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「みちくさ市」エピソード(1) はにかみ高校生 彼は・・・

昨日の「みちくさ市」で出逢った、言葉では形容し難い高校生についての話から。

300円、200円でも、お客様にすれば高いと感じられるのかな・・・と思える本を、店のレイアウトを変えてつくった200円、100円均一箱に入れ始めてまもなく(閉店40分くらい前)のことでした。他のお客様に気をとられていたら、ふっと左から黒い人影が視界に入ってきました。私の正面に立ったのは、詰め襟の制服を着た清潔感漂う高校生。襟をきちんととめ、髪は短くも長くもなく、きれいに整えられていました。もちろん、染めてなどいません。私がもし女子高生だったら、恋してしまいそうな麗しい顔。おじさんが、魅入られてしまうーそんな高校生を思い描いてみてください。

その彼が黙って本を差し出してきたのです。瞬間、お客様?と思いました。とみきち屋出品本のなかに、高校生と結びつくものがなかったからです。野間宏『文章入門』(旺文社文庫)、中野重治『歌のわかれ』(新潮文庫)だったものだから、思わず仰天。しかし、すぐさま歓喜。 嬉しくなって、「こういった作家が好きなんですか?」と尋ねたら、はにかむように視線をちょっと逸らされてしまいました。そして、お財布から小銭を取り出そうとするので、「野間宏の方は、100円ではなく400円ですが・・・」と言いかけたら、さきほどとは違い、〈わかっていますよ〉という感じで、微笑んだのです。〈この本が欲しいから、500円硬貨出しているのに〉という彼のプライドのようなものが感じられ、一瞬言葉につまってしまいました。

思い直して、「それでは400円頂戴します。この手の本を買っていただけるのは嬉しいので、中野重治の分はサービスさせてください」と、お釣りの100円を渡したら、満足気にニコっとして、静かに去っていきました。結局、彼は一言もしゃべらなかった。

なんだか、夢のなかにいるような気分で、しばらくぼうっとしてしまいました。後からですが、「黙って箱の中に目をやり、何冊も手にとるわけでもなく、あの2冊を選っていたよ」と妻から聞きました。

妥当な値段と思ってくれた彼に、「400円ですが」などと、失礼なことを言ってしまったと反省しています。そういえば、ただシャイなのだとは思えず、知的な雰囲気を漂わせ、自分の世界を持っている目をしていました。彼は他のお店で、どんな本を買ったのでしょうか。みちくさ市にまた参加する機会があったら、もう一度彼に会ってみたい。会話はなくても、買ってもらえなくてもいいから。次はどんな本に目を遣るのか、知りたい。今回の「みちくさ市」で、一番印象に残ったお客様です。

ここからは、持ち帰っていただいた本と、お客様のことです。書名に興味のない方は、読み飛ばしてください。

■バシュラール『夢見る権利』400円 澁澤龍彦『血と薔薇コレクション1』200円 ほか5冊

「秋も一箱古本市」で、ハイデガー『ニーチェⅠ・Ⅱ』(平凡社ライブラリー)ほか、哲学、思想関連の本を、二度ご来店いただき、計5冊ほど買っていただいたお客様が、なんと今回の「みちくさ市」でもいらっしゃいました。忘れるはずがありません。両手に持った袋にはぎっしりと本がつまっていたのですから。今回は思い切って、「秋も一箱の際には、何冊もご購入いただき、ありがとうございました」声をかけたところ、少し驚かれたようでした。嬉しいことに、先方もこちらのことを覚えてくださっていました。

で、その後はこんな感じで。「澁澤のこの本、1しかないの?」「すみません、買って読み始めたものの、私にはどうも合わなくて。この本だけなんです」「残念だな。2・3もあればな・・・」それを聞いて澁澤の本はダメかと諦めかけたら、「今回はこれだよこれ、バシュラール!」とニコニコされました。そして、『血と薔薇コレクション1』を含め、結局3冊お買い上げいただきました。バシュラールを出していなかったら、今回はパスだったかもしれません。〈1冊欲しいのがあったから、あとの2冊は気持ちだよ〉という感じが、嬉しくてなりませんでした。

驚いたのは、時間をおいて再び訪れていただいたことです。『泣菫随筆』『近代の超克』(いずれも冨山房百科文庫)の2冊を持ち帰ってくださいました。

この方の好みに合う本を考えるのは難しそうですが、またお目にかかりたいものです。

■野呂邦暢 ①『丘の火』(1,500円) ②『一滴の夏』(700円) ③『落城記』(400円)
■樋口修吉 ④『回転木馬』(800円) ⑤『ジェームス山の李蘭』(300円)
■辻邦生 ⑥『楽興の時 十二章』(1,200円)

当ブログで宣伝させていただいた本がどうなったかのご報告です。宣伝とは言いましたが、始めたばかりのブログが、宣伝になるわけはないのですよね(笑)でも、無事5冊とも行き先が決まりました。
①は、昔、野呂の作品を集めていらした方。最近また集めたくなったとのこと。②③は、「なかなかみつからないから」と嬉しそうに、手にとられていました。
④⑤は、著者の本が好きになったときには、すでに亡くなっていて、思うように手に入らなかったとのこと。一番欲しかったのは、『花川戸へ』とおっしゃっていました。
⑥は、「見つけられなかったんだよ、これ。いいの、この値段で」とおっしゃるので、函が痛んでしまっていますし、CDは盤面に傷を入れてしまったので」と申し上げました。

どの方も、年輩の男性でした。私がブログで紹介した本だけに、(ブログをご覧になられてではないとわかっていますが)買っていただけたのは、嬉しいことです。そして、ネット注文という手段をとらず、ご自分の足を使って、好きな作家の本を探す。買う立場から、売る立場になって、自分に似た、あるいは自分とは違う、「本好き」の方たちと会えるのも、古本市の素敵なところではないでしょうか。

「秋も一箱古本市の体験記(1)(2)(3)」の時には、具体的な値段には触れませんでした。今回敢えて入れたのは、私どもが、どのような店を出店しているか、お伝えする一助になればという思いがあったからです。当ブログタイトルにもあるよう、極私的ではありますが。
ああ、そういえば看板に偽りありですねえ。音楽に関しては、コンセルトヘボウの演奏会感想しか書いていない。「古本(市)」で読んでいただいている方には、肩すかしになるかもしれませんが、「みちくさ市」エピソード終了までの間に、一つは入れたいと思います。

わめぞ」およびボランティアでお力添えいただいた方々、交流の深まった方々のこともお話ししたいのですが、遅筆に加え、ブログ初心者、ブラインドタッチもできず、ひとつ書くのに体力を使い切ってしまいます。ご容赦ください。

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