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「古書ほうろう」さんとの出逢い、そして縁

仕事帰りに千駄木へ足を運ぶ。「古書ほうろう」を訪ねた。噂に違わぬ、いや噂以上に魅力ある古書店だった。

想像していたよりも広いスペースの中、ジャンル別に仕分けされた本が、ぴっちり整然とではなく、一冊ずつ時間をかけて見たくなるような、心地よい案配で並べられていた。昔風の古色蒼然たるイメージはなく、清潔感があって、店内のあちらこちらに目移りしてしまう工夫も凝らされている。様々なイベントのチラシ、小物、こだわりの商品や本も、訪れた者を飽きさせない。私のような素人には、お初にお目にかかる本ばかりだ。なのに、その多くの本からは(実際は稀少で高価な本であっても)「さあどうだ」と、こちらを圧倒せんばかりの表情は感じられず、購入しなくとも、出逢えたことに喜びすら感じられるのが不思議でならなかった。経営する4人の方のこだわりが随所に見えながら、繊細かつ控えめに、店そのものを表現しているようにも感じられた。

漏れ聞こえてくるお客様との会話からも、店のポリシーが感じられた。買値を付けられる本とそうでない本を丁寧に説明している様子に、こちらまでやさしい気持ちになってしまう。

私の周りには、「古本屋さんに一度本を売りに言ったら、ひどく横柄な態度で、怒られているように思えた。以後、二度と行く気にならない。」と言う者も少なくない。
「古書ほうろう」さんのような古書店に最初に巡り逢えていたら、抱くイメージも違っていただろう。

「秋も一箱古本市」で、私どもが並べた箱を見て「いいですねえ。テーマがあって。こういうの好きですよ」と声をかけていただいたのが、今日お店に出られていた宮地さんとの初めての出逢いだった。単に髪を短くされているからではなく、穏やかでありながら、内面には厳しく鋭い目を持つ、「僧侶」のような印象を私は受けた。その後、茶話会でお会いし、いろいろと話をさせていただいた。「本にも念が宿るんですよ」という宮地さんの言葉が忘れられない。営業のお邪魔をするわけにはいかないので、話せたのは、本を購入した際の、ほんのわずかな時間ではあったが、今もって私の印象は変わらない。店内のBGMは、ピアノ演奏によるクラシック音楽だった。宮地さんの好みと思われた。

帰宅してから、宮地さんが昨年11月に書いた記事を見つけて読み、自分の推測が間違いではなかったと知る。「50年前の音楽会」の魅力的なこと!クラシック音楽ファンにはたまらない内容だ。コルトー、バックハウス、ハイフェッツ、シゲティ、ケンプ・・生で聴けたらどんなに素晴らしかったことだろう。想像するだけでため息が出る。すべて、私が生まれる前の演奏会ゆえ、はかない夢に過ぎないが。

本日、「古書ほうろう」で購入した本。

1.〈写真集〉ブラッサイ 「夜のパリ」(みすず書房)
2. 海野弘「モダン都市東京」(中公文庫)
3.〈雑誌〉「考える人 2007年春号 特集 短篇小説を読もう」(新潮社)
4. 南陀楼綾繁「積んでは崩し」(けものみち計画)
5. 古井由吉「夜の香り」(新潮社)

私にとってパリの写真集といえば、アジェとブラッサイ。アジェは写真展に足を運び、写真集(カタログ)を購入していたが、ブラッサイは2005年の展覧会を痛恨の見過ごし。品切れとなっていた写真集「夜のパリ」は、何年も探し続けたが、古本屋で見つけられなかった。ネットで販売されてはいるが、手にとって、実際に見てからでないと入手する気になれなかった。その写真集に今日、ようやく巡り会えた。不思議な縁と言う以外、言葉が見つからない。ほぼ新品に近い美本。

以前、古本屋で入手したのは、(手元にすぐに出て来ないため定かではないが)おそらく1985年の、朝日新聞社 有楽町朝日ギャラリー開廊記念展「ブラッサイ写真展」における写真集(カタログ)ではないかと思われる。その中のパリの夜の写真に息を呑み、瞬く間に引き込まれた。残念ながら、パリの夜の写真は掲載点数が限られており、以来渇望状態。これで、当分の間、至福の時間を送ることができる。

南陀楼さんの本は、先月「秋も一箱古本市」で賞を頂戴しながら未読。すみません。さっそく読みます。以下は、私どもが「とみきち屋」の名前で出店した際の、南陀楼さんのコメントです。

〈では、南陀楼賞を発表しておきます。宗善寺に出店された「とみきち屋」さんです。箱のなかに小さな仕切りがあり、「クラシック音楽の森」「ロシアの広場」などに分かれていました。一コーナーせいぜい10冊で、ひとつの世界を表現していたと思います。〉

「夜の香り」はサービスしていただきました。ありがとうございます!

みちくさ市」の準備は全く手つかず。今日、明日かかりっきりで取り組まなければ間に合わない。焦る。

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