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〔新書雑感(1)〕 新書ブームと出版不況

今日の朝日新聞朝刊、「新書ブーム 市場沸騰」と題する記事で、新書の「百花繚乱」状態を取りあげていた。新書御三家と呼ばれる、岩波が1938年、中公が1962年、講談社が1964年にそれぞれ新書を刊行している。70年の歴史を持つ新書だが、ここ10年ほどでその様相を一変させた。

1994年岩波新書、永六輔『大往生』が230万部を超える驚異的なヒット作品となり、その後2003年新潮選書創刊時に出された、養老孟司『バカの壁』は400万部を超えた。各出版社が色めきたったのも無理はない。さらに、2006年9月発行、板東眞理子『女性の品格』(PHP新書)が300万部を超える。出版社側とて、厳しい出版不況の中、最初からミリオンセラーになるなどと思っていたはずがない。要するに何が爆発的にヒットするかわからないのが現状だろう。

2008年一年間だけで40以上のレーベルから1,500点以上発行されたというのだから、異常とも言える。実際書店は新書であふれかえっていて、何を読もうかとじっくり手にとって考える余裕さえ持てない。しまいには頭がくらくらしてきて気分が悪くなる。
新書の棚が増殖し、他の本のコーナーをどんどん侵食している。出版や書店業界に身をおいているわけでもないのに、「こんなことでいいのか」と思ってしまう。

「中央公論」編集長は「今の新書には一発ギャグのような本と保存版にしたい本が混在する猥雑さがある。雑誌よりアバンギャルドです」と語っているが、楽観的過ぎやしないか?
そこそこ売れた著者を各社が追いかける。中には同工異曲、内容の薄いやっつけ本も目につく。あるテーマが注目を浴びると、質の悪い二番煎じ三番煎じが直ぐさま出現する。かような状況がこの先続いていくとしたら、出版の未来は暗いと思わざるを得ない。

有隣堂社長の「新書や文庫が売れる時代はその分ハードカバーの単行本が売れない。商品単価が安くなるので、出版社も書店もトータルでは売上げが下がる懸念がある」という話。
出版ニュース社代表の「新書市場に新規参入が続いて話題になる時は出版業界が苦しい時。この構造は昔も今も変わりません」という話の方が切実に感じられる。

有名雑誌の相次ぐ休刊、廃刊。書籍が売れない。勢い、新書(や文庫)に頼らざるを得ないのだろう。とはいえ、2008年は姜尚中『悩む力』(集英社新書)の60万部超えが最大のヒットで、30~40万部が壁となっているようだし、各社平均して最低1万部売れればいいというのが現状ではないだろうか。

タイムリーな出版、柔軟性が必要なこともわかるが、こういう状況だからこそ、柳の下のドジョウを追いかけるのではなく、各社の色を明確に出し、耐用年数の長い良質な新書を生みだしていく努力が求められると思うのだが。

専属の校閲部隊が厳しいチェックをしているから、中公新書は他社に比べ質の高い本を出して来られたと聞いたこともある。企画から発行まで、やっつけではなくある程度の時間をかける出版社もあると聞いている。そういう姿勢は失って欲しくないものだ。

次回は、『新書大賞2009 いま最も読むべき46冊が決定』(中央公論新社)に触れながら、新書の中身や傾向について考えてみたい。

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