っています。
接客も時に押し売り番頭に変貌。実際、目の肥えたお客様からは「強引セット」と痛いところを突かれたものです(笑)。

きっとまたお会いできますね。楽しみにしています。

投稿: 風太郎 | 2009年5月 9日 (土曜日) 00:16

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