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不忍ブックストリート「一箱古本市」 エピソード(1) お客さまと本

「とみきち屋」の出店場所は映画保存協会の軒先、小さな公園。場所がわかりづらいというお客様の声もありましたが、緑に囲まれ、滑り台で遊ぶこどもたちの楽しそうな声が絶えず、催しもあり。さらに大家さんである映画保存協会さんがテーブルを貸してくださったので、お客様もかがむ必要なく、ゆっくり見ることができる。そんな恵まれた場所でした。

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当店の店構えは写真のとおり。メインの箱にやや小さめの箱を入れ、その上には歪んだせんべい缶をのせ、さらにその上に100円ショップで買ったかごをのせるという、見事な3段タワー!(笑)
きれいな紙で化粧をほどこすこともなく、本と本の区切りは段ボールをちぎっただけという部分もあり。「この缶がいいわね」とお褒めいただくこともございました。
写真は1番目が開店時、2番目が午後13:30頃、3番目が14:30時頃。最後はただ本が箱に入っているだけという感じになりました。

さて、とみきち屋恒例、お客様とのエピソード集、その1です。

■ 梅津時比古 『フェルメールの音』 (音楽之友社) 600円
開店5分後最初に来店されたお客様が購入。表紙にフェルメールの絵が使われ、装幀がきれいなのでビニール袋に入れ面陳。「詩のようにきらめく言葉の花束。クラシック音楽が身近に感じられ、心洗われます。」というPOPを貼っておいた。手にとられたので、「フェルメールとタイトルに入っていますが、美術の本ではないんです。クラシック音楽は聴かれますか?」と声をかける。
「あまり聴かないな」。「そうですか。文章が素敵なんです。もしよかったら、袋から出してみてください。」と続ける。パラパラと文章を読まれてから、「装幀も気に入ったからもらうよ」。
自分の愛読書を一番最初のお客様に引き取ってもらえ、いい一日を送れそうな予感。

■ 堺利彦『堺利彦伝』(中公文庫)300円 
■ クロード・アブリーヌ『人間最後の言葉』(ちくま文庫)500円
当店2番目のお客様、黒岩比佐子さんご購入。

■ イーヴリン・ウォー『ブライヅヘッドふたたび』[吉田健一訳](ちくま文庫)650円
■ ナボコフ『青白い炎』(ちくま文庫)900円

3番目のお客様。すうっとこの2冊をとり笑顔。「お探しでしたか」と声をかけると、「ずっと探してたんだよ。福岡から来てよかった。ありがとう。」
前日も一箱を廻られているのか気になって尋ねたら本日上京とのこと。喜んでいただけてよかった!
今や仙台、名古屋、広島、福岡へと拡がっている一箱古本市。福岡から来られたと聞いて、その反響ではないのかなと思ったりする。

■ 足立巻一『虹滅記』(朝日文芸文庫)600円
■ 足立巻一『やちまた 上・下』(朝日文芸文庫)1,200円
ブログでも伝え、目玉商品のひとつだったものの、果たして足立巻一の作品を引き取っていただけるか、半信半疑だった。『やちまた』を松岡正剛が千夜千冊でどう取り上げているかに触れPOPも作ったのだが、結果的にはその必要もなかったようです。

『虹滅記』。「お二人のブログ読んでますよ」と声をかけられ驚く。でも知り合いではない。私の方は、あと10日で(ブログを始めてから)丁度半年になる程度なので実感が湧かない。
でも、ブログを見てお越しいただけたのは嬉しい。『やちまた』は持っていて、『虹滅記』をお探しだったとのこと。こうして喜んでいただけたのだから、ブログで前宣伝してよかったのだと思える。

『やちまた』はその後来られた別の男性が購入。この方は『虹滅記』と合わせ3冊所有されていたのだが、家の大整理をした際、『やちまた』の下巻のみ紛失してしまったらしい。下巻のみ売るというわけにはいかず恐縮していたら、「下巻はなかなか見つけられないし、高いしね」と快く上・下セットをお買い上げいただく。
この本の紹介はとても私の手に負えるものではありません。興味を持たれた方は松岡正剛の千夜千冊・遊蕩編 第1263夜をご覧ください。(→こちら) 

■ 徳川夢声『夢声戦争日記』(中公文庫・全7巻)1,700円

今回の出品本の中で、とりわけ思い入れの強い本。
少なくとも私が廻る古書店ではほとんど見かけない。かといって、目の玉の飛び出るような古書価がついているわけでもない。不思議な本です。
そのせいか、購入いただけるまで10数人の方が興味深げに、一番上に別置きしておいた第7巻を手にとり、パラパラと読まれていました。すべて男性です(笑)。
素人ゆえ、値付けにもかなり迷い、全く自信なし。
加えて7冊セットですから、同じ7冊でも、色々な本のまとめ買いとも違います。
で、どなたにご購入いただいたかというと・・・
何となんと、足立巻一『やちまた 上・下』を購入していただいた30代前半の男性!
一旦清算を終えられた後、手にとって見ていらっしゃるご様子が、<一押しすればもしかして・・・>という感じ。
<でも、上巻持っているのに、上下巻買っていただいたばかりだしなあ>と心の中では思いつつ、
「うちの今日の目玉なんです。今日はどうしてもこの本をどなたかに持ち帰っていただきたくて」と、(先方には)わけのわからないことを言ってしまう(笑)
するとニコっと笑って、
「じゃあ、いただきます」
<なんという素敵な笑顔>
「ありがとうございます!!!」と店主とみきちと共に小躍り。

2 ■ シュレーディンガー 『わが人生観』(ちくま学芸文庫)
■ ホフマンスタール 『チャンドス卿の手紙』(講談社文芸文庫)
■ ユリイカ 臨時増刊 『シュルレアリスム』(青土社)
■ 出口裕弘『太宰治 変身譚』(飛鳥新社)『坂口安吾 百歳の異端児』(新潮社)ほか 8冊 計3,000円
 
昨秋の一箱でハイデガー『ニーチェ』ほか5冊ほど購入いただいたのがこの方との出会い。とても印象に残っていたので、「みちくさ市」プレ開催の際にまたお越しいただいたので、「その節はありがとうございました」というような感じでお声をかけると、先方もこちらのことを覚えていらっしゃいました。バシュラール『夢想の詩学』(ちくま学芸文庫)を「これだよ、これ」と言ってお買い上げいただくとともに、2回来店いただき薄田泣菫ほか5冊ご購入。
その後、「月の湯古本市」に遊びに行った際、ばったりお会いする。ご挨拶させていただくと、冗談も飛びかい、「Hです」と名前をまで教えていただいた。
そして、偶然は続く。3日に下見を兼ね一箱を廻っていると、またもやばったりお会いする。ここぞとばかりに、
「こんにちは~。お世話になっております。明日もお見えになられるんですか?」
「来るよ」
「そうですか!うちは明日映画保存協会で出店します。是非是非お越しください。」
「そうなの。じゃあ朝一番に行こうか。」
「ありがとうございます。Hさんに買っていただけそうな本を、みちくさ市プレ開催以来ずっと考えていました(笑)。お見えになられるということなら、今夜熟考を重ねます。あっ、お持ち帰り用の袋も用意させていただきますね。」
「トラック一台用意しといて(笑)」
「おまかせください!」

そして4日当日、11時半過ぎ。Hさんの登場。すでに片手には本でパンパンに膨らんだ紙袋が。
「あれ~。一番にお越しいただけると思ってお待ちしておりましたのに。もうHさん好みの本はないかもしれませんよ~(笑)」
「じゃ、帰ろうかな~。」
「そんな~。ご覧になってください。」
Hさんが本を見始めたら、中途半端に声をかけないようにしている。本を探される時は真剣なまなざしなので、邪魔をしてはいけない。
早速、シュレーディンガー 『わが人生観』とホフマンスタール 『チャンドス卿の手紙』を手にとられる。最低2冊が目標だったので、その瞬間<ビンゴ!>。次にユリイカ 臨時増刊 『シュルレアリスム』。ひそかにガッツポーズ。これでもう今日は大満足。
その後、袋詰めにした同一作家の単行本と文庫本の2冊セットを指さされ、
「強引セットだね。」
「あれ~。やっぱりわかっちゃいましたか。お恥ずかしいことにコンセプトがありません。(汗)」
「でも、もっと強引なセットが他の店にあったよ(笑)」

荷物が邪魔で見づらそうなので、袋をお預かりする。

それから、蓮實重彦の文庫、出口裕弘の太宰と安吾本を手にとられる。
「太宰の方は品切れですが、安吾はそうでないので、かなり安く設定してあります。」
「そう。じゃあ、これもいっしょに。」
「ありがとうございます。」
しばし歓談。
Hさんの真剣なまなざしが和らぎ、「今日はこれで勘弁してください」
「ええっ!? Hさん、お約束どおりトラック用意してあるんですけど(笑)」

清算のため、箱の横側に廻られると
正面にはその存在を表示していなかった小さな200円、300円箱を発見される。
一瞥して満面の笑みをたたえられ、さっと2冊を引き出される。
「僕のために用意してくれたの?」
「いえいえ、たまたま今朝バッグの中に追加してきました(笑)。」
「○○○、僕のツボなんだよ。買わないわけにはいかないね」とおっしゃって、表紙の著者名を指さされた。
「そうでしたか。喜んでいただけて嬉しいです。」
結局合計8冊もお買い上げいただいた。
底が抜けないようにと、袋を二重にしてお渡しする。
その後、同じ会場の他店の一箱一箱を丹念にご覧になっているお姿が見えた。
○○○が誰かは、とみきち屋の企業秘密となりましたので、公表できません(笑)

これだけお買い上げいただき、かつ、こんなに楽しませていただいていいものかと思ってしまう。
たぶん、お許していただいているのだろう。
ぜひ、またお会いしたい。              (つづく)

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コメント

こんにちは。
あいうの本棚のトモコです。

不忍一箱古本市、お疲れ様でした。
二日共、とみきち屋さんにお会いする事が出来、本当に嬉しかったです。
黒岩比佐子さん賞を受賞された事を知り、メンバーにメール送信した次第です◎ おめでとうございます。

とみきちさんと風太郎さんのお客様レポートが特に好きで、いつも楽しく拝見しています。またちょこちょこ覗かせていただきますね。


P.S.
随分前になりますが『クリスマスの思い出』を拝見してとても感動し涙が出ました。素敵なご家族ですねshine
(コメントを書き込みしたものの、文章力が乏しく上手く書けず消してしまったのですが・・・。)

投稿: あいうの本棚(ト) | 2009年5月 9日 (土曜日) 10:37

エピソードを拝見して、ご夫婦ともども
楽しんでいらっしゃるlovely、ほのぼのしました。
風太郎さんの書痴人ぶりには脱帽です。
♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪
売上げもスゴイですね。
moneybag

投稿: 葉っぱ64 | 2009年5月 9日 (土曜日) 12:11

>あいうの本棚トモコさん

一箱おつかれさまでした。 
展示会中なのに、わざわざ抜け出して来て頂いただけでも嬉しかったのに、こうしてコメントまでいただいてしまって。ありがとうございます。

3日の「デザイン賞」受賞おめでとうございます!誰が見ても文句なしですね。でも、決して見た目だけではなくて、毎回品揃えには工夫をされているので、お客さんの目の輝きが違います。

プレゼンターの方が、中身への評価もされたと伺い、とても嬉しく思いました。とみきち、風太郎共々あいうの本棚さんの大ファンなので。もちろん、お店だけではなく、みなさんの!

>お客様レポートが特に好きで、いつも楽しく拝見しています。またちょこちょこ覗かせていただきますね。

古本市が終わるたびに、長々としかも毎回1週間かけて書いているので、いいかげん飽きられていはしないかと思っていました。
トモコさんも含め、様子がわかって面白いと言ってくださる方もいるので、懲りずに続けていこうと思います(笑)。

>随分前になりますが『クリスマスの思い出』を拝見してとても感動し涙が出ました。素敵なご家族ですね

去年の12月に書いたあの記事に触れていただいたのはトモコさんが初めてです。胸が熱くなってしまいました。

後にミニカーは、おじさん(サンタさん)が店をいったん出て、買って来てくれたものだと知りました。(父母の話から)
出稼ぎに来られていて、歳が同じくらいのお子さんのことを思い出してしまったらしいのです。
時代は変わっても、こういう方が大勢いるのではないかと思うと、しんみりしてしまいます。

また、お会いできるのを楽しみにしています。
活動、がんばってください!

投稿: 風太郎 | 2009年5月 9日 (土曜日) 14:21

>葉っぱさん

とみきち共々、お世話になっております。
古本市は、人に不快な思いを与えないように気をつけ(少なくとそのように心がけ)、自ら楽しみたい!という気持ちで参加しています。
お客さまとのやりとり、人との出会い、交流が有形無形の財産となってくれます。
それを好きな本を通じてできるのですから、こんなありがたいことはありません。

>風太郎さんの書痴人ぶりには脱帽です。

そんな、買いかぶりです。
「書痴人」と呼べる方は、出店者の中やうわさに聞く方で、ほかにたくさんいらっしゃいます。

>売上げもスゴイですね。

常連さん、リピーターの方や、知り合いの方々のご好意もあって買っていただいているというのが実情で(汗)。
今回は、強いて言えば、いんちき売り子(店主)に、強引売り子(番頭)が加わったことが功を奏したような(笑)
なにせ、「強引セット」販売ですから。

葉っぱさんお住まいの地域で「古本市」が開催されることがあったら、ぜひぜひ葉っぱさんのお店を拝見したい!
微力ながら、お手伝いに参上いたします。とみきちと二人で。

お身体、大切になさってください。

投稿: 風太郎 | 2009年5月 9日 (土曜日) 14:55

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