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「みちくさ市」エピソード(2) 「吉本(隆明)さんの大ファンです!」 彼女のひとことに卒倒

女性の年齢あてる自信全くなし。もっと若かったら、ごめんなさい。今年の流行語大賞ののりで言えばアラサー(around thirty)と思われる女性と、短いながら至福の時間を持てました。

アベック、いやカップルでご来店。彼の方はほとんどしゃべることなく、彼女の独壇場。
吉本隆明著『僕ならこう考える』(青春文庫)200円を彼女が手にとったところからの会話です。

吉本隆明は吉本ばななの父親で、戦後思想界ではとりわけ有名な人と言っても、
ご存じない方には何のことやらですよね(笑)
〈 〉内は、私の独白。

「この文庫と違って、単行本の表紙の方が好きなんだけどなあ」
 
  < 確かに。文庫はセンスない。表紙の違いがわかるなんて >

「単行本、持ってるし」
 
 < じゃあ、なぜ文庫手に持ってるの?まさか、持ち歩き用に?かなり好きそうだ >

「そうですか。吉本さんの本、ここにもありますよ」
 
  ― 『読書の方法』(光文社 知恵の森文庫)を私が指さす。

「ああ、これね。これも単行本持ってるから」

 < はあ? ひょっとして、吉本ファン? >

しばらく、迷った彼女。手にしていた『僕ならこう考える』を、すうっと、こちらに差し出す。

「よろしいんですか?」
「ええ」
「ありがとうございます! 吉本さん、お好きですか?」
「ええ!吉本さんの大ファン!!」  

 ― 私は卒倒しかけた。

「う、うれしいなあ。女性から、その言葉聞くの、初めてです。すご~く嬉しいから、1冊サービスします」
  
  ― 他の本の中に埋もれていた、『心的現象論序説』(角川文庫)をとって渡そうとした。

「ああ、『共同幻想(論)』なら、サービスしてもらわなくても(けっこうですよ)」
 
 < 表紙の絵柄をちらっと見ただけで、『共同幻想』と口にするなぞ、ほんものだ >

「そうですか。高価な本論の方も出版されて間もないから、喜んでいただけると思ったのですが。もうお持ちですよねえ・・・残念です」
 
 ― まじまじと本を見る彼女、目が点状態で、私の話など全く聞いていない。

「うそ?!いいんですか。うそうそ・・・。だってこれ、ネットで○○○○はしますよ~」

 < アマゾンあたりのことだろうな。そういうの、ちょっとは参考にするけど、本の値段の決まり方って、いろいろあるんだって、この頃つとに思うようになったから>  

「いいんですよ。大ファンに出逢えた記念だから」
 
 < ちょっと、かっこつけすぎ?おっさんだなあ >

「そんなあ。ダメですよ。無料(ただ)なんて」 
「だから、ただじゃなくて、気持ちですから」

  ― そこで初めて、300円と書いてあるスリップを見た彼女。

「300円~~~!!! 買います、買います」
「そうですか。それでは、2冊合計で、500円になります」

嬉々として去っていった彼女。嬉しかったのはこっちなのに。

値段もそうだが、「本の価値」って、さまざま。古本となればなおさら。
需要と供給のバランスなどと言ってしまったら、余りにも味気ない。
もちろん、素人だから言えるのだという自覚はあります。
「古本市」は、人とじかに接しながら、本を挟んで対話できる。
私は、対面販売だから、それが面白くて、「一箱古本市」に続いて、「みちくさ市」にも参加させていただきました。

今回は最後に、ちょっと理屈っぽくなった嫌いがあるので、次回、古本市で出逢った、お客様以外の人たちとのエピソードを中心に書きます。
 

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